海外と接点のある仕事をしていると、お互いの国の文化や価値観の違いに驚いたり、悩まされたりすることがあるかもしれません。また、日本では当たり前だと思っているマナーも、外国人からすると不思議に思えることもあります。
そんなときも相手の国のビジネスマナーや価値観を知っておくと、仕事もスムーズに進めやすくなります。
お互いのビジネスマナーの違いを知っているかどうかは、ビジネスチャンスを掴む上でもきっと役立つはず。この記事では、日本とも関係の深いアメリカと中国のビジネスマナーをチェック。日本では当たり前だけど、世界ではびっくりされることの多い、日本のビジネスマナーもご紹介いたします。
1.日本とは異なるアメリカのビジネスマナー5選
自己主張をすることや個を重視するアメリカは、協調性や集団の利益を重視する日本とは異なる考え方を持つ人が多い国です。ビジネスマナーにおいてもその違いは現れており、なかには日本にいるときと同じように対応しないように、注意した方が良いものもあります。
アメリカ人と仕事をする機会のある人は、ぜひチェックしてみてください。
1-1.挨拶はお辞儀ではなく握手
日本では挨拶の場面でお辞儀をすることが多いですよね。社員研修でお辞儀をする際に身体を傾ける角度まで教える会社もあるのが日本です。
一方で、アメリカではお辞儀ではなく握手をします。握手をしながら挨拶の言葉を述べれば完璧です。
その際、手を握る強さは相手と同じくらいが良いとされますが、握りしめる強さで情熱などを表す人もいるようです。逆に弱々しい握手や緊張して手汗をかいた手で握手をするのは避けたいところ。落ち着いて、相手の目を見てしっかり握手をしてください。
1-2.ミーティングはアジェンダを先に提示
アメリカ以外の国でも言えることですが、多くのアメリカ人は無駄な時間を過ごすことを嫌います。会議でも、はじめにこの会議は何を目的に開かれ、どんな内容を話すのかアジェンダで提示します。
そうすることで会議自体が有意義に開催されるのはもちろん、アメリカ人も生産性のある時間が過ごせることがわかり、安心して会議に参加できます。
以前BThacksのインタビュー企画にも登場していただいた、株式会社グローバルステージ 代表取締役&CEO 大洲早生李氏も、「会議にしても取引にしても、それに自分の時間を費やす価値があるかどうかを現地の人は常に見極めています」と話しています。大洲氏が話しているように、アメリカ人は日本人よりも時間単価にシビアだと心得ておくと良いかもしれません。
※参考記事
北米に移住した女性リーダーが異文化で得たビジネススタイルを語る!【海外出張リーダー】Vol.12
1-3.会議では意見を言う
会議に参加する人数や進行スタイルにもよりますが、日本では会議で意見を言わない人も多いと感じている方もいるのではないでしょうか。
アメリカでは基本的に、意見を述べないということは、その場にいないことと同じ、もしくは何も意見がない人と捉えられる傾向にあります。もちろん、意見を言わなくてもその人に意見があることもあります。しかし、アメリカ人が多く参加する会議に出席する場合は、たとえ他の出席者と同じ意見でも、自分の言葉で意見表明をした方が良いでしょう。
※参考記事
世界をまたぎイノベーションを創出! 起業家育成を志す経営者の仕事術【海外出張リーダー】Vol.9
1-4.ボディーランゲージは日本と異なる意味の場合もあり
何気なく使うボディーランゲージも国によって異なる意味に解釈されることがあります。
例えば、日本ではオフィスでも何気なく使う「おいで」という意味を表す手招きする仕草は、アメリカでは日本と正反対で「あっちへいけ」「シッシッ」としている仕草と受け取られます。
また、考えごとをするときなどについ腕を組んでしまう人もいることでしょう。アメリカでは、腕組みは「警戒、威嚇」を表すポーズと解釈する人も多く、その場にいる人を緊張させてしまう可能性があります。
1-5.宗教や政治観やジェンダーに関する話題は避ける
アメリカでは無宗教であることも含め、どんな宗教を信じているかはその人のアイデンティティーを構成する一部のように捉えられています。また、政治に関しても大統領選などをみてもわかるように、政党や候補者に対する関心は大きく、日本の感覚とは異なります。
気になる話題ではありますが、異なる宗教、人種、政治・歴史観の人が集う場で気軽に話すことのないように注意しましょう。また「女性だから〜」「男性だから〜」というようなジェンダーに関する発言にも注意したいところです。
株式会社01Booster(ゼロワンブースター)共同代表の合田ジョージ氏も、BThacksのインタビューで「事前に滞在国のタブーを調べて、政治のことは話題にしない等気をつけている」と語っています。
※参考記事
どの国でも応用可能!怖がり起業家が「不安」を逆手に取った出張成功術【海外出張リーダー】Vol.10
2.日本とは異なる中国のビジネスマナー6選
同じアジアで比較的距離も近い中国は文化も似ている部分がある一方で、日本とは違う文化もたくさんあります。ビジネスマナーも、それは同じ。中国の方と仕事をする機会のある人は、これをチェックして備えましょう。
2-1.英語のニックネームがある
中国人の中には、「Joe」「Vivianne」「Chloe」など、イングリッシュネームと呼ばれる英語名を持っている人も多くいます。そのため、多国籍企業に勤めていて、アメリカ人だと思ってメールのやり取りをしていた人が中国人だったというケースもよくあります。
英語では発音が難しかったり、覚えにくかったりする中国語の名前を呼びやすく、覚えてもらいやすくするために…などの理由があります。日本人でなかなか名前を覚えてもらえない人も、真似してみると名前を覚えてもらいやすくなるかも。
2-2.WeChatでのやり取りもOK
「WeChat」は、文字や音声に加え、写真や動画、グループチャットなどでコミュニケーションができるメッセージアプリです。日本のLINEの中国版と考えて良いでしょう。
日本でもLINEで業務のやり取りをする会社もあると思いますが、中国では名刺交換の代わりにWeChatのIDを交換することもあるほど、ビジネスシーンにも浸透しています。ビジネスにおいても、中国の方ともう一歩踏み込んでコミュニケーションを取りたい人は、WeChatをダウンロードしておくと良いかもしれません。
中国に出張する機会の多い株式会社SHISEILABO代表取締役CEOの武山和(わたる)氏もBThacksのインタビューで以下のように話しています。
「打ち合わせひとつとっても、中国人は決められた時間でどれだけ話を詰められるか、判断材料を揃えられるかを考えています。気になることがあると、打ち合わせ中でもその場ですぐにメッセンジャーアプリでメッセージを送るんですよ。それがとても速い」(※)
※以下の参考記事より引用
中国人の価値観から交渉力を学べ! ブレない若手起業家が考える海外出張とは【海外出張リーダー】Vol.6
タイムイズマネーの価値観で行動する人が多い中国では、さまざまな手段を使って時間を有効に使っているようですね。
2-3.メールの定型文はあまりない
日本のビジネスメールと言えば、「お世話になっております」や「お疲れ様です」で始まり、「どうぞよろしくお願いいたします」で終わる定型文がありますよね。
最近はビジネスでもチャットツールを使う人が増えてきて、堅苦しい表現を使わなくなってきたとも言えますが、合理的な人が多い中国ではメールでも定型文をあまり使いません。いきなり要件や本題から入っても失礼ではないので、気張らずにメールを書き始めましょう。
2-4.お金の話は意外とオープン
日本では、給料をはじめとするお金のことは、相手や場所、タイミングなどを選んで慎重に話す傾向にありますよね。
中国ではお金に関しては割とオープンで、あけすけに話す人も少なくありません。それはビジネスでも同じで、予算や利益といった商談に必要なお金の話はもちろん、給料の話についても会話の中によく出てきます。
これは欧米でも見られますが、上司に給料アップの交渉をすることも日常的にあります。
中国の方との会話中に給料の額を聞かれたとしても驚かず、言いたくない場合は流してしまってよいでしょう。
2-5.出された料理は全部食べなくてOK
中国では、宴会や接待などで出される料理の量がとても多いのが特徴です。
「こんなに食べきれない」と思うほど、ビジネスパートナーとの食事の場で料理が並ぶこともあります。そんなときは、食べきる必要はありません。
全部食べてしまうとむしろ失礼で、相手はもっと料理を追加してきます。食べきれないほどの量の料理を出すのが中国人のおもてなしで、客人が残すことを前提として作られているのです。
残すのがもったいないという人は、お店の人に持ち帰りの容器をもらって残った料理を持ち帰ってもOKです。
2-6.乾杯は何度でもする
日本の飲み会などは、会の始まりに乾杯をすればそれきりですが、中国ではお酒が注がれるたびに乾杯をしたがる人もいます。どちらかというと年齢が高い人に多いようですが、お酒を注がれる度に乾杯をする人がいたら、一緒に乾杯に付き合うとノリが良い人と思ってくれるでしょう。
ただ、その度にグラスを飲み干していると、お酒の弱い人は大変なことになってしまうので、飲み干す必要はありません。あくまで乾杯の仕草をするだけで良いのです。
3.海外では非常識な日本のビジネスマナー
世界的に見ても日本は独自の文化を持つ国と言われ、それはビジネスマナーにおいてもしか
りです。この章では、日本では当たり前に行われている習慣のなかでも海外では非常識なビジネスマナーを紹介します。
日本では常識とされるマナーも世界では珍しいこともありますよ。
3-1.ことあるごとにするお辞儀をする
日本人のお辞儀文化は外国人からすると不思議に映ることが多いようです。
海外でもお辞儀をするシーンはありますが、たとえば偉い人に何度もペコペコをお辞儀したり、ことあるごとに会釈をしたり、見送りの際に深々とお辞儀をする姿は滑稽に映るようです。
3-2.夏でもスーツを着るサラリーマン
スーツは海外でも着用する文化がありますし、外国人からしても特に不思議に思うことはないでしょう。しかし、暑いにも関わらず、真夏に長袖の黒いスーツを着て汗だくになる姿は「なぜ?」と感じる外国人が多いようです。
出張時などは相手の国の習慣を見極めて、服装も考えるとお互い快適に仕事ができそうですね。
BTHacksの海外出張リーダーインタビューに答えてくれた鷹鳥屋明氏も、出張先で中東の民族衣装を着こなすことで、現地に溶け込む工夫をしているそうです。
※参考記事
海外出張で命をかける!? 現地に溶け込むサラリーマンの中東ビジネス手法【海外出張リーダー】Vol.4
3-3.報連相(ほう・れん・そう)の徹底
日本では「報告・連絡・相談」をまとめて「報連相(ほう・れん・そう)」と呼び、重要視される傾向にありますよね。しかし、世界では、こまめに報告をしたり連絡したりするのが良いとされるような習慣を、自分のことを信頼していないからだと捉える人も多いようです。
外国人の部下がいたり、取引先の担当者が外国人だったりする場合、自由に仕事をしてもらった方が相手はのびのびと仕事ができるかもしれません。
3-4. お酒の場の暗黙のルール
日本では「飲みニケーション」という言葉があるほど、飲み会も仕事の一部のように捉えられていますよね。飲み会におけるお酌文化や、乾杯の際に上司よりグラスを下にするなどの細かいマナーは、外国人にとってわかりにくいことも多いようです。
さまざまな国の人が参加する飲み会では、お互いの国の宴会マナーも尊重できるようにすると、より良い関係を築けるようになりそうです。
ラーメンやそばなどの麺類を食べるときにすする音は、日本では問題ないですし、ときには粋だと捉えられますよね。しかしこれは日本以外の国ではあまり見られない習慣で、海外では基本的に食べ物は音を立てずに食べるのがマナーです。
ヌードルハラスメントという言葉もあるように、麺をすする音がその場にいる誰かにとって不快に感じられることもあります。日本ならともかく、海外で外国人と食事をともにする際には気をつけたいところですね。
お互いのビジネスマナーに配慮しながら仕事をしよう
アメリカ・中国のビジネスマナーと、世界では少し珍しく思われる日本のビジネスマナーを紹介しました。
海外のビジネスマナーを知っておくと、外国人と一緒に仕事をする際もスムーズに進めやすくなります。また、日本では当たり前のマナーも、外国人にとっては不思議に思われることもしばしば。
ビジネスマナーの違いを知ることで、お互いの文化の違いに配慮しながら仕事ができるようになるでしょう。
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