取材記事

2023.03.30

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地方自治体がベトナム視察!?〜加賀市高校生の大冒険記〜

石川県の加賀市は、「Next GAFA Project」と銘打ち、市内の企業のリスキリングや、起業家を育成するための起業家育成プログラム、様々なスタートアップの誘致、育成プロジェクトなど、先進的な施策を数多く行っています。
そんな加賀市で今年度開催された起業家育成プログラムにおいて加賀市長賞を受賞した高校生と市職員が、海外事例からも学びを得て自分の市に取り入れようと、ベトナムの首都ハノイを訪問し、3日間にわたって現地のスタートアップ支援やスマートシティの取り組みを視察しました。
この記事では、その視察の様子をご紹介します!

1.ハノイってどんな都市?


ベトナムの首都であるハノイは、北ベトナムに位置する人口825万人(出典:ベトナム統計年鑑2020)の大都市であり、政治・経済・文化の中心地です。
加えて、ハノイは多くの観光客にとって魅力的な都市です。歴史的な建築物や文化遺産、そして多様な食文化など、訪れる人々を魅了しています。
また、自然豊かな地域にも恵まれており、ハロン湾やスパ島など、美しい景色を見ることができます。

また、ハノイは、スタートアップが多く集まる都市でもあります。多くの若い起業家が、インキュベーターやアクセラレータを通じてスタートアップを立ち上げています。特に、IT関連のスタートアップが多くあり、アプリ開発やウェブサービスなどの分野で日々試行錯誤しています。

2.驚きとわくわくの1日目

初日は午後にハノイに到着し、まずは「ビンコムメガモール ロイヤルシティ(Vincom Mega Mall Royal City)」へ。
ここは東南アジア最大規模を誇る地下商業施設で、地下3階、地上2階の広大な敷地に、約1,000店舗が入っています。
施設内には、アイススケートリンク、シネマコンプレックス、ボーリング場、アミューズメントパーク、屋外プールなどのエンターテインメント施設もあり、ファミリー層を中心に多くの来場者が訪れます。また、高級ブランド店も多く出店しており、ハノイの最新トレンドを知ることができる場所として、地元の若者や観光客から人気を集めています。
加賀市の皆さんは、到着早々思った以上に現代的かつ広大なスケールの商業施設を目の当たりにし、圧倒されているようでした。
夜は美味しいベトナム料理を楽しみました。ハノイといえば、フォーやブンチャーなど多くの有名な料理がありますが、今回訪れたお店では、それらの定番料理以外にも、豊富な種類の料理が提供されており、どれも絶品!
全てが新鮮で味わい深く、ベトナム料理の奥深さを感じることができました。中でも、特に美味しかったのが、フレッシュな生春巻きとバインセオ(ベトナム風お好み焼き)。

美味しい食事を通して現地の文化に触れ、翌日からの視察への期待と意欲がさらに高まりました。

3.圧倒される2日目

2日目、まずはJETROオフィスを訪問。ベトナムの経済概況などの基本情報に始まり、ハノイのスタートアップの状況や注目分野に至るまで、幅広く説明をしていただきました。また、今後の市場の動向やビジネス展開のためのヒントなども提供していただき、非常に有益な時間を過ごすことができました。
次に、ベトナムでトップレベルの大学「ハノイ工科大学」の校内にある、ベンチャーインキュベーションオフィスの「BK-Holdings」を訪問しました。
ここでは、スタッフのチャンさんから、同社の取り組みやハノイ工科大学との連携について詳しく説明を受けました。
同社は、ハノイ工科大学と協力して、研究者や学生にビジネスプランの策定やマーケティング、事業運営のサポートを提供しており、彼らのアイデアを現実のものにするための支援を行っています。

この取り組みは、ベトナムの経済成長に大きく貢献し、国内外でのビジネス機会を生み出すことが期待されています。
特に、若い人々が起業家精神を身につけ、ビジネスを立ち上げることができるよう支援することで、ベトナムの経済発展に大きく貢献することができるのではないでしょうか。

また、加賀市の職員からは、現在の加賀市のスタートアップ支援や外国人受け入れの取り組みについて説明し、ディスカッションを行いました。
互いの取り組みを共有し、刺激を受けることができました。

その後、住友商事の兵頭さんにアテンドいただき、デベロッパーが手がける様々なエリアの見学を行いました。
まず、住友商事がこれから開発を始める予定の「北ハノイサステイナブルシティ」を訪れました。
北ハノイサステイナブルシティは、環境保護や再生可能エネルギーを活用した街づくりが計画されています。
現在は牛などもおり、牧歌的な風景が広がっています。このエリアがどんな風になるのか想像するだけでわくわくしました。

次に、ベトナムの大企業Vinグループの中の企業「Vinhomes」が手がける「Vinhomes Ocean Park」を訪れました。
街の中に海水を引いたビーチがあり、ビーチを中心にリゾート気分を味わえる街づくりが特徴です。

最後に、緑が広がる「Eco Park」を訪れました。その名の通り、ここのエリアでは緑が広がる自然に親しむ街づくりが行われています。
この街は、野村不動産が手がける物件もあり、日本風の物件もありました。
デベロッパーはそれぞれのエリアで、自社の理念やコンセプトに合わせた街づくりに取り組んでおり、それぞれが違う特徴を持っているため、個人の趣味嗜好や家族構成、家族の状況に合わせて選択できる選択肢が増えることが期待されます。
加賀市は「スマートシティ加賀構想」を策定しており、加賀市の皆さんにとってより住みよい街づくりを目指しています。
もちろんベトナムと日本では住宅事情や街のあり方も異なりますし、デベロッパーと行政ができることも異なります。
しかし、日本にはあまりないような街の形を見ることで、加賀市の皆さんが街全体のあり方を考えるに当たっての良いインプット、良い思考の刺激になったようでした。

4.元気がもらえた3日目

最終日の午前中は、日本人の森大樹さんが創業されたプレミアムフードデリバリーサービスとスマートオーダーシステム事業を展開している「Capichi(キャピチー)」を訪問しました。
森さんは、大学在学中に起業したという起業家で、まだ26歳という若さですが、事業に対する情熱とアイデアに溢れていました。
彼の明るく活発な印象は、周りの人々に多くの刺激を与えており、加賀市の高校生も自分とほぼ同じ年齢でハノイにて起業した先輩から、大きな刺激を受けたようでした。

昼食は、人気ピザチェーン店「Pizza 4P’s」でとりました。
実はこちらも日本人が創業した、ベトナム国内で非常に有名なチェーン店です。美味しいピザと素晴らしいサービスで、参加者たちを魅了しました。

午後は、医療テックスタートアップ「Omi Groupe(オミグループ)」を訪問しました。
Omi Groupはベトナム向けのサービスのみならず、日本のヘルスケア・医療情報システムの開発等、幅広く日本向けサービスの提供も行っています。
代表のチャンさんは創業前に日本に15年間住み、2018年にベトナムでこの会社を創業されました。日本とベトナムの文化・ビジネス環境の違いを深く理解していらっしゃるため、Omi Groupは双方に合わせたサービスを提供し、顧客満足度を高めることができているようです。

現地では、ベトナム人スタッフの皆さんが、流暢な日本語で事業内容を説明してくださいました。
加賀市の皆さんからも、現在の加賀市のスタートアップ支援や外国人受け入れの取り組みについて説明し、ディスカッションが行われました。

最後に、ベトナムで活躍する山本岳人さんの講演を聞きました。
山本さんは、JICAボランティアとしてベトナムテレビ外国語放送局(VTV4)で毎週日曜放送の情報番組、「ジャパンリンク」を制作される傍ら、有名なTiktokerでもあります。
加賀市の皆さんも、地域の魅力をアピールするために、Tiktokやその他のSNSをより活用することを考えているとのことです。
山本さんとのディスカッションでは、具体的な質問なども飛び出し、有意義な時間となりました。

5.まとめ

刺激的な三日間を過ごした加賀市高校生は、「起業家の先輩たちにたくさん質問をして、勉強していきたいと思う。」
また、加賀市職員は、「日本にはない活気やエネルギーを街全体から感じた。要因は、若者が多い(平均年齢:ベトナム31.9歳、日本48歳)ことにあると思う。
日本ではスタートアップが人材を雇用するのに苦労しているが、ベトナムでは雇用に苦労はない。
若者の働く環境整備、企業の集積(産業集積)が街に活気をもたらすことを体感した。日本だけではなく、世界を見て仕事に取り組みたいと思う。」と話していました。
皆さん、視察の三日間でハノイの活気あふれるスタートアップシーンや、斬新で魅力的なサービス、高度な技術力、ビジネス環境の良さを知ることができました。
視察先の皆さんとのディスカッションによって、加賀市が外国人やスタートアップにとってどうすれば魅力的なものになるかのヒントも得られたようです。

海外視察は「とにかく行けばいいことがある」という魔法の杖ではありません。下記の三つがあってこそ有意義なものになります。
●事前準備(知りたいことのリストアップや、検証したい仮説の用意、検証自体の用意など)
●終わった後の振り返り(わかったこと/わからなかったこと、仮説検証結果の整理など)
●振り返りを踏まえた次アクション
「行って勉強になった、すごかった」で終わらず、このハノイ視察で得た情報や知見を活かし、加賀市の地域活性化やスタートアップ支援につなげていけると良いですね!

寄稿:デジタルカレッジKAGA

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