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2020.06.10

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海外出張先の消費税はいくら? 出張時に知っておきたい「消費税」知識

海外出張中に使った、現地で購入したお土産や交通費、ホテルの宿泊代などの経費。出張後に精算処理する際に、悩んでしまうことが多いのが「消費税」の扱いかもしれません。
そこで今回は海外出張中や経費処理のための消費税について、知っておきたい情報を整理してみましょう。

1.海外出張者が知っておきたい消費税について

海外出張時、航空券代やサーチャージ代、出張先の宿泊ホテル代などかかる経費はいろいろ。事前に日本で飛行機や宿を手配する場合、消費税の取り扱いは一体どうすれば良いのでしょうか?

1-1.海外の消費税制度

海外では、日本の消費税に該当する税金は「付加価値税」と呼ばれています。(本記事では、以降、付加価値税を消費税として説明します)

税率は国によっても異なり、消費税が10%の日本と比較して、3倍近くの消費税率(*)が設定されている国もあります。物価の高さは想定していても、消費税分の支払いを想定せずに買い物をしてしまい「現金の持ち合わせがない!」なんて慌ててしまうこともあるかもしれません。
出張先の国の消費税率がどのくらいなのか、ぜひ渡航前に予備知識としてチェックしておきましょう。世界の消費税については、ランキング形式で2章でご紹介しています。ぜひ確認してみてくださいね。

*世界でも消費税が高いことで知られるスウェーデンでは消費税が25%。ただし、全ての品目やサービスに一律25%の消費税が課されているわけではありません。例えば、本や交通機関の運賃などは6%、食品は12%など品目によって税率が違います。

参考:スウェーデンの税務署HP「The VAT Brouchure」
https://www.skatteverket.se/download/18.361dc8c15312eff6fd117b1/1462185115587/the-vat-brochure-skv552b-utgava15.pdf

1-2.レシート上の消費税表記

消費税がどのくらいかかったのか知りたいときに、レシートを見ても「どこに消費税額が書いてあるかわからない」となり、経費処理作業がストップしてしまうと、困ってしまいますよね。英語圏では消費税がVAT(Value Add Tax)と書かれている場合もありますが、国によって表記方法が異なります。参考までに諸外国の消費税の表示方法をご紹介しましょう。

【諸外国での表記方法】
イタリア:VAT
フランス:TVA
スペイン:IVE
ドイツ:MwSt
中国:增值税
オーストラリアやシンガポールなど:GST

その国の税制によっても異なりますが、日本でも昨年導入されたように軽減税率があると、レシートにも軽減税率が適用されているものといないもの、別々の税率で計算されています。

1-3.消費税が免除されるケース

基本的に消費税は、国民が払う税金です。そのため、外国籍(旅行者や出張者など)は消費税を支払う必要がないとされ、払い戻し制度が設けられています。

消費税の払い戻しは「TAXFREE」表示のある店で買い物をし、書類手続き
を行う必要があります。海外出張中に何か買い物をする予定があれば、免税できる物はしないと損。あらかじめ購入するお店を決めておくといいでしょう。

とはいえ「手続き方法がわからない」「方法は知っているけれど面倒」などの理由から、そもそも免税してもらうことを諦めてしまうこともあるかもしれません。「わからないから、面倒だから」ではもったいない消費税の払い戻し。大まかな流れをご紹介します。

たとえば、街中の免税店で買い物をし、空港税関で申告する場合。大まかな流れは次の通りとなります。

【払い戻しを受ける方法】
(1)買い物時に書類を手に入れる
免税対象となるお店で買い物をした際に、各店舗が発行する免税書類(リファンド・チェック)を受け取ります。
また、免税書類の発行をお願いする際には、パスポートの提示が必要となります。

(2)免税書類に輸出証明スタンプをもらう
出国時に購入品、レシート、免税書類、パスポート、クレジットカードを持参し、買い物時にもらった免税書類に輸出証明スタンプをもらいます。
空港の税関でもらうことができますが、手続きに時間がかかるケースもあるので、空港利用時には時間に余裕を持って行動しましょう。

ここで注意したいのが、申請する品物を提示しなければいけないということです。
スーツケースに品物を入れて預け入れ荷物にしたいときは、空港のチェックインフロア内にある税関カウンターで先に免税手続きをし、その後チェックインカウンターで荷物を預けましょう。
また、申請する品物を機内持ち込みにする場合には、搭乗エリア内にある税関カウンターで手続きをします。
いずれも、未開封の品物のみが免税対象となるので、免税手続きをするなら「早く使いたい!」という気持ちを我慢して、免税手続きが終わるまで開封しないようにしましょう。

参考:アイスランド航空「ケフラヴィーク空港TAX裏ファウンド手続きについて」
http://www.icelandair.jp/KEF空港での免税手続きについて.pdf

(3)払い戻し申請をする
消費税の払い戻しは、現金・クレジットカードや小切手・振り込みなどによって受けられます。
空港のキャッシュ・リファンド・カウンターに必要書類を提示して、直接返金が受けられます。現地空港で手続きすると、基本的に現金で受け取る場合は現地通貨となります。日本円で受け取りたいなら、成田国際空港や関西国際空港のカウンターを利用しましょう。

※参考
成田国際空港「ヨーロッパ付加価値税(VAT)払い戻しサービス」
https://www.narita-airport.jp/jp/service/svc_16
関西国際空港「付加価値税(VAT)払い戻しサービス」
https://www.kansai-airport.or.jp/service/money/05.html

【コラム】消費税の払い戻し条件も確認を!

免税の対象額は国によっても異なります。例えば、フランスでは同じお店で1日175ユーロ以上の買い物をした場合に免税対象となります。韓国では、1回の会計金額が3万ウォン以上・50万ウォン未満、かつ1度の訪問期間の総額が200万ウォン以上となっています。

参考:
在日フランス大使館「免税手続き」
https://jp.ambafrance.org/article1166

韓国観光公社公式サイト「事後免税サービス」
https://japanese.visitkorea.or.kr/jpn/SHP/SH_JPN_4_2.jsp

2.海外の消費税ってどのくらい? 高い国・低い国ランキング

海外出張時に気になる、現地の消費税率。
取引先の国の消費税がどのくらいかを知ることは、ビジネス上でも役立つことがあるでしょう。ここでは、世界の消費税がどのくらいなのか、消費税が高い国と低い国、トップ10を見比べてみましょう。

2-1.消費税の高い国トップ10

1位:ハンガリー(27%)
2位:クロアチア、スウェーデン、デンマーク、ノルウェー(25%)
6位:アイスランド、ギリシャ、フィンランド(24%)
9位:アイルランド、ポーランド、ポルトガル(23%)

※参考:全国間税会総連合会「世界の消費税(付加価値税)155ヵ国(令和元年10月版)」
http://www.kanzeikai.jp/img/f_users/r_68215459img20200120094011.pdf

世界でも消費税が高いのが、ヨーロッパ、特に北欧の国々です。
ただし、消費税が高い国でも食べ物や日用品などの生活必需品などに軽減税率を適用している国も多くなっています。

画像出典:OECD“Consumption Tax Trends 2018”
https://www.oecd.org/tax/consumption-tax-trends-19990979.htm

2-2.消費税の低い国トップ10

1位:台湾、アラブ首長国連邦、サウジアラビア、バーレーン、カナダ、ナイジェリア(5%)
7位:マレーシア(6%)
8位:シンガポール、タイ、パナマ、(7%)

※参考:全国間税会総連合会「世界の消費税(付加価値税)155ヵ国(令和元年10月版)」
http://www.kanzeikai.jp/img/f_users/r_68215459img20200120094011.pdf

一方で、消費税が低い国に目を向けてみると、つい最近増税となった日本も、国際的に見れば消費税は比較的低い方に分類されます。
総じて、アジア圏の国々は消費税が安い傾向にあります。

3.出張経費精算時に知っておきたい消費税の扱いかた

国によっても税率が異なる消費税。
海外出張の経費精算で「消費税をどう処理すればいいのか……」と悩むこともありますよね。そこで最後に、経費精算時に考慮しておきたい、海外の消費税にまつわる知識をご紹介します。
海外出張経費には、課税対象となるもの・ならないものが混在しています。まずはそこを整理してみましょう。

3-1.消費税がかからない(免税・非課税となる)出張経費費

<消費税の課税取引対象外になる経費例>
・海外で購入したお土産など
・国際線航空券代(国内線乗り継ぎも同時購入ならその分も免税)
・機内販売
・免税店での買い物
・燃油サーチャージ
・海外で使用した通信費(電話など)、郵便代
・海外出張の日当
・海外旅行保険料

現地で購入したお土産代など、海外で現地の消費税込みの費用がかかった場合。経費精算は現地の消費税込みで行うのが基本です。会計処理上は、現地での消費税込の金額だったとしても「仕入税額控除」の対象外になります。

また、航空券チケットや燃油サーチャージ代、飛行機内の有料機内サービスなど国境をまたいで提供されるサービスも課税対象外。そもそも消費税が免除されている空港の免税店での買い物や、飛行機内で購入したものなどに消費税はかかりません。

ここで注意したいのが、航空券手配を代理店に依頼した場合の手数料。
「チケット手配」というサービスの提供は日本国内で行われていますので、航空券予約や決済・変更手続きなどにかかる手数料には消費税がかかっています。

参考:
税理士ドットコム「海外で支払った消費税について」
https://www.zeiri4.com/c_1076/c_1077/q_1668/

国税庁「仕入税額控除の対象となるもの」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6451.htm

3-2.消費税がかかる出張経費

<消費税の課税取引になる経費>
・空港までの交通費
・日本国内で手配したお土産代(免税店での購入を除く)
・空港使用料
・代理店手数料
・国際線チケットとは別に、国内線分のみ購入した場合の航空券代
・出張準備として国内で摂取した予防接種費用(健康保険適用外=自費診療のもの)
・海外出張として社員に支給する支度金

国内移動の交通費は、当然消費税がかかります。例えば空港までの電車賃やバス代、タクシー代、ガソリン代などがこれに該当します。また、日本の免税店以外で購入した手土産代なども消費税がかかる出張経費です。

こうした消費税にまつわる処理は複雑。不明な場合は、必ず会計士に相談・確認するようにしましょう。

※参考
国税庁「出張旅費、宿泊費、日当、通勤手当などの取扱い」
http://www.nta.go.jp/m/taxanswer/6459.htm

国税庁「免税事業者や消費者から仕入れたとき」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6455.htm 

コラム:海外出張の日当は「消費税対象外」

出張経費を処理する際に迷うのが「日当は消費税の課税対象になるかどうか?」です。
海外出張の日当は課税対象「外」となります。国内の出張では、出張経費や宿泊費、日当は課税仕入れとなるのでご注意を!

※参考
国税庁「出張旅費、宿泊費、日当、通勤手当などの取扱い」
http://www.nta.go.jp/m/taxanswer/6459.htm

まとめ

海外出張時、消費税にまつわる経費処理や免税手続きなどは意外と煩わしいもの。あらかじめ、大まかな流れや法則を知っていれば、安心です。
また、渡航先の消費税に関する情報はビジネス環境の確認などにも役立つかもしれません。消費税にまつわる情報、こまめにチェックしてみてはいかがでしょうか?


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