ビジネス基礎知識

2023.07.18

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成功するブレストとは?会議だけでなくチームづくりにも役立てよう

新規事業やプロジェクトの企画、商品開発など様々なシーンで使われているブレインストーミング(以下、ブレスト)は、
イノベーティブな発想を引き出す手法です。
今回は、アイデアが生まれやすく、チームにとってもより良い結果をもたらすブレストの方法をオリジナル図解付きでご紹介します。
また、ブレストを行う際のポイントや注意点もまとめましたので、ぜひ参考にしてみてくださいね!

1.イノベーティブな発想を引き出すブレストとは?

ブレストの目的は、チームでイノベーティブな発想を引き出すこと。
アイデア出しの手法として多くのビジネスシーンで使われてきたブレストですが、
どんな効果があるのかを考えたことがある方は少ないかもしれません。
まずは、ブレストの効果やブレストがどんなシーンで向いているのかを、改めて押さえておきましょう。

1-1.ブレストは効率よくチームでアイデアを出し合う手法

ブレスト(英:Brainstormingの略)とは、Brain(脳)とstorming(嵐、突撃、大騒ぎの動詞)を組み合わせた言葉です。

ブレストはチームで行うことが一般的。
複数人で頭の中にあるアイデアや、まとまりのない考えを発散(見える化)し、
そこからアイデアを収束させてコンセプトにまとめるためのきっかけを作る手法です。
チームで行うことで、1人では思いつかない発想を生み出したり、
チーム内のコミュニケーションを促進させたりすることができると言われています。

ブレストを考案したのはアメリカのアレックス・F・オズボーン氏

ブレストを考案したのは、アメリカで広告代理店の副社長を務めていたアレックス・F・オズボーン氏。
1953年に同氏の著書『Applied imagination-principles and procedures of creative writing』で発表されました。
約70年も前に考案された手法が、今もなおビジネスシーンで使われているというのは驚きですね。

1-2.ブレストは新しいものを作るデザイン思考にも有効

現代は、社会の構造が複雑化し、捉えどころがなく予測不能な「VUCAの時代」と言われています。
さらに、インターネットの普及やChatGPTの登場により、今まで以上に誰もが簡単に知識や情報を得られる時代になっています。

だからこそ、これからの時代は今まで以上に「情報やノウハウを持っていることの優位性」に頼ったビジネスよりも
「今まで誰も考えたことのない発想やアイデア」をもとにしたビジネス、つまりイノベーティブなビジネスが求められます。

ブレストは、こうしたイノベーティブな発想を生み出す、デザイン思考でも大いに役立つ手法です。

2.ブレストの目的はアイデア出しだけじゃない!

ブレストと聞くと、チームで次々と思いついたことを発表しあい、アイデア出しをすることばかりがフォーカスされがちかもしれません。
もちろん、アイデアをどんどん出していくこと自体は、間違いありません。
けれどそれと同じくらい、ブレストでは出たアイデアをどう収束させ、活用していくのかも大切です。

ブレストの時間を何に役立てていくのか、目的をはっきりとチームで共有しないと
「アイデアはいっぱい出したけれど、実際のビジネスにはつながっていない」と参加者が徒労感に駆られてしまうかもしれません。
そうならないようにするために、まずはブレストの目的を改めて理解しましょう。

2-1.ブレストの4つの目的

ブレストはアイデアを生み出すことだけでなく、チームが仕事をしやすい環境を整えるためにも使えます。
それ以外にも、ブレストには様々な目的を持たせることができますので、
社内やチームでブレストするなら、目的はどこにあるのかをしっかりと共有することが大切です。
ブレストで設定されることが多い、4つの目的を1つずつ見ていきましょう。

2-1-1.イノベーティブなアイデアを生み出す

ひとりで出せるアイデアの数には限りがあります。
また、ひとりではなかなか発想を広げにくい側面もあるでしょう。
イノベーティブなアイデアを生み出すためには、チームで協同してアイデアを出すことが効果的です。
他の人のアイデアから着想を得て、新たなアイデアを出せる可能性も広がります。

2-1-2.チームメンバー同士のコミュニケーションを図る

ブレストで一緒にアイデアを出し合う時間は、お互いの人柄や考え方の癖なども自然と知ることができます。
チームでブレストをしながら「この人は、こういう発想をするんだ」「こんな人なんだ」と自然とわかるようになれば、
チームメンバーの関係性も作られ、仕事のしやすい環境が整えられます。

2-1-3.チームメンバーの得意分野や特性を理解し合う

ブレストを重ねる中で、チームメンバーの得意分野がわかり、その後の業務でも活かせることがあります。
例えば、「Aさんは、SNS戦略に関する知識が豊富だ」「Bさんは、海外のマーケット事情に詳しい」など、
それぞれのバックボーンや専門領域がブレストの時間にわかるかもしれません。
ブレスト以外の時間でも、こうしたチームメンバーの得意分野を知っていれば、プロジェクト運営に役立てられます。

2-1-4.参加者がチームに心理的安全性を抱けるようにする

ブレストでみんなが出したアイデアをみんなが受け止める時間は
「このチームなら、自分の考えに耳を傾けてくれる」という心理的安全性を醸成できるという効果もあります。
ブレスト以外の時間にも、相談や提案がしやすいチームになれば、意見やコミュニケーションも活発化します。

3.ブレストを成功させるための3つのステップとは?


 
ここからは、実際にブレストを成功させるためのポイントを解説していきましょう。
まずは、ブレストを行う際のステップについてです。
ブレストを実施するときは、アイデア出しをしたあとに、出されたアイデアをどうまとめていくかもきちんと計画しておくことが重要です。
失敗しないためのブレストの流れは次の3ステップです。

3-1.ブレストの3つのステップ

・ステップ1:アイデア出し
 最初のステップとなるアイデア出しでは、チームでテーマに沿ってアイデアを出し合い共有していきます。

・ステップ2:アイデア収束
 それぞれのアイデアを特徴や実現性などに分けてグループ化。アイデアを厳選していきます。

・ステップ3:アイデアのコンセプト化
 最後に、事業化や実現化に向けて採用されたアイデアを選び、肉付けしていくのが「ステップ3」のコンセプト化です。
この段階では、アイデアをブラッシュアップすることを意識すると良いでしょう。

3-2.ブレストはアイデア出しをする前と後が重要

ブレストをする際には、ただアイデアを出すのではなく出たアイデアをしっかりとまとめるステップ2〜3の作業がとても重要です。
とくに、ブレストの目的が新商品の開発や事業化に向けた取り組みのように、
具体的な成果を出すためであれば、ステップ2〜3は必ず行うようにしましょう。

加えて、ブレストをする前には「今回のブレストは何を目的・ゴールにするのか」をしっかりチーム内で共有しましょう。
目的をきちんと共有せずに始めてしまうと、アイデア出しの方向がブレてしまうからです。

次の章から、それぞれの具体的なおすすめ手法を紹介していきます。

4.図解入!ブレストのおすすめ手法

それでは早速、ブレストを実際に行う際に役立つおすすめの方法を紹介します。
先ほどご説明した、ブレストのステップごとにピックアップしてみましたので、ぜひ参考にしてみてくださいね。

4-1.アイデア出しのステップでおすすめの手法2つ

アイデア出しをする段階では、参加者が自由な発想でアイデアを出せるような環境づくりが重要です。
口頭で出たアイデアをホワイトボードなどに書き出していくのでは、なかなかアイデアが出ないという方は、次のような方法を使ってみましょう。

(1)ブレインライティング

ブレインライティングとは、回覧板形式で紙にアイデアを書き出していく方法。
5人で行うなら5枚の紙を用意し、1人1枚配ります。その紙に、アイデアを3つ書いたら、隣の人に回していくという作業を5回繰り返していきます。


画像:筆者作成

ブレインライティングは、ブレストでアイデアがなかなか出ないときに有効な手法です。
紙に書くのは、前の人が書いたアイデアとは全く違うものでも大丈夫。
他の人が書いたアイデアをヒントにしながら考えていくことがポイントです。
隣の人が書いたアイデアをヒントに、新たなアイデアを次の紙に書き足していくことで、1人では思いつかなかった発想の種を見つけやすくなります。

(2)マンダラチャート(マンダラート)

2023年に開催されたWBCで大活躍した大谷翔平選手も、
目標達成のために使っていたと言われるマンダラチャートは、ブレストでも使える手法です。
3×3の9マスの枠が書かれた紙の中央のマスにテーマを書き、
そこから連想したキーワードや思いついたアイデアをマスの周りの9つの枠に書いていくことを繰り返す作業です。


画像:筆者作成

1人で全てのマスを埋めていくのも良いですし、チームで手分けをしてマスにアイデアを書き出してもよいでしょう。
テーマを中心に、どんどん連想するように言葉やアイデアを出していける手法です。

(3)シックスハット(SIX HAT)法

アイデア出しに行き詰まってしまった際に有効なのが、シックスハットと呼ばれる手法です。
色分けされた帽子をかぶって、各帽子で設定された課題間で物事を考えていく手法です。


画像:筆者作成

上の図のように、色ごとに思考パターンを設定して、同じテーマをそれぞれのスタンスから考えていくのがシックスハットです。

<シックスハットの6つの思考>
青:俯瞰的思考(過程や管理)=進行役
赤:直感的思考(感覚や感情)
白:客観的思考(事実や中立)
緑:創造的思考(創造や革新)
黄:肯定的思考(積極的、ポジティブ)
黒:否定的思考(消極的、ネガティブ)

4-2.アイデア収束のステップでおすすめの手法2つ

たくさんのアイデアを出したら、アイデアを出しっぱなしではもったいないですよね。
ブレストでは、集まったアイデアをまとめていく作業も重要です。
まとまりのないアイデアを分類し、必要なものに絞っていく(収束させる)ために、次のような方法がおすすめです。

(1)Dot Voting(ドット ボーティング)

その名の通り、アイデアに投票していく手法です。
出てきたアイデアの優先度や重要性を決めていくために、アイデアが書かれた紙に、チームメンバーが丸いシールなどを貼っていく手法です。
視覚的に、シールがたくさん集まったものから注目をしていくべきだとわかるため、アイデアに優先順位をつける際に役立ちます。

(2)2×2マトリックス法

2×2マトリックス法は、出てきたアイデアをマトリックス図を使いながら分類していく方法です。
例えば、新たなプロジェクト企画であれば縦軸に実現可能性、
横軸に実施の意義やクライアントにとっての価値などを設定して分類していく、というような形です。


画像:筆者作成

軸は他にもマーケットの成熟度や競合の多さ、コスト、リスクなどいろいろな指標を設定できます。
ブレストで出た考えやアイデアを付箋に書いて、マトリックス図に並べ直していくと整理しやすいのでおすすめです。

4-3.アイデアのコンセプト化段階でおすすめの手法2つ

ブレストで出たプランやアイデアを実際の商品開発やサービス創造につなげていくなら、
最後にそれらをコンセプト化し社内やチームで共有するためにまとめなければいけません。
アイデアをコンセプトとしてまとめるための手法を2つご紹介します。

(1)ストーリーボード

4コマ漫画のように、ストーリー形式でアイデアをもとにした商品やサービスのポイントをまとめる手法です。
例えば、エコバッグが必要だけど大きくて持ちたくない、というユーザーに向けたコンパクトなエコバッグを開発するアイデアを事業化するとします。
この場合、ストーリーボードでは、ユーザーの困りごと、商品を使ってどう悩みが解決するのかをまとめていきます。

(2)NABCフレームワーク

NABCとは、「Need(顧客ニーズ)」「Approach(解決方法)」「Benefits(提供できる価値)」「Competition(市場の競争相手)」
の頭文字をとった言葉です。それぞれの視点から、アイデアの魅力をまとめていくのがNABCフレームワークです。


画像:筆者作成

一つずつ項目に沿って企画やアイデアの特徴を書き出してみると、足りない部分やもっと検討していくべき課題も可視化できます。

5.ブレストを成功させる3つのポイント


ここまでステップごとにみてきたように、ブレストではアイデア出しをした後の段階も疎かにしてはいけません。
また、よりアイデアが出しやすい環境を作ることも意識するとよいでしょう。
具体的にブレストを成功に導くポイントを、最後にご紹介します。

5-1.人のアイデアを否定しないこと

ブレスト中はアイデアを出しやすくなるような環境づくりが欠かせません。
そのためにも、全員が意識しておきたいのが、人のアイデアは決して否定しないこと。
また、出されたアイデアに対してすぐに「使える/使えない」など判断をしないことです。

ブレストを進行する人だけでなく、参加メンバー全員がこの点を意識するよう、開始前にファシリテーター役の人から伝えるのもおすすめです。
ブレストの場で出されるアイデアは、まずは「質よりも量を重視する」という姿勢で臨みましょう。

5-2.チームで行うメリットを生かすこと

ブレストは、通常複数人のチームで行うことで、よりよい結果を出しやすくなります。
これは、他のメンバーの考えやアイデアをきっかけに、1人で考えていては思いつかない発想を生み出すため。

「チームでやるからこそ意味がある」ということをブレストを始める前にチームメンバーの共通認識として確認しておきましょう。

よくある失敗例
「せっかくアイデアを出しても否定されてしまう……。」

チームで行うメリットが大きいブレストですが、出されたアイデアに対して否定的なコメントばかりが飛び交う時間になると
「変なアイデアを出せない」と、参加者が萎縮してしまい自由な発想が妨げられてしまいます。

「奇抜なアイデア大歓迎!」の姿勢で、まずは出されたアイデアに対して肯定的に受け取るように全員が意識できると、
チームの雰囲気も良くなり参加者同士の信頼関係も構築できます。

5-3.個人で考える時間とチームで共有する時間を交互に設けること

アイデアを思いついた人から言っていくだけのブレストは、「アイデア出しをして終わり」になってしまいがちです。
そうならないようにするためにも、参加メンバーが個々人で考える時間を設けるようにしましょう。
ある程度アイデアを書き出した後に、発表しあう時間を作ることを繰り返すと、
他の人が出したアイデアをきっかけに、新たなアイデアが生まれやすくなります。
また、チームとしてのコミュニケーションの時間もしっかりと確保できるでしょう。

まとめ:ブレストでイノベーティブな発想を生み出そう!

企画会議やワークショップなどで使われることの多いブレスト。
ブレストとは単なるアイデア出しだけでなく、チームワークの醸成や参加者同士がお互いを知り合う機会としても役立ちます。
ChatGPTの登場やインターネットの普及により、誰もが情報を得られる今こそ、
イノベーティブな発想を生み出すチャンスとしてブレストを大いに有効活用してはいかがでしょうか?

また、その際にはブレストを何のために使うのか、目的を明確にしてから実行してみるときっとよい結果が生まれることでしょう!

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