ビジネス基礎知識

2025.01.17

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人材育成とは?知っておきたい基礎知識や成功するポイントを紹介

人材育成とは書いて字のごとく、人材を育成することです。
従業員のスキルを高めるよう育てることで、企業のパフォーマンスが向上することから、さまざまな企業が導入しています。
また、近年課題となっている人材不足解消にも有効。
高い能力を保有する従業員を確保したいと考える人事担当の方にも参考になるでしょう。
この記事では、人材育成の基礎知識と重要性、成功するためのポイント、そして人材育成を導入し成功した事例を紹介します。
  

1.人材育成とは


人材育成とは、企業の成長や発展に貢献できる人材を育成するために、従業員一人ひとりの能力を高めることです。
  
人材育成を実施すると、従業員の能力が高まる、生産性が上がるといった効果が得られ、結果的に企業の成長に大きく影響します。
さらに、従業員は成果を出せるようになったり、やりがいのある仕事を任せてもらえるようになったりし、仕事に対するモチベーションが向上するでしょう。
また、従業員が所属しているチームなど組織に対する愛着が湧くという効果も期待できます。
そうすれば、離職率が低下し人材の確保も可能です。
  
このように、人材育成は企業と従業員の双方にさまざまなメリットが得られます。
  

1-1.主な人材育成の方法

では、人材育成は具体的にどのように行うのでしょうか。
人材育成の方法はさまざまなものがあり、代表的なものは次の3つです。
  
1.OJT
2.Off-JT
3.自己啓発

  
次から一つずつ見てみましょう。
  

1.OJT(On-the-Job Training)

OJTとは、「職場内訓練」「実地研修」とも呼ばれ、実際に業務を行うことで知識・スキルを身につける方法です。
研修を受ける人に対して、上司や先輩社員などがトレーナーとしてつき、業務のやり方を説明し手本を見せ、実際に行った業務のフィードバックなどを行います。
  
経験を通じて学ぶため、知識やスキルが身につきやすいので、多くの企業で取り入れられています。
ただし、トレーナーの能力によってOJTの成果が左右されてしまうリスクがあるので、教育に適した人材を選出することが重要です。
  

2.Off-JT(Off The Job Training)

Off-JTは日本語で「職場外研修」といい、OJTとは逆に職場や日々の業務から離れて行われます。
主に、新入社員研修や管理職研修、職務別研修、技能別研修などで、社内に講師を呼ぶ、または外部の研修会に参加するといった方法もあります。
  
専門家から学べるため、高い知識を身につけられるでしょう。
また、社外で学ぶことで新たな発見があることも。
ただし、受講者が受け身になりやすく十分な実践力が身につかないリスクがあり、即戦力化が難しいというデメリットがあります。
  

3.自己啓発

自己啓発は、従業員が自発的に行う学習のことを指します。
たとえば、業務に必要な資格取得や講習への参加などが該当し、どれも従業員が自ら行うものです。
  
資格取得支援制度や資料購入の補助など、企業から金銭的な負担を軽減する福利厚生が設定されている企業もあります。
  
従業員が興味のあるもの、必要性を感じているものに対して自発的に行う学習なので、結果が出やすいでしょう。
ただし、学習内容によっては効果をすぐに実感することが難しく、「成果を得られなかった」と落胆して自己啓発をやめてしまう場合があります。
また、基本的に従業員が個人で行うため、集中力が続かない、誘惑に負けてしまうなどの理由で、途中から学ぶのをやめてしまう人も。
したがって従業員のモチベーションを維持することが重要です。
  

1-2.人材育成と人材開発の違い

人材育成とよく似た言葉に「人材開発」があり、従業員の能力を高めて業績をアップすることを意味します。
人材開発と人材育成は、同義で扱われるケースがほとんどですが、次のように分類できます。

人材育成 人材開発
目的 業務を遂行するうえで必要なスキルを身につける 従業員一人ひとりの能力を向上させる
時期 入社・異動・昇格時など 特定しない
対象 特定の従業員(新入社員・異動や昇格した従業員など) 全従業員
ゴール設定 対象者一律 個々によって異なる

人材育成と人材開発はどのように異なるのか、例を見てみましょう。
  
【人材育成】
新入社員や異動、昇格となった従業員が業務を行うために必要なスキルを身につけることを目的としています。
従業員全体ではなく、一部の社員が対象です。
  
例)新卒入社の社員がビジネスマナーや業務の基本的な知識を身に着け、一人で与えられた仕事を行えるようにする
  
【人材開発】
人材育成のように新入社員や昇格する従業員など特定の従業員に絞らず、全社員が対象です。
個々の能力をアップすることで、組織全体の生産性を向上させる・業績改善を図ります。
  
例)DX化のために社員全員のITリテラシーを高めることを目的に、社員全員にITに関する研修を実施する
  
人材育成と人材開発に大きな違いはありません。
とはいえ、社内や部署の状況に適した方法を選べ、より効率よく従業員の能力を向上し、企業のパフォーマンスを高められるでしょう。

2.人材育成が重要な理由3つ


  
企業経営において、人材育成は非常に重要です。
人材育成を実施すれば次の3つの成果が得られるでしょう。
  
1.人材不足の解消
2.離職率の低下
3.生産性の向上

  
次から、一つずつ詳しく解説します。
  

2-1.人材不足の解消

人材育成は、多くの企業が直面している人材不足の解消に効果的です。
  
近年、日本では少子高齢化が進み、働き手である15〜64歳の人口が減少しています。
将来的に人材不足が深刻化することが予想されていますが、一部の業界や企業では働き手が足りず、求人をしても応募が来ないという状況に。
  
しかし即戦力となる新たな人材を確保できなくても、すでにいる従業員に対して人材育成を行えば、現在抱えている人材のみで戦力を強化することが可能です。
  

2-2.離職率の低下

人材育成を行えば、優秀な社員が退職してしまうことを防げます。
  
従業員が離職する理由はさまざまですが「仕事にやりがいを感じられない」「給料が低い」といった理由で退職してしまう人を引き止められる可能性があります。
  
なぜなら、人材育成を通じて従業員の能力を高められれば、より大きな仕事を任せることができ、社員はやりがいを感じられるようになるからです。
また、能力や知識、技術が身につき、昇進や昇給につながる可能性もあるでしょう。
  
従業員がスキルアップすれば、チームなどで掲げた目標を達成しやすくなり、離職する人を減らすことも可能です。
達成感を得られるほか、社員同士の連携によって一体感が生まれ、社員が「ここでずっと働き続けたい」と考える可能性が高まります。
  
このように人材育成によって従業員のスキルを高めることは、離職率低下というメリットがあるのです。
  

2-3.生産性の向上

人材育成で従業員一人ひとりの能力をアップすることは、結果的に生産性の向上につながります。
なぜなら社員の能力が高まり処理スピードが上がれば、限られた時間内でも一人でできる業務の幅が広がるためです。
  
また、チームでプロジェクトを行う際も、高いスキルを持つ従業員が一丸となって取り組めば、より良い結果を得られる可能性も。
たとえば、5人チームの5人が人材育成によって力をつけて連携すれば、5人分どころか10人分、20人分の働きとなるかもしれません。
そうすれば、組織全体の成長も期待できるでしょう。
  
このように従業員の能力が高まれば、いままでかかっていた時間と労力、コストをカットでき、さらには質の向上も見込め組織の成長も可能なのです。
  

3.人材育成の成功ポイント3つ


  
人材育成を実施する際には、この章で解説する3つのポイントを意識するとより大きな成果が得られます。
取り組みを始める際に、次の3つを意識するかしないかでは、結果が大きく変わるでしょう。
  

3-1.目的を明確にする

まず、「何のために人材育成を行うか」を明確にしましょう。
人材育成の目的がはっきりしていれば、人材育成で何をすべきかが把握できます。
  
例えば、目的を「総務部から営業部に異動になった人が営業職として活躍できるようにする」とします。
すると人材育成の方向性は、次のようになるでしょう。
  
・Off-JTの営業研修に参加し、提案力やプレゼン力などを学ぶ
・OJTで実践的な営業力を身につける
  
このように、方向性と目的が固まれば、適した人材育成が可能です。
  
さらに、人材育成の目的がはっきりしていれば、育成を受ける従業員が動機を持てるでしょう。
そうすれば、自発的に学ぼうとして、人材育成の成果が出やすくなります。
  

3-2.透明性の高い人事評価制度を設ける

人材育成の際には「何を評価するか」を人事から従業員に明示することも、育成が成功するポイントです。
人材育成で設定した目標と人事の評価基準が関連していれば、従業員のやる気を引き出せるでしょう。
  
例)
・人材育成で出した課題に取り組んだ否かは評価の対象とする
ただし、取り組んだ課題の個数は評価対象外とする
  
逆に、何を基準に評価されているか不明確だと、「努力したのに評価されなかった」と考えられモチベーションが低下するリスクがあります。
  

3-3.実践する場を設ける

研修などで身につけた知識やスキルは、実際の業務で活用できるかどうかが重要です。
よって、学んだことを実践できる場を設けると良いでしょう。
  
例)
・マネジメント能力を磨くために、管理職の仕事を一部行ってもらう
・後輩への指導ができるよう、新入社員のOJTの教育担当を担わせる
  
実践したあとにフィードバックをすることで、より着実にスキルが身につきます。
  
また、実践するだけでなくフォロー体制を整えることも大切です。
学習が終わった後は本人の努力にゆだねてしまうと、個人のモチベーションによって人材育成の成果に差が出てしまうでしょう。
1on1ミーティングなどで学習者の話を聞いたり、一緒に目標を設定したりするなどフォロー体制を整備することで、人材育成が成功しやすくなります。
  

4.人材育成の成功事例3つ


  
最後に人材育成を導入した企業の成功事例を紹介します。
人材育成の実施を検討している、または今までの方法を見直したいという人事部の方は参考になるでしょう。
  

4-1.役職以外の全従業員で取り組む人材育成で生産性アップ!【株式会社山岡製作所】

プレス加工を行っている株式会社山岡製作所は「社員一人ひとりの技能や技術は会社の大切な財産」と考え、人材育成を仕組み化しました。
積極的に人材育成に取り組み、生産性アップを図っています。

山岡製作所が行う人材育成の代表的なものが「マンパワー活動」で、役職者以外の従業員全員が対象です。
従業員一人ひとりが目標を設定し、毎年春に行われるテーマ発表会で、従業員が定めたスキルアップ計画を全役員の前で発表。
翌年2〜3月にはマンパワー活動発表会が開催され、全役員の前でスキルアップした自分をアピールできます。
優秀者には褒賞が授与されるので、従業員もやる気を持続しやすいでしょう。

参考:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/jinzaikaihatsu/training_employer/jinzaiikusei004.html
  

4-2.自ら成長を目指す従業員を育成する 【スターバックスコーヒージャパン株式会社】

1996年にシアトルから日本へ上陸し、今や誰もが知るスターバックスコーヒージャパン株式会社。
  
スターバックスジャパンは、従業員一人ひとりが自分らしく活躍できるような人材育成を行っています。
例えば新卒入社時研修では、社会人としての基本的な知識やスキルを学ぶだけでなく、スターバックスでどのように働くかを自ら考え、どのように実践していくか計画を立てます。
  
また、入社してから半年後と1年後に行われる研修では、自分自身の行動や考えを振り返る時間が設けられています。
上司から「こうすべきだ」と伝えられるのではなく、自分を内省するため、自主的に成長しようと考えられる従業員が育つ人材育成が用意されています。
  
実際の業務においては接客に関するマニュアルがなく、従業員一人ひとりが「この状況ではどのように対応するか」を決定し行うことも特徴です。
従業員に接客方法を決定する権限を与えることで、「なぜこの行動をするのか」という理由を自ら考え実践できるように。
  
従業員の自主性を高めたいときは、スターバックスの人材育成を参考にしてみるとよいでしょう。
従業員の自主性が高まれば業務の効率化が叶い、限られた人数でも営業できて人材不足を解消できるかもしれません。
  
参考:https://www.starbucks.co.jp/recruit/ourjob/about/
  

4-3.伴走型の人材育成で自分らしいキャリアが築ける【株式会社ニトリ】

ニトリの人材育成は、従業員が「どのような人物になりたいのか」「何を成し遂げたいか」に寄り添いサポートするものです。
  
半期に一度、全社員が30年分のキャリアプランを提出し、キャリアロードマップを描く機会を与えられます。
また、上司との1on1面談で将来の夢を明確にし、従業員一人ひとりに適したキャリアプランの作成をサポートしています。
さらに、キャリアカウンセラーとの面談制度が設けられており、悩みを相談することも可能。
  
手厚いサポートが感じられる伴走型の人材育成は、社内で自己実現ができたり悩みを解消できたりして、会社に愛着が湧きそうです。
離職率の低下を目指す人事の方にも、参考になる人材育成方法です。
  
参考:https://www.nitori.co.jp/recruit/newgraduate/workstyle/education/

まとめ:人材育成とは従業員の能力をアップして企業の底力を上げる効果的な手段

  
人材育成とは、組織の力を高めるために非常に有効な手段です。
  
人材育成を実施して従業員の能力やスキルが高まれば、人材不足や生産性の低さなどの課題を解決できるだけでなく、企業の成長も見込めるでしょう。
また、より高度なスキルを身につけた結果、さらにやりがいのある仕事を任せられるようになれば、従業員自身の成長にも繋がります。
  
「優秀な人材がほしい」と考えている人事の方は、まず人材育成を検討してみてはいかがでしょうか。
求人をして人材を増やすことと同様に、高い成果が得られるかもしれません。
この記事で紹介した成功ポイントや、事例を参考にしてみてくださいね。

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