取材記事

2024.11.18

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メタバース事業は9割失敗する?株式会社Vの藤原氏が語る成功の秘訣

株式会社V
代表取締役CEO 藤原光汰 氏

近年、仮想空間/メタバース上で展示会を開催する、プロモーションを行うといった企業が増えてきています。
しかし、ほとんどの企業がメタバース事業化に失敗していることをご存じでしょうか。
その理由や成功する秘訣はあるのか、株式会社Vの代表取締役CEO藤原光汰氏にお話を伺いました。
メタバースでビジネスをしたいと考える人は、藤原氏のお話からヒントを得られるでしょう。

1.メタバース領域参入支援とアニメIPを主軸とした事業


  
メタバース上での生活をより良くしたいという思いから、世界の仕組みを創っているという株式会社V。
具体的には、どのような事業を行っているのでしょうか。
  
ーー事業内容について教えてください。
大きく分けて2つの事業を行っています。
ひとつは、メタバース領域参入支援。
メタバース上でビジネスを立ち上げたい企業さんと一緒に、事業の企画からメタバース上のコンテンツ制作全般
(アバターの制作・販売、ワールドの制作など)をしています。
    
もう一つが既存のアニメに関するコンテンツを制作し、ユーザー向けに販売する事業です。
  
ーー実際に行ったプロジェクトの詳細を教えてください。
メタバース支援では、アパレルブランド「ANREALAGE(アンリアレイジ)」のデジタルウェアを制作し販売しました。
次の画像のようなウェアです。


  
これは現実世界で人が着用するウェアではなく、メタバース空間でアバターに着せるのです。
  
ーー反響はありましたか?
ありましたね。
アンリアレイジはパリコレに出展したブランドだけあって、ファンも多くとても反響がありました。
  
ーーほかに好評だったプロジェクトがあれば教えてください。
アニメのコンテンツ制作ですね。
劇場版「きんいろモザイクThank you!!」のキャラクターの衣装アイテムの制作・販売と公式ワールドの制作を手掛けました。
  
きんいろモザイクの舞台であるイギリス・コッツウォルズの街をメタバース空間上で制作したのです。
自分のアバターにキャラクターの衣装を着せて、
バーチャル上に作ったコッツォルズの街を巡る方が多くいました。
  

メタバース空間上に「きんいろモザイク」のキャラクターの生まれ故郷・コッツウォルズを再現。
現実世界では気軽に行ける場所ではないが、バーチャル空間なら飛行機に乗らずとも足を運べる
画像出展:https://www.moguravr.com/kiniro-mosaic-vrchat/

  
ーーどういった反響がありましたか?
実際に、過去に旅行会社が現実世界のコッツウォルズを巡る5日間のツアーを販売していました。
しかし、金銭的に参加が難しいという声が多かったのです。
そこで、メタバース空間上に誰でも入れる形で公開したところ、最初の10日間で約5,000人もの人が参加してくれました。
  
ーーなぜメタバース事業を始めたのでしょうか。
「メタバース」というワードがバズワードになる数年前からメタバースの需要が高まり、市場が拡大するだろうなと予想していたためです。
10年ほど前に流行したソーシャルゲームプラットフォームのGREE(グリー)や、
SNSのmixi(ミクシー)でも、ユーザーがアバターやソーシャルゲームに課金していましたから。
  
メタバース事業を行う前は、サブスクでメンズ服のレンタルサービスを行っていました。
しかし、コロナで外出する機会が減り、コロナ後の世界を考えると他の事業に切り替えた方が良いと考えたことでメタバース事業へと踏み切りました。
  

原点は「自分が欲しいものを作りたい」という思い
製品化をするときには、心の根底に「自分が欲しいと思うもの、みんなが必要とするものを作りたい」という思いがあるという藤原さん。
そのため、メタバース事業を手掛ける前は、「もう少し洋服を着たいな。
でも、服を選ぶのはめんどくさい」と考え、サブスクでメンズ服のレンタルサービスを開始。
同じように感じていた男性から、好評だったそうです。

2.メタバース事業を成功させる鍵はカルチャーの理解


  
株式会社Vが行ってきたメタバース事業は成功しているものの、一般的にはメタバース事業を立ち上げても失敗するケースは非常に多く、
約9割が事業化に失敗していると言われています。
  
なぜほとんどの企業が失敗するのか、また、成功するにはどうしたらよいのでしょうか。
  
ーーほとんどの企業がメタバース事業に失敗している理由は何だと思いますか?
失敗してしまう一番の要因は、VRChatやZEPETOなどの既存のプラットフォームを活用せず、
自分たちのプラットフォームを作って、そこでビジネスをしようとすることです。
  
既存のプラットフォームに対して参入していく方が圧倒的に成功率が高いにも関わらず、
プラットフォームを作りたいという企業さんが多い。
  
ーー新しくプラットフォームを作ろうとするとうまくいかないのでしょうか。
プラットフォームを作るには、根気が必要なうえ難易度が高いんです。
現在のプラットフォームは、数億人単位のユーザーがいて、数千億規模の流通がなりたっていますが、開始してから2年は、認知度も低くスムーズに運営できていたわけではありません。
何年も試行錯誤を重ねた結果、多くの人に利用されているんです。
  
それなのに「自分たちでもプラットフォームを作ってビジネスを成功させられるだろう」と容易に考える企業さんが多いと感じています。
  
ーーメタバース事業で成功するには、どうしたら良いのでしょうか?
メタバースのカルチャーを理解することです。
  
ところが、カルチャーを理解していないという人は少なくありません。
メタバース事業を始めようとする人たちって、アイデンティティが現実世界にあり、
日々の生活が充実している人が多いんです。
そういった方がメタバースのカルチャーを理解しようとしなければ、メタバース事業を成功させるのは難しいでしょう。
  
カルチャーがわからなければ、メタバースの住人に訴求できるようなものを作り出すのは難しいと思います。
  
ーーどうしたらメタバースのカルチャーを理解できると思いますか?
メタバースのユーザーが集まるコミュニティと接点を持ち、ユーザーと接することで理解できると思います。
  
新しい国でビジネスを始めようとするときと同じように考えると良いですね。
例えば、インドでビジネスを使用としても、日本と同じやり方で進めようとしてもうまくいかないでしょう。
そこで、インドにある課題や文化、消費者の志向、
ニーズなどを把握したうえで、ビジネスをしますよね。
メタバースもそれと同じことです。
  
ーーメタバース空間ならではのカルチャーを一つ教えてください。
メタバースのプラットフォームは経済として流通しているけれど、基本的にユーザーの自治で回っていることですね。
バーチャル空間ではさまざまなイベントが開催されていますが、ユーザーはお金を稼ごうとして開催しているわけではなく、楽しみたくて行っているのです。
  
この点もビジネスをするうえで考慮すべき点ですよね。
企業としてバーチャル空間に参入するからには、何らかの利益を得なくてはなりませんから。
  

3.失敗する確立が高くてもメタバース導入を目指す理由とは


東京都主催の「TOKYO XRメタバース&コンテンツビジネスワールド」のピッチイベント・アバター部門では、製品のクオリティの高さや独自の世界観が評価されて、株式会社Vが見事優勝!向かって左が藤原さん
  
多くの企業がメタバース導入に失敗しているものの、メタバース事業化を目指す企業は後を絶たないと言われています。
その理由を藤原さんに伺いました。
  
ーーメタバースの魅力はどこにあると思いますか。
現実世界では表現できないことが、メタバースでは可能になるところです。
特に、アパレル系企業においては、メタバースを導入することで新たな可能性が広がるのではないでしょうか。
  
ーーなぜ可能性が広がると思うのでしょうか。
例えば、現実世界において服を選ぶときには、自分に似合うかや季節感を意識しますよね。
一方、メタバースなら季節を問わず好きな格好をして良いし、
服に合わせて自分の分身であるアバターの見た目も簡単に変えられます。
また、男性が女性のアバターを使ってレディースの服を着るという楽しみ方もできますね。
  
このように見た目や性別、場所にとらわれない世界線になると、
さまざまな切り口でファッションを提供できるようになると思います。
メタバースを導入すれば、アパレル業界はますます市場を拡大できるのではないかと考えています。
  
ーー今後、メタバース市場は拡大していくと思いますか?
今後もVRChatやRobloxといったメタバースSNSの利用者数は増えると思います。
だから、失敗する可能性が高くてもメタバース事業を始める企業が多いのです。
今後、メタバース市場が拡大することがわかっていますから。
SNSサービスや動画投稿サービスがビジネスになりうるのかの議論をしていた時期も、
同じ現象が起きていましたよね。
  
人類は地球上を開拓し尽くしてしまったため、
新たな開拓地といったらメタバース空間か宇宙かしかないのです。
  
そうすると、地球上をさらに開拓するよりもメタバースに進出して、
メタバース空間の住民の生活を良くするものを作ったほうが、ビジネスとしてはチャンスがありますよね。

4.メタバース市場が抱える課題と今後の事業展開


  
メタバース市場の拡大が予想されているものの、まだまだ課題が残されているようです。
最後にメタバースの課題と、藤原さんたちが行う課題解決に向けた取り組みについて伺いました。
  
ーーメタバース市場が拡大していく一方で、どのような点が課題でしょうか。
さまざまな仕組みが足りていないことですね。
   
これからは、人々は現実世界とメタバース空間の2つの世界で生活をするという流れが訪れると思います。
そうなると、現実世界と同じようにメタバース空間でも
資産や知識、経験、技術などのアセットを積み上げなければなりません。
しかし、アセットが蓄積されてもそれらを活かす仕組みが十分ではないんです。
  
ーーメタバースの課題解決のためにしようとしていることはありますか。
この一年は、私達がメタバース空間でより良い生活を送れる仕組み作りをして反映していくつもりです。
  
それから、国内のメタバース事業成功率を100%に近付けようと取り組んでいます。
成功しなかった企業がどのような課題を抱えていたのかを抽出し、改善策を探るということを行っています。
  
課題を解決するだけでなく、メタバースを牽引するトッププレイヤーとなれるよう尽力していきます。
  
ーーメタバース事業に興味を持っている方へアドバイスをいただけますか。
メタバース事業を始めるなら、多くの成功実績がある私たちにお声がけいただけるとありがたいです。
事業が成功するよう、精一杯お手伝いさせていただきます!
  
私たちと一緒に事業を行えば、メタバース事業の成功のコツである
「仮想空間のカルチャーを理解する」ことが可能です。
なぜなら、私たち社員のほとんどがメタバース空間上の住人で、メタバースについて聞いてくれれば、打ち返せる自信があるからです。
  
私たちも、国内メタバース事業の成功率を100%に近付けようと取り組んでいるので、興味のある企業さんはぜひご連絡いただけると嬉しいですね。
  

藤原光汰さんプロフィール 
AIレシピ提案アプリを開発するスタートアップを共同創業。
その後、株式会社バンクに入社。即時買取アプリ「CASH」と後払い旅行サービス「TRAVEL Now」の立ち上げを担当したのち独立。
2019年に株式会社Vを創業後、メタバース主要プラットフォームである「VRChat」「Roblox」において、国内最大級のコミュニティを立ち上げ運営。

2024年8月に日本ベンチャーキャピタル、ソニーグループ、伊藤忠商事、スクウェア・エニックス・ホールディングス等から資金調達を実施。
メタバース参入支援事業を中心に拡大中。

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