起業のやり方として、会社の設立や個人事業主としての独立が挙げられますが、いずれも入念な準備が求められます。
事業を成功させるために将来を見据えたビジネスプランを固めたり、資金を調達したりといったことが急務となるためです。
そこでこの記事では、起業準備の段階でのポイントや実際の成功例をご紹介。事業を立ち上げるやり方を学び取る参考にしてください。
1.起業の種類は2つ
新しい事業を始める「起業」には個人事業主になるケースと会社を立ち上げるケースという、2種類のやり方があります。
それぞれの方法についてご説明します。
1-1.個人事業主になる
個人事業主になるやり方を選択した場合、比較的シンプルな準備で起業が可能です。
非法人で規模も小さいため会計なども自分ででき、税負担も軽くすみます。
個人事業主にはエンジニア、ライター、デザイナーなど「フリーランス」と呼ばれる働き方をしている人も多いです。
個人事業主で活動していくうちに事業の規模が大きくなれば、法人化にシフトチェンジすることも可能です。
1-2.会社を立ち上げる
会社を立ち上げる場合、定款認証や登記申請といった準備が必要となります。
手間や費用のかかるやり方ですが、法人は社会的信頼を得られやすいというメリットもあります。
業界経験が乏しかったり、自己資金が少なくても立ち上げやすいのが、多店舗展開するチェーン店に加盟する「フランチャイズ」です。
本部にロイヤリティーなどを払う代わりに出店・経営支援を受けながら店舗運営する仕組みです。
ほかに独自の技術やサービスを提供するベンチャー企業や、その中でも最新のテクノロジーやアイデアを備え、
ゼロから市場の開拓やビジネスモデルの構築を目指す「スタートアップ企業」も昨今は注目度が高いです。
起業のやり方の中で、会社を立ち上げる選択をした人が「起業家」と呼ばれます。
近年は新しい事業を連続して立ち上げる「シリアルアントレプレナー(連続起業家)」と呼ばれる種類の起業家も、注目を集めています。
2.起業する前に必要なアクション
事業を成功に導くためには、必要なステップを踏んだり資金を調達したりといったアクションを、着実にこなす実行力が不可欠です。
起業前に知っておくべきアクションについて説明します。
2-1.起業へのステップを踏む
まず起業に至るまでの道のりを踏まえて、確実にステップを進めることが重要です。
特に重要なのは下記の3点です。
【個人事業主となる場合】
・開業届、青色申告承認申請書といった各種必要書類の提出
開業届は、事業開始後1カ月以内に税務署に提出します。
青色申告承認申請書は取引内容の複式簿記による記帳など、条件を満たした場合に所得控除を受けるための書類です。
・国民健康保険・国民年金への加入手続き
個人事業主になった場合、健康保険や年金に関する手続きは自分で行うことになります。
見落としがちになりそうですが、将来必要になるので忘れずに手続きしましょう。
・事業用の銀行口座の開設
事業用の銀行口座は取引先や顧客からの報酬を受け取る際などに必要となります。
次に、法人を設立する場合のステップを見ていきましょう。
立ち上げる会社の種類によって手続きが異なる場合がありますが、おおよその流れは以下の通りです。
【法人を設立する場合】
・定款と会社の実印作成
定款作成によって会社名や事業目的のほか、会社における規則が決まります。
会社の実印は取引の契約書類などに必要となります。
・資本金の支払い
資本金は、設備投資なども含め会社の運転資金として重要です。
業種や事業によって必要金額が決まっている場合もあるので、リサーチした上で適切な金額を設定しましょう。
・登記申請
株式会社の場合は商業登記をして法人格を取得します。
会社としての信用を保ち、円滑な取引を進めるために必要な手続きとなります。
2-2.資金を調達する
起業の際には、事業を進めるために必要な設備や仕入れの費用、家賃、人件費といった運転資金が必要です。
資金集めのやり方としては、以下が想定されます。
・金融機関から融資を受ける
長期間に渡る借り入れが可能なため、まとまった資金が必要な場合におすすめのやり方です。
自己資金や返済可能性に関わる審査を通過しなければいけません。
・ベンチャーキャピタルから出資を受ける
ベンチャーキャピタルは、未上々の新興企業に対して出資する投資会社や投資ファンドです。
「将来上々の見込みがある」と判断されると、出資を受けやすくなります。
・国や各種財団から補助金・助成金を得る
補助金・助成金は国や地方公共団体、財団などさまざまな機関が企業や各種団体に給付しており、基本的に返済不要です。
金額や給付期間、給付基準など条件もさまざまなので、どんな種類の補助金・助成金を申請するか、しっかりと吟味することが重要です。
・クラウドファンディングで資金を募る
クラウドファンディングを利用すれば、インターネット上で事業内容がプロジェクトとして公開・宣伝されます。
多数の賛同者を得られれば資金も集まりやすくなりますが、出資者に商品やサービス利用権などのリターンを提供する必要があります。
また、本格的に商品やサービスを市場展開する前にニーズを探る、テストマーケティングとして活用するというやり方も増えてきています。
2-3.事業計画を固める
資金調達のための融資や補助金を受ける際に、事業計画書の提出が必要となります。
事業計画書には事業内容、経営理念、マーケティング戦略などを盛り込むことになります。
起業後の運営を円滑に進めるためにも事業計画を立て、しっかりとビジネスプランや経営方針を固めておくことが重要です。
3.事業が拡大するときに必要なスキル
最初は個人事業主として起業しても、事業が成長するうちに法人化して組織を動かす立場に就任するケースもあります。
起業家として顧客や消費者に喜ばれる新しいサービスやアイデアを生み出し広く受け入れられるやり方を考えるだけでなく、
組織を運営する能力が求められる可能性も想定されるのです。
そのため、起業家には事業を自分で起こすための自主性や実行力のほかに
マーケティング、営業、マネジメント、コミュニケーションといった分野でのスキルが求められる面もあります。
もしくはそれらのスキルを持つ人材を確保して適切な部署に配置するというやり方もあるため、
適材適所に関する目線が重要になるかもしれません。
個人事業主としてスタートする場合でも、会社を立ち上げて起業家になる場合でも、
将来的に組織運営に関する目線や能力がカギとなる可能性を想定しておきましょう。
4.起業の動機やサービス展開に注目!成功事例3選
ここからは、起業の成功事例を3件ご紹介します。
創業の動機や成功するまでのプロセスを含め、起業のやり方を学ぶ参考にしてみてはいかがでしょうか。
4-1.創業者自身の問題意識から立ち上がった「キャリア・マム」
キャリア・マムは主婦の在宅ワークやキャリア支援などを手掛ける企業です。
全国に10万人規模の主婦会員がおり、企業から受託した業務に会員らによるチームで取り組んでいます。
出産後に復職で苦労した経験のあるフリーアナウンサーが、女性の再就職に対する問題意識を抱えたことが事業立ち上げのきっかけ。
2000年に法人化し、テレワーカー向けスキルアップ講座や保育室併設のコワーキングスペース運営なども手掛けています。
「子育てをしながら働きたい」「出産・育児で離職後にブランクがあるが、社会復帰したい」といったニーズのある女性たちや、
業務の委託先を探している企業から高い支持を集めています。
公式URL:http://www.c-mam.co.jp/
4-2.日本初のユニコーン企業「ネクストミーツ」
画像出典:https://shop.nextmeats.jp/pages/about
ネクストミーツは、代替肉の専門企業です。
サステナビリティファーストを掲げ、植物性タンパク質を含む代替肉商品の開発・国内外での販売などを展開しています。
ネクストミーツ立ち上げのきっかけは、従来の畜産業を背景としています。
食肉は、大量の水の使用や温室効果ガスの排出など、高い環境負荷の元に生産されているためです。
同社はこの問題に着目し、環境問題に取り組むビジネスの立ち上げを開始。
代替肉に将来性を見出し、約3年かけてこだわりの味や食感を追求し商品化しました。
2020年6月に会社を設立後は、スタートアップ企業が集まり代替肉市場も大きいアメリカでの上場を目指した結果、
設立から7カ月でアメリカ証券市場上場を果たす快挙を遂げました。
公式URL:https://www.nextmeats.co.jp/
4-3.国内最大規模のレシピ動画サービスを展開「dely」
画像出典:https://dely.jp/
delyはアプリダウンロード数4000万を突破したレシピ動画プラットフォーム「クラシル」の運営会社です。
大学生だった創業者が2014年に立ち上げ、事業転換を経て2016年2月にレシピ動画サービスに特化したクラシルの運営を開始。
2018年にヤフーの連結子会社となり、食やレシピに関わるサービスの分野において同社との事業提携も進めています。
動画市場の急成長に着目し、料理レシピ投稿のジャンルに動画を武器として参戦したのがクラシルのはじまりです。
動画を通して料理の手順などを分かりやすく確認できるサービス内容が、幅広い層の支持を獲得しました。
2020年4月にはweb・アプリ両方の利用者数・アプリダウンロード数・SNS数総フォロワー数、レシピ動画数で日本最大規模を達成しています。
公式URL:https://dely.jp/
まとめ:起業準備はトライアンドエラーで万端に
起業を目指すと「どんなやり方で商品やサービスをプロデュースするか」「個人事業主としての独立と会社設立のどちらを選択するか」、
「必要な資金をどのように調達するか」など、思案する事柄も多くなるもの。
さらに事業が進行すると、内容の修正やプランの変更が生じる可能性もあります。
臨機応変に対応する柔軟性も大事にしながら、入念に事前の準備や計画づくりを進めましょう。
起業に「これ」というやり方はありませんが、自分の知識や経験、先行事例からの学び、
業況などの情報をフル活用して準備を進めれば、成功につながるでしょう。
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