株式会社SHISEILABO代表取締役CEOとして活躍している武山和(わたる)さん。AI技術カメラ撮影事業、宿泊施設プロデュース事業、インバウンド観光事業、を三本柱に事業展開しています。普段は山形を拠点に活動している武山さんですが、三本柱のひとつ「AI技術カメラ撮影事業」のために、2015年頃から毎年4〜10回は中国を訪問しているそうです。
「現地の人から学んだ価値観は“Time is money(タイム イズ マネー)”」と語る武山さん。その言葉の真意は、ビジネスマンにとって重要なもののようです。武山さんが中国で何を感じ、どのように出張やコミュニケーションに活かしているのか。そのハック術についてお聞きしました。
1.AI技術が進歩している中国・深圳(シンセン)
株式会社SHISEILABO代表取締役CEO武山さん。日本と中国を行き来し、「AI技術カメラ撮影事業」に携わる
––年に4〜10回、中国へ出張するとのことですが、出張の目的を教えてください。
平均して約2週間は中国に滞在します。香港や上海にも行きますが、出張回数が多いのは深圳です。今、自身が携わっている「AI技術カメラ撮影事業」を、中国・深圳市の企業と一緒に進めているんです。深圳はアジアの中でもAI(人工知能)技術が発展していると言われていて、技術や新事業の情報源は、深圳のbeeplusというシェアオフィスにひしめいています。
––武山さんが携わっている「AI技術カメラ撮影事業」とは、どのようなものなのですか。
例えばサッカーの試合であれば、選手のスピード、走行距離、ディフェンスラインのフォーメーションパターンなどのデータを前もってプログラミングしておきます。その上で動画撮影すると、AI技術でカメラが選手の動きを適切に分析し、自動的にズームイン・アウトやベストな角度で撮影します。色の鮮やかさやコントラストが向上して精細感がある高画質の「4K」」にも対応しているので、AI技術カメラ撮影では高画質の動画も撮影できるんです。
––もう、実績はあるのですか?
日本の市場には投入しておらず、現時点ではまだリサーチ段階です。チェコ共和国や中国では50件ほど、販売実績があり、基本的に約80%がサッカーの試合の撮影です。
2.現地に学ぶタイム イズ マネーの精神
深圳市の北、東莞市(Dong-guan)での打ち合わせ風景
––中国で事業を進めることになったきっかけについてお話しいただけますでしょうか?
きっかけは、5年ほど前に「Airbnb(エアビーアンドビー)」という空部屋シェアサイトに、自身がプロデュースしている山形の温泉旅館の1室を掲載したことです。その部屋を中国・深圳のガラス加工会社の会長ご夫妻が利用してくださったのが縁で、それからは、ご夫妻が来日した際は私がコーディネートし、逆に私が訪中したらご夫妻が案内してくれるなど交流を深めていきました。
––ご夫妻とのご縁がきっかけで、深圳と関わることになったのですね?
ご夫妻のおかげで少しずつ深圳の魅力を知ることができて、そのうち、そのガラス加工会社の従業員の1人が1、2年前にAI・AR(拡張現実)技術の開発事業で起業することになり、その過程で私も一緒に「AI技術カメラ撮影事業」を始めることになりました。
––中国の人と一緒にビジネスをする中で得られたものは何でしょうか。
中国の人は日本人の数千倍「Time is money(タイム イズ マネー)」の価値観で行動しています。以前、日本で中国人の「爆買い」が話題になりましたが、あの行動にあるのは中国人の「タイムイズマネー」という価値観。「1回の来日で、どれだけ日本の良いものを買ってこられるか」が大事なんです。
中国の人はプライベートの時間を大事にしています。プライベートは自分の時間をゆっくり過ごすために、効率よく仕事をこなそうと工夫をするんですよね。だから、1回で可能な限りできることを、その場で全て行ってしまおうとするのだと思います。私の周りの中国人達も、いかに毎日ゆっくり過ごすかを考えて、とても効率よく仕事をしているように見えます。
––「タイムイズマネー」の価値観を自身の事業に活かせていますか?
今、出張中は正にその観点から「交渉力」を学んでいます。
打ち合わせひとつとっても、中国人は決められた時間でどれだけ話を詰められるか、判断材料を揃えられるかを考えています。気になることがあると、打ち合わせ中でもその場ですぐにメッセンジャーアプリでメッセージを送るんですよ。それがとても速い。打ち合わせの後で連絡するのではなく、「今やる」の精神。決断に必要な情報を集めるためなら良い意味で嘘もつくし、とにかく交渉が上手いんです。
3.プライベートの過ごし方が仕事にも活きる
中国に滞在中は現地の人とのコミュニケーションを大事にしている。Wang Hai Lou restaurantにて
––武山さんは中国滞在中、仕事と余暇をどのように切り替えていますか?
私は、誰かと打ち合わせをしている時くらいしか「仕事」とは考えていません。ミーティングや会議をするのが仕事、それ以外はコミュニケーションという感覚。仕事の話だけではなく、プライベートで好きなものや嫌いなものを共有することで相手を深く知ることができますし、それが仕事にも活きると考えています。
––現地の人と信頼関係を築くために役立っている日本の物はありますか?
資生堂の化粧品「アルティミューン」が中国で人気があるので、日本で事前に入手してプレゼントすることがあります。あとは胃腸薬「キャベジンコーワα」。現地でも胃薬は売っていますが、日本の「キャベジンコーワα」は中国で有名です。
4.スポーツから宿泊施設まで楽しめる中国のブレジャー
PCに貼られている「海人」のロゴシール。沖縄でトライアスロンに参加するほど体を動かすのが大好き
––出張中の現地でプライベート楽しむ「ブレジャー」をどのように過ごしますか?
現地の知人とフットサルを楽しんでいます。深圳では、ビルの屋上のほとんどがフットサル場なんですよ。約300メートルのビルが200棟、500メートル以上のが3棟くらい建っていて、その屋上にフットサル場があるので、フットサルをやるのには困らないですね。
フットサル場では、プレー終了後の約5分後、自身のスマホに監視カメラの映像を送ってくれるサービスがあるんです。中国の映像シェア文化の凄さを感じます。
日本にいるときと同様に、プールやジムにも行きます。だから水着は必ず持っていきます。博物館や飲食店を回るよりも、体を動かす方が好きなので。
––深圳の他に訪れる場所はありますか?
香港です。バスの場合は1時間ほどかかりますが、深圳からフェリーに乗れば40分くらいで移動できるんですよ。香港ではいつも「マルコポーロ香港ホテル」に泊まります。食べ放題のレストランやお酒を楽しめるバーがあって気に入っています。
台湾も行きます。台北市の温泉地「烏来(ウーライ)温泉街」はスパもレストランもあるし、対岸には山を望むことができます。
ブレジャー中の台湾、烏來温泉にて。ホテル「Volando」で行われたイベントの様子
––現地の人との交流を深められている一方で、トラブルに巻き込まれたことは?
深圳のバーでお酒を飲んでいた時に仲良くなった人と翌日街を散策していたら、「どうにもならない事情でお金をおろせないから10万円貸してくれ、明日返す」と説明されて。詳しく事情を聞くと違和感のない説明だったので、貸したんです。でも、それっきり返ってこなかったですね。この出来事以来、滞在先でどんなに仲良くなった人でも、お金を貸さないと決めました。
5.出張に持っていくものはコレ
武山さんが中国出張へ行く際の必須アイテムたち
––武山さんが必ず持っていく海外出張アイテムについて教えてください。
asoboze(アソボーゼ)「AVECALDO(アベカルド)」のビジネスバッグ
出張へは基本的にこのバッグひとつで出かけます。飛行機内に持ち込めるので、現地の空港に着いたら荷物を待つこともなく、すぐに移動できます。革製なんですけど、すごく軽くて使いやすいので、同じ物を3つ持っています。
ハンディエスプレッソマシーン「handpresso(ハンドプレッソ)」
中国のパーティ(Wang Hai Lou restauranなど)では、最初に必ず中国茶を飲むんです。皆が中国茶を飲み終わった頃にこのマシーンを使って、日本から持ってきたインスタント用の緑茶の粉を使ってお茶を淹れています。
黒い綿棒
綿棒も持っていきます。深圳に限らず中国は大気汚染のニュースを耳にするので、日本にいるときよりも、耳や鼻の中の汚れが気になるんです。綿棒の質は現地のものよりも日本の方が良いと思うので、日本から「黒い綿棒」を必ず持っていきます。
––アイテム一つひとつにこだわりを感じます。ちなみに、服はどうされているのですか?
あまり服装を気にしないので基本はスーツで出かけて、あとは私服を1セットだけ持っていき、必要な時は現地の衣料品店「ユニクロ」などでTシャツを購入します。下着もアメニティも現地で調達しますね。200〜400人民元程度で一式揃えることができますよ。
––その他、中国出張で準備しておくと便利なツールやアイテムはありますか?
「WeChat」は必須です。「WeChat」は無料で使えるメッセンジャーアプリで、いわゆる「LINE」のようなものです。「WeChat Pay」を使えば電子マネー決済もできます。中国では支払い時に「WeChat Pay」で決済をすることがほとんどなので、スマホに必ずインストールしておくと良いですよ。
––中国では電子マネー決済が進んでいるようですが、実際に状況を見てみてどのように感じましたか
便利だと思いました。例えば、日本のパーキングでは、ほぼ現金支払いですが、中国のパーキングでは支払い時にQRコードを読み込んでオンライン決済ができるんです。私は中国語が全く分からないので、現地の知人に必ず決済の内容を確認してから支払いをしますが、操作方法が分かりやすいので特に困ったことはありません。
6.海外の時間は将来の自分への「投資」
様々な人々とのコミュニケーションは、武山さん自身のブレない価値観の再確認にもなっている。Wang Hai Lou restaurantにて
––今後、どのように中国と関わっていきたいですか?
今取り組んでいるAI技術カメラ撮影事業を通して深圳の企業との関係を深めて、2025年までに教育事業に繋げていきたいです。AIカメラの最新技術を知って欲しいという思いもありますが、日本の子どもたちを深圳に派遣してサッカー交流をしたり、言葉が分からなかったとしても、海外の人とコミュニケーションを取る必要性や積極性を深圳の企業で学んだりして欲しいと思っています。
––最後に、武山さんにとって海外出張とは何でしょうか?
自分への「投資」です。子どもの頃から転校が多かったためか、生活する場所に固執することがなくて、どこに行ってもその環境に順応できるんですよ。だけど、どこに行っても自分の価値観につながる「芯」がブレることはありません。
そういう意味では海外も同じ。海外出張で多種多様な人と話をする中で、相手を認めるのと同時に、自分の価値観がブレないかを再確認することができます。
たくさんの人とコミュニケーションを図り、多くの経験を共有することが投資です。自分へ「投資」した上で、どこに行っても自分がブレなければ、仕事やプライベートで誰と会っても上手くやっていけると思います。
押さえておくと便利な中国の「食」事情!
広東省にある深圳では、酢豚や炒飯などの「広東料理」をイメージする人もいるかもしれません。ですが移民都市としても知られる深圳は、様々な人達が集まっているので食文化が豊か。
武山さんも「白身魚や蟹を使ったお料理も食べられますよ」と話すように、日本人の舌に合う料理も探しやすそうです。大きく発展してきた歴史もあるので、中国各地の料理だけでなく、日本料理やイタリア料理を食べられるお店もあるのだとか。
2).水道水は危険なので必ず買うこと
出典:amazon「チベット5100」
武山さん曰く、「水道水を飲んではいけません」とのこと。
中国では、まだ水道のインフラが十分ではなく、直接口にすると体に影響を及ぼすと懸念する声があります。飲料水は必ず購入するようにましょう。武山さんのおすすめは、「チベット5100」(写真)。現地の人からも勧められる水なのだそうです。
3).中国流おもてなしは毎日が宴会
中国の食事では、毎日、料理が円卓から溢れ落ちるほど並べられます。食べきれないくらいの料理を提供するのが中国流のおもてなしだそうで、「毎日、宴会のようですよ」と武山さん。食べる料理に本格的な日本料理のような形式はなく、円卓に並んでいる料理から好きなものを取っていただくのだそうです。
株式会社SHISEILABO代表取締役CEO。日本と中国・深圳をバッグ1つで行き来し、現地のAI技術を活かした「AI技術カメラ撮影事業」のほか、山形・東京・福島・長野などの宿泊施設プロデュース事業(経営代行事業)、食品会社をはじめ中小企業の事業戦略コンサルタントを展開している。現在は、日本の14歳以下の子どもたちを対象に深圳への派遣事業(教育事業)の実現に向けて奮闘中。フットサル、ジム、プールで泳ぐなど体を動かすことが大好きな若手起業家である。公式HP:https://www.shisei-labo.com
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