ビジネス基礎知識

2023.11.20

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インキュベーション施設とは?メリットや成功事例など基礎情報を解説

インキュベーション施設が、日本のあちこちで立ち上げられています。
多くの起業家やスタートアップ企業が集い、新しい事業を展開する拠点として注目を集めています。
とはいえ、インキュベーション施設とはどういったものなのかよくわからない方もいることでしょう。

そこでこの記事では、インキュベーション施設についての基礎情報や成功事例、注目の施設などをご紹介。
起業を目指す方や、協同できるスタートアップを探している方に役立つ情報を解説します。

1.インキュベーション施設とは何か

インキュベーション施設とは、起業したい人のための支援つきオフィスのことです。

起業には、オフィス開設や経営、経理など会社を運営する上でのノウハウが必要です。
しかし、起業者一人で全てを行うのは、時間も費用もかかりすぎてしまうでしょう。
インキュベーション施設では、コンサルティングや法律の専門家などが利用者をサポート。
起業にからむいろいろな分野の知識をいかし、アドバイスや支援を行ってもらえます。

2.インキュベーション施設を使うメリット

オフィスを借りて、従業員を募集して…など、起業するときには多くのステップが必要です。
しかし、インキュベーション施設を利用すれば、起業時の手間も時間もなるべく省けます。
2章では、インキュベーション施設を使うメリットを見てみましょう。

2-1.費用が抑えられる

インキュベーション施設は、スタートアップをサポートするためのものです。
起業して間も無く、十分な資金がないためオフィスの家賃を安くおさえたい!という人にオススメです。

オフィスを借りるには相当な賃料の負担が必要なことが多いものです。
しかしインキュベーション施設なら、立地や広さによって異なりますが、
利用料は1ヶ月3〜5万円程度と、負担をおさえた価格で利用可能です。

中には、自治体が運営しているインキュベーション施設もあります。
条件を満たす利用者には、自治体がインキュベーション施設の家賃補助金の交付を行うことがあり、利用価値は高いでしょう。

2-2.新規事業立ち上げのためのサポートを受けられる

新しく事業を起こすときは、手探りで事業を進めていく人も多いことでしょう。
しかし、事業が軌道に乗るまでの時間がかかるほど、必要な資金も膨らんでいきます。

最短で事業展開を行えるよう、インキュベーション施設には、
起業家をサポートするインキュベーションマネージャーという担当者がいます。
事業計画の作成や販路の開拓支援など、スタートアップの立ち上げから事業運営のために必要な、各種の相談に乗ってくれます。

【主な支援】
1.人的支援(人材紹介やコンサルティング、販路紹介など)
例えば、需要を見込める商品を開発するアイデアや技術はあっても、
販路を開くノウハウがわからず販売に苦労する…ということが、スタートアップにはありえます。
インキュベーション施設では、起業のためのコンサルティングを受けられます。

2.情報支援(市場動向や法律知識など)
市場の動向や事業展開に関する法律の知識、起業家の集まるセミナーへの招待や交流会など、
個人では集めにくい多くの情報を共有してもらえます。

3.物的支援(オフィスやラボの提供など)
事業を立ち上げ法人化するときは、登記のために住所が必要です。
インキュベーション施設なら、法人化のためのオフィスとしても利用可能です。
また、科学技術分野など、研究開発が必要なスタートアップには、専用の機器やコンピュータの利用が欠かせません。
主に大学で提供されているインキュベーション施設なら、最先端機器を利用でき、商品の研究や開発が可能です。

4.資金支援(インキュベーターやベンチャーキャピタル、金融機関への紹介など)
スタートアップ企業にとって、資金を調達することは決して簡単なことではありません。
そんな場合でも、資金調達のためのノウハウやネットワークを持つインキュベーションマネージャーに相談してみると良いでしょう。
協同できる企業や、資金支援をかなえてくれる金融機関とコネクションを持ちやすくなります。

参考:
【事例つき】今話題の「インキュベーション」とは? | 新規事業・イノベーション共創メディア | Battery(バッテリー)

3.インキュベーション施設を利用して開発!企業の事例3選

ここからは、インキュベーション施設を利用して事業を軌道に乗せた企業の実例をみていきましょう。

難病の治療薬開発事例だけでなく、生活に関連する身近な事例も取り上げているので、ビジネスのヒントにしてみてはいかがでしょうか。

3-1.ペプチドを利用した難病の治療薬 【ペプチドリーム株式会社】


画像出典:https://www.peptidream.com/

ペプチドリーム社は、バイオ分野や医療機器開発などのスタートアップ支援を行う東京大学のインキュベーション施設からスタートした製薬会社です。

分子量が小さく消化吸収が容易な、タンパク質の一種である特殊ペプチドを使用した薬品の開発に、世界で初めて成功しました。
がん、糖尿病など薬が開発されておらず、治癒が難しい疾患をメインに、治療薬開発を行っています。

公式URL:
ペプチドリーム

参考:
STORY01 Pepti Dream×UTEC 奇跡の薬をつくる。ペプチドリームの挑戦。
「産学連携」から「産学協創」へ–東京大学が目指す“エコシステム”の姿とは – ZDNET Japan
東京大学TLO

3-2.最先端技術による野菜づくり【A-Plus】


画像出典:A-Plus 公式サイト

埼玉県にある和光理研インキュベーションプラザには、インキュベーションマネージャーが常駐し、専門的支援を受けられます。
ここから生まれたのがA-Plus社です。

農業従事者の人手不足、異常気象による生産量の低下など、
農業問題の解決に貢献することを目指し、同社では工場内で農業を行う技術を開発しました。
雑菌数が少なく衛生的なレタスや、消費期限の長いカップサラダなどを販売しています。

公式URL:
A-Plus 植物工場 最新 最先端 再生可能エネルギー SDGs 田村市 和光理研

参考:
和光理研インキュベーションプラザ

3-3.登山中の安全を守るアプリ【株式会社YAMAP】


画像出典:https://yamap.com/

YAMAPは、KDDIの「KDDI∞LABO」からスタートしました。
「KDDI∞LABO」とは、KDDIが、自社の技術や事業ノウハウをスタートアップと共有・支援するインキュベーション支援事業です。
ここから生まれたのが、登山情報プラットフォームです。

KDDIの通信網を利用して、登山中の位置情報や登山ルートを把握できる同社のアプリ「YAMAP」は、
2022年にダウンロード300万数を突破しました。
高額な登山用GPS機器を購入しなくても、登山中の安全を確保できるアプリとして人気が高いです。

また、YAMAPには、提携自治体へのオンライン登山届送信機能を搭載。
遭難者の迅速な発見と救助にも活用されています。

公式URL:
https://yamap.com/

参考:
赤字がなんだ!KDDI、ベンチャー育成の情熱 狙うはグローバル、支援プログラム「無限ラボ」の全容
豊富な実績と「ベンチャーファースト」の精神で大手企業×スタートアップ企業の新たな事業共創を実現
遭難者の命を「登山アプリ」が救った! 圏外でも位置共有できるハイテク機能、救助現場で活用進む
登山地図GPSアプリ「YAMAP」が、300万ダウンロードを突破しました
登山計画を登山届として提出できる? – YAMAP ヘルプセンター

4.国内で注目を集めるインキュベーション施設4選


起業のために、インキュベーション施設を使いたいと考える方もいることでしょう。
この章では、国内で注目を集めるインキュベーション施設をご紹介します。
興味のある方はぜひ、参考にしてみてくださいね!

4-1.京都から新しい産業を生み出す【京都リサーチパーク】


画像出典:京都リサーチパーク公式サイト

京都リサーチパークは、総合産業支援施設です。全国初の、民間企業による支援施設として運営されています。

同社は、産業、学術、公的機関を結び、新しい産業の創出やベンチャー支援をメインに活動しています。
中には「ポストインキュベーション」というユニークな試みも。
インキュベーション施設の入居期限をむかえ、京都リサーチパークへ移転を希望するベンチャー企業へ、
家賃補助金の拠出や有償支援などを行うものです。

現在は約500の企業、6,000人が集まり、国内でも有数の規模のインキュベーション施設です。

公式URL:
京都リサーチパーク
ポストインキュベーション|スタートアップ支援|京都リサーチパーク

参考:
京都リサーチパーク株式会社

4-2.女性起業家を支援する【パシオンTOKYO】


画像出典:パシオンTOKYO公式サイト

東京都大田区にある、女性起業家支援のためのインキュベーション施設がパシオン東京です。

特色は、保育サービスやキッズスペースを備えていること。
子育て中の女性起業家には心強く、安心して利用できそうです。
また、東京都の認定インキュベーション施設の一つで、条件を満たす利用者には補助金の申請が可能です。

会員以外の起業希望者の相談(有料)も受け付けているので、
起業前にまず相談する場所が欲しい、という人も利用してみてはいかがでしょうか。

公式URL:
パシオンTOKYO

4-3.日本最大のインキュベーション施設【Station Ai】


画像出典:インキュベーション施設公式サイト

Station Aiは、名古屋市内に2024年10月開業予定の日本最大規模のインキュベーション施設です。
ソフトバンクと愛知県が協同して運営を行っています。

注目したいのは、リモートで支援を受けられるインキュベーションサービスです。
固定のオフィスを持たず、テレワークで事業展開を希望するスタートアップにとっては、強い味方になりそうですね。

なお、本施設完成前までは「WeWorkグローバルゲート名古屋」を、インキュベーション施設として利用できます。

公式URL:
https://stationai.co.jp/stationai
参考:
【改めて!!】STATION Aiについて紹介します

4-4.科学技術関連のスタートアップを応援【OIST Innovation Incubator】


画像出典:OIST Groups公式サイト

2019年6月にイギリスの会社が発表した「質の高い論文の割合が高い研究機関ランキング」で、
9位に選出されたのがOIST(沖縄科学技術大学院大学)です。

世界中からトップレベルの研究者が集まり、質の高い研究を行っている同大学。
科学技術に関連したスタートアップを募集し、インキュベーション施設としても活動しています。
最先端機器を揃えたラボの利用や、国内外の起業家からのアドバイスによるサポートなど、
研究開発だけでなくビジネス面でのサポートも手厚いのが特徴です。

公式URL:
インキュベーター | OIST Groups

参考:
沖縄に世界から集まる起業家の卵たち OISTがスタートアップを支援
ランキング東大超え。世界から一流研究者が殺到する沖縄科学技術大学院大学が急成長を遂げた秘密
海外スタートアップ起業家がOISTで起業する理由 | 沖縄のUターンIターン特化型の転職エージェント

5.海外で注目されるインキュベーション施設3選

5章では、海外にあるインキュベーション施設をご紹介します。
世界的企業が集まる大規模な施設のほかに、地元密着型の施設も取り上げました。
日本の施設にはないコンセプトを掲げるところもあるので、参考になりそうです。

5-1.ニューヨークからモノづくりのイノベーションを発信【New Lab】


画像出典:Newlab公式サイト

海軍造船所だった広大な土地を、ニューヨークのモノづくり拠点にするべく立てられたのが「New Lab」です。

CO2を排出しない次世代の自動車開発や、クリーンエネルギーの開発スタートアップなど、
サステナビリティを重視するモノづくりをメインにする企業が入居し、注目を集めています。

インキュベーションパートナー企業には、自動車メーカーのFordや伊藤忠商事、
アメリカ大手通信業verison社などが参加し、次世代の産業支援を行っています。

公式URL:
https://www.newlab.com/

参考:
州政府と民間企業が全面支援「New Lab」はNYハードウェア産業の聖地になる——ニューヨークの素敵なコワーキングスペース vol.10

5-2.世界中からスタートアップが集結【Station F】


画像出典:STATION F公式サイト

「Station F」は、パリ近郊にあるインキュベーション施設です。
世界中のスタートアップ企業が1000社以上も集まり、世界最大の規模となっています。

施設内にamazonやmeta、マイクロソフト社などスタートアップを支援するための企業ブースが設けられ、
有望なスタートアップとのマッチングも盛んに行われています。

ちなみに、日本からは日本酒メーカー「WAKAZE」がインキュベーションプログラムに参加。
世界規模のスタートアップを立ち上げたい!と考える方は、参考にしてみてはいかがでしょうか。

公式URL:
https://stationf.co/

参考:
フランスの「モノ作り」に地殻変動。パリ13区に出現した広大な施設「Station F」とは?(GetNavi web) | 毎日新聞
探訪!世界のイノベーションハブ7選 | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)
【日本酒メーカーWAKAZE】日本人起業家初!世界最大のスタートアップキャンパス「Station F」の起業家プログラムに選出

5-3.資源を徹底利用するサーキュラーエコノミー企業を応援【Blue City】


画像出典:BlueCity公式サイト

廃業後打ち捨てられていた温水プール施設を改造して作られたのが、
オランダ・ロッテルダムにあるインキュベーション施設「Blue City」です。

「Blue City」には、廃棄物の発生を最小限におさえる、サーキュラーエコノミー分野のスタートアップ企業が集まっています。
ユニークな例では、雨水からビールを作る企業やコーヒーの出し殻からマッシュルームを栽培する企業などが入居しています。

南ホラント州政府やヨーロッパ大学間協力機構、エラスムス大学メディカルセンターなど、
地元の自治体や企業が賛同企業やインキュベーションパートナーとして協力。
2050年までにサーキュラーエコノミーへの移行を目指しているオランダ政府の後押しもあり、
地元密着型のインキュベーション施設として注目されています。

公式URL:
https://www.bluecity.nl/en

参考:
温水プールを改修したCEのインキュベーションセンター「BlueCity」、循環型ラボをオープン | Circular Economy Hub
ロッテルダムのインキュベーション施設 「BlueCity」に学ぶ、サーキュラーエコノミーの始め方 | 世界のソーシャルグッドなアイデアマガジン | IDEAS FOR GOOD

まとめ:インキュベーション施設は効率よくイノベーションを創り出す場所

インキュベーション施設は、起業したい人を支援するだけではありません。
人・モノ・お金・情報の交流地だけでなく、新しい事業や産業を発展させるヒントがつまっている場所といえます。
上手に利用して、自分のビジネスを拡大し、成功を収めた起業家も少なくありません。
起業を希望する方は、イノベーションを作り出す場所として、
インキュベーション施設を大いに活用してみてはいかがでしょうか。

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