「これからの海外出張は世界一周航空券でもっと便利にもっと楽しく!」 世界一周旅行専門家 角田直樹氏
世界一周旅行のスペシャリストとして活躍している角田直樹さん。日本で初めて世界一周専門の旅行会社「世界一周堂」を創業、「世界一周航空券」を活用したプランニングや手配、企業の海外出張のお手伝いなど、多くの世界一周旅行者のサポートをしてきました。現在は、旅行業界にさらなる貢献をするため準備を進めているとのこと。海外を飛び回り、「旅はライフワーク」と仕事をしながら旅行も楽しむ角田さんに、海外出張におけるハック術を伺いました。
・海外出張には飛行機の選び方もひと工夫
・「世界一周航空券」はおすすめ!
・ブレジャーは日本人向けの海外出張&旅スタイル
1.出張計画のはじまりは飛行機の快適さを追求すること!
「世界一周航空券」「上級会員制度」など、角田さんの口からは海外出張で使えそうなハック術が次から次へと飛び出てくる
——今、海外出張と旅行を組み合わせる「ブレジャー」を楽しむ人がいると言いますが、角田さんご自身はブレジャーを楽しんだことはありますか?
はい。仕事に打ち込んで、その後にご褒美で旅も楽しむというのは最高の過ごし方かなと思います。私も海外出張が大好きです。
過去に、航空会社を10社ほど比較して記事にする仕事をしたことがありまして、20日間ほど海外で過ごしました。飛行機に乗っている間は取材だったんですけど、現地では自由に行動できたので、イースター島やマチュピチュにも行きました。
そのときは、出張を終えてから旅行するというよりは、仕事の時間とレジャーの時間を切り分けて過ごしていました。常に飛行機に乗っていましたね。
——出張の際に工夫していること、気をつけていることを教えてください。
基本的に、夜行便をメインで使っています。飛行機内でしっかり寝て、現地に着いたら起きてすぐに行動。海外出張では限られた時間でどれだけ成果を出すかというのが重要なので、時間を効率的に使うためにも、飛行機は寝る場所です。特に、6時間以上のフライトでは夜行便を積極的に使っています。
——時差ボケ対策にもなりそうですね。
そうですね。搭乗したら時計を現地時間に合わせて、現地と同じように過ごすというのは心がけています。
ランニングはもちろん、位置情報を記録する際にも使えるGPS腕時計。出張時には必ず持参する
——出張を計画するときに楽しみにしていることは何ですか。
飛行機が好きなので、どんな機材かは調べますね。出張に行く人って、あまり機材とか調べないですよね。古い機材と新しい機材では、雲泥の差があるんですよ。同じ料金を払っていても、120度しか倒れないシートもあれば、フルフラットで180度倒れるシートもあって。
航空会社によってシートや機材の質、サービスも全然違うんですよ。私にとっては「飛行機の中でいかに休むか」というのが重要なので、いかに機内で快適に過ごせるかは大事ですね。
——具体的には、どんなことに注意すれば良いですか。
大型の機材は搭乗人数が多いんですけど、エコノミークラスでも比較的ゆとりがあるので、長距離を移動するにはありかなと思います。ただし、ビジネスクラスだと人数が多すぎてプライベートな空間というのが限られてしまうんです。ビジネスクラスでプライベートな空間を確保したいのであれば、中型機がおすすめです。
また、大型機のビジネスクラスでは乗客60人くらいに対してクルーが4人程度なのですが、中型機だと乗客30人くらいで4人ほどのクルーに付いていただけるんです。何かあった時に相談しやすいですし、よりきめ細かいサービスも望めます。出張に行く時は、飛行機の機材選びというのは重要な要素と考えています。
2.海外出張の多い人は各種制度をフル活用しよう
航空会社やホテルなど各種制度をフル活用 ※画像は一部加工しています
——飛行機に乗る際、何か“裏ワザ”はありますか?
航空会社の上級会員制度を積極的に利用すると良いですよ。出発前に、チェックインカウンターで並ぶこともありませんし、快適な空港ラウンジも使えます。搭乗口でも優先的に機内へ案内してもらえるんです。例えば、エコノミークラスのチケットを買っていても、席が空いていればビジネスクラスに優先的にアップグレードしてくれたりもします。また、マイルを使ったり、プラスして代金を払うことで上のクラスにも搭乗できたりと、自由にアレンジすることもできます。
——上級会員制度を利用するには、どうしたら良いのですか?
年間で飛行機をどれくらい利用したか、というのでランクが決まるんです。例えば、1年間に飛行機に50回以上乗る、5万マイル以上乗るというものです。例えば、ヨーロッパを4往復すれば上級会員資格にぐっと近づきます。ハードルはそこそこ高いのですが、1度上級会員資格を取得すると半永久的に会員組織に参加できるカードもあります。
——そうはいっても、「年間ヨーロッパを4往復」なんて、簡単にできるとは思えません。
実は、普通に往復チケットで回るよりも「世界一周航空券」を使うと近道になります。世界一周航空券とは、その名の通り、世界一周するためのチケットです。もちろん、海外出張でも使えます。
——「世界一周」と聞くと、かなり大変そうなイメージなのですが……。
世界一周旅行は、たくさんの国を回らないと世界一周というわけではないんです。ずばり、太平洋と大西洋を1回横断して、地球をぐるりと一周すれば世界一周と言えます。特にビジネスクラスのコストパフォーマンスが抜群で、上手にルートを組めば一区間4万円台で乗れることもあるんですよ。
また、世界一周航空券だと有効期間が1年間で最大16回飛行機に乗れるんです。予約変更もできるので、業務渡航に活用してコスト削減している会社もあるほど。グローバルな企業や海外支店など、出張の機会が多い人には本当におすすめのチケットです。
世界一周航空券について旅人の体験談が書かれているガイド本『世界一周 ビジネスクラス BOOK』。角田さんも執筆協力
——飛行機以外にも、上級会員制度を利用できるツールはあるのですか?
ホテルを快適に利用するためのカードがあります。例えば、この「spgアメックス」というカードはシェラトン、リッツカールトン、マリオット系のホテルで利用できます。年間25泊以上しないと獲得できないゴールドエリート資格が付帯しており、無料で部屋をアップグレードしてくれるなどの特典がついてきます。年会費さえ払えば持てるカードなので、持っていると便利だと思います。
——航空会社やホテルの上級会員制度は、ブレジャーにも使えそうですね。
仕事でもプライベートな旅行の時でも使えますし、コスパはいいですね。会社から支給される出張経費は決まっていると思うんですけど、上級会員制度も「spgカード」も無料でアップグレードしてくれるチャンスがあるので、お得だと思います。
3.海外出張であると便利なアイテム・アプリはコレ
海外出張には欠かせないオーダーメイドのスーツ
——出張の際に、準備で気を付けていることは何ですか?
スーツは、シワになりにくくてストレッチ性のあるものを持っていくようにしています。自分が着ているものは「O・S・V」で作ったオーダーメイドなんです。機能性生地を使い汗の吸収も良く、軽量でシワになりにくくて、洗濯しやすい。スーツケースに畳んで入れても、生地が薄いのでかさばらないんです。
(※OSVは、現在DIFFERENCEとしてリニューアル)
スーツはストレッチ性があり軽量でシワになりにくいところがポイント
——海外出張で使えるおすすめのアプリを教えてください。
オンラインチェックインができる航空会社系のアプリは必須だと思います。余裕を持って空港に行くためにも、事前チェックインは必要です。
例えば、事前の座席指定が48時間を切った段階で無料になる航空会社が多いんです。良い席をいち早く取るという意味でも、利用しない手はないですよね。私の場合、座席は身動きが取りやすい最後尾の通路側がベスト。席の埋まり具合も、オンラインチェックインで分かるんです。
——トラブルを防ぐために持っておいた方が良いものはなんですか?
トラブルは比較的少ない方なんですけど、最近はロストバゲッジ対策に「TILE(タイル)」という忘れ物防止タグを使っています。ブルートゥースでスマホと連動していて、一定の距離(約50メートル)に近づいたり、離れたりするとアラームが鳴ったりするんです。
例えば、飛行機に乗った時には、ほぼ座席の50メートル以内に荷物の格納庫があります。「TILE(タイル)」を荷物に仕込んでおけば、鳴らない時は、人間の乗り換えはうまくいったけど、荷物だけロストバゲッジした可能性が高いなというのが分かります。事前に荷物の状況を知っておけば、現地に着いてからロストバゲッジのカウンターで素早く交渉できますよね。
角田さんが海外出張時に持参するアイテムたち。左から、ジョギング用のTシャツ、パンツ(水着兼用)、ワイヤレスイヤホン、世界展開しているジム(Anytimefitness)のキー、記録用のアクションカメラ、「TILE(タイル)」(白い四角いチップ)、GPS腕時計、iPad mini+キーボード
——海外出張中、仕事に関係なく便利に活用できるものはありますか?
外国人には漢字が人気なんですよね。そこで、出張業務を終えたブレジャー中に「世界人Tシャツ」を着て街を歩くんです。街中で現地の人から「それってどういう意味?」と聞かれることが多くて、ちょっとした会話のきっかけになるのでとても重宝しています。日本人の観光客には「ひょっとして世界一周中ですか?」と聞かれることも珍しくないですよ。
コミュニケーションに活かせるアイテムは、仕事やプライベートに関係なく1つでもあると便利ですよね。
4.海外にいるときに気をつけておきたいこと
快適に過ごせる飛行機選びについて熱く語る角田さん
——防犯面では、どうですか?
夜遅くなった時には、どんなに近場でもタクシーを使うようにしています。特に南米では、1キロは怖くて歩けないですね。タクシーを使うのは失礼でも何でもないですし、タクシー代金も海外では日本よりかなり安いのでリスク回避で積極的にタクシーを使いますね。スマホアプリを使った送迎サービス「Uber(ウーバー)」や、タクシー配車アプリ「Grab(グラブ)」などを活用しています。
——海外滞在中、お財布などの盗難対策はどうしていますか?
ホテルの部屋をきれいに保つようにしています。部屋が散らかっていると、ものを盗られても分からなかったりしますが、きちんと整理整頓していれば盗られていたら一目瞭然なので。財布は基本的にカバンに入れています。カバンの一番奥に入れて、ダイヤル式の南京錠をかけています。あとは、トリップアドバイザーで三つ星評価以上のホテルに泊まる、カフェでトイレに行く時は荷物を全部持っていくなど、ですかね。
——女性が一人で海外出張に行く時に気をつけるべきことはありますか?
露出度の高い服装は御法度ですね。特にイスラム教は、宗教的にも肌を見せてはいけないですし、ピシッとした服を着ていた方が狙われるリスクは少ないと思います。それと、一人で旅行している女性に声をかけてくる人はだいたい悪いやつなので相手にしない。あとは送迎アプリを活用して、一人で移動しないようにしてください。
5.角田さんが考える「ブレジャー」とは
「旅はライフワーク」と語る角田さんにとって、海外出張は様々な楽しみが待っているまたとない機会
——角田さんは「出張に合わせて余暇を楽しむ」ということに関してはどう思われますか?
賛成です。会社のお金で渡航費が出るチャンスに自分の趣味である旅行を組み合わせるというのは本当に最高の制度だなと思います。それを許してくれる会社であれば、積極的に取り入れない手はないなと思います。
——日本人は仕事人間になりがちな人種だと思うのですが、マッチすると思いますか?
むしろ、日本人にぴったりの制度だと思います。欧米では1ヶ月のバケーションを普通に取れますが、日本ではなかなかできないので。だから出張の合間に行くとか、出張が終わった後に旅をするというのは、正当に旅行を上手く組み入れたスタイルだと思います。
6.商談を成功させる秘訣は“笑顔”
——「仕事の流れで旅行に行くこと」に対して引け目を感じてしまう人もいそうですが、上手い対処法はあるのでしょうか?
職場の中で「自分は海外出張に行くと、休暇も取って旅行もするよ」というキャラを植え付けるというのも大事かと。世界一周に行く場合も、会社に、この仕事をクリアしたらご褒美に世界一周に行くからねと予め伝えるなどして。その代わり、目の前にある仕事には全力で取り組むといったようにメリハリを上手く付けたら良いと思います。
そもそも、出張を「面倒だ」と思っている人っているんですかね? その辺の感覚が自分はいまいち分からないんです。出張って交通費や宿泊費など金銭的のものは会社が負担してくれて、デスクワークから解放されますし、商談や出先で色々な人と出会える絶好のチャンスだと思うんです。出張を上手く利用すれば上級会員制度の取得を狙えるし、マイルも稼げますし、積極的に出張を楽しんで欲しいですよね。
——ちなみに、現地の方との商談を成功させる秘訣ってあるのでしょうか?
実は、現地にいる人との商談経験が少なくてですね…。シンプルなことですが、やはり世界中で通じる「笑顔」だと思います。第一印象が大切なので、笑顔で「Nice to meet you」は、商談を成功させる秘訣かなと思います。私も、第一印象とスマイルで乗り切っていますよ。
世界一周航空券専門家、世界一周専門旅行会社「世界一周堂」創業者。「世界一周してみたい!」と願う旅行者の背中を押してあげたいとの思いから、世界一周専門家として多くの世界一周ルートを作成・提案。旅行・ビジネスをはじめ、各方面でコンサルティング・講演・執筆などで活躍している。現在は会社を後継に任せ、自身は「旅行業界に貢献したい」との思いで研鑽を積んでいる。
世界一周堂(株式会社ウェブトラベル)https://www.sekai1.co.jp/
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