ビジネス基礎知識

2019.08.05

Lock Icon 会員限定

中国で遭いやすい犯罪は? 海外出張での防犯対策と体験談

海外出張に出かける前は出張先の治安も気になるところ。
「命の危険を感じることがあるのか」「夜に一人で出歩いても大丈夫なのか……」など、初めて行く国への出張に不安はつきものです。今回は、中国出張を予定している方向けに、中国で発生している犯罪の手口や犯罪から身を守る防犯対策を、現地で実際に犯罪に会った人の体験談とともにご紹介します。

1.中国の治安

中国は概ね治安が良いと言われている国です。夜道を1人で歩いても、身の危険を感じることは少ないでしょう。しかし、残念ながら日本に比べて軽犯罪が多いのも事実です。日本と同じ感覚で過ごしていると犯罪に巻き込まれてしまうことも。
特に治安が良い日本に慣れている日本人は防犯意識が低くなりがちです。中国人から見ると隙があり、犯罪のターゲットになりやすいのが日本人の特徴と言えるでしょう。

参考:外務省海外安全HP「中華人民共和国(中国)」
https://www.anzen.mofa.go.jp/info/pcinfectionspothazardinfo_009.html#ad-image-0
※チベット自治区、新彊ウイグル自治区は、中国政府によるチベット人・ウイグル人迫害のため、現地民の不満が募っており、テロが起こる可能性があります。(2019年7月時点)

2.出張者・旅行者が巻き込まれやすい犯罪

中国に渡航した人が巻き込まれやすい犯罪について、よくある手口と対策を、実際に犯罪に遭った方や遭いそうになった方の体験談とともにご紹介します。

2-1.盗難(スリ・置き引き)


スリや置き引きなどの盗難は、最も被害に遭いやすい犯罪です。現地の中国人でも被害に遭っていますから、油断大敵です。特に旧正月(1月後半~2月中旬、年によって異なる)前は、故郷に帰る交通費を確保するために犯罪を犯す人が増える傾向にあります。
駅や地下鉄、バスの中、市場などの人混みでは、身体を密着させやすくスリがしやすいため、注意しましょう。気づかれないよう素早く盗むため、「その手口がすごい」とインターネット上に動画がアップされることがあるほど。

目を離した隙に荷物を取られる置き引きもよくあります。公園のベンチでスマホを見ているとき、レストランで食事をしているときなど、何かに集中している隙に荷物を盗られたてしまうケースも後を絶ちません。

≪体験談≫ 公園での置き引き〜日本人カメラマンMさんの場合〜
動画を撮影するために訪中していた日本人カメラマンMさん。仕事の後にギャラとカメラが入ったバッグをベンチに置き、その横でスマホを見ていた。バッグと身体を密着させていたが、気が付いたらバッグが消えていた。カメラ等の機材やギャラなど、被害総額は日本円で約70万円にもなった。

2-2.タクシー運転手の運賃つり上げ・おつり詐欺


中国のタクシーは日本よりも安く、とても便利です。しかし、中には料金をごまかす運転手がいるので注意が必要。特に土地勘のない日本人を含む外国人は悪徳タクシーにとって格好のターゲットとなっています。
最も多い手口が、目的地までわざと遠回りをしてタクシー運賃をつり上げる手口です。また、おつりを少なく渡したり、法外な値段を請求(メーターがついていないタクシーの場合)したりする運転手もいます。

≪体験談≫タクシーでのお釣りごまかし〜上海在住 台湾人Yさんの場合〜
上海在住の台湾人Yさんは、タクシー降車時に支払いを「交通カード(交通系ICカード)」で支払った。次の日に交通カードを使うと500元(約7,900円)チャージしていたはずが、数元しか残っていなかった。タクシー内でカードを運転手に渡した際、運転手がカードを車内に落として拾ってから支払いをした。その際に、カードをすり替えたと思われる。

※中国ではカードのすり替えが多発しているため、中国人はカードホルダーに入れたり、カードにシール貼ったりと工夫している。

3.狡猾な犯罪

スリやタクシー詐欺以外にも、狡猾な犯罪が多く発生している中国。一体どんな犯罪があるのでしょうか?いくつか事例をご紹介します。

3-1.困っているふりをしてお金を要求する

道を歩いていると「財布を落としたため、家に帰れない。悪いがタクシー代を貸してくれ。お金はあとで必ず返す」と声をかけてくる人がいます。
会社の名刺を差し出し、「私はここで働いている。この名刺の電話番号に連絡してくれれば、大丈夫」と言われることもしばしば。「身元もはっきりしているし、ビジネスマン風の見た目(スーツ着用)なので、信用できそう……」と同情してしまいがちですが、それはウソの可能性が大です。
差し出された名刺はニセモノで、会社に連絡しても電話番号は使われていないか「そのような人はいない」と言われてしまうだけなのがほどんどです。
もちろん、貸したお金は返ってきません。

大きな駅では子どもを連れて「故郷に帰りたいがお金がない。電車賃をくれ」と話しかけてくる人もいます。「子連れで大変そう」「かわいそう」と同情してはいけません。お金がないのはその人の責任です。
善意でお金を渡してしまうと、それを見ていた他の人も「私もお金がない」と要求してくるので、相手にしないようにしましょう。

3-2.中国茶詐欺


街で中国人カップルから「写真を撮って」と話しかけられることがあります。写真を撮ってあげると「日本人ですか?」と声をかけてきて、会話が盛り上がる……。こんなシーンに出くわしたら要注意です。
「中国で友達ができた! 」と嬉しくなってしまいますが、これが詐欺被害に遭うはじまり、ということもありえます。
中国茶詐欺の手口は、仲良くなったと見せかけて「お茶を飲みに行きましょう」と茶館へ連れて行くところからはじまります。そこで、お茶を飲みながら話をしただけなのに、会計時に日本円で1万円~数万円ほどのお茶代を請求するのが、中国茶詐欺のよくある手口です。
茶館とグルになってお金を巻き上げる犯罪で、観光地や繁華街で多く発生しています。

また、お茶の無料試飲と称して、いろいろなお茶を飲ませてくれることも。こちらも最終的に多額のお金を請求されることになりますので注意しましょう。

3-3.その他の詐欺事例

ここまでご紹介した犯罪以外にも、中国では様々な手口の詐欺犯罪が発生しています。参考までに、実際に起きた詐欺の事例をいくつかご紹介します。

≪ケース1≫ ベラルーシ紙幣詐欺〜駐在員Yさんの場合〜
上海の露店で買い物をし、おつりを受け取った。夜で暗かったため、お札をよく見ていなかったが、後日お札を見ると中国元ではなくベラルーシ紙幣だった。銀行で両替をしようとしたら「ベラルーシ通貨は両替できない」と断られてしまった。
※日本国内でもベラルーシ通貨の取り扱いがほとんどないため、両替はほぼ不可能。

≪ケース2≫ 偽チケット詐欺〜駐在員Kさんの場合〜
海外アーティストのコンサートチケットが売り切れてしまったが、見知らぬ男性から「チケットが余ってしまった。買ってくれないか」と声をかけられた。定価より安く買えたが、そのチケットはニセモノで会場に入れなかった。

4.≪番外編≫家族が一緒のときや慣れてきた頃も要注意! 


中国では、年間20万人以上の子どもが誘拐されています。誘拐された子どもは、物乞いビジネス(身体に障害を負わせて同情を引き、お金をもらう)に使われたり、子供のいない家庭に売られたりしています。そのため中国では、中学生になるまでの通学は親同伴が必須です。

また、子供だけでなく女性が誘拐される事件も発生しています。中国の地方都市では、知的障害を持つ女性が連れ去らさられる事件が相次いで起こりました。誘拐された女性は嫁不足に悩む農村部の男性たちに売られ、子どもを産ませる道具として使われていたとか。2015年にこの誘拐グループが逮捕されましたが、同じような事件は未だ起きていると言われています。

≪参考≫
実際にあった誘拐事件がモデルの映画『最愛の子』
http://bitters.co.jp/saiainoko/

5.どういう人が巻き込まれやすいか

外国人、特に日本人は犯罪のターゲットにされやすいようです。中国人から見ると、歩き方や服装で日本人または外国人とわかることが多いと言われています。
また、カバンの口が開いている、テーブルの上にスマホを置きっぱなしにするなど、見るからに防犯意識が低い行動をしている人は、狙われやすくなります。

意外なことに思えるかもしれませんが、中国に来たばかりの人よりも中国生活に慣れはじめた頃が被害に遭いやすいようです。中国に来たばかりの頃は警戒心もあるため防犯意識が高いのですが、慣れてくると油断して隙が生じがち。滞在期間が長い方は、特に注意するようにしましょう。

6.犯罪に遭わないためには?


防犯意識を高めておけば、犯罪に遭う確率はグッと低くなります。犯罪ケースごとに、防犯対策を見ていきましょう。

6-1.手荷物からは目を離さない&細心の注意を払う

まずは荷物から目を離さないことや、バッグを容易に開けられないようにすることが大切です。トートバッグは手を入れられやすく、危険です。ファスナー付きなど口が閉まるタイプのカバンを使いましょう。

肩掛けバッグの場合は荷物を前に回す、混雑時は荷物を脇に抱えるなど、手を入れられないようにする工夫も必要です。バッグパックは背後から開けられてしまうことがあるので、貴重品は取り出しにくいところに入れるか、別に持つ方が良いでしょう。

日本でよく見かけるカフェなどでテーブルの上にスマホを置いておく行為も要注意。隙をねらって盗まれる可能性が高いためです。スマホを使わないときは、バッグの中にしまっておきましょう。

6-2.タクシー移動はアプリを活用


タクシーの運転手の中には、わざと遠回りをして運賃を釣り上げる人もいます。
対策としては、地図アプリを使って、タクシーが遠回りしていないかチェックすると良いでしょう。ただし、中国国内でGoogleマップは使えません。「高徳地図」または「百度地図」という中国の地図アプリをダウンロードしておくことをおすすめします。

乗車時に料金を交渉してくるタクシーは、乗車しない方が無難です。通常の何倍もの料金を提示される場合がほとんどです。たとえ100元(約1,600円)を20元(約300円)に値切れたとしても、降車時に「20元じゃだめだ。100元払え」と請求されることもあります。他にタクシーがなく、それに乗るしかない場合は「メーター」と言って、メーターを使うように指示しましょう。

また、降車時には、おつりの金額が合っているか必ず確認を。おつりが足りないときは、毅然とした態度でおつりが足りないと主張しましょう。

≪体験談≫ タクシーのお釣りごまかし〜駐在員家族Kさんの場合〜
タクシーに乗車し、料金が30元(約470円)だったため50元札(約790円)を渡した。おつりは20元のはずだが、10元しか渡してくれない。もう10元とレシートを要求したが、渡してくれないため「公安に電話する」とその場でスマホを取り出すと、10元とレシートを渡された。
※公安の電話番号は、日本の警察と同じ「110」番です。
【おすすめ】配車アプリ「DiDi」を使ってみよう! 
利用タクシーは配車アプリを使うのも一つの手。
中国では「DiDi」と呼ばれる配車アプリが普及しています。
使い方は他のタクシー配車アプリとほぼ同じです。配車アプリを使うメリットは、事前に料金が表示される点。支払いも、事前に登録したクレジットカードから支払えるので、おつりをごまかされる心配もありません。

※日本で利用できるDiDiのアプリは、中国では使えません。中国で使う場合は、中国版のアプリ「滴滴出行 DiDi(DiDi Chuxing)」をダウンロードする必要があります。
※過去にUberも中国で利用されていましたが、2016年に撤退しました。(2019年7月時点)

6-3.妙に親しげに話しかけてくる人にも用心しよう

中国人では日本のアニメやアイドル、ドラマ等が若い世代に人気です。そのため、日本人だとわかると声をかけてくることも。興味本位で近づいてくることがほとんどですが、まれに詐欺目的で話しかけてくる人もいます。
仲良くしたいのか、だまそうとしているのかの見極めが難しいところですが、少しでも「おかしいな? 」と感じたら用心した方が良いでしょう。

例えば、食事やお茶に誘われたら、彼らの知っているお店に連れて行ってもらうのではなく、「ここに行きたい」と自分から提案してみましょう。それでも、頑なに彼らが提案したお店に連れて行こうとする場合は「中国茶詐欺」などの可能性があります。

出会ってすぐの人から金銭のやり取りを持ちかけられた場合も詐欺を疑いましょう。
中国人は、友達になると当たり前のようにお金の貸し借りをします。しかしながら、中国人は友達になるまで時間をかける国民性です。出会った日に「友達だから」とお金を借りようとすることは、詐欺以外ほとんどありません。

7.もしも被害に遭ったらどうすればいい?

どんなに気をつけていても、被害に遭ってしまう場合があります。その場合、中国語を話せる人を見つけることが必要になります。被害状況を訴えるのに、片言の中国語や筆談では難しいためです。

7-1.被害にあったらまずは公安(警察)へ


盗難に遭った場合、まずは公安へ被害届けを出しましょう。盗まれたものは、まず戻ってきませんが、盗難証明書を発行してくれます。盗難証明書は、後日保険会社に申請する際に必要となります。
公安には、稀に英語を話せる人もいますが、中国語しか通じないことがほとんどです。中国語の話せる人にお願いして、一緒に公安へ行ってもらいましょう。

公安へ行くと、主に以下の質問をされます。

・被害にあった日時、場所
・盗まれたモノの特徴(商品名や色、形状、いくらくらいのものかなど)
・盗難に遭ったときの状況(ベンチに荷物を置いて、その隣でスマホをいじっていた。その後隣を見たら荷物がなくなっていたなど)

※被害に遭ったと思われる場所付近の公安へ行く必要があります。場所が離れていると「そのエリア(盗難に遭った場所)はここの管轄ではない。」と対応してくれません。

※「紛失届」ではなく「盗難届」の証明書を発行してもらいましょう。「紛失届」だと海外旅行保険では補償されません。

7-2.タクシーのレシートが被害後に役立つことも!

 

万が一被害に遭ったときにスムーズに対応、もしくは被害を最小限にするために、タクシー利用時にはレシートを貰うクセをつけておきましょう。万が一、後から騙されていたと分かったときに、レシートがあればタクシー会社に訴えられます。
レシートには問合せ番号が記載されており、被害に遭った場合は、そこに連絡をして被害に遭ったことを伝えます。その後、タクシー会社が調査をし、被害が認められると返金されます。ただし、問合せは電話のみで中国語しか伝わりません。中国語を話せる人に電話をかけてもらいましょう。

≪レシートを貰う場合の中国語≫
・レシートをください
「给我开发票(ゲイ ウォー カイファーピャオ)」
※「发票(ファーピャオ)」だけでも通じます。
≪体験談≫ タクシー会社に被害を訴えた例〜駐在員家族Rさんの場合〜
古北省武漢市の中心部からでタクシーを拾ったRさん。運転手に「武漢駅へ行ってほしい」と伝えたが、うまく伝わらず「武漢駅」と書いた紙を運転手に渡した。
途中で遠回りをされていることに気づき、抗議したが「道は合っている。」と相手にされなかった。通常20元(約310円)ほどで行ける距離だったのに、最終的に90元(約1,400円)近くの料金を支払わされた。
そのため、タクシー会社にクレームを入れるためレシートを要求。しかし、運転手はレシートを発行せず、もともとあった異なるレシートを渡してきたので、抗議。正しいレシートを発行してもらった。
その後、中国人の友人にタクシー会社に連絡してもらい、被害を訴えるとともにレシートを提示。謝罪と共に返金された。

強い気持ちで対応しよう


中国で起こっている犯罪は「こっそり盗む」「親しげに見せて騙す」といった狡猾な手口がほとんど。その巧妙さから、犯罪に遭っていると気づくのに時間がかかる場合もあるでしょう。「騙されているかも」「犯罪に遭っているかもしれない」と感じたら、「騙さないで! 」と強い態度をとることが大切です。
「ここは日本ではない」という意識を持って、中国出張に出かけましょう!

関連記事はこちら
海外出張先は安全?アジアの治安情報
クレジットカードが使えない!? 偽札が出回っている!? 中国で便利な支払い方法は?
中国ではお酒の席は大きなビジネスチャンス! 中国ならではのポイントを押さえればうまくいく

Lock Icon

この記事は会員限定です

会員登録すると続きをお読みいただけます。