ビジネス基礎知識

2025.01.14

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日本とインドネシアの人間関係構築における違い

海外生活の難しさの一つとして、文化、習慣、伝統などの違いがありますが、日本も例外ではあません。インドネシア人は、日本が同じアジアの国であることから日本に適応するのはそれほど難しくないだろうと考える人が多いです。しかしながら文化的な違いを感じることがよくあります。今回はこの文化的な違いについて、私の経験を基にいくつかご紹介します。
  

ライタープロフィール
シヂク・ヅイ・パザル(Sidhiq Dwi Fajar)
インドネシア出身で現在は京都に在住しながら私立大学で生命科学を専攻。植物分野での研究に3年間携わっており、他国にも留学経験あり。
3カ国の言語を流暢に話すことができ、他に2カ国の言語を会話ができるレベルで習得。明るい性格で世界中の人々と繋がりを築くことができる。
将来の目標は、日本企業で自分のスキルを活かして働き、日本で暮らすこと。
植物、食べ物、料理、写真、他国の言語など新しいことを学ぶことに意欲的。日本に来てから猫が好きだがアパートで飼うことができないのが悩み。
自分の長所は夢や目標に対して決して諦めない粘り強さがあること。

  
翻訳/編集:株式会社hupodea 事務局

挨拶のジェスチャー

日本人は一般的に挨拶、感謝、謝罪の時など人に敬意を示す時にお辞儀というジェスチャーをします。
お辞儀の深さは状況や個人間の関係によって異なり、例えば、軽い挨拶をする際は45度以下のお辞儀をしますが、
厳粛さが求められる場面となると90度までお辞儀をします(図1参照)。


図1 さくらサイエンスプログラム修了証書授与時の学部長とのお辞儀(2019年)
  
一方、インドネシアではお礼や自己紹介などの挨拶をする際に握手をするのが一般的で、
この握手は生徒から先生、職員から上司、あるいは社長から一般人まで、立場を問わず誰にでも行うことができます(図2参照)。
また悲しいこと(葬儀など)があった時でも、お悔やみの言葉を述べながら穏やかに握手を行います。


図2 卒業式での学長との握手(2020年)
  
私の故郷である中部ジャワなどでは挨拶をする際にお辞儀をする習慣があり、日本の文化に似た45度以下のお辞儀をしながら挨拶をするジェスチャーがあります。
これは目上の人の前を通る時、さようならを言う時、前方の人が自分の障害となる時
(日本人が満員電車で「すみませーん」と言いながら降りるのと同様の状態)などに用いられます。
一方でジャカルタの挨拶文化では、お辞儀のジェスチャーはあまり見られません。
ジャカルタは大都市であり、西洋文化が根付いているため握手はしますが上記のような場面での挨拶は手を振るか、ジェスチャーなしですることが多いです。
また挨拶においてインドネシアでは注意すべき点もあります。それはイスラム教が多数を占めているということです。
イスラム教徒の中には、家族を除いて異性に触れない人もおり、一般的な挨拶であっても握手ができないことがあります。
そのような人々を判別するのは難しいため、わからない場合は相手側に行動を起こしてもらう必要があります。
相手が握手をする動きを見せたら握手し、彼らが胸の前で手を合わせて祈るようなジェスチャーであれば、こちらも同様のジェスチャーをします。

このように同じ国内でも地域や信仰している宗教によって挨拶の文化は異なっています。

人間関係構築

日本での生活は約2年になりますが、多くの友人と新しい関係を築くことができ、異なる国籍や異なる専攻の友人との有意義な交流ができています。
しかしながら最初から日本での人間関係の構築が上手くいったわけではありません。その中で文化のギャップに悩まされた経験を紹介します。
インドネシアでは、ほとんどの人がまず「チャット」で関係を築きます。
  
※チャット:直接顔を合わせて話したり、ソーシャルメディアを使って意図的またはランダムにオンラインで話したりすること。
  
最初は「チャット」で軽く挨拶し、その後連絡先を交換してさらに「チャット」をしながら交流します。
その中で波長が合えばレストランでの食事、旅行、あるいはランニングのような趣味などを共有して一緒に出かけたりするようになります。
さらに親密度が増すと親友になります。ここでいう親友とは、お互いの秘密を言い合える関係(2人だけの秘密にしておける関係)のことを指します。
多くの場合、親友になると長い付き合いになることが多いです。私自身もインドネシアにいる頃、
ゲームセンターで初めて会った人と数分程度の会話(チャット)をしてその後に友達になりました。
このようにインドネシア人は誰にでも優しい性格で、会話を始めれば快く受け答えしてくれるし、会話が弾んでいれば友達になれる可能性が高いです。
  
日本でも関係構築の初期段階では雑談をするという部分は同じですが、インドネシアとは異なる部分があります。
日本では軽い気持ちで「チャット」することができません。
その理由として、まず全ての人が英語を話せるわけではないのでコミュニケーションエラーが発生する可能性があります。
また日本では知らない人に話しかけられ続けると不快感を抱く人が多く、気軽に会話をすることができません。
  
そして連絡先交換についても感覚の違いがあります。
インドネシア人は「チャット」の後に連絡先(電話番号、LINE、その他SNS)を気軽に交換する傾向があります。
しかしながら日本では、最初に会話をしてinstagramなどのSNSをフォローし合うことはあっても電話番号やLINEなどは個人情報と考えられているため気軽に交換できないことが多いです。
よってインドネシアの大学にいるときは研究室に新しいメンバーが入ってくると、
気軽に「チャット」や連絡先交換をして仲良くなりましたが、これは日本において簡単なことではありませんでした。
  
上記のような違いから、日本で友達をつくるためには初期段階にコネ(きっかけ・つながり)が必要でした。
例えば私は飲み会のおかげで別の研究室の日本人学生と会話(チャット)することができました。
加えて、すでに友達だった日本人学生が彼の友達を紹介してくれました(図3参照)。
ちなみに私の最初の日本人の友人は国際寮から正式に紹介された人で、留学生が日本での生活に適応できるようサポートするスタッフでした。
彼と知り合ってから1年が経過して今では親友です!
  

図3 研究室での飲み会中の私
  
これまで友達をつくることに対する悩みを述べましたが、友達の基準や距離感における感覚の違いに悩んだこともあります。
私の個人的な見解ですが、日本では友達になるために一定の要件/基準があるように感じています。
以前日本人の友達と偶然すれ違った際に他人のような態度を取られたことがありました。
私は彼らのことを友達だと思っていたのですが、おそらく彼らは私のことを友達と思っていなかったようです。
そして先述したようにインドネシアでは秘密を話すことが信頼関係のバロメータになりますが、
日本においては秘密を話し合えること=信頼関係があるという解釈にはなりません。
また日本人はたとえ外向的な性格であっても自分の時間を大切にする傾向があり、1人で過ごすことにおかしさを感じる人はいませんし、心配する人もいません。
一方でインドネシアでは友達と長い時間一緒にいないと心配されたり、反社会的だと思われたりすることもあります。
この違いは予定の合わせ方にも表れており、日本人は1ヶ月先までスケジュールが埋まっていることが多く、1~2ヶ月前から計画を立てなければなりません。
インドネシアでは、友達との予定を当日やその週のうちに容易に合わせることができます。

まとめ

私自身の経験に基づいた見解ではありますが、日本とインドネシアで挨拶や人間関係の築き方には共通点もあれば相違点もあり、上手く順応することが大切だと思っています。
日本での人間関係の築き方は、来日前に想像していたものより難しいものでしたが、
時間が経つにつれて知らない人であっても恐れずに会話し、関係構築を行うことができるようになりました。
これは将来、日本で生活していくための良い経験になったと思います。日本での経験を通して、
どのような場所でも良い関係を築くために挨拶や人間関係構築の基本的なマナーを理解する必要があると感じました。
  
挨拶や人間関係構築は、ビジネスシーンにおいても社内外問わず仕事を円滑に進める上での非常に重要な世界共通のファクターとなります。
これまで記したように日本とインドネシアでは挨拶や人間関係構築の方法/考え方に異なる部分がありますし、また異なる国では別の方法/考え方が存在します。
この記事を読んで、異なる文化について興味を持っていただけると幸いです。
またインドネシア人と関わる際はぜひ本記事を参考にしてみてください。

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