取材記事

2020.01.17

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世界をまたぎイノベーションを創出! 起業家育成を志す経営者の仕事術【海外出張リーダー】Vol.9

株式会社シリコンバレーベンチャーズ 代表取締役社長兼CEO 森若幸次郎氏

森若幸次郎さんは好奇心旺盛で、思い立ったら即座に行動に移すほどバイタリティあふれる起業家兼講演家です。医療機器イノベーション企業 株式会社モリワカの専務取締役兼CIOを務める傍ら、株式会社シリコンバレーベンチャーズ 代表取締役社長兼CEOとして企業や大学での講演や経営アドバイス、コラムの執筆など多方面で活躍。さらに、ハーバードビジネススクールやシリコンバレーのアクセラレーター(※1)で学んだ経験を活かして、起業を目指す学生、スタートアップ、大企業のオープンイノベーションを支援しています。精力的な活躍ぶりを見せる森若さんに、海外における仕事への思いを伺いました。

※1.アクセラレーター
スタートアップについて学ぶ起業家育成プログラムのこと

1.下関生まれの青年と海外との出会い


株式会社シリコンバレーベンチャーズ 代表取締役社長兼CEOの森若さん。米国シリコンバレーを始め世界各国で活躍中

−海外と関わることになったきっかけについて教えてください。

19歳の頃に父からオーストラリアの大学へ進学するように勧められたことです。

高校生の頃は勉強する理由が見出せず、ボクシングや絵画に夢中でした。小さい頃からリーダー気質で男子校では寮の会長をしていましたが、エネルギーが余っており、両親から「海外の教育の方が合うのではないか」と思われたようです。父から「人生は波乗り。大きな波が来た。さぁ、波に乗ってオーストラリアに行け」と言われ、オーストラリアへ留学しました。

−オーストラリアではどのような生活をしていましたか?

最初はブリスベンで1年間英語を学習し、その後、シドニーにて現地の高校レベルの5教科を勉強してからシドニー大学に入学しました。現地では経営学を学びながら友人をたくさん作り、コラムニストやラジオDJとしても活動。シドニー最大のHIPHOPやR&Bのイベントプロモーションもしました。

しかし、YouTubeで見たラッパー「DIRTY R.A.Y(ダーティーレイ)」に感銘を受け、2年後に一緒に音楽で世界を変えたいと思い帰国したんです。

−帰国後は何をなさっていたのですか?

帰国したその日に、DIRTY R.A.Y氏が仲間達と経営していたHIPHOPレーベル「Riva Runz Entertainment」に行きました。半年間ほどそこで働いたあと、仲間達の後押しもあり実家の下関に戻りました。

株式会社モリワカに入社後は、朝の掃除や営業の新規開拓など、一生懸命に働きました。海外出張をする機会にも恵まれ、より広い視野で世界を見渡したいと強く思うようになったとき、ハーバードビジネススクールのPLD(Program for Leadership Development:リーダーシップ開発プログラム)」を知ったんです。そして、世界トップクラスの環境でリーダーシップとイノベーションについて学びたいと留学を決めました。


森若さんが衝撃を受けた「Innovation」の看板の下で

−留学後、シリコンバレーに行こうと思った理由について教えてください。

ハーバードビジネススクール修了間際に、シリコンバレーのベンチャーキャピタリストであるアニス・ウッザマン氏から、今後の活躍を期待する若者の一人として1冊の本が送られてきたんです。直接お礼を言おうとシリコンバレーを訪問しました。

シリコンバレーの地に立った時、驚きしかありませんでした。道路にある「Innovation」と書かれた看板を見たときの感動は忘れられません。訪れるまでは、ニューヨークのような高層ビルが立ち並ぶ風景を想像していたのですが、目の前に広がる光景は、どちらかというと故郷の下関に近い。その自然の中に、Google本社やFacebook本社など世界的なIT企業がありました。

国境を越えて活躍する人達がたくさんいる魅力的な田舎町。シリコンバレーで「イノベーションの生み出し方について学びたい」と思いました。

2.世界中を飛びまわり次世代を育成


日本全国各地、また海外でも次世代を担う学生達に講演。世界最優秀と言われるインド工科大学ムンバイ校にて

−現在のお仕事について詳しく教えてください。

医療機器イノベーション創出を図るモリワカと、次世代のアントレプレナー(起業家)やイノベーター(革新者)を生み出すシリコンバレーベンチャーズを経営しています。

株式会社モリワカは、山口県下関市で両親が48年前に創業し、私は2代目です。地域医療を通じて地方創生に貢献したいという理念のもと、医療・福祉施設に必要な医療機器や福祉・リハビリ機器の販売、修理、レンタルを山口、福岡、大分を中心に実施。
他にも、医療現場のニーズを的確に反映した医療デバイスの製造やデザイン、病院や福祉施設の開業コンサルティングや、個人のお客様への医療・福祉・介護用品の販売等も行っています。

また、私はシリコンバレーと日本を繋ぎ医療機器イノベーションを患者様のために起こす「US-Japan MedTech Frontiers」のメンバーとしても活動しています。

株式会社シリコンバレーベンチャーズは、私がシリコンバレーや世界のイノベーションハブから学んだことをもとに、日本でイノベーションを創出するために設立した企業です。講演では、大企業のオープンイノベーション創出や大学生へのアントレプレナー教育のために、「シリコンバレー流イノベーション」や「ハーバード流モチベーションの高め方」などをテーマに登壇します。シリコンバレーツアーの企画、コラムの執筆、スタートアップを支援する「Angel Accelerator」の設立や運営なども行っています。

また、「Startup GRIND TOKYO」のコーチャプターディレクターや「Startup World Cup」のアンバサダーを担うほか、起業率100%・就職率0%を目指して2020年4月に開学する「情報経営イノベーション専門職大学」の客員教授も務める予定です。

3.出会える相手との縁は愛を持って大切に


シリコンバレーのアクセラレーターblackboxに採択されたスタートアップのCEO達と(前列中央が森若さん)

−海外出張はどういった国に行きますか。

この1年間で訪れた国は、アメリカ、イスラエル、フィンランド、エストニア、フランス、ルクセンブルク、中国、インド、マレーシアです。

最も多いのがアメリカで、大半がシリコンバレーです。シリコンバレーにはイノベーションを起こしたい人が常にいるため、この6年間頻繁に訪問しています。スタートアップイベントもたくさん開催されており、私自身も「#StartupFire」というイノベーション創出イベントをプログラミング大学「42Silicon Valley」で2度開催しました。最近はシリコンバレーだけではなく世界中のイノベーションエコシステムを訪れ、日本の各地域や企業と繋げる活動もしています。

−海外で仕事をする時に意識していることは何ですか?

渡航先の重要人物と会うので事前のアポ取りは必須で、Facebook、Twitter、Linkedinを活用しています。また、知人からの紹介で新しい出会いをいただくこともあります。逆に、私が知人に人を紹介することもあります。

相手に貴重な時間を割いていただくので、お互いの知識と知恵を掛け合わせて刷新的なミーティングになるよう心掛けています。帰国後も密に連絡を取り合うようにし、一度いただいたご縁は愛を持って大切にしたいと考えています。

−日本と海外においてコミュニケーションに違いを感じることはありますか。

あります。海外の方は、会話の途中で相手の名前を何度も呼ぶ、感動をオーバーリアクションで表現するなどの傾向が強く、こちらも同様に接すると親近感が湧くようです。

日本人同士なら、要点になる言葉だけでも阿吽の呼吸で意思疎通できる場合もあるかもしれません。ですが、海外の方と円滑にコミュニケーションを図るなら、要点だけを伝えるのではなく、物事の背景やシチュエーションが目に浮かぶように、できるだけ詳しく伝えた方がいいでしょう。互いの理解度を確かめ合う会話が大切だと感じます。

4.良い仕事につなげるには人生を楽しむ!


フランス出張時に友人達と食事をしている時の様子(左が森若さん)

−仕事のついでに余暇を楽しむ「ブレジャー」について、どのように思われますか?

私は、仕事と人生は全て一緒だと考えています。「ワークライフブレンド」(※2)です。ブレジャーを楽しむことで仕事のパフォーマンスが上がり、仕事のパフォーマンスが上がれば日々の生活が充実します。生きていることそのものが仕事です。

仕事仲間とは、ビジネスの話もプライベートの話もします。そういう意味では、日頃からブレジャーばかりかもしれませんね。

※2.ワークライフブレンド
仕事とプライベートの区別をはっきりさせず、仕事とプライベートの垣根をなくし、「仕事もプライベートも自分の人生の一部」と捉えて楽しむ考え方のこと。

−ブレジャーを楽しむ際、心がけていることはありますか?

偶然の出会いに感謝して楽しむことです。ビジネスパーソンに限らず、フライトを待っている時に隣の方や、カフェで店員さんと話すなど、現地で出会った人々には自分から積極的に話しかけています。人と話すのが好きなので現地の人ともすぐに友達になれます。

−体調管理はどうなさっているのでしょうか。

野菜や手作りのフレッシュジュースを意識的に摂り、外食を減らすなど食事には気をつけていますね。ウォーキングも日課にしています。また、人と会話することでもメンタルが整います。仕事では頭を使うので、脳が疲れてしまいがちです。人と話すことで頭の中も整理されて疲れも取れるので、おすすめです。

5.海外出張アイテム|訪問先が多い森若さんが選ぶポイント

−海外出張時に持っていくアイテムについて教えてください。

TPOに合わせた服装
服はオーダーメイドスーツ、日本から世界へ羽ばたきたいので、靴は日本ブランドの「リーガル」の革靴を愛用しています。リーガルの靴は頑丈で長持ちするのでありがたいです。スマートカジュアルな服装の時は、素材がカジュアルなジャケットにポールスミスのパンツ、履き慣れたグッチのローファーを合わせます。時計はノーブランドで日本の職人が作ったものを使用。ベルト部分の革にもこだわり、有田焼を彷彿とさせるデザインの時計です。

お土産
お土産は必須アイテムで、日本に関する会話が盛り上がる物を選びます。出張先で喜ばれるものを事前にリサーチし、急に人を紹介された時でも対応できるように、アポで会う人以外の分も多めに用意。醤油味の煎餅、抹茶味のキットカット(ネスレアミューズ)、日本茶のティーバッグ、金平糖などが人気です。

ハンガー
出張先でスーツやパンツがシワにならないように吊るして収納するため、数本は持参します。

6.人は幸せになるために生きている


「幸せの定義」について真剣に語る森若さん

−仕事をするうえで大事にしていることは何でしょうか?

「人は、なぜ生きているのか?」と問われたとき、私なら「幸せになるため」と答えます。自分がより幸せになるために働くことも大事ですし、世界中の人々をより幸せにするために働けたらベストだと思っています。

−今後のビジョンについて教えてください。

幸せな状態を「より健やか」と定めた上で、英語で「Innovations for a Healthier Life」というビジョンを掲げました。日本語で言うと、「世界中の人々のより健やかな人生のためにイノベーションを起こす」となります。

人は、精神的・肉体的・経済的・社会的に「より健やか」であれば幸せを感じると考えています。そのために必要なのが、宇宙・医療・教育・芸術のイノベーション。宇宙は人類に希望を与え、医療は命を救い、教育は良い人を育て、良い家庭、良い会社、良い社会を創ります。芸術はより楽しい社会や人生に貢献するでしょう。

世界中の人々が生まれ育った環境で才能を発揮し、社会貢献が自然と持続できるように、愛のある教育や芸術、ビジネスを広めていきたいです。そして、人から愛されていると感じる人々の数を世界中に増やしていきたいと思います。

森若さんおすすすめ!シリコンバレー出張時の宿泊先

1) 「Rosewood Sand Hill」(ローズウッド サンド ヒル)
森若さん流に言うなら「七つ星」レベルで快適なホテル。ローズウッドストリートは全世界で一番ベンチャーキャピタルが多いという丘で、その頂上にあるのが「Rosewood Sand Hill」。有名企業のパーティーが頻繁に開かれ、投資家とのミーティングに使う起業家も多い。「自然からみなぎるエネルギーを感じます。成功する人が集まる良い空気なのではないでしょうか」と森若さん。

2) 「Palace Hotel, a Luxury Collection Hotel, San Francisco」(パレス ホテル-ラグジュアリー コレクション)
森若さんは、シリコンバレーに行く際にサンフランシスコを必ず通るそうで、そこでミーティングにもよく使うのが「Palace Hotel, a Luxury Collection Hotel, San Francisco」です。サンフランシスコの一流ホテルのカフェは映画のワンシーンのようだとか。「ミーティング相手にも喜んで頂けて自然と会話も弾みます」とお気に入りです。

3) ハッカーハウス
モーテルに泊まると二つ星でも1ヶ月滞在すれば30万円以上はかかるため、森若さんは知人のハッカーハウスを利用していたこともあるそうです。ハッカーハウスとは起業家やエンジニアなどが一緒に住むシェアハウスのこと。世界中から集まった起業家と出会えます。

森若幸次郎さんプロフィール
山口県下関市出身。株式会社シリコンバレーベンチャーズ代表取締役社長兼CEO、株式会社モリワカ専務取締役兼CIO。2013年ハーバードビジネススクール、エグゼクティブエジュケーションPLD修了。2016年著書『ハーバードのエリートは、なぜプレッシャーに強いのか?』(学研プラス)出版。2017年にはラッパー「Gifted」として「’Down Wiz Us’ (Gifted feat. Dirty R.A.Y) HIPHOPソング」Amazon全国1位。2018年は東京・銀座で絵画を展示するなどマルチに活躍。現在は世界のイノベーションハブと日本を行き来し、経営コンサルティング、コラムの執筆(「Forbes JAPAN」りそな銀行の情報メディア「りそなCollaborare」「日刊工業新聞」など)、講演などを行っている。

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