取材記事

2025.02.05

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言語学習体験

日本在住、もしくは日本を訪れている外国人が最初に直面する問題の1つに言葉の壁があります。たとえ日本に数年住んでいたとしても言葉に苦労することがあります。

日本語をマスターするのは簡単なことではありませんが、とてもやりがいのあることだと思います。新しい言語を学ぶことは植物を育てるようなものです。新しい言語を習得したいという気持ちを種にして、やる気、揺るぎない熱意、一貫した努力、忍耐、時間という水や肥料を与えていきます。これらの水や肥料は最終的に美しい花を咲かせます。

我々が学んで話す全ての言語は世界への新しい扉を開き、新しいコミュニティとのつながりを生みます。今回は私が新しい言語を学んだ経験と、その過程で得た教訓をご紹介します。

ライタープロフィール

バーッギヤ カハタガハワッタ(Bhagya kahatagahawatte) 
スリランカ出身。京都大学の博士課程に在籍中で、専攻は都市地域計画。人口密集地域における複合開発と公共交通との相互作用について研究しており、人々の生活の質を向上させるための持続可能な複合開発を実現するための鉄道インフラ開発に着目している。常に学ぶ姿勢を持ち、困難に立ち向かえるのが強み。どのような環境下でも優れたパフォーマンスを発揮できる。また数ヶ国語に堪能であり、文書作成、情報を簡潔に伝えることができるコミュニケーション能力にも長けている。将来は発展途上国の開発プロジェクトに技術協力を行うコンサルティング会社への就職ことが目標。趣味は隠れた観光スポットを探索したり、様々な文化イベントを体験したりすること。

翻訳/編集:株式会社hupodea 事務局
  

私の語学学習

私の語学学習のきっかけは自国のテレビ番組でした。子供の頃、テレビで日本語を紹介する10分間の教育番組に魅了されたことで、私の外国語に対する熱意が高まり、中学校の選択科目で日本語を選択して勉強し始めました。私は日本語が大好きで、その情熱が日本語を勉強する原動力になっていました。

特に日本語を勉強し始めた最初の数週間はとても刺激的で、この頃は教科書や辞書を買って先生に質問しながら勉強していました。その中で日本語の文法構造が私の母国語であるシンハラ語とよく似ていることを知って日本語の理解がさらに進みましたが、数年後、私は自分の専攻に集中するために日本語の勉強を辞めてしまいました。結局、留学して日本に移り住んだのですが、その時に語学学習には一貫性が重要であるということを思い知らされました。

数年前から日本語を勉強していたにも関わらず、学んだことの多くを忘れてしまっていました。しかし、もともと言語に対する情熱があったので日本語を学び直すことは難しいことではなく、さらに日本に移住したことで日本の言語と文化を身近に感じながら学び直すことができました。一度学んだ日本語を忘れてしまったのは辛い経験でしたが、言語学習には絶え間ない努力が必要だということを学んだ良い経験となりました。

これから私が実際に行っている日本語の学習方法を6つのトピックに分けてご紹介します。
  

私の日本語学習法

1.単語を使った文章作成

言語学習の第一歩は単語とその意味を覚えることです。私の単語の覚え方は変わっていますが非常に効果的です。

まず新しい単語を使って文章を作成します。単に単語の意味を暗記するのではなく、新しい単語を使って文章を作ることが重要だと考えており、この方法を用いれば単語を覚えるのに役立つだけでなく、文法についての理解も深めることができます。

私は常に辞書を引いて新しい単語を見つけることを習慣にし、毎日覚えた単語を書き記して単語帳を作りました(図1)。これは市販の単語帳よりも単語を覚えるのに効果的で、文章作成時の単語検索が簡単になります。


図1:自作の単語帳

2.漢字の学習方法

漢字の勉強を始めた時、漢字が非常に難しいことを悟りました。画数が多く、複数の読み方がある漢字の習得は私にとって別次元の言語学習でした。さらに同じ発音で違う意味の漢字も多くあり、その逆もあります。教科書の文章にもそのような漢字が多く使用されており、それらを読んで理解するのは本当に難しいです。私は以下のような方法を組み合わせて漢字学習に取り組みました。

2-1.書き順
漢字を覚えるための最も重要なコツは書き順を守ることです。正しい書き順を守っていれば時間が経過しても手が書き順を覚えていて、漢字を正しく書くことができます。私は手書きを繰り返して書き順を覚えることで、結果的に漢字を覚えることができると考えています。

2-2.フラッシュカード
漢字の読み方や、意味などを書き記した紙をまとめてカードにしています。このカードはこれまで学習したことを復習するのに役立ちます。

2-3. 視覚化
私が最も効果的だと感じた方法は、漢字を視覚化して常に見ることです。漢字と例文を紙に大きく書いて部屋の壁に貼ることで遠くからでも視認でき、常に視界に入るようにしています(図2)。視覚化することで漢字を見分け、使い方を理解できるようになりました。


図2 視覚化した漢字と例文の表

3.丁寧な言葉遣い

さらに直面している課題として丁寧語の使い方があります。私はいつ、どのように敬語を使うかを理解するために日本のドラマを見て、登場人物が様々な状況でフォーマルな表現とインフォーマルな表現をどのように使い分けているのかを観察しました。その甲斐あって丁寧な言い回しや慣用表現など、日本語における話し方の礼儀や特徴を学ぶことができました。このようにドラマを通して日本語における正しい言い回しと丁寧な話し方の理解を深めることができました。

4.簡単な日本語のニュースを読む

私はNHKワールドジャパンというWEBサイトで日本語のニュースを読んでいます。このWEBサイトでは漢字の読み仮名も表示されており、毎週配信されるニュースを簡単な日本語で読んだり聞いたりしています。シャドーイングにも利用でき、聞き終わった後に話し手の口調やリズムを真似して文章を繰り返しています。このWEBサイトでは語彙力、正しい発音、理解力を向上させながら時事問題の最新情報を得ることができるため日本語学習において非常に有益なものだと感じています。

5.ネイティブスピーカーとの会話によるブレイクスルー

日本に住み始めてから、本やアプリで日本語を学ぶのには限界があると感じました。そのため実際に日本人と会話をする必要があると思い、実践しました。

初めて日本人と会話した経験は、私にとって嬉しい経験でしたがガッカリすることもありました。十分に文法を学んでいたとしてもスムーズな会話はできず、アクセントもたどたどしく、間違いも多くありました。しかし、そのたどたどしさや間違いは私がチャレンジしている証拠だと考えて、リスニングとスピーキングを上達させるために多くの日本人と話そうと思いました。

場所が限られていたり、友達がいなかったり、友達がいても仕事で忙しかったりして現地の人と直接話す機会が限られていることもあります。Hello talkやtandemなどのランゲージ・エクスチェンジ・プラットフォームは、会話の経験や文化的な見識を得るための良いツールです。現地の人々と話すことは、会話力を向上させるための最適な方法の1つだと思っています。

6.文化に浸る

「言語はその言語を話すコミュニティの文化の一部である」 これは私が言語学習を通して学んだ重要な教訓の1つです。言語を学ぶということは単に文法を勉強したり、語彙を覚えたりすることだけではなく、その言語を形成する文化を理解することだと思います。

私は日本語を真に理解するために日本文化に浸っています。伝統的な茶道や書道を経験したり、地元のお祭りに参加したりすることで言語とのつながりを深める経験を積んでいます(図3)。

またホストファミリープログラムに参加し、日本の家庭での日常生活や食文化、習慣を体験しています。このような文化体験を通して、日本語で考え、自分を表現することができるようになり、日本人とのコミュニケーションがよりスムーズにできるようになりました。


図3:日本での文化体験(三味線)

まとめ(言語学習を通して学んだこと)

1.情熱と継続
学習者が言語の中に何らかのポジティブな点を見つけることができれば、それが情熱という原動力となり、それによって学習者の知識欲を掻き立て、頻繁に勉強するようになります。継続性も重要であり、たまに大量に勉強するよりも単語ひとつでも良いので日常的に勉強するほうが効果的です。

2.覚えるよりも使う
言葉をただ暗記するだけでは流暢に話せるようにはなりません。言葉を積極的に文章や会話の中で使いながら自分の中の語彙力を向上させることで言語能力を深めます。

3.言語と文化を受け入れる
言語と文化の両方を学ぶことで、その文化への理解も深まり、その言語を話す社会に溶け込みやすくなります。

4.間違いを恐れない
私は、間違うことは学ぶ機会だと理解できた時、会話をすることへの不安が和らぐ経験をしました。ネイティブスピーカーは完璧さよりも伝えようとする努力や姿勢に理解を示すことが多いです。恐れや恥ずかしさを捨ててどんどん学習しましょう。

言語学習者へ
私はまだ流暢な日本語を話すことはできませんが、スタート地点から見ると何マイルも先に進んでいます。
言語学習を通して自信、勇気、前進し続けるための諦めない気持ちを得ることができました。そして最も重要なことは日本人コミュニティとのつながりを得たことです。
そのおかげで多くの機会を得ることができ、帰属意識を高めることができているのだと思います。
日本人の言語習得をしようとしている方々にも共通して活かせる知識や方法が多くあったのではないでしょうか。
言語学習をしようと思っているなら情熱を持って始めてみてください。
チャレンジングなことですが、その一歩一歩に価値があります。
言語学習を通して見識を深めることで、よりオープンに世界とつながることができると思います。
この記事が言語習得者の方々の参考になれば幸いです。
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