JR東日本スタートアップ株式会社 古川詩乃 氏
株式会社PETOKOTO 執行役員/OMUSUBI事業責任者 井島七海 氏
ペットも大切な家族の一員と考える人が増えている近年。
ドッグランを併設した高速道路のサービスエリアも増え、航空会社でもペットと一緒に搭乗する方法を模索するなど、
交通機関各社でもペットフレンドリーな取り組みを進めています。
そんななか、2022年5月に日本初となるペット専用の新幹線「わん!ケーション」を実施したのは
JR東日本スタートアップ株式会社(以下、JR東日本スタートアップ)と
ペットウェルネスカンパニー株式会社PETOKOTO(以下、PETOKOTO)です。
国内の鉄道業界初の取り組みに挑戦したJR東日本スタートアップの古川さんとPETOKOTOの井島さんに
ペットフレンドリーな交通インフラを作る取り組みのきっかけや、実現に向けた手応え、課題などを伺いました。
1.きっかけは「ペットフレンドリーな社会と移動の実現」を目指したいという想いから
▲ペット専用新幹線の実証実験を実現させた、PETOKOTOの井島さん(右)とJR東日本スタートアップの古川さん(左)。
これまでの新幹線でペットを連れて移動する際には、ペットをケージに入れて乗車券・特急券のほかに
「普通手回り品きっぷ」を購入すれば乗車はできていたものの、ペットをケージの外に出して車内で一緒に過ごすことはできませんでした。
今回JR東日本スタートアップとPETOKOTOが取り組んだのは、上野駅から軽井沢駅までを走る新幹線車両の中で、
乗客がケージフリーで愛犬と過ごせる「ファミリータイム」を設けた実証実験です。
まずは取り組みの背景として、PETOKOTOのこれまでの取り組みや、JR東日本スタートアップと共同で取り組んだ経緯を伺いました。
Q.まずは、PETOKOTOの事業について教えてください。
――井島さん
PETOKOTOは、「ペットを家族として愛せる世界」を目指すベンチャー企業です。
私たちが取り組んでいる事業は主に3つあります。
ひとつが、審査制の保護犬猫とお迎え希望者のマッチングサイト『OMUSUBI』、
もう一つがペットライフメディアの『ペトコト メディア』、
そして最後に、フレッシュペットフードの『ペトコトフーズ』です。
画像出典:PETOKOTOプレスリリース
Q.なぜ、今回新幹線でペットとのケージフリー乗車の実証実験に挑戦を?
――井島さん
今回の取り組みは、JR東日本スタートアップさんが展開している、アクセラレータープログラムに採択されたことがきっかけです。
その辺りは、JR東日本スタートアップの古川さんにお話しいただければと。
Q.JR東日本スタートアップさんのアクセラレータープログラムとは?
▲アクセラレータープログラムについて話す、JR東日本スタートアップの古川さん。
――古川さん
JR東日本スタートアッププログラムは社会課題の解決や豊かで幸せな未来づくりを目指します。
本プログラムでは、駅や鉄道などの経営資源、グループ事業における情報資源を活用したビジネスやサービスの提案を募り、
アイデアのブラッシュアップや実証実験などに伴走して取り組むことで、新たな価値の創出を目指します。
Q.とても面白い取り組みですね。今回、PETOKOTOさんがアクセラレートプログラムに参加したきっかけは何でしょうか?
▲PETOKOTOが掲げるミッションをJR東日本との取り組みで実現できるのではないかと話してくださった井島さん(右)。
――井島さん
弊社では「ペットを家族として愛する世界へ」というミッションを掲げています。
例えば“移動”という視点で国内の状況を見てみると、
公共交通機関含めてペットが家族として一緒に過ごせる社会環境というのはまだまだ整っていません。
ペットフレンドリーな社会環境をつくっていくためには、ペットが苦手な方・アレルギーをお持ちの方への配慮も忘れてはいけません。
今後どうやって私たちが掲げる世界を実現しようか考えたとき、弊社代表の大久保が
「公共交通機関を変えていくなら、JR東日本さんのような大きな会社さんを巻き込んで取り組んでいくとインパクトが大きいのでは?」
と挑戦を決めました。
Q.JR東日本スタートアップさんがPETOKOTOさんのプロジェクトを採択した理由についても教えてください。
――古川さん
「JR東日本スタートアッププログラム2021」に採択させていただいた理由は、
新しい社会価値創造の一つのあり方として、ペットとの共存社会がPETOKOTOさんと実現できるのではと感じられたからです。
我々は駅や鉄道施設のバリアフリー化や子育てに対しての取り組みは進めておりましたが、
ペットに対してはまだまだペットフレンドリーとはいえいない状況のいわば初心者です。
だからこそ様々な事業に取り組まれてきた知見と経験をお持ちで、
ペットオーナー様ともつながりのあるPETOKOTOさんを採択させていただき一緒に事業を創りたいと想いました。
Q.ペット専用新幹線も、こうした取り組みの一つとして始まったわけですね。
――古川さん
その通りです。
我々としても、今後「駅」という場所を、移動のためだけではなくいろいろなものに繋げていく
“BeyondStation=繋がる駅”として、新しい役割を持たせたいと取り組んでいます。
その中で、PETOKOTOさんは人間だけではなくてペットも家族として捉えております。
鉄道会社だからこそできる彼らのMVVに貢献出来る取り組みを考えたときに、ペットオーナーさまが感じている公共交通での移動課題を解決し、
ストレスフリーにペットとの旅を楽しんでいただきたいと思い実施に繋がりました。
上野駅から軽井沢駅まで、往路の新幹線車内で
「ファミリータイム」として愛犬をケージから出して一緒にご旅行を楽しんでいただける実証実験「わん!ケーション」という企画でした。
Q.他にも実証実験として取り組んだことがあるのでしょうか?
――井島さん
実証実験を含めたペットツーリズムツアー「わん!ケーション」に先立ち、
2021年12月には恵比寿駅構内でPETOKOTOが展開するフレッシュペットフードの「ペトコトフーズ」としてPOPUPイベントを開催しました。
当日は、獣医師によるお悩み相談会なども開催して駅をペットオーナーさんたちの新たなコミュニケーションの場として活用してみようと挑戦しました。
2022年4月にも、紀伊国屋青山のフラッグシップ店にて、ぺトコトフーズの販売トライアルを無人で実施。
我々として、JR東日本さんと取り組んだ実証実験の第3弾がペットと乗車できる新幹線の取り組みでした。
――古川さん
今まで駅ではペット系の催事をしたことがなかったのですが、思った以上に手応えがありました。
当日は、たくさんの方に目を留めていただいたり、ご来店いただいたりして
「こんなに恵比寿駅ってペットオーナーの方が住まわれているんだな」と実感した取り組みでした。
現在、駅構内ではワンちゃんをケージに入れなければいけないのですが、「ペトコトフーズ」のPOPUPイベントでは
改札外の半屋外環境で実施したこともあり、ペットをお連れになるお客さまも多く、
良い意味で境界性みたいなところがぼやけて共生の道筋が見えたかなと感じています。
Q.なぜ、ペット専用の新幹線「わん!ケーション」に挑戦しようと思ったのか、もう少し詳しく教えてください。
――井島さん
「ペットも家族」という考え方は、社会でも認知されはじめて久しい反面、
それはあくまでも飼い主さん側の意識として強い側面がまだまだ残っていると、私たちは考えています。
今回、新幹線でペットたちとケージフリーで過ごせる実証実験に取り組んだのは、この課題感が根底にあります。
ペットと暮らしていない方や世の中全体が、ペットとの共生を受け入れられる環境や意識を持ちにくい今。
お互いがお互いの存在を尊重しあえる、多様性を受容できるプラットフォームを目指したいという思いが、
JR東日本さんとマッチングした結果だったのかなと感じています。
Q.事業としても形になるのではという期待や確信はありましたか?
――古川さん
ビジネス的な視点から言えば、当社には軽井沢や那須などペットフレンドリーかつ鉄道の移動優位性の高いエリアを持っております。
地域の魅力に加え高付加価値な移動体験により新たなビジネスチャンスが見込めるのではという仮説を持っていました。
ペットフレンドリー化を推進することによって、今までは公共交通機関ではなくて自家用車で移動していたペットオーナー様が
「新幹線や電車で移動する」ことも選択肢の一つとして考えてくれるようになれば、顧客の拡大も見込めるのでは、と。
2.どう実現する!?ペット専用新幹線の実現は課題も山積みだった
ここからは、実際にペット専用新幹線「わん!ケーション」を実現するにあたって、
どんなご苦労があったのか、そして手応えや周囲からの反応はどうだったのかを伺いました。
2-1.社内の愛犬家・愛猫家を味方につける作戦でスタート
Q.JR東日本では「ペットも一緒に電車に乗れる機会を」という構想は社内で以前からあったのでしょうか?
――古川さん
ペットとの共生という視点は、社内で大きくあったわけではありません。
社内では子育て中のご家族やお子さま、高齢の方やハンディをお持ちの方に向けたサポートを優先的に行っておりました。
いままでになかったペットという切り口を、PETOKOTOさんとのプロジェクト採択をきっかけに、ペットとの共生も私たちの大切なミッションだと考えていきましょう、
という風土を社内や関係各所を巻き込んでいかなければなりませんでした。
――井島さん
古川さんの調整力は本当にすごかったです。
いろいろな部署の方との調整も当然必要になる中で、古川さんがいなかったら今回の新幹線での企画も実現していなかったと思います。
――古川さん
私も元々実家で犬を飼っているので、ペットオーナー様の気持ちを理解出来たこともあり。
私だけでなく、ペットを飼ったことがある方なら、ご理解を得られるかなと考えたところはありました。
今回のプロジェクトを進めるにあたって、ペットオーナーが調整各所にいるわけでもないので
ロジックでお伝えする部分ももちろんございましたが、
ペットを飼ってる人だと気持ちのご理解が早いので、みなさんに味方になっていただき、進めさせていただきました。
2-2.ひとつめの課題は「安全な運行」をどう担保するか
Q.新しい取り組みということで実施に向けて直面した課題もあったのではないでしょうか?
――古川さん
そうですね。
国内航空会社さんでは実証実験や年に1回のイベントという形でペットとのお出かけに取り組まれていました。
JR東日本としても、鉄道会社としてペットフレンドリー化に対して「取り組んでみたい」と思うところはありました。
ですが、日々多くの方が利用される鉄道は、やはり公共性が高い交通機関です。
車両の運用も高頻度ということで、アレルギー対策などがネックとなって、実証実験や事業には結びついていませんでした。
実現に向けては、やはりこうした部分が課題でしたね。
Q.特に課題として大きかったのはどんなところでしょうか?
――古川さん
実施の課題として大きかったのが、わんちゃんとの安全なご旅行をどうオペレーションしていくかという部分でした。
我々の使命として一番大切なことは、列車の安全・安定的な運行を担保することです。
例えば、電車からわんちゃんが飛び出して運行に支障をきたすようなことがないように、
どう安全対策を取るのかなど、しっかりと仮説検証していきました。
2-3.ペットが好きな人も苦手な人も大切なお客様!全ての人が笑顔で利用できる方法を模索
Q.他にはどんな課題がありましたか?
――古川さん
ペットをお好きな方もいらっしゃる一方で、もちろんアレルギーをお持ちの方、苦手な方がいらっしゃるという視点です。
ペットが好き・嫌い・アレルギーの有無に関わらず、私たちにとっては全ての方が大切なお客様です。
ペットを乗車させた車両をそれ以降ご利用のいただく方にもご安心いただけるようにするにはどうすれば良いかを議論し、
実証実験では特に徹底して検証しました。
Q.具体的にどんなふうに実施されたのでしょうか?
――古川さん
最初は一般のお客様が使う車両とペットが乗る車両の間に空の車両を入れることで同じ便での運行も考えていました。
ただ、衛生安全上の心配や車両を通り抜けるお客様への周知に課題もありまして、実証実験では丸々一本を特別列車に仕立てることにしました。
Q.上野駅から軽井沢駅間の運行でしたが、途中に停車駅もありましたか?
――古川さん
停車駅を設けてしまうと、わんちゃんがもし線路に飛び出してしまったときの危険性も考えられましたので、ノンストップでドア開閉なしの運行にしました。
2-4.アレルギー対策や清掃もモニタリングを徹底的に!
画像出典:PETOKOTOプレスリリースより
Q.アレルギー対策などはどんなふうに?
――古川さん
アレルギー対策としての清掃面の徹底では獣医師の先生なども含めまして専門家の意見も取り入れました。
獣医師の先生も交え、社内で何度も話し合いをして「これであればご安心いただけるかな」という私たちができる最善の方法を考えていきました。
Q.例えば清掃方法ではどんな方法を?
――古川さん
清掃面ではたくさん議論や検証を重ねました。
一般の座席にカバーをかけ、物理的に毛が付かないような処置を行った上で、運行後は車両の特別清掃も実施しました。
今回は、運行後の列車を車両センターに送った後、フィルターの交換なども含めてしっかりと清掃。
その後も1日以上車両センターに車両を待機させ、すぐに使わないようにしました。
加えて、清掃方法と合わせて「どれだけ問題ない状態まできれいに清掃できるか」ということを客観的なデータで検証したいと考えました。
Panasonicさんのご協力も得ながら、車両に空気清浄機と測定機器を置いて空気質をモニタリングしたんですよ。
Q.かなり細かくモニタリングをしたのですね。
――古川さん
はい。車両内にPanasonicさんの技術専門チームの方にも乗車してもらいペットの
「乗車前」「乗車後」「乗車してから一定時間がたった後」「清掃後」「清掃経過時間後」
と細かく分けて空気質を測定しました。
3.「おもてなしの心意気」に担当者も思わず涙した念願のペット専用新幹線運行
画像出典:PETOKOTOプレスリリースより
関係各所との調整や、清掃方法の検証、オペレーションなどさまざまな課題を乗り越え、
ついに2022年5月に実現したペット専用新幹線。開催前夜や当日の様子についても教えていただきました。
3-1.運行前日はまるで文化祭前夜の慌ただしさ
Q.業界初となるペット専用新幹線。開催当日や前日の心境は?
――井島さん
当日は、天気もコロコロ変わって現場の調整も大変でした。
軽井沢ではフォトシューティングやトレーニングレッスンなども企画していたのですが、
現地の天気予報が午前3時に雨予報になってしまって……。
雨のために現場コンテンツをちょっと変更して、朝資料を印刷しなおすなど、直前までドタバタだったのもいい思い出です。
――古川さん
事前の準備もかなり万全に進めていたつもりでしたが、初めての取り組みということで不測の事態も当然起こりうるわけで。
当日は、本当にいろんな方に協力していただいて実現できたことだなと、感謝しています。
3-2.電光掲示板を使った粋な計らいに感激
Q.当日の様子もよろしければお聞かせください。
――井島さん
すごく感動したのが、サプライズでプラットフォームの電光掲示板に「ペット専用特急列車」と文字が出てきたことでした。
ずっとJR東日本の方々にとっては、ご無理なお願いばかりしてきたので、こんなことまでしていただけるとは思っていなくて。
思わず涙腺が緩んでしまいました。
――古川さん
電光掲示板のことは、私にとってもおどろきでした。
実証実験をするにあたって、厳しく熱くご協力してくれていた部署の方が実施してくださったことだったので、なおさら嬉しかったですね。
当日、運行した新幹線車内のアナウンスでも「小さなお客様ご一緒に」と粋なアナウンスが流れたんです。
Q.厳しい意見含めていろいろな声はあったけれど、最終的には一丸になった様子が伺えます。
――古川さん
そうですね、最初は社内でも「これが課題だ」「どう解消するんだ」という議論がほとんどでした。
大変なこともありましたが、みんなが前向きに同じ方向を向いて、難しいことだけどどうしたら実施できるか、
お客様に喜んでいただけるかという気持ちが1つになり、嬉しかったですね。
――井島さん
今回JRの本社の方々や、軽井沢のホテルの方、みなさんがお客様を前にすると「お客さまのために最善のサービスを提供しよう」という姿勢に変わる。
プロの姿勢に感銘を受けました。
みなさん、お客さまを前にするともう喜ばせようというスイッチが入るんだなと。
――古川さん
そうですね、事前の打ち合わせでは使用許可が降りなかった場所も、
当日、「雨だからここも開放するよ!」と言ってくれたり。
実現まで多くのドラマがあり、たくさんの方の力で形になったことなので、
今回の取り組みを1回で終わらせてしまうともったいないなと感じています。
一石を投じて、石が沈んで終わりではなくて、そこがちゃんと波紋で広がっていくように次に繋げていきたいですね!
4.世界中から反響があった「ペット専用新幹線」
画像出典:PETOKOTOプレスリリースより
日本初となる取り組みだった、ペット専用新幹線。
周囲からはどんな反響があったのでしょうか?話を聞きました。
4-1.ペットフレンドリー化をさらに進めるヒントはお客さまの声から
Q.実施を受けて、周囲や参加者の方からはどんな声が?
――古川さん
JR東日本の社内では「難しいポイントも多いからうまくいくのか?」という不安感もありましたが、
実施してみると「お客さまの喜ぶ声が嬉しかった」という空気感に変わりましたね。
私も井島さんも、涙腺が崩壊してしまうくらいの感動を覚えて、
最終的には「大変だったけれどやってよかった!」と感じています。
▲アンケートでは参加者の満足度も高かった「わん!ケーション」企画
画像出典:PETOKOTOプレスリリースより
Q.様々な課題がありましたが、その点はどんな声がありましたか?
――古川さん
やはり新幹線や駅は公共交通機関なので、
「アレルギー対策へのご心配」と、「乗車中のマナー」という声ももちろんありました。
それに対して参加されたお客さま自身の意識がすごく高く、ご自身でコロコロを持参してくださったお客さまも
いらっしゃりマナーがとても良かったことは大きな感謝と発見でした。
実施後のアンケートでは、お客さまから
「ペットフレンドリー化を推進するためにはペットオーナーさまも含めて、マナーの向上が必要だ」
というお声も寄せていただきました。
――井島さん
そうですね。PETOKOTOでは「輪の外を想像しよう」というルールがあります。
社会には動物が好きな人ばかりではないからこそ、本当の共生社会を作っていくためには、
ペットが苦手な人や触れたくない人への配慮も忘れてはいけません。
そういう意味で、ペットオーナーさま側の意識の向上は不可欠ですから。
Q.次に繋げるヒントが今回の取り組みで見えてきたのでは?
――古川さん
事業として継続していく上では、清掃面の徹底とお客様にご理解いただくための情報開示、
事業として実現させるための収益面も検討を深めたいと考えています。
今回の実証実験で、前向きな検討を進める一定の方向性ができたことは、すごく良かったポイントです。
他にも発見はたくさんありました。
例えば、今回の企画では、約30頭のわんちゃんが一つの車両に乗りましたが、
実は吠え声は出ていなかったんです。こうしたことはやってみないとわからない部分ですよね。
また、臭い対策などに関してもさらにデータを集めていきたいと考えています。
イメージが先行している部分も含めたみなさまのご不安なポイントを根拠ある情報と共にお伝えしていくことも私達の役割です。
4-2.業界からも熱視線!台湾やオーストラリアのメディアでもニュースに!
画像出典:PETOKOTOプレスリリースより
Q.同業者や業界からの反応はありましたか?
――古川さん
鉄道会社やバス会社の方から、今回の取り組みに関して「自分たちもちょっと挑戦してみたい」
と意見交換したいとの声をいただいています。
先日、デロイト トーマツ コンサルティングさんが開催したイベントに行ってきたのですが、そこでも行政とスタートアップ企業、
鉄道会社などの各プレーヤーがペットツーリズムを推進するためにどうすれば良いのかが、議題にもなっていました。
ペットツーリズムやペットとの共生に向けて取り組みたいという機運は徐々に高まっていて、
どうやって世の中の空気を変えていくかというところにきているのだと感じています。
――井島さん
PETOKOTOはシェアオフィスを使っているのですが、
そこの運営会社さんから「ペット同伴出社の実証実験ができないか」とお声掛けいただきました。
実際に2023年3月から1ヶ月間実証実験をして、また第2弾の計画も進んでいます。
今回のJR東日本さんとの取り組みが、ペットフレンドリー化のケーススタディとして
参考にしていただけるのがすごくいい流れだと思っています。
画像出典:PETOKOTOプレスリリースより
Q.メディアでも取り上げられていました。
――井島さん
そうですね、メディアからの反響もすごく大きかったです。
日本のマスメディアだけでなく、台湾やオーストラリアのメディアからも反響がありました。
PETOKOTO社内でも、ミッション実現に近づくための一石を投じられたと、社内のモチベーションがすごく上がっています。
5.人もペットもハッピーに移動できる世界を目指して
2023年3月には、資本業務提携も締結したPETOKOTOとJR東日本スタートアップ。
最後に、おふたりに今後の展望を伺いました。
Q.今回の挑戦を受けて、次はどんなことを見据えていますか?
――井島さん
ペット専用の新幹線「わん!ケーション」の第2弾に向けても動き出しています。
今後は、「駅」というプラットフォームを活用しながらペットオーナーさまのマナー向上の取り組みにも挑戦していきたいですね。
ペットと暮らしていない利用者の方々も受け入れやすいような環境作りは、今後の課題です。
またペットツーリズムを推進するだけでなく、多くの方が行き交うプラットフォームとして弊社サービスの「OMUSUBI」とも連携し、
保護猫や保護犬問題の解消に向けた社会貢献ともしっかりと紐付けて運営していきたいですね。
Q.JR東日本スタートアップさんとしてはどんな展望を?
――古川さん
今回、ペット専用の新幹線「わん!ケーション」も含めて3回の実証実験を行った結果、
我々としてもペットを家族として愛せる世界に貢献できる点が、まだまだあるのではないかなと感じられたからです。
もちろん、我々のアセットやリソースを使って、
PETOKOTOさんの事業も応援していきたいという気持ちがございましたので、出資をさせていただきました。
ペットツーリズムももちろんですが、PETOKOTOさんのフレッシュペットフード「ペトコトフーズ」
をJRE MALLへ出店するなど様々な取り組みを進めていきながら、
ペットとともに安心して暮らせる社会の実現に向けて挑戦していきたいと思っています!
――井島さん
PETOKOTOでも、これを受けて社内にペットツーリズム推進室を新設しました。
JR東日本さんが運営しているJRE MALLに「PETOKOTO FOODS」を出店する準備も進めているんですよ。
ぜひご期待ください!
※参考
PETOKOTO FOODS公式サイト
JRE MALLサイト
電車でペットとの旅行や移動をもっと楽しめる未来に期待!
大手鉄道会社として、多くの路線を運行しているJR東日本とPETOKOTOが実施した
ケージフリーで新幹線に乗車できるペット専用新幹線の取り組みは、社会的にもインパクトが大きいものでした。
今回は実証実験という形でしたが、今後さらなる広がりには期待が高まります。
ペットとの鉄道旅行をもっと自由に楽しめる未来は、もうすぐそこにきているのかもしれません。
JR東日本スタートアップ株式会社
1993年生まれ。新卒でJR東日本に入社。
設備メンテナンス、技術innovation推進本部、イントレプレナープログラム経験を経て
2021年よりJR東日本スタートアップにジョイン。
スタートアップ企業との事業創造プログラムの運営、投資業務に従事している。
株式会社PETOKOTO 執行役員/OMUSUBI事業責任者
1994年生まれ。2018年1月新卒第1号でPETOKOTO入社し、事業開発・CS・営業に従事。
OMUSUBIを審査制マッチングサイト日本一へ成長推進し、
同年5月に最年少で執行役員に就任。
現在はフード、メディア、マッチング事業横断のマーケティング戦略・推進を担当している。
Twitter:https://twitter.com/nanami_ijima
note:https://t.co/CZG29g5g8a
※画像は取材協力者提供とHPより