ビジネス基礎知識

2022.09.21

Lock Icon 会員限定

海外転勤の基礎知識!赴任に伴いするべき準備や手続きを解説

海外転勤の可能性がある業種や企業で働いている人は、海外転勤を意識したことがあることでしょう。また、コロナ後、少しずつ海外への進出や事業再開を始める企業も出てきています。今まで海外転勤とは縁がなくても、突然赴任の辞令が下りて「*日後に現地へ出発」と言い渡される可能性がゼロではありません。
初めての海外転勤で「どうしよう!」「何をすればいいのかよくわからない!」と焦らなくて済むよう、この記事では海外転勤の手順や流れ、必要な準備など、海外赴任に必要な基礎知識についてご紹介します。

1.海外赴任が決まったら!会社とすり合わせるべき手続き

海外転勤では、渡航3ヶ月前に海外赴任の辞令が下りることが一般的です。3ヶ月は、いざ準備をするとなると、意外と時間が短く感じられるということも。準備万端で出発するには、できることからすぐやっておくのが肝心です。特に、会社と進めなくてはならない各種手続きは、日本にいる間に済ませておきたいもの。スムーズに進められるよう、会社としっかりすり合わせておきましょう。
この章では、転勤前に必要な手続きについて解説します。

1-1.海外での働き方は2タイプ

海外転勤が決まったら、どのように赴任するのか確認しておきましょう。赴任の方法やどこに籍を置くかによって、準備すべき手続きが変わってくるからです。一般的に、海外への赴任は下記2つのうち、いずれかとなることがほとんどです。

・会社は変わらず、系列の海外支店や海外拠点に赴いて働く場合
・日本で所属している会社から、海外の子会社や現地法人など別の会社へ出向・転籍して働く場合

現地の子会社への出向など、所属する会社が変わる場合には、出向先企業の社会保険に加入するなど、新たに手続きをしなくてはなりません。
次からは、日本にいる間に、どのような手続きが必要なのかを見ていきましょう。

1-2.日本にいる間に会社と行う手続き4つ

日本にいる間に会社と行うべき手続きは大きく分けて4つあります。転勤後の在籍先がどこになるかによって異なる場合もありますので、手続き別にそれぞれのケースを見ていきましょう。

1-2-1.健康保険手続き

<在籍する会社が変わらない場合>
在籍する会社が変わらない場合は特に手続きの必要はありません。
しかし現地で病気やケガをしたとき、日本の健康保険を利用すると、建て替え払いとなり、手続きが煩雑になることを念頭に入れておきましょう。

<海外子会社や現地法人などへ出向・転籍する場合>
別会社への転籍を含む海外転勤の場合は、新たに雇用主となる会社で用意している健康保険への加入手続きが必要になることがあります。新しい会社に前もって確認すると良いでしょう。

1-2-2.介護保険手続き

どの会社に籍を置く場合でも、共通するのが介護保険手続きです。
1年以上の海外転勤に合わせて住民票を抜く場合は、介護保険料を負担する必要がありません。一方、住民票をそのままにする場合は「介護保険適用除外該当届」を提出しないと、転勤後も介護保険料が徴収されます。会社に確認するのを忘れずに。

※関連記事※
出張中の労災はどこまでカバーされる?怪我や病気に備えた基礎知識

1-2-3.労災保険手続き

<在籍する会社が変わらない場合>
在籍する会社が変わらない場合は、引き続き同じ労災保険が継続されます。

<海外子会社や現地法人などへ出向・転籍する場合>
現地法人への転籍を伴うときは、原則日本での労災保険から脱退する必要が出てきます。
事情があり引き続き今までの労災保険を継続したい場合には、「海外での合弁事業のため提携先企業に出向して天然ガス掘削」など、条件を満たせば特別加入制度を利用可能です。転籍後の会社に相談してみましょう。

1-2-4.年末調整手続き

赴任期間が1年を超える場合は、日本では非居住者扱いとなり所得税を免除されます。所得税は、海外赴任が始まってから赴任国で支払います。
日本国内に居住しているとき最後に給与を支払われるタイミングで、年末調整を行い所得税の調整をしておくことを忘れずに。

参考:
No.1920 海外勤務と所得税額の精算|国税庁
海外赴任者への手続きまとめ│給与・税金・保険から健康管理まで – 福利厚生のRELO総務人事タイムズ

2.絶対必要なものは2つ!パスポートとビザの準備

パスポートは海外へ渡航するとき、労働ビザは海外で働くときの必須書類です。それぞれ、申請から受領まである程度日数がかかるので、早めの手配を忘れずに。
この章では、海外転勤で必要なパスポートとビザについて解説します。

2-1.パスポートを申請しよう

ビザの申請にはパスポートの提出が必須です。初めて海外へ行く人はもちろん、パスポートの期限が迫っている人や、家族を帯同する人は、まずパスポートを申請しましょう。

パスポートの申請から交付日までは、土日祝日を含まない営業日ベースで、交付日を計算する場合がほとんどとなっています。年末やGWを挟んでしまうと受け取るまでに半月かかる、ということもあるので、申請は早めに。
また、ビザの申請時に「パスポートの有効残存期限が*ヶ月以上」と決めている国もありますので、自分のパスポートに問題がないか今一度チェックを!

※関連記事※
海外出張前に押さえよう! パスポートとビザの基礎と注意事項
世界最強のパスポートは日本!

2-2.ビザ申請は余裕を持って進めよう

海外転勤は現地で働くことが前提なので、多くの国で就労ビザが必要になります。
ビザ申請の手続きは複雑なため、会社側が手配することが一般的です。
家族を帯同する場合は、家族の分の家族帯同ビザも一緒に申請が必要なので、会社に家族の分のビザも申し出ておくのを忘れずに。

滞在国や申請の時期にもよりますが、ビザ申請から受領まで1ヶ月ほどかかることが多いです。余裕を持ったスケジューリングをしておきましょう。

※関連記事※
【主要国の解説付】海外出張のためのビザ情報をチェックしてみよう
シェンゲン協定を知って出張に備えよう!いまさら聞けない基礎知識
中国渡航には健康コード、入国健康申請が必要?手続き、申請方法をまとめ【2021年10月】

2-3.航空券の手配も会社に確認しておこう

海外転勤先へ移動するとき、転勤先から帰国するときの航空券は、家族の分も含めて会社側が手配することが多いです。
自分だけ先に赴任先へ行き、家族は後から現地入りするという場合は、日程をあらかじめ会社に伝えておくと良いでしょう。

また、現地到着時間の希望や特別機内食の用意、乳児用バシネット利用などあらかじめお願いしたい事項があるときは、会社に確認しておきましょう。

3.備えあれば憂いなし!予防接種と海外旅行保険の準備

海外転勤は、日本にいるときより病気やケガのリスクが高くなります。伝染病にかかったり、交通事故に巻き込まれたりと、突然起こるアクシデントに備えるため、日本でできる準備は済ませておきたいものです。
この章では、海外転勤に欠かせない予防接種と海外旅行保険について見ていきましょう。

3-1.予防接種は早めに受けておく

狂犬病やA型肝炎など、現地で罹患する可能性がある病気については、予防接種を済ませておくことが望ましいもの。また、アフリカや南米の一部では、ビザ取得条件として黄熱病の予防接種を義務付けている国があるので、忘れずに確認しておきましょう。

病気別に、複数回の予防接種が必要なものがあります。1回目の接種から2回目、3回目の接種まで2~4週間程度期間を空ける必要があるものが多いので、出国ギリギリになって慌てないよう、早めに接種予約を済ませておくのがオススメです。

厚生労働省検疫所のHPでは、渡航先別に必要な予防接種の種類を紹介しています。赴任が決まったらチェックしてみてはいかがでしょうか。

参考:厚生労働省検疫所 HP

※関連記事※
予防接種で安心な海外出張を! 覚えておきたい基礎知識
海外の衛生観念は⁉ 海外出張中に感染症から身を守るコツ

3-2.海外旅行保険は必ずかけておく

病気やケガなどアクシデントが起こったときの備えとして、海外旅行保険の加入が必要です。会社が契約者となり、海外転勤する社員を被保険者にして保険をかけるのが一般的です。

海外転勤用の保険は「駐在保険」、「海外赴任用保険」などと呼ばれます。保険期間の延長が可能だったり、帯同家族もまとめて補償されたりと、一般的な海外旅行保険とは内容が異なります。歯科治療費用を補償したり、自動車運転中の賠償プランをつけたりできる保険もあるので、自分にあったものを選ぶと良いでしょう。

※関連記事※
ロックダウンや緊急事態宣言で帰国の危機!非常時の帰国に関する基礎知識

コラム:「海外転勤」「海外赴任」に大きな違いはない

「海外転勤」には、仕事だけでなく生活拠点や家族の帯同など、プライベートな部分も含めた大きな移動を指すことが多くなっています。一方で「海外赴任」は、海外にある別の任地へ赴くこと自体を指す言葉。海外転勤と赴任の意味に大きな違いはなく、同じように使われています。

ちなみに「海外出向」は、日本で働いていた会社とは違う会社へ移籍して、海外の現地法人などで働くことを言います。

4.金銭管理はしっかりと!銀行口座とクレジットカードの準備

海外赴任中の給与は、生計費として現地の銀行口座に振り込まれる分と、日本の口座に給与として振り込まれる分に分かれることが一般的です。
仕事の場が海外に移っても、給与を受け取ったり、現地での買い物にクレジットカードを使ったりと、お金を管理・使用するためのツールは必要になってきます。
この章では、銀行口座とクレジットカードの準備についてご案内します。

4-1.非居住者向け口座を用意しておく

みずほ銀行、三井住友銀行、三菱UFJ銀行などの大手銀行では、国内非居住者向けの口座サービスがあります。銀行にもよりますが、海外送金や、口座明細書の海外住所への発送などのサービスを受けられます。

海外赴任中に、給与の受け取りやクレジットカードの支払いなどで、日本の銀行口座を利用する機会は多いもの。完全に解約してしまう前に銀行に確認してみましょう。

4-2.海外対応のキャッシュカードを用意しておく

赴任先の最寄りATMで、VisaやPlusなどのマークが表記されていたら、日本の口座から現地通貨で現金を引き出せます。
トラブル防止の観点から、海外ATMで引き出せる金額には限度額が設定されています。万が一の場合でも安心して利用できますよ。

国内のキャッシュカードとは別に、海外で引き出せるキャッシュカードの申し込みが必要なことがあるので、赴任準備の早い段階で銀行へ確認しておきましょう。

4-3.海外で使えるクレジットカードを用意しておく

多くの国で利用できる、国際ブランド付きのクレジットカードを用意しておくと安心です。VISAやMASTERがついたものなら、間違いないでしょう。
AMEXやダイナースなどその他の国際ブランドの場合は、使えない国もあります。持って行く場合は、渡航先で使えるか確認を。

店によっては、支払い時に現地通貨での決済か日本円での決済かを選べることがあります。なるべくおトクに利用したい、というときは現地通貨での決済を選ぶと良いでしょう。
なぜなら、現地通貨での決済は、カード会社の決済センターで設定されたレートで通貨換算され、請求額が決定します。一方、日本円での決済は通貨レートを利用店で設定可能なため、場合によっては損をすることもあるためです。

※関連記事※
海外出張時のクレジットカード・基礎知識
海外出張先での支払い!クレジットカードを賢く使うには?

4-4.期間1年以上の海外転勤なら住民票の転出届けを済ませておく

1年以内に日本へ帰国する場合は必要ありませんが、海外赴任期間が1年以上になるなら、住民票の転出届を済ませておきましょう。

住民票を入れたままにしておくと、前年の所得額に合わせた住民税を引き続き徴収されてしまいます。海外転勤先でも現地の住民税が課されることがほとんどなので、二重支払いになるのは避けた方が無難です。

5.できるだけ早く手配を!海外引越の準備

生活の拠点を海外に移すための準備には時間がかかります。
国際情勢や赴任国の政情、輸送状況などで荷物の到着時期が左右されることも大いにあり得ます。現地に到着したのにまだ荷物が届かない……と途方に暮れることがないよう、引越もなるべく早めに準備をしておきましょう。
この章では、海外引越の方法を2つご紹介します。

5-1.郵便局から荷物を送る

海外の転居先に家具や家電が備え付けられ、持っていくのは本や服のみという場合なら、郵便局から航空便や船便で送るほうがトータル費用が安く抑えられることもしばしば。
荷物が少ない場合には、郵便局を検討してみましょう。

<メリット>
・費用が安い。
・郵便を送ることができる国へなら、ほぼ送付可能。

<デメリット>
・梱包や通関手続きなど、全部自分でやる必要がある。
・輸送事情によって荷物の到着に数ヶ月かかることがある。

5-2.引越業者のサービスを利用する

家電や家財なども海外転居先に持っていきたかったり、家族を帯同するため荷物が多くなったりという場合は、引越業者の海外転居サービスを利用すると良いでしょう。

<メリット>
・急な海外赴任にも対応してもらえる。
・荷物の梱包から現地住所への搬入まで、幅広いサービスを選べる。

<デメリット>
・荷物の量や引越プランにもよるが、それなりに費用がかかる。
・現地に荷物が到着してからの作業は、現地業者が請け負う場合がある。その      ため、現地語がわからないとトラブルの元になることも。
・赴任先によってサービス対象外のことがある。

6.海外赴任がスタートしたら!転勤後にするべきこと2つ

転勤先の居住地に到着したあとすぐに済ませておきたいのが、長期滞在する外国人としての滞在許可証申請と、在留届の取得です。
忘れると、不法滞在で逮捕されたり事件に巻き込まれたりしたとき、現地大使館からの支援を得られないこともあるので、必ず届け出ておきましょう。
この章では、滞在許可証と在留届について見ていきます。

6-1.現地で滞在許可証を取得する

ビザが入国許可なら、滞在許可証は居住許可の位置付けです。ほぼどの国でも、外国人が長期間その国に居住する場合は、滞在許可証の届出を義務付けています。必ず手続きをしておきましょう。
滞在許可証の取得に関しては、会社が申請を代行することはできず、現地に赴任する労働者やその家族自身で手続きを行う必要があります。

入国後、居住地を管轄する警察署や移民局及び自治体などで直接手続きが必要です。「入国から*日以内」など、手続きには期限があるため早めに申請しましょう。

滞在許可申請を忘れると、不法滞在となり逮捕される場合もあります。また、海外赴任の期間が延長されたとき、合わせて滞在許可証の更新もお忘れなく!

6-2.在留届を提出する

日本の旅券法では、海外に3ヶ月以上滞在する日本人に対し、在留届を提出することを義務付けています。

在住国での戦争やテロ勃発時の在留日本人支援をはじめ、日本での国政選挙や地方自治体選挙の在外投票を希望するときに、在留届は必須です。
提出期限は決められていませんが、現地に到着してからなるべく早く、在留届を提出しましょう。

また、外務省のHPでは、オンラインの届出も受け付けています。すぐにインターネットを利用できないときは、現地の日本大使館でも手続きできます。

*外務省オンライン在留届申請サイト

まとめ:海外転勤では早めの準備が成功を呼ぶ

海外転勤を命じられてから実際に赴任するまでには、意外とあっという間に時間が過ぎていくものです。出発直前になって慌てることのないよう、早めに渡航までのプランを立て、やるべきことを確実に済ませておきましょう。

様々な段取りや手配は一見、複雑で面倒なものに思えます。しかしその経験は、現地で始まる生活や仕事への第一歩。言葉も文化も違う環境でやっていくための自信に繋がっていく、と心得ましょう。
海外転勤を成功させ、ビジネスパーソンとしての自分をもっと成長させるためにも、準備を怠りなく!

こちらの記事もチェック!
ドラマ『NICE FLIGHT!』で出てくる航空用語や物語を解説!これで飛行機に乗るのがもっと楽しくなる!
英語のWeb会議で相槌はどう打てば良い?覚えておきたい表現15選
成功の秘訣は現地の徹底調査!柔軟な感性で挑む映像技術者の香港生活【海外出張リーダー】Vol.15

Lock Icon

この記事は会員限定です

会員登録すると続きをお読みいただけます。