海外出張で命をかける!? 現地に溶け込むサラリーマンの中東ビジネス手法【海外出張リーダー】Vol.4

海外出張で命をかける!? 現地に溶け込むサラリーマンの中東ビジネス手法【海外出張リーダー】Vol.4

鷹鳥屋明氏
鷹鳥屋明氏アイキャッチ
講演活動や企業のコンサルティングなど日本と中東の「橋渡し役」としてご活躍されている鷹鳥屋明さん。名刺の肩書きは日本の商社の営業企画副部長。しかし、取材部屋に現れた鷹鳥屋さんが全身にまとっていたのはビジネスマンを象徴するスーツではなく、アラブの民族衣装! 堂々とした出で立ちとともに「ただのコスプレじゃないのですよ」と笑う鷹鳥屋さん曰く、現地の人になりきるメリットがとても大きいだけに、敢えて民族衣装を着ているのだとか。そんな鷹鳥屋さんのお仕事や中東ならではのブレジャーの楽しみ方について伺いました。

1.日本と中東を繋ぐ「橋渡し役」


日本と中東の橋渡し役として活躍する鷹鳥屋さん。経済、政治、文化、歴史、とにかく中東に関する引出しがたくさん!

——鷹鳥屋さんのお仕事についてお聞かせください。

商社として日本と中東の間を繋ぐ「橋渡し役」をしています。日本国内では中東に馴染みがある人って、少ないですよね。「中東といっても何をどうすれば良いか分からない」という日本企業のために、中東で開催されるイベントプロモーションのサポートやコンサルティングをしています。

逆に、日本企業と仕事をしたいと望む中東の会社のアドバイザーもしています。

——どのようなイベントに参加したのですか。

最近だと、2019年1月28日〜31日にアラブ首長国連邦・ドバイで開催されたヘルスケア関連商品の展示会(「Arab Health 2019」です。後は、2019年2月17日〜21日に同じくドバイで行われた食品の見本市(「Gulfood」)ですね。中東では最大級、世界でも5本の指に入るくらい大きな規模の食品の見本市です。さまざまな分野の展示会があり、現地のブースを盛り上げたり、講演を行ったりしました。

——海外出張の頻度や期間はどれくらいですか。

年10回以上は行っています。昨年は14回、月に2回出張することもありました。プロジェクトにもよりますが出張期間は、短いときは3泊4日、長い時は何1ヶ月以上滞在します。多いのは2週間くらいですね。サウジアラビア、UAE、オマーンなど中東の湾岸諸国へは、ほぼ行っています。

最も行く回数が多いのはドバイです。各国へ渡航する際の中継地になるので必ず行くことになるのです。ドバイは中東の中では比較的栄えていて、人の流れや物流、ビジネスに関してもある程度オープンな町ですね。

2.なぜ中東がビジネスの場に?


友人の結婚式でおこなったアラブ伝統の剣舞
——多くの国がある中、敢えて「中東」に興味を持った理由とは。

中東で仕事をするようになったきっかけは、実は「お酒」なんです。私、体質的にお酒が飲めないのですよ。

大学卒業後、メーカーに勤務していた頃に中国、東南アジア、インド、中近東のベルトゾーンなどを担当していました。ある時、外務省の派遣でサウジアラビアへ行く機会がありまして、そこでお酒を飲まなくても仕事ができることにカルチャーショックを受けました。

イスラム教では飲酒は禁じられています。お酒を飲めなくても、責められるどころかむしろ尊敬されるほどで、それが嬉しくなってしまって。それで、中東で仕事をするのが楽しくなりました。

——危険な目に遭う可能性もある中、中東でビジネスをする理由は?

もともと歴史に興味があるのですが、中東は地域としてとても独特なのです。21世紀に絶対王政を敷いている国なんて、歴史学的に見ると最高におもしろいのですよ。そういう国が変化していく様を見られるのは、歴史を常に探求している“歴史屋”としては非常に興味深い。

今後、王朝が再び栄えるか、もしくは革命が起きて王朝が滅びて民主制になるのか。教科書に書かれていたような18、19世紀にあった現象が目の前で起こるかもしれないと思うとワクワクしますね。完全に歴史屋の視点ですが、こういう視点からビジネス的にアプローチするのもありかなと思いました。

3.中東の情報はブレジャーでアップデート!


友人とアブダビ大統領府見学の1枚

——出張をする際、仕事とは別に満喫するプライベートな時間を「ブレジャー」と呼ぶのですが、鷹鳥屋さんは海外出張でブレジャーを楽しむことはありますか?

基本的に海外へは仕事で行き、空いた時間に現地の博物館や美術館に行きます。仕事の合間にブレジャーを楽しむイメージですね。現地の友人やビジネスパートナーがアテンドしてくれるケースもあります。イベントに招待してくれた方が、「良かったらこの後食事でもどうでしょうか」「一緒に遊びませんか」と誘ってくださり、食事やショッピングモールに行くこともあります。

——中東ならではの楽しみ方はありますか?

骨董街で掘り出し物を探すことです。骨董品が好きなので、蚤の市みたいな市場によく行きます。一見すると髪留めに見えるようなものでも、昔の通貨だったりするのです。

アッバース朝やマムルーク朝時代のコインを、お店のおじさんとアラビア語で会話しながら探すのが楽しいですね。ある町ではコインの収集家のおじさんが、アラブのどのコインが何なのか一発で分かる本を出版していたりします。歴史屋にとっては貴重な掘り出し物です。「良い本をありがとう!」という思いです。

——ブレジャーで得た経験はどのように仕事に活きていますか?

現地で新たな情報を得ることで、今後、何が流行りそうかを分析し、中東で何かやろうと考えている日本の企業に、ビジネスのポイントになる情報を提供できるのは強みだと思います。

例えばほかの禁忌に比べて知られてないことですが、湾岸アラブに住む人たちはきっとゴージャスな金の指輪や金のネックレスが好きできっと売れるだろう、という先入観を持つ方がいますが、宗教的な理由でイスラム教徒の男性は金の指輪や金の貴金属を身に着ける習慣があまりない、とか天然の絹の服をあまり好まない、など。意外と基礎的な、それでいてそうだったのか、という大事な情報があったりします。

また化粧品1つを見ても「この化粧品のような分野はまだないですね」「現地のアイラインの製品は日本ではありえない色がたくさん」「つけまつげの値段の相場はいくら」など、基礎的な情報の上に合わせて付加価値となりうる現地に入り込んだ情報は重要なのです。

一般的に、イスラムの女性は髪や肌を露出してはいけないと言われています。しかし、近年は、現地のショッピングモールに行くと髪や肌を出して買い物をする女性を見かけるようになりました。宗教的に最も厳しいとされるリヤドでもその流れができてきました。もちろん法律的にはまだ禁止されてはいますが、これも近代化に伴う全体的な時代の流れだなと感じます。この流れが続けば、髪や肌を露出する機会が増えていく世界に対して、ヘアケアやスキンケア商品が流行ると考えています。

こういう情報はどんどんアップデートしていく必要があるので、ブレジャーではなるべくスーパーマーケットやショッピングモールへ行くようにしています。

4.民族衣装を着こなすには意味がある


取材当日はサウジアラビアの民族衣装で登場
——ところで、なぜ民族衣装を身につけているのですか?

好きだから、という理由ではありますが、もうひとつは現地に溶け込むためでしょうか。私、完璧に着こなしているのですよ。例えば、ここ、上が「ピン」って跳ねているじゃないですか。

国によって、黄色い丸で囲った部分が上向きにするか下向きにするか異なる

上に向かって「ピン」とするのが、サウジアラビアでポピュラーです。カタールだとここが谷折りのタイプ多いですね、下に向かって「ピン」となることが多いです。真っ白であれば、ここを「フワッ」と波立たせるような被り方をしている人が多いですね。

ここまでする日本人はなかなかいませんよね。細かい部分まで着こなしているので、現地の人にも「この日本人は完璧だ」と思われて、相互理解というのが成り立つのです。例えば、日本でも外国人が着物を完璧に着付けられていれば、「すごい、そこまでやるか」となりますよね。それと同じことです。

——ターバン以外では、どのような違いがあるのですか?

襟のボタンが2つだとサウジアラビア、ボタンが1つだとクウェートのものです。また、サウジアラビア、カタール、クウェートでは襟付き、UAEでは襟がないものを着用します。

さらに、今日、私が着ている上着は「ディグラ」といって、どちらかというと脇に控えている人が着るタイプのものです。もっと偉い人が着る「ベシュト」というマントもあるのですが、それを着たら「なぜ偉そうなものを身に付けているのだ」と思われてしまいます。このため、敢えて「自分はアラブの人たちを尊敬しています」の意を表すために「ディグラ」を着ています。

サウジアラビアでは写真のように襟のボタンが2つ、襟付きの衣装を身に付ける

トライ&エラーです。自分は何度も失敗しました。バーレーンでは「君の格好はカタールにしか見えない」、サウジアラビアでは「それはUAEの着方でしょ」とか指摘されることもありましたよ。トライ&エラーを繰り返して、「この地域に行くときはこのコーディネートが良い」というのを学んだのです。

現地の人に、「着方を教えてください」と言って、ほぼ完璧に着こなすのが私のやり方です。ただし、文化的理解をした上で行動しないと宗教的に失礼な印象を与えてしまうリスクも伴います。「いつ首を切られても仕方がない」という覚悟も、ある程度持ってはいま」

5.現地の人になりきってビジネスにつなげる!


現地ではラクダに乗ることも。鷹鳥屋さん曰く、ラクダは時速40キロほど出ることもあるのだとか

——「現地の人の服装を再現すること」のメリットは何なのでしょうか。

私、今でも服装だけではなく、食事などの作法も完璧を目指しています。

現地の一部になり、現地の人と一緒に楽しむことで喜びのゲージも大きくなると思います。服1つをとっても、スーツ姿でいるよりも「日本人が自分たちと同じ服を着ている」と、現地の人からも親しみを持たれやすいですね。

作法も同じです。海外へ行って違う文化に触れながら仕事をする機会があるのなら、現地の作法を完璧に模して、現地に溶け込んで仕事をしてみると良いのではないでしょうか。

ブレジャー中に現地の畑でもらったナツメヤシ。とことんなりきる鷹鳥屋さんには現地の人も親しみやすいようだ

——お話を聞く限り、まさに「中東のスペシャリスト」ですよね。

幸い、私の場合は大学時代に学んだ歴史学のストックがたくさんありました。現地のアラブ人よりも歴史に詳しいこともあります。

この遺跡はいつの王朝のものなのかとか、サウジアラビアの歴代の王が誰で何をしたかもだいたい頭に入っています。そういう会話ができるからこそ、現地の人から一目置かれていたというのはあるかもしれません。知的武装していた方が、出張先でも圧倒的に楽しめます。

——鷹鳥屋さんは歴史学を学んでいましたが、そうでない場合はどうすれば良いでしょうか。

例えば、民族衣装であれば一緒に仕事をしている現地の人に完全にコーディネートしてもらうと良いですね。自分からお願いすることで、現地で関わる人も「この人は自分たちを理解しようとしている」と心を開いてくれるかもしれません。

服のコーディネートにしても、食事にしても、一緒に行動してもらう人を見つけてやってみるのが第一歩ですかね。少なくとも、うっかり間違える可能性は減りますよね。そういう相手を見つけた上で海外へ行くと知識の幅が広がり、ビジネスチャンスにも繋がるのではないでしょうか。

6.違いを楽しみ、懐を深めるチャンス「ブレジャー」


中東では「砂漠」が遊び場に。板を使ってサーフィンのようなこともできるのだとか

——鷹鳥屋さんにとっての「ブレジャー」とは。

「違いを楽しむもの」です。例えば、海外に行くとサソリを丸ごと揚げた料理が出てくることがあります。とても驚きましたが、冷静に考えたら日本人も魚を刺身にして生で食べていますよね。海外の人からしたら考えられないことです。

出張先の国の文化の違いを、「こういう世界もあるよね」と楽しむ度量があると良いですよね。海外は、異質なものをただ拒否するのではなく、「なぜこうなったのか」と背景を探り、頭の中で体系的に理解をして許容できる範囲を広げてくれる環境だと思います。何があっても耐えられる、人としての懐を深めてくれる機会を与えてくれるのが海外であり、「ブレジャー」であると考えます。中東に限らず、海外へ行ったら是非、身も心も現地の人になり切って欲しいですね。

【必見】海外出張で役立つおすすめツール4選

【必見】海外出張で役立つおすすめツール4選
中東を訪問する際、鷹鳥屋さんが愛用しているアプリやツールをご紹介します。ネットを使う時やリスク管理に役立つものばかりです。是非、参考にしてください。

1.auの「世界データ定額」
アプリに表示された利用料金を支払うと、日本で加入しているプランでデータ通信を利用できるようになるサービス。基本的には24時間で980円だが、鷹鳥屋さん曰く「パケット通信が定額でない地域もある」とのこと。そこに行く時には注意が必要

2. マルチ海外電源変換アダプタ

写真はサンワサプライ 海外電源変換アダプタ ホワイト TR-AD4W
B型、BF型、C型など国によってコンセントプラグの形が異なるので、全世界対応型の電源変換プラグは必須。これさえあれば、現地でのスマホやPCの充電は安心!

3.外務省の「たびレジ」
海外出張の際は、外務省が提供している海外安全情報配信サービス「たびレジ」に「必ず登録しています」という鷹鳥屋さん。現地の安全情報を逐一入手できる、自身の居場所が分かる、素早い安否確認ができる、などがメリット。

4.和製洋菓子

出典:ヨックモック公式通販サイト
現地への手土産でとても好まれるのは和製洋菓子。鷹鳥屋さんがよく持っていくメーカーは「YOKUMOKU」。現地の人に「はい、『シガール』(写真)をどうぞ」と渡すと喜ばれる。絶対に注意すべきことは、宗教的にNGである豚ゼラチンやアルコールが入っていないものを選ぶということ。

鷹鳥屋明さんプロフィール
とある商社の中東に詳しいサラリーマン。メーカー勤務時代に外務省の外務省のサウジアラビア青年交流団として選抜され中東へ。中東に興味を持ち、SNSで現地の情報発信を始める。現在は、日本と中東の橋渡しをするべく、コンサルティングや講演活動を行っている。SNSのフォロサー数は、Twitterは約2万6,000人、Instagramは約7万人。フォロワーの9割がアラブ系民族であり、中東ではちょっとした有名人になりつつある。
Twitter:https://twitter.com/Takatoriya
Instagram:https://www.instagram.com/shams_qamar_jp/

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