ビジネス基礎知識

2018.12.19

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海外出張前に押さえよう! パスポートとビザの基礎と注意事項

初めて言い渡された海外出張の業務命令。人によっては「海外旅行の経験もないのにどうしよう」と心配になる方もいるかもしれません。
そこで、海外出張の基本の「キ」、パスポートとビザについて、知っておくべき必要最低限の情報と注意事項を押えておきましょう。新システムの導入など時代に合わせた変化もあるので、しばらく海外旅行をしていない、あるいはパスポートの有効期間を過ぎたという方々も要チェックです。

パスポートとは自国が認めた身分証明書

パスポートとはそもそもなんでしょう?

日本での正式名称は「日本国旅券」です。
パスポートは、日本国外における自分の国籍や身分を証明するものです。空港で飛行機に乗る前(船舶で出国する際の港でも同じ)の出国手続きと、渡航先に到着した際の入国審査、そして帰国の際に渡航先からの出国と日本に着いたときの入国手続きで、絶対に必要なものです。

パスポートがないと飛行機に搭乗することすらできません。
また、渡航先では常に携帯していることが義務付けられています。

パスポートの期限切れには要注意

日本のパスポートは10年間と5年間の2つの有効期間があり、10年有効のものは赤色、5年有効のものは紺色と、表紙の色で区別しています。
かつては1回の出入国のみに有効な「一次旅券」というものがありましたが、現在発行されているパスポートはいずれも、有効期間内での渡航回数に制限はありません。

渡航先の国によっては、残存有効期間が6カ月を切っていると出入国できなくなるケースがあります。例えば中国やタイ、シンガポール、ベトナム、フィジー、ロシア、アラブ首長国連邦などです。さらに残存有効期間が3カ月を切ると入国できないのは韓国、モロッコなどで、ここにEU諸国加えるとかなりの数に及びます。なお、入国時や出国時などいつを基点にするかは国により異なります。

初めての海外渡航であれば有効期間はまず問題ないと思われますが、数年前に渡航をして以来の海外出張という方は、渡航先ごとの対応方法と発行された年を今一度確認しておきましょう。

不正利用の対策に「eパスポート」を導入

2006年からは集積回路(ICチップ)が組み込まれたIC旅券が導入されました。パスポートに記載された文字情報のデータが記録されているほか、生体認証に対応していることから、バイオメトリック・パスポート、または「eパスポート」とも呼ばれます。

これはテロ防止の観点から採用されたもので、仮にパスポートの顔写真を貼り替えられてもICチップのデータと照合できるので、「なりすまし」によるパスポートの不正利用を防ぐ効果が期待されます。
既に主要空港で導入されている、eパスポートに対応した「顔認証ゲート」では、帰国審査の際、パスポートの顔写真ページを開いてリーダーに置いて情報を読み取らせ、ゲートの内蔵カメラで顔写真を撮影、問題がなければ手続き開始から数秒で通過できます。

※顔認証ゲートのデモ動画

パスポートの申請方法

パスポートの申請は、自分が住民登録している都道府県庁の窓口で行います。
その際、身内の方など代理人による申請も可能です。ただし、受領は申請した本人のみしかできませんのでご注意ください。
受付窓口は、住んでいる地域ごとに場所が決まっています。詳細は各都道府県の公式サイトで確認しておきましょう。

※パスポート申請先都道府県ホームページへのリンク一覧

申請時に用意するもの

パスポートの申請には以下の書類が必要となります。

・戸籍謄本または戸籍抄本(6カ月以内に発行されたもの)
・顔写真(規定サイズのもの。詳細はこちらを参照 )
・本人確認の書類(既に発行したことがあればそのパスポート、運転免許証、マイナンバーカードなど。健康保険証の場合は写真付きの社員証なども必要)
・発行手数料(10年間有効のものなら1万6000円、5年間有効のものは1万1000円です。支払いには収入印紙を購入し、提出書類に添付することになっています

住んでいる地域や申請者の条件によって必要書類が異なる場合もあります。
申請に必要な書類を忘れて当日慌てることのないよう、前日までに準備と確認を済ませておきましょう。

忙しい人に便利な「ダウンロード申請書」「居所申請」

2018年10月から「パスポートダウンロード申請書」での対応が可能になりました。必要事項をPC等で入力して作成した申請書をダウンロード後、印刷して、サイン等は手書きで加えます。これなら、自分のPCなどでファイルをあらかじめ入手し、ある程度まで必要事項を記入し終えてから窓口に出向くことができるので、窓口ですべての項目を記入する時間のない人に便利です。

また、例えば埼玉県から東京都内のオフィスに通勤していて昼間に埼玉県の窓口へ出向く余裕がない、あるいは、単身赴任者のため住まいは家族と別でも住民票は家族が住む都道府県にある場合、勤務先の都道府県庁の窓口での「居所申請」が可能です。
居所申請ができるのは本人のみで、代理人による申請はできません。また、上記の申請書類のほか、6カ月以内発行の住民票が1通必要となります。単身赴任の方は家族などに頼んで住民票を発行、郵送してもらうことになります。
東京都の場合の居所申請の要項はこちらを参照してください。

無事申請を済ませてから受領までの所要日数の目安は6~9日間ですが、その日数は窓口によって変わります。ビザの取得が必要な場合はパスポートを受領してからの手続きになるので、余裕を持ったスケジュールを立てるようにしましょう。

ビザとは渡航先が出した入国許可証

ビザは、簡単に言えば渡航先の国が自国民以外の入国者に出す入国許可証です。
ビザは渡航先の国の大使館や領事館、専用のビザサービスセンターなどで発給されます。ビザの形態は、パスポートにスタンプを押すものや、ステッカーを貼るものなど、国によって様々です。
観光、商用、就労、留学など用途別に発給され、それぞれ渡航先によって滞在日数や現地での行動の制限などが定められています。

ビザが、渡航先の国が出した証明書類の一つとはいえ、実際に入国する際には入国審査を受ける必要があります。万が一パスポートが偽造されたものと発覚した場合などは、ビザの有無に関わらず入国できません。

ビジネスにも便利なビザ免除

日本国籍を持ち、観光や商用などで短期滞在の場合、ビザが不要という国が相当数あります。
これは、国同士によるビザの相互免除協定によるものです。お互いの人や貿易などの交流を盛んにすることなどが目的で、相互の友好関係の証しと取ることもできます。

EUに加盟している欧州諸国では、「あらゆる180日間における最大90日以内の観光・商用目的の滞在でのビザは不要」という取り決め(シェンゲン協定、2017年は26カ国に適用)があります。ビザは不要とは言っても、パスポートと出国用航空券の所持は常に心がけるようにしてください。ビザなしが適用されるのは、パスポートの残存期間が、出域する予定日から数えて3カ月以上という条件にも注意が必要です。

アメリカでは、ICパスポートに対応した電子渡航認証システム(ESTA)を使ったビザ免除プログラムを行っています。ビザ免除プログラムの利用が認められた国籍であること、有効なパスポートを所持していることなどの要件を満たしていれば、90日以内のビザ免除滞在が可能です。免除が受けられるかどうかは個別に審査されますが、中には、逮捕や犯罪歴があるなど利用不可能な条件が審査前から明確にされているものもあります。詳しくはこちらのサイトで確認してください。

そのほか、観光・商用目的の短期滞在でビザが不要な主要国・地域とその滞在可能期間は以下のとおりです。それぞれにパスポートの残存期間や書類などの必要条件があります。

アジア
韓国(90日以内)、中国(15日以内)、台湾(到着日の翌日深夜0時から起算して90泊91日以内)、香港(90日以内)、シンガポール(30日以内)、フィリピン(30日以内)、マレーシア(90日以内)、ベトナム(15日以内)

中東
アラブ首長国連邦(30日以内)、イスラエル(90日以内、商用目的は収入を伴わない場合に限る)、トルコ(90日以内)

米大陸
カナダ(6カ月以内)、メキシコ(180日以内)、アルゼンチン(90日以内)、ウルグアイ(90日以内)

ビザが必要な国で気を付けること

日本人ビジネスマンの出張が頻繁で、期間にかかわらずビザが必要な国といえばタイ、インドネシア、インドなどでしょう。

例えばタイでは、ビザなしで滞在が認められているのは観光目的のみで、短期間の出張でもビザは必要です。また、外国人が仕事をするにはビザに加えて労働許可証が必要です。

インドネシアの場合、工場訪問には事前にそれ用のビザの取得が必要です。過去に、取得しているビザが不適合と見なされて拘束された事例もあります。取得したビザは目的の職務が遂行できる種類なのかどうかを事前によく確認しておきましょう。

これらの国の申請方法は各国大使館の公式サイトでご確認ください。
タイ
インドネシア
インド

ビザの要不要については複雑なケースもありますが、万が一渡航先で問題となるとその後の入国にも影響しかねません。渡航先の大使館の公式サイトはチェックしておきましょう。

取り扱いは慎重に! 信頼性高い日本のパスポート

日本のパスポートは、短期滞在でのビザが不要な国・地域が190にものぼる「世界最強のパスポート」と言われています(英コンサルティング会社ヘンリー&パートナーズが2018年10月に発表。ビザなしで渡航できる行先数を基に比較するパスポートランキングによる)。これは日本が外交的に極めて安定していることの証しといえるでしょう。
それは一方で、万一日本のパスポートを紛失したり盗まれたりしてしまった場合、そのパスポートが持つ世界への信頼性を犯罪に悪用される恐れもあるということです。
万が一紛失したら再発行することは可能ですが、それだけでは済まない問題が起こり得ることを念頭に置いて、くれぐれも大事に所持するよう心がけましょう。

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