2026年7月14日、都内某所にて。これまでにない圧倒的なエネルギーを持った二人の起業家のリアルな対談が実現しました。
ひとりは、学校の外とつながれない高校生の日常に潜む「やってみたい」に徹底的に寄り添い、地域の大人とつなぐマッチングプラットフォーム「株式会社Challink」を率いる現役高校3年生の久野美恋彩(くの・みれあ)氏。
もうひとりは、自律分散型組織(DAO)の仕組みを実社会へ実装するため全国を猪突猛進に駆け回り、若者の熱意を明るく温かく包み込み続ける一般社団法人地方WEB3連携協会代表理事の上田敏孝氏。
画面越しでしか言葉を交わしたことのなかった二人が、リアルで初めて対峙したその瞬間、地域社会の常識を覆す新たな共鳴が始まりました。
※この記事は久野美恋彩×上田敏孝対談記事の【前編】となります。後編はこちらから。
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初めて顔を合わせたオンライン面談での二人。会話が弾み、予定していた時間を忘れるほど密度の高い意見交換が行われた様子
【偶然の出会い】Facebookから始まった、「クレイジー」な関係
Facebookのリクエストから始まった「偶然の重なり」。なぜ、上田敏孝は高校生からの直談判に応えたのか?
お二人の出会いは、画面上の不意なアクションから始まりました。栃木県の日光市を舞台に地方創生と学生を掛け合わせた探究活動に励んでいた久野氏は、インターネットを通じて上田敏孝氏の存在を知り、Facebookで直接友達リクエストを送信しました。
上田敏孝氏(以下、上田):「実は、普段Facebookでの見知らぬ人からの直接コンタクトや友達申請は、原則すべてスルーしているんです。メッセージのやり取りだけでは相手の人となりが分からないし、本当に会うべき人なら、会える場所に行けば絶対に出会えるはず。だから普段はネット上のつながりには凄く慎重なんです。でも今回は、本当に偶然が重なりましたね」
上田氏が友達申請に応じた背景には、星の杜高校への視察予定(同校の西村先生との事前のやり取り)があったこと、そして自身の故郷である「栃木」への特別な思い、無償の愛の重なりがありました。
上田:「メッセージをいただいて、星の杜高校の生徒さんだと分かって。『えっ、学校の先生からのご紹介ですか?』って聞いたら、『全然違います!勝手に投稿を見つけてリクエストしました』って言われて驚きましたよ。でも、栃木を良くしたいという熱意がメッセージからビシビシ伝わってきて、じゃあ例外的にオンラインで一度お話ししてみましょうかとなったのが入り口でした」
久野美恋彩氏(以下、久野):「学校にちょうど上田さんが来ると聞いて、本当にびっくりしました!私はこれまで地域の官民連携や他者とのコラボレーションにもの凄く苦労していたので、全国を飛び回って新しい連携を突き進めている上田さんのお話を、どうしても直接お伺いしたくて、思い切って友達申請を送ったんです。承認していただけて本当に嬉しかったです!」

対談冒頭から熱い言葉を次々と繰り出す上田氏と、その言葉を噛み締めるように真剣に耳を傾ける久野氏
オンラインからリアルへ。「クレイジー」という名の最上級の信頼
最初のオンライン面談からわずかな期間を経て、本日、取材場所で初めて直接言葉を交わした二人。お昼の食事を共にしながら語り合う中で、上田氏は久野氏の圧倒的なアップデート速度と主体性に驚かされたと言います。
上田:「一言で言うと『クレイジーだな』と思いました。僕にとってクレイジーというのは最上級の褒め言葉なんです(笑)。若い世代で行動する子たちって、大体大学1〜3年生(18〜20歳)のレンジが多くて、それこそ起業家かじりで終わってしまうことが多い。でも、彼女は10代で自分で一歩を踏み出して、日光や宇都宮だけじゃなく、気づけば次の日に京都にいたり、山口に行ったり、直接自分の足で人に会いに行っている。大人たちが引き留めたり、失敗させないように過保護にレールを敷こうとする中で、それを突っ切って自ら飛び込んでいく。そのスタンスにもの凄く強いシンパシーと尊敬を覚えました」
久野:「上田さんこそ、オンラインの時から今日リアルでお会いするまでの行動力が凄まじくて、『この人になりたい!』と思わされる存在です。昨日も山口に行ってすぐに帰ってこられたりしていて(笑)」

対談していく中でお互いのクレイジーさを改めて実感し、笑いあう二人
【Challinkの挑戦】高校生の「やりたい」を、公式LINEで地域の大人と結ぶ
学校の中で思っても外につながらない。高校生の「内発的動機」に伴走するリンクの仕組み
現在3年生で受験期・卒業を間近に控えているという久野氏。彼女が「株式会社Challink(チャリンク)」を起業したきっかけは、教育現場を取り巻く閉ざされた環境への問題意識でした。
久野:「私の通う星の杜高校は探究学習が凄く促進されていて、校長先生が『探究をやっていくぞ!』という方針なんです。でも一方で、文科省のカリキュラム上、全国で『総合的な探究の時間』が設けられている中で、どうしても学校ごとに決められたカリキュラムで終わってしまう。生徒が心の中で『やってみたい』という強い内発的動機を持ったり、『こういう人に会いたい』と思っても、学校の中にいるだけでは外に繋がれないという現状があります。だったら、そのやりたい想いを持つ子たちに伴走して、外部の人たちと繋いでプロジェクトを動かしていく、そういうつなぐ係として会社を回そうと思ったんです」
学生が主体となる「逆オファー型」のマッチングモデルと収穫プロジェクトの実践
Challinkのメイン業務は、学生が提示する「やってみたい」に大人が応える「逆オファー型」のマッチングです。
久野:「公式LINEに登録して、自分のやりたいプロジェクトを送信すると内容が届きます。一例を挙げますと、ある他校の高校生から『土や虫に触れる機会が小中学生に少ない現状をなんとかしたいけれど、一緒にやる大人がいない』という相談が届きました。そこで私から、農村を活性化しようと日光市で活動されている大人(SNSマーケティングやNPOをされている会社)をマッチングしたんです。2週間前に対面してプロジェクトを動かし始めて、今週木曜日に、実際に自分たちで野菜を育て、収穫した野菜をどう売るか・調理するかを小中学生に決めてもらうというイベントを、3人で回しています」

学校訪問にて、自発的な思考と行動の大切さを伝え、生徒たちの探求心と踏み出す勇気を引き出す上田氏
上田氏が代表を務める株式会社DAOが追求しているのは、従来の「管理・統制」をベースとした昭和的な中央集権型組織からの脱却です。DAOの構造では、上下関係に縛られることなく、誰もがプロジェクト単位で自由に、フラットに繋がることができます。意思決定や資金使途の透明性がブロックチェーン等の技術で担保されるため、「自分が納得したこと、得意なこと」に自律的に貢献しやすくなります。この「フラットに伴走し合う関係性」こそが、Challinkが地域で生み出している大人と学生の共創関係にも共通する、これからの組織づくりの重要なヒントです。

地方でのビジネスの難しさと自社が抱える課題について、栃木で直面した経営のリアルを真剣な面持ちで語る久野氏
「コンテストの資金」から始めたからこそぶつかった、栃木県における資金回収のリアルな壁
元々は「とちぎアントレプレナー・コンテスト」という起業コンテストで、自分の会社のビジネスをプレゼンして、開業資金・資本金としていただいたお金を元手にスタートしたChallink。しかし実際に回し始めると、きれいごとではない冷酷な現実が待っていました。
久野:「当初は、高校生と一緒に何かプロジェクトをやりたいという大人の企業や、マーケティング調査としての意見がほしいという企業から単発の調査・マッチング費用をいただいて運営を回そうと思っていました。でも、いざ栃木で始めてみると、高校生にそこまでお金をかけたいと思ってくれる大人たちが私の周囲には非常に少なくて……。現状、経営が難しくて苦労しています。今はまさに、どう事業を回していくかの壁にぶつかっている成長期です」
上田:「そこは、地方創生を謳うすべての取り組みがぶつかるリアルな壁ですね。大人の善意や一時的な補助金だけで回っていると絶対に持続しない。だからこそ僕らも地域で自律的に回る『REGIONLINK』のビジネスリーグ構造を模索しているんです。久野さんがいま経営で直面している痛み、悩みこそ、実業としての本当のスタートラインですよ。僕は応援したくなりますね」
――学生の持つピュアな「やりたい」という熱量と、大人の社会のシビアな経済合理性のギャップ。
続く後編では、二人が日光市という地域の人口減少にどう向き合うのか、そして上田氏が提唱する「雨を止めようとする地方創生の違和感」の核心、そして高校1年生の時に日光市の大人の言葉に直面したという久野氏の「半泣きの原体験」へと踏み込んでいきます。
後編はこちら:「雨を止める」地方創生はもう古い。久野美恋彩×上田敏孝が描く、地域のアイデンティティと教育の未来(後編)
対談者プロフィール
星の杜高校3年生。高校1年時から栃木県日光市にて「地方創生と教育」をテーマに探究活動をスタート。高校1年時にカンボジアでの企業インターン(サムライカレープロジェクト)や日光での移動販売マルシェの経営を経験し、実践的なビジネス知識を体得。「第13回とちぎアントレプレナー・コンテスト」最優秀賞受賞をきっかけに、高校生のチャレンジを地域とつなぐ「株式会社Challink」を起業。現在は受験期・卒業を控えつつも、代表取締役として地域の発展に挑む。
一般社団法人地方WEB3連携協会 代表理事。株式会社DAO 代表取締役CEO。1987年生まれ、栃木県出身。大手企業での新規事業開発や戦略人事を経て2019年に独立。日本初のDAO型株式会社「株式会社DAO」を設立し、リーダーのいない自律分散型の仕組みで実業を回すライスワークを実践。一方で地方WEB3連携協会の代表理事として、全国の自治体・企業・学校と連携した地域共創リーグ「REGIONLINK」を展開するなど、若者の「挑戦を諦めない世界」の構築に猪突猛進する。









