どの国でも応用可能!怖がり起業家が「不安」を逆手に取った出張成功術【海外出張リーダー】Vol.10

どの国でも応用可能!怖がり起業家が「不安」を逆手に取った出張成功術【海外出張リーダー】Vol.10

株式会社01Booster 共同代表 取締役 合田ジョージ氏

株式会社01Booster(ゼロワンブースター)共同代表の合田ジョージ(ごうだじょーじ)さん。東芝や村田製作所等を経て、現在は、個人、企業、行政の新事業開発をサポートする「アクセラレーター」を手掛けています。その活躍は日本国内にとどまらず、日本国内外への進出を目指すベンチャー企業の支援にも及びます。世界で活躍してきただけに臆することなく海外出張をこなすと思いきや、常に何かに恐怖を抱きつつ慎重に動いているそう。合田さんのお話は、海外出張に不安がある人に勇気を与えてくれるでしょう。

1.新事業開発をサポートする「アクセラレーター」とは?


2019年タイで開催されたRISE innovation week2019にて登壇し、各国のアクセラレーターの状況について語った

――「アクセラレーター」とはどのような仕事でしょうか?

新しい事業開発をいろいろな分野でサポートしています。
例えば、大手企業が社内で既存技術のビジネス化や新しいチャネルの開発、海外事業などの新しい事業を起こすときに、1年ほどかけて事業化していきます。他にも、文科省のSCOREなど、大学の研究課題を事業化することもありますね。

日本の企業が海外に進出する際のサポートも行います。日本と海外では仕事の進め方が異なる場合があるので、進出後にスムーズに事業をまわすために、海外でどう対応しているのかをしっかり伝えていく必要があるのです。

例えば、海外事業の開発の際には、日本企業の関係者に現地の事業開発のプログラムに参加していただくことがあります。現地企業や行政の協力が必要な場合は、どのようにパートナーシップを組むかの提案や指導をしています。

――海外出張ではどのようなことをされていますか?

我々のような事業開発をサポートしている人達が各国から集まり意見交換をするコミュニティに参加しています。「日本ではこういうやり方をしている」「あなたの国の方法もいいね」など意見を出し合い、良いと思ったものは取り入れています。

出張の頻度は月に1回くらい。先月はタイ、今月は台湾、来月はワシントンDC、といった具合です。多い時は年間30回ほど渡航していて、ヨーロッパ、中国、アメリカなど、本当に様々な国に出張しています。

例えば、カザフスタンはおもしろいですよ! 一つの国にスラブ系、ロシア系やアジア系などさまざまな人種の人たちがいて混血の人も多いんです。アジア系の顔立ちなのに瞳だけ青いという人も珍しくありません。単一民族に近い日本人から見ると彼らは異色な人達で、同じ空間にいるだけで楽しめます。

2.海外のフィールドに足を踏み入れたきっかけ


2017年に行政との連携のためシンガポールへ出張

――海外に目をむけるようになった経緯を教えてください。

実は、29歳まで海外に行ったことがなかったんです。アメリカ映画で見て抱いた、あくまでイメージですが「海外ではみんなが銃を持っている」と漠然と思っていました。

心境に大きな変化があったのは東芝在職の時。それまで日本市場での事業しか知らなかったのですが、海外へ行った際に衝撃を受けました。リビアでは発電機を作ったり、ジブラルタル海峡に電力ケーブルを通す工事が行われたりと、日本では全く知り得なかった壮大な計画を度々目の当たりにしたんです。海外のビジネスチャンスの大きさに驚き、これからは海外市場にもっと目を向けなければならないことを思い知らされ、海外志向に変化したわけです。

――海外志向に変化して、仕事にどんな影響がありましたか?

東芝に入社した当時は特定の日系企業から大口受注をしていろいろな設計をしていました。大口顧客に何かあれば先細りなのは明らかなので、リスク回避のためには海外市場を捉えることが不可欠です。会社には海外との提携を提案するなど試みていましたが、実現しませんでした。数年後にバブル崩壊の余波で、それまでの受注はほぼなくなってしまい非常に多くの方が早期退職されました。

そこで、「国内相手だけではだめだ」と転職を決意し、海外売上比率の高い村田製作所に移りました。当時、村田製作所は海外売上比率が70%。会社全体でもすごい勢いで伸びていたので、この急成長も衝撃的でしたね。
村田製作所を退職後に、伸び率の高い市場に魅力を感じでベンチャー企業へ転職、その後「01Booster(ゼロワンブースター)」を起業しました。

3.相手のルーツを徹底調査するコミュニケーション術


2016年にスウェーデンで行われたイベント開催後、協力を労って仲間と会食

――海外の人達とのコミュニケーションで気をつけていることはありますか?

日本や韓国、東南アジアは、言いたい事をはっきりと言語化しなくてもニュアンスで理解してもらえます。いわゆる阿吽の呼吸というものですね。
ところが、欧米などの英語系や複数人種が一緒に生活する国の人達にはニュアンスだけではほぼ通じません。そのため、伝えたいことを明確に言葉で伝えるようにしています。

会話の内容をすべて記録に残して議事録を交換することもあります。そうすることで、話し合った内容が、相手の国特有の理解や都合の良いように解釈されることを防げるのです。

また、事前に滞在国のタブーを調べて、政治のことは話題にしない等気をつけています。それでも、いざ会話してみると違和感があるときはありますので、「相手がちょっと不満そうな顔をしている」と思ったら、現地で仲良くなった人にその国のタブーを再確認するなどして違和感を解消するように心がけています。

――今までに、例えばどんな風に文化の違いを感じましたか?

インドネシアで「日本人に騙された」と言われたことがありました。よく話を聞くと、日本人からweb開発を依頼され、インドネシアの会社は仕様書通りに作ったのに、「やっぱりここを修正してほしい」など言われたそうです。日本だと、仕様を決めた後でも追加で依頼しても良い暗黙の了解のような進め方がある。ところがそれは、インドネシア人からみると契約違反ではないか?となるわけです。

ドイツ人からは「中国が世界に躍進していることって脅威だね」と言われたことがありました。実はドイツには、過去に中国から騎馬民族に攻められた歴史的事件があるのですが、それがドイツ人のDNAに刷り込まれていて地続きである中国の進出を、海を挟んでお隣の日本よりも現実的に感じていると思いました。


「何でも聞いてください」と取材しやすい空気を作り、ジョークを交えながら取材に応じる合田さん

――同じ歴史を、日本ではなくその国側から見たいときにはどうやって調べていますか?

歴史をたどって調べていくとその国の考え方がわかるので、出張先で時間があれば、必ず歴史博物館には行きます。歴史博物館では、日本と滞在国の関係性を調べます。歴史上の日本人との関係によって、その国の日本人観がわかるんです。

例えばトルコは、難破した船を日本人に助けられた歴史があるので親日とされていますよね。日本に対して良くない記憶を持っているのか親日なのか、経済的に親日なのか本質的な親日なのか。そういったことはビジネスでも重要なので気にかけておきたいんです。

出張中の空いた時間で観光する「ブレジャー」とも言えますね。歴史博物館で得た知識はビジネスにも活かせるので、歴史博物館はブレジャーにオススメのスポットです。

――商談では何に気をつけていますか?

まずは相手にとって何がメリットなのかを出すようにしています。
日本人はお互いの利益を生み出すのがあまり得意ではないのか、相手にとってメリットのない話を平気でしてしまうところがあります。それでは相手を不快にさせかねません。せっかくの商談も実を結ばないですよね。

相手のメリットがすぐには見当たらない場合もあるかもしれません。そのようなときでも、「連携してお互いに協力しましょう」などみんながハッピーになることを提案していきます。

4.飛行機嫌いの解決策は「恐怖」の正体を知ること


合田さんは、相手についても自分についても、ルーツや感情の本質などを徹底的にリサーチする

――飛行機が怖いとのこと。その怖さはどのように克服していますか?

瞑想をしたり、酔い留めや睡眠薬などを飲んでみようかとしたときもありましたが、一番効果があったのは、自分がなぜ恐怖を感じるかを調べたことでした。怖さの正体を突き詰めると、何も起こっていない未来の出来事をただただ怖がっているだけだったんです。

事故に巻き込まれる確率は、飛行機よりも自転車に乗っている時の方が圧倒的に高い。でも自転車には平然と乗っている。そう考えると「怖くない」と思えるようになりました。

――LCC(ローコストキャリア)を利用することはありますか?

最近は普通のキャリアを使っていますが、昔はほとんどLCCで移動していました。LCCは電車旅行に似ていて、みんなで話したりカードゲームをやったりしてフレンドリーな雰囲気を楽しんでいました。

LCCの空港は、街の中心地から離れていて交通の便があまり良くない場合が多いです。タイだと、LCC以外の飛行機は交通の便が良いスワンナプーム空港発着ですが、LCCはドンムアン空港に発着します。ドンムアン空港からはエアポートエクスプレスのように短時間で中心部に行ける手段がなく、バスやローカル線を利用するのです。

ただ、移動途中で通るバラックのような所を目撃することがあります。普通にスワンナプーム空港から現地特有の景色を楽しめるのもLCC利用の魅力ですね。

5.怖がりで慎重だからこそトラブルを回避できる


2019年カザフスタンの首相へのプレゼン後、行政の建物の前で。着ているのは、現地の気温が-20度と聞き出張前に急きょ購入したダウンジャケット

――海外の移動で気をつけていることはありますか?

余裕のあるスケジュールを立てて、比較的早く現地に着くようにしています。
例えば、ドイツへのフライトの時、何かのトラブルがあったようで目的地にスムーズに行けないことが何回かあったんです。デュッセルドルフ空港に着くはずが、フランクフルト空港に到着したこともあります。悪天候で着陸できなかったのか理由は覚えていませんが、もともと余裕を持って移動していたので、電車で目的地まで移動してなんとか仕事には間に合いました。

イスラエルの空港では出国に4時間かかりました。僕は、それまでに渡航歴が多かったので時間を取られたのかもしれません。以前からイスラエルの空港は出国に時間がかかると聞いていたので、この時も余裕を持って早めに移動して飛行機には間に合いました。

――出張中はとても慎重に行動しているようですね。

僕は、海外出張に行くときかなり怖がっているんですよ。みんなに「そこまで警戒しなくても十分時間に間に合うのに。怖がりだなぁ」など言われますが、スケジュールよりも確実に早く動いています。

タクシーに乗っている時も警戒心は強いですよ。「本当にまっすぐ目的地に行っているか?」とGoogleマップでいつもチェックしていますので。
盗難に関しても、カバンをただ肩にかけているだけだとパッと盗られてしまう不安があるので、しっかり手で持つように気をつけていますね。カバンを地面に置いちゃう人ってたまにいますが、不安が大きな僕には絶対にできません。

6.リスク管理のコツは常に臆病でいること


海外出張では「臆病になる」という。堂々と話す姿からは予想できない意外な一面

――海外出張者へのアドバイスをお願いします。

全員に対してではありませんが、日本にいるときと同じ感覚で行動しているように見えると、リスク管理意識が弱いのではないかと感じます。

海外によく行っている人はかなり臆病で、トラブルに遭う事を前提として動くのが日常です。つまり、怖がることは決して悪いことではないんです。海外出張では、怖い所に行く感覚で常に注意をしていればどの国でも対応できると思います。

【必見】いつでも身軽に海外出張に行ける秘訣

世界中を飛び回る合田さんはとっても身軽。いつでもスーツケース(プラスマイナスゼロ)1つで出張できます。

≪荷物を減らす3つのアイディア≫
荷物の少ない合田さんは、3日間の出張なら日常使いのスーツケース1つだけ。一週間の出張なら機内持ち込みサイズのカバンが1つ増える程度です。
少ない荷物で出張できる合田さん流の秘訣は3つ!

1.書類はすべてクラウド上にアップする
書類をPCで確認できるようにペーパーレス化することで、仕事はパソコン1台で完結。大量の資料でかさばることもナシ!

2.Wi-fiルーターは使用しない
SIMフリーのスマホを利用。出張前にSIMカードを購入しておけば、Wi-fiルーターを借りて設定する手間もWi-fiスポットを探す必要もありません。

3.持って行く服は最低限に抑える
二週間の出張に持って行くのは形状記憶のシャツ2枚だけ、余分な服は持参しません。洋服は現地で洗濯。形状記憶のシャツならアイロンがけも不要です。

≪洗濯機不要で洗濯できる3STEP≫
合田さんはホテルのランドリーサービスを使わず自分で洗濯します。手順は次の通り。用意する物はお湯とバスタオルだけ。簡単にできるので誰にでもすぐに実践できます!

STEP1.ホテルのシンクなどで服を温かいお湯で洗う。蛇口からお湯がでない場合は備え付けのポットで沸かしましょう。
STEP2.洗い終わった服は広げたバスタオルの上に置く
STEP3.バスタオルをクルクルと巻いて絞ると脱水完了!

合田ジョージさんプロフィール
東芝、村田製作所にて主に海外向け技術営業、商品企画、海外アライアンスなど、多数の分野で世界を舞台に活躍。2011年に鈴木規文氏(ゼロワンブースター 代表取締役)と共に株式会社01Boosterを立ち上げる。現在はアジアを中心としたグローバルな事業創造プラットフォーム、エコシステム構築を目指している。アクセラレーターの分野では国内トップを誇る。
公式HP:https://01booster.co.jp/
Twitter:https://twitter.com/01booster
合田ジョージtwitter:https://twitter.com/global_gg
Facebook:https://www.facebook.com/pg/01booster/posts/

構成・編集:石島聡子(リベルタ)
取材・文・撮影:カワムラルイ(リベルタ)
※出張先画像等は取材協力者提供

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