ビジネス基礎知識

2019.08.12

Lock Icon 会員限定

海外へ出発前に要チェック! 子連れ海外出張の基礎知識

海外出張の準備は意外に大変です。それが子供と一緒となれば、なおさら! 事前のプランニングや準備は欠かせません。子連れで海外出張するための準備や心構えには、どんなものがあるのでしょうか。今回は、子連れで海外出張しようと考えている方に必要な、基礎知識をご紹介します。

子連れ海外出張の傾向


残念ながら日本では、まだまだ出張に子供を連れて行くことが一般的ではありません。
しかし、近年の価値観の変化により子連れ出張という選択肢を検討する方も少しずつ増えてきています。平成9年以降、女性もフルタイムで働く世帯数が専業主婦のいる世帯数を上回るようになりました。こうした背景を受け、日本でも妻だけでなく夫も育児に参加する意識が高まっているのは事実です。
「仕事にプライベートを持ち込まない」というのが、男性主体で働く社会の暗黙のルールだった時代が変わりつつある今。まずは子連れ海外出張のニーズやメリットを見てみましょう。

参考:内閣府男女共同参画局「男女共同参画白書(概要版)平成30年版」
http://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/h30/gaiyou/html/honpen/b1_s03.html

1-1.子連れ海外出張へのニーズ

海外では、共働きが当たり前。男性も女性も子育てに参加するという習慣が根付いています。そのため、職場に託児所を併設したり男性の育児休業を認めたりしている企業は珍しくありません。少しずつではありますが、日本でも「多様な働き方を社会で受け止める必要がある」という意識から、男女問わず子育てをする社員をサポートする企業が増えてきています。
世界ではそんな社会的背景を受け、出張も仕事とレジャーを組み合わせた、ブレジャーという出張スタイルが急速に普及。子供を連れて海外出張に出かけるケースも増加傾向にあります。

1-2.子連れ海外出張のメリット

子供を連れて海外出張へ行くことは、単に「レジャーの延長線」にとどまりません。欧米で子連れ海外出張が一般的なのは、家族と過ごす時間を大事にする考えが強く、ブレジャーを利用して家族で海外出張へ行くことが、子供にも両親にも有意義だと捉えられているからです。
子連れ海外出張は、子供にとっては、見知らぬ土地へ行くことで見聞を広め、感受性や考える力を養う良い機会に。親にとっては、家族で同じ感動を共有する良いきっかけになり、自分の仕事に対する家族の理解と安心感、ひいては仕事に対するモチベーションを上げるものとして捉えられています。

子連れ海外出張の心得


子連れで海外出張する場合、いつも以上に念入りな準備と下調べが欠かせません。今回は、「乳児期・幼児期・学齢期」に分けて、子連れ海外出張時に気をつけたいポイントや準備のコツをご紹介します。

2-1:子連れ海外出張の心得・共通項目


1)パスポート
パスポートは子供の分も必要です。新規で子供のパスポートを申請する場合は、申請から受領まで最低1週間かかるので、余裕を持ってパスポートを申請しましょう。
すでに子供と海外へ行ったことがあり、子供のパスポートがある場合は、パスポートの有効期限を確認するのをお忘れなく。渡航先によっては、残存有効期限が3ヶ月を切っていると入国できない場合もあります。

2)海外旅行傷害保険
海外では原則、日本の健康保険を利用できません。出発前は必ず海外旅行傷害保険に加入しましょう。1契約で家族人数分をカバーするファミリータイプのプランがオススメです。

3)予防接種
渡航先によっては、入国(トランジット含む)にあたり、予防接種証明書の提示が必要です。複数国を経由する出張のときは、予防接種が必要かどうかを忘れずに確認しておきましょう。子供は予防接種後、大人よりも体調を崩しやすいもの。出国直前のタイミングで予防接種することは避けた方が無難です。

4)保育園や幼稚園、学校への連絡
出張の日程によっては、学校や保育園、幼稚園を休ませる必要が出てきます。運動会やテストなど、大きな学校行事の直前の子連れ出張は避けましょう。テスト前などに学校を休むと、子供に負担を強いることになりがちです。
また、場合によっては学校側でも休む前の準備が必要となることがあるので、出張日程が固まり次第、休む旨の連絡を早めにしておきましょう。

5)ベビーシッターの手配
子供と二人きりの海外出張を計画しているなら、現地でシッターサービスを利用することも検討してみましょう。
ただし、多くの国では、シッターは無許可無届けで営業可能です。サービスレベルもまちまちですから、トラブルを避けるためにも、ベビーシッターを探すなら、安心できる依頼先のリサーチは必須。安易にインターネットで検索するのではなく、取引先の担当者など現地の情報を具体的に知っている人に相談するのがベストです。

2-2:子連れ海外出張の心得<乳児期の場合>


1)飛行機予約のコツ
子連れ出張の移動が長時間フライトとなる場合は、予約する席の位置に気をつけましょう。乳児であればバシネットを取り付けられる最前席を予約するのがオススメです。インターネットでの航空券予約時に最前列を指定できなくても、諦めずにコールセンターに電話してみましょう。バシネット使用希望を伝えれば、座席変更が可能な場合があります。

2)子供の持ち込み手荷物
ほとんどの航空会社で、子供の持ち物を入れるためのバッグの機内持ち込みが可能です。不安定な機内では、できるだけ両手を空けられるショルダーバッグやリュックサックを選びましょう。

必ず使うオムツは、機内に備え付けられていなかったり、サイズが合わなかったりすることがほとんど。あてにしない方が無難です。また、機内のトイレには必ずオムツ交換台が備え付けられていますが、硬くて赤ちゃんが嫌がることがあります。オムツ替えシートがあると良いでしょう。
ミルクが必要な赤ちゃんと一緒に飛行機に乗る場合は、粉ミルクだけ持ち込めば、CAに頼んで作ってもらうこともできます。ただしミールサービス時などの忙しい時間帯には出てくるのが遅いこともあるので、液体ミルクがあると便利です。液体ミルクならば機内持ち込みも可能。消毒の必要もないので使いやすくてオススメです。
また、赤ちゃんが泣きやまないときのために、お気に入りのおもちゃや抱っこ紐を機内に持ち込んでおくことも忘れずに。両手が空けられる抱っこ紐は、立ってあやすときなどに、特に役立つアイテムです。

3)搭乗時
乳幼児連れの乗客は、搭乗時、優先的に機内へ入れます。ベビーカーを搭乗ギリギリまで利用する際、畳んで預ける必要があるため搭乗に時間がかかります。アナウンスを聞き逃さないように気をつけましょう。

4)機内での過ごし方
飛行機に乗ると、離着陸に伴う機内の気圧の変化で、耳に負担がかかります。大人は唾を飲み込むなど自分で対処できますが、乳児はそうはいきません。離着陸時の対策に、おしゃぶりやジュースなど、飲み込む動作を促すものを用意しておくと安心です。
また、赤ちゃんが眠った頃を見計らって、自分自身も休息をとることを心がけておきましょう。子供が元気でも、親の体調が悪ければ、現地に着いたあとの過ごし方に影響が出てしまいます。

5)現地で注意したいこと
現地で一番気をつけたいのが、子供の健康状態です。急に具合が悪くなったときに備えて、2、3日分の解熱剤などの薬を持っていくと安心です。小児科医などの診察が必要な場合に備え、海外旅行傷害保険のコールデスクの番号をスマートフォンに登録したり、メモしたりしておくと良いでしょう。

2-3:子連れ海外出張の心得<幼児期の場合>


1)飛行機予約のコツ
幼児とのフライト座席予約は「いかに機内で楽しんでもらえるか」「周りの乗客に迷惑をかけないか」「どれくらいCAのヘルプを頼めるか」が、ポイントです。

座席はなるべく窓側に確保するのがベスト。窓の外の景色を見たがる子供は多いので、飛行中でも退屈させなくて済みます。また、満席時でも窓側なら、寄りかかって眠るなど多少ゆとりを持って利用できるメリットがあります。
意外に穴場なのが、後部寄りの座席です。トイレが近くて便利ですし、ギャレー近くにいるCAにすぐ声をかけられます。また、子供が泣いたり騒いだりしてしまったときも、声がエンジン音でかなりかき消されるので、他の乗客に気を遣わずに済みます。さらに、オフシーズンなら空席が一番出るのが後部座席の良いところ。空席があれば子供を横に寝かせられますので、活用しない手はありません。

2)子供の持ち込み手荷物
ほとんどの航空会社は、大人と同じ条件で機内へ手荷物を持ち込み可能です。持ち物は、機内で退屈して騒ぎ出さないためのアイテムを中心にするとよいでしょう。
お気に入りのおもちゃだけでなく、飽きてしまったときのために新しいおもちゃが1、2個あると安心です。
まだオムツを使っているなら、パンツ型のオムツを持ち込むのが最も手軽でオススメです。機内のトイレットペーパーは、硬めで幼児の肌に合わないことが多いので、おしりふきも忘れずに。
機内食を食べたがらない場合に備えて、おやつも多めに用意しておきましょう。栄養バランスが気になるなら、シリアルバーなど栄養機能食品タイプのものを持っていくと安心です。

3)搭乗時
搭乗前に空港のキッズスペースで遊ばせる場合は、搭乗開始時間に合うように気をつけましょう。キッズスペースはそれなりに広さが必要なため、搭乗口から離れた場所に設置されていることが多く、搭乗口まで移動するのに時間がかかることがあります。優先搭乗を利用するときは特に注意して行動しましょう。

4)機内での過ごし方
気圧の変化による耳への負担が心配なときは、離着陸時にすぐキャンディやラムネ、ガムをあげておくと良いでしょう。
また、機内では仕事よりも子供の相手をすることを優先しましょう。子供が隣にいると、機内で仕事をするのは大変。パソコンなどの仕事道具は、子供がすぐ触りたがります。どうしても使う場合以外はあまり広げない方が無難です。
子供が飽きてしまった時に備えて、スマートフォンやタブレットの中にアニメや子供向けアプリを入れておくのもオススメです。

5)現地で注意したいこと
万が一体調を崩してしまったときのために、少量で良いので市販薬を持っていきましょう。また、幼児期の子供は動き回ることも多くなります。転んだり、段差をジャンプしようとして落ちたり、怪我の心配はつきません。ベビーカーに大人しく座れない場合に備えて、幼児用ハーネスがあると便利です。ふと目を離した隙に子供が車道に飛び出してしまうなどの事故や怪我のリスクを軽減できます。

2-4:子連れ海外出張の心得<学齢期の場合>


1)飛行機予約のコツ
小学生以上になれば、ある程度大人の言うことを理解して行動できるようになります。とはいえ、初めての海外となると興奮して騒いだり、前の座席を蹴ったりと他の乗客に迷惑をかける可能性もあります。乗客が比較的少ない、後方寄りの座席を選ぶと良いでしょう。

2)子供の持ち込み手荷物
手がかからない分、必要な荷物は本人に選ばせて自分で持ってもらうことが可能です。もし自分のスマートフォンや携帯を持たせている場合は、忘れずにローミングを切っておきましょう。現地や乗り継ぎ先で不用意に国際ローミングしてしまい、帰国した時に高額の請求書を受け取る場合があるからです。

3)機内での過ごし方
就学児ともなると、ある程度自分の身の回りのことはできる年齢です。とは言え、周りへの配慮をうまくできないことが多いので、基本的な機内でのマナーを守れるように目配りしておきましょう。

4)現地で注意したいこと
学校に行くくらいの年齢になれば、体力や身体の抵抗力もついてきているので、乳幼児よりも病気になる心配は少ないでしょう。むしろ気をつけたいのはケガや事故です。初めて見るものに気を取られ、思わぬケガをすることがないよう気を配りましょう。

安心・快適な子連れ海外出張へ出かけよう!

子供連れで海外出張するとなると、親はドキドキハラハラ。あまりにナーバスになってしまうと「子供と一緒に、出張を楽しむ時間を作る」という本来の目的を見失ってしまうことに。事前にしっかり準備をしておけば、心に余裕が生まれて子供連れの海外出張を満喫できます。「転ばぬ先の杖」を肝に銘じて、入念な準備をして出張を楽しんでくださいね!

関連記事はこちら
海外出張の必要書類の種類と取得までにかかる日数
海外出張の保険はクレジットカードで十分!?クレカ保険の実力を検証

Lock Icon

この記事は会員限定です

会員登録すると続きをお読みいただけます。