「Heartland JAPAN」という田舎特化型のインバウンド観光事業を展開している澤野啓次郎さん
日本の地方のすばらしさを世界に売り込もうと、「Heartland JAPAN」という田舎特化型のインバウンド観光事業を展開している、リベルタ株式会社・代表取締役の澤野啓次郎さん。デジタルコンテンツ制作事業も併行して行いながら、日々世界中を飛び回っています。
昨年はオーストラリア2回、ニュージーランド2回、ドイツ、イギリス、ポルトガル、フランス、フィリピン、香港などを行き来し、ビジネスのフィールドを広げました。そんな澤野さんは、海外出張をどうHackしているのか? 成功談や失敗談など、ユニークなエピソードの数々をお聞きしました。
海外出張の手配・準備編「エアビーではホストとのコミュニケーションも楽しみのひとつ」
常にアグレッシブでバイタリティーに溢れた澤野さん
――海外出張の際に使っているアプリやサービスはありますか?
飛行機はスカイスキャナー(航空券の一覧比較サービス)で取ります。他のサイトを利用したこともあるけど、スカイスキャナーは大きなボタンで操作性がよく、乗り継ぎ便の検索、所要時間、価格比較など、機能が洗練されていることに改めて気づきました。
――LCCなども利用されますか?
組み合わせが良ければ使うこともありますが、荷物の重量制限が厳しいので、ちょっと面倒だなと。一度、自社のパンフレットを大量に持っていて、追加料金を取られたことがあるんですが、最初何を言われているのか分からず困ったことがあります。現地であたふたしないように、事前に荷物の持ち込みや預け入れが何kgまでいけるのかを注意深く確認しておいたほうがいいですね。
――座席へのこだわりなどはあるのでしょうか?
飛行機の席は必ず事前に座席指定をします。バシネット(赤ちゃん用のベッド)がある席や非常口のそばの席は、足を伸ばせるので、たとえば、5000~1万円を追加で払ってでも取れるのであれば取りたいところ。でも、人気がある席なので、取れるのは5回に1回くらいかな? トイレも近くて便利なんですよね。
――宿はどのサイトで取りますか?
Airbnb(エアビーアンドビー:以降エアビー)で取ります。今回ニューヨークへ3人で行きましたが、すぐそこがタイムズスクエア至近の宿だったのに、2ベッドルーム、1リビングルームが1日あたり1万2-3000円と、かなりお得でした。個人宅にホームステイでおじゃまする時もあります。
――ホームステイの場合、セキュリティーとかの心配はありませんか?
あまり気にしません。それよりもホストのおばちゃんがコミュニケーション好きだったりすると、僕もいろいろと話をするのが好きなので、すごく楽しい時間を過ごせます。その国に友達ができたみたいな感覚になれて楽しいですよ。ホテルより安いですし。その街に住んでいる感覚になれます。
――スーツケース以外に、アタッシュケースなどは持ち歩きますか?
僕はトートバッグ派です。パッとものを出しやすいし、肩からかけて腕で口を押さえているから盗難対策にも安心です。パスポートやカメラ、財布など、大事なものは全部内ポケットに入れています。
――着替えなどはどのくらい準備しますか?現地で洗濯などはしますか?
2週間くらいの長期滞在の場合は、2回洗濯するくらいの想定でいきます。エアビーのホストが用意してくれるところもあれば、何もないところもあるので、小瓶のシャンプー、リンス、歯磨き粉、寝巻き(Tシャツやスウェット)は持っていきます。洗濯物を干すのが大変なので、出張期間中は同じ部屋を予約するようにしています。
複数の国へ行く際は、通貨が混じらないように財布(または封筒や容器を用意)を分けるなどしたほうがいいです。両替はしていきますが、基本的に決済はカードです。
――その他、事前に注意しておくことはありますか?
アメリカならESTA、豪州でもETASなど、ビザが必要かどうかを事前に調べ、渡航先に合わせて用意しておくこと。
――確かにパスポートはもちろん、ビザを忘れたら大変なことになりますね。
以前、オーストリアの入国ビザを用意してなくて、成田空港でチェックインする際に必要なことが発覚し、慌てて手続きをしたことがあります。大急ぎでパソコンをネットにつなぎ、無事に取れましたが、それ以降は必ず事前に確認するようにしています。
――Wi-Fiルータなどはレンタルしますか?
ポケットWi-Fiをレンタルします。事前に予約して空港で受け取り、帰国後に空港で返却。その際は、1GB/日までいける超大容量のものを借りるようにします。
――携帯のテザリングではなく、ルータを借りるほうがいいんですね。
実は以前東欧で、カーナビ用に自分のスマホでGoogle Mapsを使っていたら、8万円くらいの通信量を請求されたことがあって。スロベニアやボスニア・ヘルツェゴビナ、セルビア・モンテネグロへ行った時ですが、データ通信料がとんでもない額で後日請求されてきてビックリしました。
それ以来、ポケットWi-Fiスポットを必ず借りるようにしています。2週間で、だいたい2万5000円~3万円僕はいつもグローバルWi-Fiを利用しますが、超大容量でも値段が同じなのでいいかなと。
――あれば便利という小物類を教えてください。
パッキング用にスーパーのレジ袋はたくさんもっていきます。使う使わないは別として、向こうのビニール袋は質が悪くてすぐ破れるので、日本から持っていったほうがいいです。洗濯物を入れたり、物を小分けにしたりするのに便利で、大小持っていきます。充電器やタコ足のための電源タップなどもひとまとめにして入れます。
――空港への交通手段を使ううえでのコツなどはあったりしますか?
羽田行きだと、新宿からのバスが便利です。30分かからないのでとても快適です。たまに満席のことがあるので、事前予約をしておくことをおすすめします。成田行きだと、僕の自宅からだと成田エクスプレスよりも京成スカイライナーの方が安いです。
空港&現地到着後編「チップの文化はなかなか慣れない」
いろいろな失敗談も笑顔で教えてくれた。ちなみにサービス名の「Heartland」とは、「ふるさと」の意味
――空港到着後、出入国審査での注意点とは?
出国や入国の手続きは国によってさまざまです。僕は出国時にソムリエナイフや整髪料を
取られたりしました。あと、現地の空港についても調べておいたほうがいいです。
――どういう点をチェックすべきでしょうか?
たとえばターミナルが6つくらいに分かれていて、そこに行くために電車を乗り換えなきゃいけない場合があるから、パニックにならないように調べていきます。
――確かに空港によってはすごく広いところもあり、移動だけでも時間がかかりますよね。
そうなんです。どのターミナルで、ホテルからどれくらい時間がかかるのかをチェックし、時間に余裕をもっておいたほうがいいです。
また、あらかじめパスポートをスマホで写真を撮っておくと便利です。チケットの予約時や、入国時の税関のカードを記載する時に、いちいち取り出さなくてもいいから。
――スマホなら常に手元にあるから便利ですね。レンタカーなどは利用されますか?
レンタカーは大いに利用します。標識は基本的に世界共通のものが多いのでそれで慌てることはありません。また、いっきに行動範囲が広がるから、チャレンジしたほうがいいです。出張がてらに都市部から離れて、あえて田舎を回ると、その国のことが立体的によくわかるし、愛着が湧きます。また、ニュージーランドでは、3日間借りて6000円と、すごく安い場合もあります。
――レンタカーの手配はあらかじめしておくのですか?
僕はウェブで検索しておくけど、時間がない時は空港のすぐそばで借りたりもします。僕はユーロップカーや地元の中小企業で借りることが多いです。
――国際運転免許証を取っていくわけですね。
海外ライセンスは1年間有効なので、毎年更新しています。でも、必ず日本の免許証も見せろと言われているから、両方持っていったほうがいいですよ。
――レンタカーでの注意点はありますか?
以前、オーストラリアで失敗したことがあります。シドニーからメルボルンへの国内線だからと油断していて、結局、車を返すのがギリギリの時間になってしまいました。さらに、車を返す場所がわからなくなり、かなり焦りました。何度もぐるぐる回った挙げ句、車を返却することはできたのですが、ゲートの搭乗時間を過ぎてからチェックインという結果になってしまいました。幸い飛行機が遅れていてラッキーだったんですが……(苦笑)。だからレンタカーを返す場所も事前に入念に調べておいてください。
――飲食店で注意する点などはありますか?
チップの文化はいつも難しいと思います。アメリカでは最低でも15%払わなければなりません。一方、イギリスでは推奨されているけどアメリカほど厳格化はされていない。国ごとに違いがあるので、慣れるしかないです。
――チップで困ったことはありましたか?
ちょうどイギリスからニューヨークに入った初日に、商談相手とオイスターバーへ行き、うっかりチップを払わずに出たら、商談相手に「ヘイ、ケイジ!」と呼び戻され、店に戻って20%を支払うことを促されました。一度出たお客さんを呼び戻すほど義務化されているのかと驚きました。
タクシーでも、乗ったら必ず15%以上を払わないといけない。もちろん、時給が安いから、それがないとやっていけないようなので仕方がないのですが。なお、チップは、コインを置いておくパターンもあれば、伝票にチップの金額を上乗せして書いてカード決済するパターンもある。日本ではチップ文化がないから難しいです。
ブレジャーの楽しみ方編「自分が好きなことを追加すればいい」
オフィスにハンモック?! リラックスできる環境が大切だという
――海外出張で、出張に合わせて、余暇を楽しむブレジャー(business(仕事)とleisure(余暇)を合体させた造語)は実践していますか?
オフや空き時間があると、何もしないのはもったいないから、積極的に出歩きます。「地球の歩き方」は買っていくので、アポが入らなくなった日だったり、1日フリーの日ができたりしそうなら、遊びに行きます。なかなか行く機会がない国ならなおさらです。
街歩きをするのも楽しいですし、レンタカーでドライブするのも楽しいです。数年前のインドネシア出張中には、同僚と一緒にジャカルタから土日をくっつけてバリ島にも行きました。12月だったのでどこに行っても空いていてよかったです。
――行ってみたい国とかはありますか?
どこへ行っても昔みたいに感動しなくなってきているから、もっと秘境に行かないとダメなのかなと。今後行くとしたら、アフリカや南米、パプアニューギニアなどに行ってみたいです。野生動物や少数民族とのふれあいなど、そういうレアな体験をしたいです。
――どんなブレジャーがおすすめですか?
自分が好きなことを追加すればいいのかなと。僕の場合は、ドライブやサーフィン、ハイキング、街歩き、伝統芸能の鑑賞などでしょうか。
――BTHacksユーザー(今後、海外出張にいかれる人)へのアドバイスをお願いします。
とにかく「慣れ」かなと。海外出張は、自分の世界を広げてくれるいい機会です。日本人から“世界人”になれるんですよね。日本で仕事をしていると、ついつい日本の常識のみで物事を考えがち。でも、それが世界基準と大きくずれていることもあるので、世界と仕事をするなら、絶対に日本の常識にとらわれず柔軟な姿勢で挑んだ方がいいです。物事に寛容になることが世界人になるために必要だと思います。
――澤野さんが仕事において大切にしていることは何ですか?
異文化に対してオープンでフレキシブルであることです。僕は海外へ行くだけで、自由になれてワクワクします。今回はどんな出会いがあるんだろう? この国はどんな国なんだろう? 人々はどんな暮らしぶりをしているんだろう?と想像するのが大好きです。また、大事なのは、繰り返しになりますが、日本のやり方や精神性にこだわらないこと。また、海外の人々との商談においても、やっぱり大切なのは信頼関係です。いかにして人間関係を構築していくには、相手の価値観に合わせる柔軟性が大事です。
僕は、日本におけるアドベンチャートラベルのパイオニアになって、地域に外貨をもたらしたいんです。世界基準で自国の観光資産を見つめ直し、たくさん外国からのお客さんを田舎に連れてくる。アドベンチャーの力で日本の田舎を世界ブランドにし、日本中の田舎の価値を変えたい。それを実現できるよう、今後も精進していきたいです。
獅子舞のマスクもオフィスに鎮座。石見神楽のマスクもコレクション中
「Heartland JAPAN」は、田舎に特化したアドベンチャートラベル商品を提供しています。日本の手つかずの集落を旅行商品としてパッケージングし、世界中のお客様に販売。日本の田舎を世界向けにマーケティングし、実際にお客さんを連れて来ることで、地域に外貨をもたらします。日本人には何気ない当たり前のことが、外国人にとっては、特別なことがしばしばあります。そうしたカルチャーギャップを用いて、地域の資産を見つめ直し、世界基準で田舎のものごとをマーケティングし、ブランディングし、地域活性を図る、それが「Heartland JAPAN」のミッションです。
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