ビジネス基礎知識

2019.01.09

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イタリアで起業したい! と思う人のための基礎知識

複雑な税金体系や混在する法律…イタリアで事業を起こすと色々なハードルが待ち構えているのですが、それでも自分で起業しようというイタリア人は多いです。リスクを背負ってでも自由に仕事をする快適さが「自分のやりたいようにやる」ことの大好きなイタリアの人々に合っているのかもしれません。しかし、外国人の私たちが同じことをしようとすれば、どこから手をつけていいかわからなくなるのが実情です。ここでは、そんな方のために、起業に関する基本的な情報についてご紹介します。

よく聞く言葉「S.p.A」「S.r.l」「libero professionale」「lavoro autonomo」

起業する上で、まずは組織にするか個人事業にするかを考える必要があります。
ここでは、起業するときによく聞かれる言葉について解説します。

その1:「S.p.A」「S.r.l」の違い
「Societa per Azioni(略してS.p.A)」は株式会社、「Societa a responsabilita limitata(略してS.r.l)」は有限会社という意味で、法人組織を指します。
最も大きな違いは、資本金の規模です。株式会社は設立にあたり最低準備資本金が5万ユーロ必要ですが、有限会社は1万ユーロと規模に違いがあります。

また、2012年から施行された法律により、「S.r.l.s」簡易有限会社というミニ法人枠が新たに設けられました。最低準備資本金が1ユーロ以上あれば、小規模の法人組織が設立可能です。

イタリア国立公証人協会「株式会社について」「有限会社について

PMI.it 「1ユーロで作れる有限会社について

その2:「libero professionale」「lavoro autonomo」とは?
仕事を探したり、事業を始めたりするときに、よく耳にする言葉が「libero professionale」「lavoro autonomo」の2つ。混同されがちなのですが、両者の意味は少し異なります。

前者は、専門教育で取得した技能及び知識を提供するサービスを、個人で行う人のことです。代表的なのは、医師・弁護士・会計士・建築家等です。この場合はサービスを管轄する上部団体の名簿に記名されていることが必須となります。(例:医師の場合は自治体の医師会に加入することが条件)

対して後者は、特定の企業や団体に属さない個人事業主そのものを指し、広義では「libero professionale」もこの中に含まれます。

ヴェネト州立労働情報ホームページ「個人事業について

経営に不可欠! 「commercialista」選びは忘れずに

企業、個人事業主のほとんどが税務・財務の管理を依頼するのが「commercialista」です。ここでは、その基礎的な知識について解説します。

その1:税務はプロに任せる
会社組織でも個人事業主でも、事業を始めるときに必須なのが「Partita IVA」という商業税務番号の取得です。各種の税金納入時だけでなく、法人としての登記及び認可を済ませた証明になる重要なものです。

企業、個人事業主のほとんどが取得と同時にcommercialistaと呼ばれる顧問税理士をつけるのが一般的です。彼らの主な業務は会計監査や税法のアドバイスで、多くの事業所、事業者がcommercialistaに業務を依頼しています。

その2:顧問税理士の見つけ方
起業するときは、家族や知人・友人のコネをフル活用して、信用できそうな税理士を紹介してもらうのが最も近道です。それが難しい場合は、事業所のエリアに所属する税理士事務所を探して、直接コンタクトを取る方法があります。

1回あたりの相談料はおおよそ300ユーロと言われていますが、実際には様々です。中には法外に高い料金を要求する悪質なところも存在するので、自分に合わないと思ったらすぐに違う税理士に変えましょう。

資金の確保は確実に! 口座開設のポイント

起業するには資金が必要です。資金をイタリアでの起業に活用できるように、まずは銀行に口座を開きましょう。ここでは、イタリアの銀行口座について解説します。

その1:イタリアの銀行口座について
事業用の法人口座を開設しましょう。
個人用口座を使って事業を行なっているイタリア人もいないわけではありませんが、個人口座に一定額以上の預金があると、預金に対して高い税金が課せられてしまいます。また、イタリア国税局による監査が入った場合、個人用口座を事業に利用している実態がわかると、事業活動を制限される可能性もあります。そのため、事業用の法人口座を開設することは必須です。

日本と同様に、イタリアには多くの銀行があるので、その中から最も事業に有利と思われる銀行を選びましょう。大半の銀行で、個人用法人用を問わず月々の口座維持手数料がかかりますが、一定の条件を満たすことで手数料無料という銀行も少なくありません。

その2:口座開設のための手続きについて
必要書類の準備は余裕を持って進めましょう。

銀行の口座開設時には専用の部屋へ通されます。そこで各種書類の提出、申し込み用書類へ記入、サインを求められます。銀行によって求める書類は異なりますが、申請者の身分証明書以外に、Partita IVAの番号を証明するイタリア税務局発行の書類を求められることが多いので、事前に準備しておきましょう。また、業種によっては、上部団体加入済証明書や登記簿が必要になります。

いずれの書類も、即日発行されないことがほとんどなので、余裕を持って行動してください。

イタリアの起業も常に基本を大切に

ここでご案内したことは基本中の基本ですが、イタリア人自身でもおろそかにしてしまい、結果事業をたたむ羽目になるケースはよく聞かれます。どんな時も「初心忘るべからず」であることは、場所がイタリアでも経営者が日本人でも同じ。起業までの長い道のりでも常に真面目に真剣に取り組んで基本を忘れないよう心がければ、起業家として実績をあげることもきっとできるでしょう。

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