ビジネス基礎知識

2019.01.11

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世界で活躍するために必要なビジネスマナーと結果につながる準備とは

日本のビジネス手法をそのまま海外に持ち出すのはご法度。「郷に入れば郷に従え」とも言われるように、それぞれの国でそれぞれの事情や考え方があり、出張した国に従ったやり方を取るべきです。ここでは、アメリカと東アジア、東南アジアにおいて、最低限進めておくべき準備とビジネスマナーの基本をお伝えします。

海外出張前に知っておきたいビジネスマナー【アメリカ編】

出張前の周到な準備をすれば、当日の商談の結果に大きく反映します。アメリカならではの習慣やマナー、そして意見を伝える考え方を少しでも理解することは、相手からより強い信用を得ることにつながります。

HPの情報確認は最低限のマナー

相手先のHPに掲載されている情報は、事前にしっかり頭に入れておきましょう。

日本でも初めての客先に出向く際にはHPをチェックするのは当たり前なことですが、それは世界のどの国でも同じ、アメリカでももちろん必要な準備作業です。表記が英語であっても会社のホームページの概要は読み見込み、最低限の情報だけでもしっかり頭に入れておくべきです。

相手に、既に公開されている会社概要などの質問をして恥をかくよりも、HPを確認しているからこそ思いつくような深い質問を考えておいたほうが、印象を良くすること間違いなしです。いくつかの話題を考えておけば、コミュニケーションも円滑になります。

オーラルケアを意識するのは当たり前

日本では意外に思われるかもしれませんが、実はアメリカでは、歯並びが重要視されている事実を知っておくと良いです。

アメリカでは、歯並びや歯の白さはマナーの一環だと考えられています。そのために歯の矯正やホワイトニングをすることが当たり前とされています。ビジネスミーティングでも目につきやすい前歯の歯並びが悪かったり、黄ばんでいたりすると、相手に悪い印象を与えかねません。

例えば日本では八重歯があることを「カワイイ」と思う人もいるようですが、アメリカでは歯並びが矯正できないほど貧しい育ちだと考える人も多いのです。

もちろん歯の矯正には時間がかかるため、急な海外出張前に歯並びを良くするのは難しいでしょう。しかし歯のクリーニング(歯石除去)や簡易的なホワイトニングであれば、事前に予約をすれば1日で行ってくれる歯科クリニックもあります。歯に自信がない人は、アメリカ出張が決まったら、すぐに歯科クリニックの予約を取ることをお勧めします。

もちろん歯のことで非難されることはありませんが、日本は先進国の中でも歯のケアに費用をかけていない傾向にあるそうです。オーラルケアはひとつのマナーとして覚えておいてください。

くしゃみのとき手ではなく腕を使う

くしゃみをするときに口を手で覆う動作は控えましょう。くしゃみから出たウィルスやバイ菌が手のひらに付着するからです。その手でメモや握手をすれば、アメリカでは嫌がられます。

では急にくしゃみが出そうになった時にはどうすれば良いのでしょうか。
アメリカ人はくしゃみをする時には左右どちらかの腕で口を覆うように押えます。こうすれば手を媒介にして他人に菌を移しにくいからです。手は絶対に使わないように小さい頃に学校で学んでいます。このような衛生習慣は日本人も参考にすると良いでしょう。

会議はビジネスを前に進めるためのもの

アメリカでは、例えば会議の場で受け入れられない提案があった場合には、即座に自分の意見を言うべきです。「社に持ち帰って検討します」などと言う人物とミーティングをしたいとは思わないのです。

その理由は2つあり、1つはスピード経営という考え方をしている会社が多いからです。決断をすぐに実行し、修正をしながら前に進めるというやり方です。YESかNOかがわからなければ、すぐに決断して先に進むことができません。

もう1つは、決断のできない人とミーティングすることを時間の無駄と考えるためです。会社の代表としてアメリカに出張して商談をし、信頼関係を築きたいのであれば、ある程度の決裁権を持って臨むべきです。また、条件闘争が考えられるのであれば、その場で悪印象を抱かせないために、事前にそのことをEメールなどで調整し、ある程度までの結論を持って商談に臨むべきでしょう。

もちろんリスクヘッジをすることは必要ですが、会議はビジネスを前進させるために行うものというのが大前提なのです。

主張をしないことは恥ずべきこと

仮に相手と意見が全く違っていても、自分の主張はその場ですぐにはっきりするべきです。

問題点をその場で議題に取り上げず、後になってから「同意はしていなかった」などと言うのは、相手の信用を大きく失ってしまいます。問題が出た時に黙っていれば、相手は同意したと考えるからです。

そのときの商談が最終的にどのような結論になろうとも、アメリカでは、主張するべきことは伝え、お互いの意見を交わしていくことが相手に対する礼儀と見なしています。お互いの意見が異なるのは当たり前なのです。だからこそ、主張をしないことは恥ずべき行為なのです。

受け入れられない時にはすぐにNOを言うべきです。相手はNOの考えを尊重し、より建設的な提案をしてくるでしょう。尊重しあえる良好な関係が築ければ、次の商談につながるかもしれません。意見を伝えることは、良きビジネスパートナーとして相手との信頼関係を構築する第一歩なのです。

ジョークが使えればさらに信頼度アップ

会議では、真剣な話をしつつもときには息抜きも必要です。アメリカ人はジョークを言える人と話したがる傾向があります。話の上手な人は、相手を惹きつけるために「笑い」の力を利用することがあります。

日本人にはその習慣がないのでできなくても失礼にはなりませんが、例えば、「これは妻には内緒ですが…」などを付け加えるだけで、その場の雰囲気が和むものです。アメリカでは小学校からディベートの授業があり、会話力やプレゼンテーション能力に長けています。そういう教育を受けていない日本人は、ある程度トークの練習をしてから臨むと良いでしょう。

香港・シンガポール・台湾のビジネスマナーもチェック

約17%という低い法人税率が注目されている香港とシンガポール、台湾は日本の起業家からも注目されており、日系企業の進出も増えています。そのため、海外出張で訪れる機会は他の国と比べても多いのではないでしょうか。
各国ごとに、出張で訪れたときに役立つビジネスマナーをご紹介します。

香港編

渋滞を想定して移動手段には気をつける

香港では、車渋滞を想定して遅刻を避けられる移動手段を選ぶようにしてください。

香港の車渋滞は年々深刻さを増しています。理由は、中国本土からの資本流入が進み、自動車の登録台数が増え、建物や道路の建設も多くなっているためでしょう。

タクシー料金が安いので、移動先が近くてもタクシーに乗る傾向が強く、これも渋滞に拍車をかけています。特に雨が急に降れば、タクシー待ちの長蛇の列ができることもしばしばあるのです。

例えば九龍サイドから香港サイドに行く場合、自動車やタクシーを使った移動はお勧めしません。地下鉄かスターフェーリーに乗って行く方が、目的地に時間通りに到着できる可能性が高いです。滞在するホテルは目的地の近くにしておく方が良いでしょう。

簡単な広東語でも深い人間関係を作る

現地の言葉を使ってコミュニケーションを図りましょう。現地の言葉を覚えておくと、もう一歩踏み込んだ人間関係が構築できるからです。

香港でのビジネスは通常は英語でやりとりしますので、英語のわかる人であればコミュニケーションはイージーです。ですが、より現地に溶け込んだコミュニケーションを図るには、現地の言葉を使うことをお勧めします。

香港では、中国語でも北京語ではなく広東語が使われます。現地の言葉を覚えるなら、広東語の発音で話しかけた方が相手の心を捉えやすいです。

例えば、商談後に食事に誘われるケースがあれば、絶好のチャンスです。
そんな時のことを想定して、「好(ホウ)」という言葉を覚えておいてください。美味しいは「好食(ホウセツ)」、お腹がいっぱいは「好飽(ホウバオ)」と言います。何かのきっかけで親指を立てて広東語を使って笑顔を見せれば、相手も親しみを持ってくれるはずです。

シンガポール編

各業務担当者に自分の希望や意図を伝える

シンガポールでは、商談相手に対して「決裁権を持つ人と直接話をさせてほしい」と伝えることが大事です。

シンガポールでは、欧米の業務の進め方が一般的になってきています。例えば営業、プログラミング、デザイン、経理、人事など、各分野のエキスパートとして雇われていることが多く、自分の業務以外のことは担当しないのが通常なのです。つまり、交渉担当の相手にいくら営業をかけても、その話が、相手企業の決裁権を持つ人にまできちんと伝わらないともあるということです。

こういったマイナスの事態を想定し、交渉担当の相手には「決裁権を持つ人と直接話をさせてほしい」と伝えることが、リスクの軽減につながります。

交渉内容を文章に残してトラブル回避

日本では交渉内容を口頭だけで済ませてしまう場合もありますが、シンガポールでは文章に残しておくことをお勧めします。

例えば納期について話し合いをしたとすれば、話し合いをした後に、「相手の会社の誰々さんが何日と発言した」というように具体的な日付と話の内容をEメールや議事録で確認しましょう。シンガポールにはゆっくりとした時間感覚を持っている人もいますので、スケジュールや時間は何度も確認事項として連絡をすべきです。

台湾編

実力主義とコネの思想を理解する

台湾で信頼関係を築くためには、台湾のビジネス環境をよく知っておきましょう。

台湾はどちらかというと実力主義で、職を複数持つ人や転職をする人が多いです。日本のように、年功序列で年齢が上の人が上司であるとは限らず、若い取締役が年上の部下に指示する現場も目にします。
一方で、人とのつながりをとても重要視する国民性もあります。要するにコネです。例えば、親しさの度合いに基づいて業務の優先順位が変わってくることもあります。

台湾でビジネスをするには、こうした環境を見極めてどのように信頼関係を保つかということも重要になってくるのです。

手紙を書くときにもひと工夫を

日本で手紙やEメールをする時に、文章の最初に「拝啓」、結びに「敬具」と書くことがありますが、台湾では最後に「謝謝」と書きます。全文が英語であったとしても、最後は「謝謝」や「多謝」、「感謝」などと書くと、手紙やEメールを受け取った相手の印象は良くなります。

ビジネス成功のカギは信頼関係

アメリカと、東アジア・東南アジア数カ国のビジネスの考え方やマナーを紹介しました。
海外出張先においては、相手との信頼関係を構築して保っていくことが、ビジネス成功のカギとなります。信頼関係を作るには、相手を理解し、相手の懐に入ることが大切なので、その土壌に合わせた工夫が必要です。そのためには、商談の準備を怠らないでください。念入りな準備も、大切なビジネスマナーの1つ。どれだけ準備をしたかは、相手との信頼関係にも影響し、引いては、結果にも反映されるのです。

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