取材記事

2021.08.25

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オフィスBGMを流して生産性アップ!科学的にも証明された音楽の力!?

株式会社 USEN ICT Solutions サウンドデザイン部長 野村大河氏

USEN-NEXT GROUPのUSENが提供するオフィス向けBGMサービス「Sound Design for OFFICE」。集中力アップやリフレッシュ、リラックス効果などが見込める音楽を流すことで、快適なオフィス環境作りが可能なツールとして、注目を浴びているサービスです。

しかし、新型コロナウイルスの影響でテレワークを導入する企業が増え、オフィスに出社する人が大幅に減りました。そういった状況でありながら「Sound Design for OFFICE」の需要は高まっているのだとか。今、多くの企業がオフィスのあり方を見直す時期に差し掛かっています。そんな中、なぜオフィスBGMの需要が増えているのでしょうか?その理由は音楽が持つ力にありそうです。

音楽は人にどんな影響力があるのか、株式会社 USEN ICT Solutions 野村大河(のむらたいが)さんに伺いました。

1.コロナ禍で増えたオフィスBGMの需要

―Sound Design for OFFICEはどのようなサービスでしょうか?

オフィスに相応しいBGMを提供するサービスです。

音楽の効果を「集中力向上」「リラックス」「リフレッシュ」「気づき」の4つの機能に分類したチャンネルがあるほか、お好きな音楽を流したり、アナウンスなどを流したりすることも可能です。

集中力向上やリラックスなどに効果的な楽曲制作をする際は、大学の教授や作曲家の方たちと一緒に共同制作をしているんですよ。

新型コロナウイルスの影響でテレワークを導入する企業が増えましたが、BGMの新たな需要が生まれ、多くの企業にご好評いただいております。

―テレワーク導入で出社する必要性が減ったにもかかわらず、需要が増えたのはなぜでしょうか?

出社する人が減りオフィスが静かすぎるのが気になるということで、BGMを流す企業が増えたためです。

昨年2020年に東京で初めて緊急事態宣言が発令されたとき、私たちは「オフィスはこれからどうなるんだろう?」と不安に感じていました。ところが、実際にはオフィス出社と在宅勤務を併用している企業が多かったんです。そして、出社人数が減っているためオフィスが静かになり、他人が打つキーボードの音が気になって集中しづらい、Web会議で他の人の話し声が気になるという声が増えました。

そんな問題を払拭するツールとして、さまざまな企業が「Sound Design for OFFICE」を導入してくださるようになりました。

―BGMを流すことで、どのように問題を解決するのでしょうか?

例えば、マスキング効果のある音楽を流して、周囲の音が気にならないようにするんです。私たちは、「音のカーテン」と呼んでいます。

川のせせらぎの音などの自然音、空調の音を大きくしたような音源や弦楽器を重ねた音源を流すと、会議に参加していない、周囲の人の話し声が聞き取りにくくなるんですよ。
これらの音源に使っている少し高めの音は、人の声の周波数帯とぶつかり、話の内容を分かりにくくする効果があるんです。

これは、Web会議のときに有効ですね。会議以外の話し声が気にならなくなり、会議に集中できるだけでなく、情報漏洩防止にもなります。

2.世の流れをつかむことで成功したSound Design for OFFICE

ーなぜSound Design for OFFICEを開発したのでしょうか?

社会の課題に対して、USENとしては音楽を通じて貢献していこうと考えたことがきっかけです。開発当時の2013年は精神障害による労災補償請求も多く、「メンタルヘルスケア」が注目され始めた頃ですね。音楽で仕事場のストレス緩和などができないかと考えました。

もともと私たちは、音楽にはリラックス効果があると体感していました。そのエビデンスを取り、音楽の力を世に証明していこうとしたんです。

―新サービスをローンチするまで、苦労した点はありますか?

エビデンスを取るための研究者や大学を探すところが、なにぶん知識もなかったので大変でした。ツテもなかったので、正面から地道に大学へ問い合わせて、研究の協力をお願いしに行きました。

そんな地道な作業でしたが、幸い、共同研究自体を面白いと思って協力いただける大学も多くて…そういった経緯を経て新サービスのローンチとなりました。

―サービス提供開始してから大変だと感じた点を教えてください。

サービス開始当時はオフィスで音楽を流すことが一般的ではなく、「非常識だ」と誤解されることが多く、あまり売り上げが伸びませんでした。大企業がサービスを導入してくださったことで、徐々に需要が増えましたが、大きな転機となったのは、2019年に施行された「働き方改革法案」です。

ちょうどこの頃から、オフィスで音楽を流す企業が増え始めました。大企業が「Sound Design for OFFICE」を利用してくださったこともあり、サービスを導入してくれる企業が増えました。

―Sound Design for OFFICEがサービスとして成功したのは、なぜだと思いますか?

時流に乗れたことで道が開けたことが成功の理由だと思います。

「メンタルヘルスケア」が注目されたことでサービスを開発しましたし、「働き方改革」「ニューノーマルオフィス」など、世の中で大きな出来事があったときに「Sound Design for OFFICE」の需要が高まりましたから。

ーさまざまな音楽配信サービスがある中、Sound Design for OFFICEを利用するメリットは何でしょうか?

オフィスに特化した音楽を流せることはもちろん、曲数が多いことや広告が入らないこと、タブレットで操作できるためチューナー機器の使いやすいという、さまざまなメリットがありますが、大きな利点は2つあると思っています。

1つ目は使いやすさ。「Sound Design for OFFICE」のチューナー機器には、無線のSIMが入っているため、置くだけで使えるんです。独立したネットワークで通信しているため、社内のネットワーク環境に依存せず使えるんですよ。一部の音楽はダウンロード可能ですので、万が一ネットワークに障害が発生してもBGMを流せます。

また、チューナー機器を複数台設置していただくと、同時に異なるBGMを流すことが可能です。今までは、1企業1台のみ導入する企業が多かったのですが、部署やフロアごとに異なるBGMを流すため、複数台設置してくださる企業が増えました。

2つ目は著作権の点です。
SpotifyやApple Musicなど、個人向け音楽配信サービスの商用利用は原則NGです。その点、「Sound Design for OFFICE」は複数人数でも楽しめるよう、著作権の許諾を取っています。

著作権に関しても配慮しているサービスを利用しているというのは、企業のイメージアップにもつながるのではないでしょうか。

3.音楽の力を体感する企業続出

ー集中力向上やリラックスなど、どのような方法で効果を検証していますか?

音楽を聴く前と聴いた後に、

・手の甲の温度
・唾液分泌量
・唾液に含まれるコルチゾール分泌量
・唾液に含まれるIgAの分泌量

…を測定して検証などをしています。

例えば、ある音楽を聴くと体温と唾液分泌量が上昇しました。これは、副交感神経が優位になり、リラックスしているという証拠です。また、ストレスを感じると分泌されるコルチゾールが減少しました。これも、ストレスが減り、リラックスして集中しやすい状態に繋がると言えます。一方で、IgA分泌量は増加しました。IgAは免疫物質なんですよ。

このような結果をもとに、集中力アップやリラックスを目的とした音楽を制作しています。

最近は、体温や唾液分泌量などは音楽ジャンルによって異なることを発見しました。そこで、「免疫力を上げるJAZZ」といった健康を高める音楽も創っています。

―導入した企業から効果があったというフィードバックはありましたか?

非常に多くの企業様から、良い効果があったとの声をいただいております。職場の雰囲気が明るくなった、社員同士のコミュニケーションが増えた、作業効率が上がり残業する社員が減った…などなど。

その中のひとつに、離職率が下がったという声がありました。
オフィスでBGMが流れていることで緊張感がやわらぐようなんです。例えば、上司に怒られてもBGMが流れていると周りの方への影響もやわらぐというコメントをいただきました。

導入いただいたほとんどの企業様がなんらかの音楽の効果を感じているようで、「Sound Design for OFFICE」の解約率は1%未満です。

ーSound Design for OFFICEの有効な使い方があれば教えてください。

時間帯によって異なるタイプの曲を流して、仕事効率化を図る使い方がおすすめです。

まず、朝は会社についたらリラックスできるよう、リラックス系の曲をかけるんです。通勤時間が長いなど、出社するまでがストレスだという方もいらっしゃいますから。その後、集中力アップできる曲に切り替え、お昼休みはリフレッシュ系の曲。午後から、また集中力向上の曲を流し、夕方は「気づきの曲」で締めくくり、退社を促します。

―「気づきの曲」とはどのような音楽でしょうか?

気づきの音楽とは、「今はこの時間」というのを気づかせる曲です。お店で「蛍の光」が流れると閉店であることを気づかせるように、毎日同じ曲を流すことで「退社時間」を知らせるんです。

「帰宅を促す音楽」というのもありますよ。1楽章5分で3楽章まである15分間の曲で、退社時間が18:00なら17:45に曲を流します。最初はゆったりした曲調で始まり、徐々にスピードアップ、最後は軽快な曲調となり、気持ちよく帰宅しましょうという曲です。

この曲を聴くと、仕事に集中していても「もうすぐ終業時間だから、帰る準備をしなくては!」と気づくんです。

―そのほか、どのような活用方法がありますか?

企業によってさまざまですね。一体感を高めるために社歌を流したり、企業のCMに使われた曲を流す企業様もあります。

また、アナウンスを流せるんですよ。ある企業様は「出社したら手洗い・うがいをし、ソーシャルディスタンスを保ちましょう」というアナウンスを毎朝流して、コロナウイルス感染予防対策をしてくださっています。

オプションになりますが、オリジナルのアナウンスや楽曲を創ることもできますよ。

導入事例

【新入社員教育に活用/日本ハムビジネスエキスパート株式会社】
オフィスで流すBGMの決定・プログラム化、「Sound Design for OFFICE」の運用マニュアル作成、BGMに関する要望の窓口担当業務を新入社員研修に取り入れたそうです。この研修により、業務のやり方を学べたほか、他の社員に顔を覚えてもらいコミュニケーションが活性化したという効果がありました。

【残業時間約3割削減/三井ホーム株式会社】
夕方の終礼に「ロッキーのテーマ」を流しており、残業が必要な場合はこのタイミングで申請をしなければならないそうです。残業の終了時間を意識して業務をこなすようになったため、残業時間が約33%削減されました。

4.変わりゆくオフィスの姿や価値

ーSound Design for OFFICEの今後の展開や戦略について教えてください。

オフィスに音楽が流れているのが当り前になるような市場作りを狙っています。そのために、これからも大学と共同で、さまざまな効果を得られる音楽を創っていく予定です。
今までは、リラックスやリフレッシュといった「人」へ訴求する音楽を提供してきましたが、目指しているのは「人」と「環境」の2軸での訴求です。

―環境へ訴求する音楽とはどのようなものでしょうか?

現在、開発中ですので具体的にはお話できないのですが、オフィスを明るい雰囲気やおしゃれな雰囲気にする音楽や、オフィス内でコミュニケーションを生み出す音楽…などです。現状、出社する人が減っているので、こんなときこそ音楽の力を利用して出社したくなるオフィス作りの手助けをしたいですね。

ーテレワーク導入する企業が多い中、オフィスで働くことの価値はあると思いますか?

価値は大いにあると思います。
オフィスで働く価値は2つあると考えておりまして、ひとつは新たなアイデアを生み出す場としてのオフィスです。自分自身の仕事は自宅でし、出社してミーティングなどで他の社員と会い、アイデアや価値が生まれるんです。

もう一つは、みんなが集まれる場所、原点に戻れる場所、母校のような存在としてのオフィスです。帰る場所とか拠り所のような、「そこに在り続ける場所」というのがあることに意味があると思います。

そんなオフィスが居心地の良い場所となるよう、私たちは曲を提供し続けていきたいと考えています。

野村 大河(のむらたいが)
株式会社 USEN ICT Solutions サウンドデザイン部長

2009年、株式会社 USENに新卒入社。企業向けネットワーク・セキュリティ・クラウドなどのICTソリューション営業に従事。その後、組織マネジメントや新事業の立ち上げなどを経て、2018年より、オフィスBGM事業の部長に就任。現在は、「Sound Design for OFFICE」の提案を通して、音楽の力で働きやすいオフィス空間づくりに尽力している。

株式会社 USEN ICT Solutions コーポレートサイト:https://usen-ict.co.jp
Sound Design for OFFICE サービスサイト:https://sound-design.usen.com

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