ビジネス基礎知識

2023.09.14

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エシカルとサステナブルとは何か?SDGsとの関係や注目企業も紹介

エシカルやサステナブルという言葉が、ビジネスシーンで取り上げられているのを目にしたことはありませんか?
エコやSDGsなどと同様に、環境や社会に貢献するための動機として企業活動にも取り入れられています。
この記事では、エシカルとサステナブルについて解説します。
新しい取り組みを自分のビジネスにも取り入れたいと考えている方はぜひ、参考にしてみてくださいね。

1.エシカルとサステナブルの違い

同じような意味合いで使われることの多い、エシカルとサステナブル。しかし、重視されている内容はそれぞれ異なります。
まずは、2つの言葉の違いを具体的に見ていきましょう。

1-1.エシカルは倫理的に行動すること

英語の「ethical」を語源とするエシカルは、直訳すると「倫理的、道徳的な」という意味です。
一般的に認知されているエシカルの意味は、語源があらわすように地球上の全ての人や生き物、
環境に対して配慮しながら活動や行動をすることを指します。

似た言葉で「エコ(エコロジカル)」という言葉がありますが、こちらは「環境に配慮して行動する」ことに重点が置かれます。
一方、エシカルは「環境だけでなく人、社会など地球上のものに対して配慮する」意味がこめられています。

参考:
TRANS「今さら聞けない!エシカル・サステナブル・SDGs意味の違いとは」

1-2.サステナブルは持続可能な行動を指す

英語の「sustainable」を語源とするのが、サステナブルです。直訳すると「持続可能な、続けていける」という意味です。

環境問題や社会問題の解決に配慮しつつ、経済の豊かさを追求できる行動を指しています。

参考:
https://business-textbooks.com/ethical-sustainable-sdgs/

1-3.エシカルとサステナブルは異なるもの

エシカルとサステナブルは、同じ意味だと思っている方も多いことでしょう。

一方で、エシカルとサステナブルは非常に関連が深く、似たような意味合いで使われることも少なくありません。
なぜなら、エシカルな行動の上に、サステナブルな社会作りが成り立つためです。

ペットボトルの消費を例に挙げてみましょう。

ペットボトルを毎日1本購入:239g/日のCO2排出
1年間のCO2排出量:87.2kg/年

1日単位ではわずかな量にも思えますが、1年積み重なると相当な量になり、環境に多大な負荷がかかります。
CO2削減のため、ペットボトルからマイボトルに切り換え、カフェなどで中身を補充する行動がエシカル消費で、
この行動を生活の一部として今後も毎日続けていくことがサステナブル生活、と言えます。

ちなみに、SDGsの頭文字Sには、サステナブルが含まれています。
両方とも使われるシーンや意味合いは同じですが、SDGsは国際組織が決めた具体的な目標のこと。
サステナブルは「持続可能な環境と社会、経済作り」への概念や理念そのものです。

エシカルは日常に関わり、個人の生活をより良く、良識的なものへレベルアップする活動を指すことが多く、
SDGs達成への足掛かりとなるものです。

地球に住む人が一人一人、身の回りの小さな習慣をエシカルなものに変えることで、
サステナブルな社会が実現可能になり、ひいてはSDGsの目標も達成できるでしょう。

参考:
京都市ごみ減量推進会議 「ペットボトル水の利用は、環境負荷が大きいよ」
こちらもおすすめ:
【モビリティ×SDGsシリーズ Vol 2】SDGs・ESGの「ソーシャル」「ガバナンス」を徹底解説!開催レポート

2.身近なエシカルの事例3つ

2章では、エシカルについて理解を深めてみましょう。身近なところから理解できる例を取り上げました。
すぐ始められるものもあるので、日常生活に取り入れてみるのも良いでしょう。

2-1.消費にからむ問題を解決 エシカル消費

CO2削減や途上国の労働環境向上など、人や環境、社会における消費にからむ課題を解決するために、
エコロジカルな消費活動を行うことを、エシカル消費といいます。

【具体例】
・社会問題の解決や環境保全に取り組む企業が販売する、物品やサービスを購入する
・プラスチックゴミを削減するために、マイボトルやお弁当持参で仕事に行く

【エシカルな商品例】

・竹歯ブラシ

画像出典:株式会社ひろせプロダクト 「竹歯ブラシ」

化学薬品を使用せずに作られた竹製の持ち手と、植物素材由来のブラシでできた歯ブラシです。
マイクロプラスチックによる海洋汚染の問題解決に貢献できます。

参考:
株式会社ひろせプロダクト 「竹歯ブラシ」

・マイボトル

画像出典:ELEMINIST 「保温保冷ボトル black+blum」

「Buy once, buy well(一度購入すればいい)」というコンセプトで作られたステンレスボトルです。
高品質素材を使用し耐久性に優れているので、使い捨てのコップやペットボトルを日常から減らすことができます。

参考:
ELEMINIST 「保温保冷ボトル black+blum」

2-2.環境や社会に配慮した食品 エシカルフード

無農薬・有機栽培で育てられた野菜や、自由放牧や抗生物質不使用など良い飼育環境で育てられた家畜を使うなど、
環境や社会に配慮して生産された食物のことをいいます。

【具体例】

・フェアトレードチョコレート


画像出典:FAIRTRADE JAPAN 「認証ラベルについて」

チョコレートの原料となるカカオは、途上国でほとんど生産されているため、経済格差を利用して不当な価格で買い付けられることがあります。
こうした原料を使わずに、生産者から適正な価格で購入した原料を利用したものが、フェアトレードチョコレートです。

参考:
FAIRTRADE JAPAN 「CHOCOLATE」

・CO-OPのエシカル商品


画像出典:CO・OP 「CO・OP 白身魚とタルタルソースフライ 5個入(90g)」


画像出典:「CO・OP 紅茶TB ダージリン 2g×50袋」

エシカル食品を積極的に販売するコープでは、*MSC認証マークのついた海産物や、
*レインフォレストアライアンス認定の紅茶など、エシカルな食品を販売しています。

*MSC認証:水産資源や海洋環境に配慮した水産物に対する認定制度。
このマークがついた商品を購入することが、エシカルな取り組みを行う漁業者への支援につながる。

*レインフォレスト認証: 社会・経済・環境の3つ全てに配慮し、持続可能な手法で生産された製品や原料に与えられる認証制度。
このマークがつく商品を購入すると、環境だけでなく原料を生産する労働者の支援に貢献できる。

参考:
CO・OP 「エシカル(Ethical)とは|コープ商品サイト」
WWFジャパン 「「レインフォレスト・アライアンス認証」とは何を意味しているのですか?」

2-3.社会問題の元になる材料を排除 エシカルジュエリー

ジュエリーの採掘から販売までの流れに関わる労働者の人権と社会、
環境に配慮したジュエリーのことで、人工物やリサイクル素材も活用されています。

【具体例】

・フェアマインドゴールド、シルバー 


画像出典:エシカルジュエリーEARTHRISE〈アースライズ〉「フェアマインド認証(フェアトレード)ゴールド・シルバー」

金の採掘には、深刻な社会問題がからむこともあります。
例を挙げると、採掘に使用される水銀が河川に垂れ流されるために生活用水が汚染され、
地域に暮らす人々が水銀の影響で重度の障害を抱える原因になっています。
また、児童労働や人権無視の劣悪な労働条件の改善、および有害物質の低減のため、国際非営利団体のARMなどによる活動が行われています。

そうした原料を使わずに作られたのが、フェアマインドゴールドとシルバーです。

参考:画像出典:
エシカルジュエリーEARTHRISE〈アースライズ〉「フェアマインド認証(フェアトレード)ゴールド・シルバー」

・モアナサイト

画像出典:Brillar(ブリジャール)「モアサナイトとは」  

天然ダイヤモンドの採掘の裏には、紛争や強制労働などの社会問題が潜んでいることがあります。

世界でも有数のダイヤモンド産出量を抱えるのは、アフリカです。
しかし一部の産出国では、内戦が行われていることがあります。
武装組織が武力で占拠した鉱山へ現地の人々を強制的に採掘に参加させたり、
ダイヤモンドを売却して得た利益が武器の資金源となったりと、紛争の長期化や人道問題の原因になっていました。
このような背景を知り、モアサナイトを選択する人が増えています。
モアサナイトは人工的に作られた宝石ですが、ダイヤモンドより求めやすい価格で環境負荷も低く、注目を集めています。

参考:画像出典:
Brillar(ブリジャール)「モアサナイトとは」

3.注目されているサステナブルの事例2つ

次は、サステナブルな取り組みについて見てみましょう。
サステナブルな経済活動を行っている企業の中でも、注目されている例を取り上げています。
自分のビジネスのヒントになるかもしれません。

3-1.不用品を蘇らせる アップサイクル

アップサイクルとは、不用品をそのまま利用し、新しく別の商品に生まれ変わらせるサービスです。
リサイクル製品の場合は、回収した不要物を資源に加工するステップでエネルギーを使用するため、CO2削減につながらない場合があります。
CO2削減目的や資源の枯渇を防ぐため、アップサイクルが誕生しました。

【具体例】

・RE:DESCENTE

画像出典:ULLR MAG.(ウルマグ)「『アップサイクル』の服でおしゃれに環境に優しく!製造現場に密着取材」

スポーツブランドのデサントでは、売れなかったシャツを切って縫い合わせ、
新しいデザインに生まれ変わらせるアップサイクルを展開。「RE: DESCENTE」として販売しています。

参考:
リ:デサント公式サイト

・SEALのカバン


画像出典:SEAL「デザイナーズ ビジネスバッグ」
SEALでは、廃タイヤを原料にしたカバンを手がけています。老若男女を問わずに使えるデザインが人気です。サッカー日本代表のオフィシャルアイテムを手掛けたことも。

参考:SEAL 公式サイト

3-2.環境負荷が低い サステナブル住宅『ZEH』

『ZEH』とは、資源エネルギー庁が主導する省エネ住宅「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」の略称です。
高断熱素材を使ったり、太陽光発電などを利用して購入するエネルギーを最大限に減らしたりと、環境にも住む人にも配慮した住宅のことを差します。

初期投資が高くなりがちですが、国から補助金が出ることもあるので、長い目で見るとお得なことも多く、注目されています。

【具体例】

・一条工務店「超ZEH」

画像出典:一条工務店「超ZEH(ゼッチ)性能」

一条工務店は、超気密、超高断熱にプラスして、大容量太陽光発電システムを備えたZEH住宅を提供しています。 

参考:
一条工務店「超ZEH(ゼッチ)性能」

・旭化成ヘーベルハウス「ヘーベルメゾン」

画像出典:へーベルメゾン「ヘーベルメゾンZEH」

旭化成ヘーベルハウスは、ZEH型の集合住宅を開発。断熱性、耐火性に優れた建材を使用し
、屋上などに太陽光発電システムを設置したアパートやマンションを販売しています。

参考:へーベルメゾン「ヘーベルメゾンZEH」

4.エシカルでサステナブルなビジネスを展開する企業3選

経済活動を継続的に行うためにも、企業にとってSDGs目標達成は重要視されています。
この章では、エシカルとサステナブルへの積極的な取り組みを行う企業を紹介。
各企業が、環境や社会問題にどのように貢献しているのか、参考にしてみましょう。

4-1.食べないものは寄付 【ファミリーマート】


画像出典:ファミリーマート 「ファミマフードドライブ 2000店舗突破! – サステナビリティ」

ファミリーマートは、フードドライブ活動を展開しています。
フードドライブとは、家庭では不要になったまだ食べられる食品を学校や職場などへ持ち寄り、
取りまとめて地域の団体や施設などに寄付する活動のことです。
ファミリーマートでは、店頭で寄付品を受けつけ、集まった食品を困窮家庭の援助や地域のこども食堂の運営などに活用しています。

参考:
ファミリーマート「ファミマフードドライブ 2000店舗突破! – サステナビリティ」

4-2.環境へ配慮した販売スタイル スターバックスジャパン


画像出典:スターバックスジャパン 「使い捨てカップを減らそう。「お客様とのコネクト」から生まれた、ミドリのプラネット – Starbucks Stories Japan」

スターバックスジャパンでは、マイボトルや店内グラス・マグの使用者へのドリンク料割引制度や、
フェアトレードコーヒーの使用など、サステナブルな販売を展開しています。

日経BP社による、企業のESGイメージを調べた「第3回ESGブランド調査(2022年)」では、第2位にランクイン。
環境保護や社会貢献に積極的な企業として、注目されています。

参考:
スターバックスジャパン「 Sustainability Archives – Starbucks Stories Japan
日経BP 日経BP「第3回ESGブランド調査」

4-3.誰でも使えるユニバーサルデザイン 花王


画像出典:花王「シャンプーのきざみに込められた思い」

触っただけでわかるシャンプー・リンスの刻みや、電気を使わずに掃除できるワイパーなど、
誰でも使えてエシカルな製品開発に取り組んでいるのが花王です。

7年連続で「World’s Most Ethical Companies 2023」(世界で最も倫理的な企業)の1社に選ばれるほど、
世に送り出された製品は高く評価されています。また、開発した製品の機能が、国際規格として導入されたことも。

参考:
花王「花王、17年連続で「World’s Most Ethical Companies®」(世界で最も倫理的な企業)に選定」
花王「UDの取り組みの歴史」

まとめ:エシカルとサステナブルは未来への投資

消費者や社会が企業活動に向ける視線は今、「エシカルかつサステナブルかどうか」ということも含まれています。
現代社会が抱える様々な問題を解決するには、エコロジカルな活動だけでなく、社会全体の課題にも向き合うことが欠かせません。

ビジネスシーンでも、社会貢献に積極的な企業のイメージを持つことは、企業価値の向上につながります。
また、消費者が注目するエシカルなサービスやサステナブルな商品の提供が、市場シェアの獲得において重要な役割を果たしていくことでしょう。

エシカルでサステナブルなビジネスの展開は、未来への投資と心得て、今できることから始めてみてはいかがでしょうか。

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