失敗しないワーケーションを行うには、どのようなことに注意すればいいのでしょうか。
ワーケーションに興味があるけれど、仕事がきちんとできるのか不安に思っているかもしれませんし、実際にワーケーションをしたもののうまくいかなかったという人もいます。
そのため、ワーケーションに良い印象を持っていないという方もいることでしょう。
この記事では、組織に属して働く人や企業側にとってどのような課題があるのか、ワーケーションを新しい働き方として定着させた企業はどのような取り組みを行っているのかなど、失敗しにくいワーケーションについて解説します。
1.働く人個人が陥りがちな4つの失敗と対策
ワーケーションが失敗する理由は、働く人本人がクリアすべき課題に手をつけず、いきなり実行してしまうところにあるかもしれません。
実際に行うときは、事前の準備やプランニングが不可欠。
働く人個人にも組織側にも、対策できることはたくさんあります。
この章では、成功するワーケーションにはどのような課題と対策が必要なのかを見ていきましょう。
1-1.現地の環境を調べずにワーケーションする
「あそこに行ってみたいから、ついでにワーケーションしよう」と、下調べなしに思いついた場所へ直行するのは、失敗する可能性が上がります。
行った先でうまくリモートワークができるとは限りません。
滞在先のホテルでWi-Fiがうまく使えないなど、仕事の環境が整っていないリスクがあるからです。
また、普段とは異なる環境だとアクシデントに対応することが難しいことも。
「結局仕事がうまくいかなかった。何しに行ったんだろう」という気持ちだけが残ってしまうと、またワーケーションに行こうという気持ちも半減してしまうことでしょう。
【対策例】
思いついた場所に行くことは悪くありません。
行きたい場所へ行くことでリフレッシュ効果も高くなり、充実した時間を過ごせることでしょう。
それだけに、現地で自分の思った通りの仕事ができるかどうか、あらかじめ環境をチェックしておくのをお忘れなく!
例えば、ホテルのWi-Fiがきちんと使えるかを口コミサイトでチェックする、行き先の近隣にコワーキングスペースやネットカフェなど、集中して仕事ができそうなスポットがあるか調べるなど、仕事をする環境があるか確認しておきましょう。
1-2.スケジュールを実行できない
予定を実行できないのも、ワーケーションが失敗する理由の一つです。
思ったより仕事が捗らず、滞在中仕事をするだけで終わってしまったり、観光に時間を費やして結局仕事にならなかったりと、仕事か遊びかのどちらかに偏ってしまうことがあるからです。
【対策例】
ワーケーションの目的が何なのかを見失わず、充実した時間を過ごすためにも、実行可能なスケジュールをたてておきましょう。
とはいえ、ガチガチに予定を決める必要はありません。急に変更しなくてはいけないとき、他の日時に振り分けるのが難しくなってしまいます。
【スケジュール例】
・起床〜14時までは仕事、オンラインミーティングの時間(12時から1時間ランチタイム)
・15時以降は現地の観光
・21時までに夕食をすませホテルに戻る
・23時に就寝
など、ざっくりでいいので出発前に決めましょう。
余裕を持たせておけば、後からのスケジュール調整も容易です。
なお、海外を行き先に選ぶ場合は、時差も考慮して仕事をしなくてはならないことがあります。
リモート会議など、時間や日時が指定された予定が入っている場合などは特に注意しましょう。
1-3.仕事のプランが不明瞭
計画を立てずにパソコンだけ持って現地に行くのは、ワーケーションがうまくいかない原因になり得ます。
無計画に現地へ行っても、いつも通りに仕事ができるとは限らないからです。
仕事に没頭するあまり同伴した家族と過ごす時間がなくなってしまったり、逆に仕事がはかどらずオフィスに戻ったあと余計もタスクが増えてしまったりなど、何をしにワーケーションへ行ったのかわからなくなってしまうかもしれません。
【対策例】
行った先でどういう仕事をするのか、どこまで仕事を終わらせるかなど、ワーケーション中にやり遂げたい仕事の目標も立てておきましょう。
また、どのような仕事ができるかは、環境によって左右されることが多いもの。
書類作成や動画の編集など、長時間パソコンに向かうようなリモートワークなら、事務仕事がしやすいデスクと椅子、Wi-Fiを利用できる確率が高い都市部の方が向いています。
一方、プロジェクトの立ち上げや新企画のプランニングなど、発想力やひらめきが必要な仕事なら、山奥の温泉地や海沿いのリゾートなど、常時パソコンを使えない場所でも問題ないでしょう。
仕事内容をあらかじめ決めてから、ワーケーションに臨むのがおすすめです。
1-4.予算を設定しない
ワーケーションは、行った先で仕事をするだけがメインではありません。
現地での滞在費用や観光のために、ある程度費用が必要です。
また、リモートワークをするための施設の利用費や、ポケットWi-Fiのレンタル費など、仕事をするための雑費がかかることも多いです。
2週間以上の長期滞在になる場合は、宿泊施設や食費に相当の資金が必要になります。
大都市に滞在したり、海外でワーケーションをしたりする場合は注意しましょう。
【対策例】
帰宅の理由が資金不足、では悲しすぎます。
ワーケーションで失敗しないためにも、費用がどの程度かかりそうか、会社から補助金などが出るかなど、予算面の計画を忘れずに!
2.組織側でクリアするべき課題と対策4つ
組織の一員として働く人自身だけでなく、それをバックアップする企業側にも解決すべき課題があります。
ここからは、ワーケーションを実行するための制度の策定や、ワーケーションがもたらした仕事の結果をどのように評価するかなど、組織で対策すべきポイントについて解説します。
2-1.勤怠管理の難しさ
部署全員で、会社の保養所などを使うワーケーションなら、部署の管理者も同伴することが多いことでしょう。
したがって、勤怠管理は従来通りです。
しかし、社員個人単位で行うワーケーションは、周りに上司や同僚などがいるわけではありません。
働く時間や働き方は個人の裁量に任せることになるので、勤務時間が不規則になりがちだったり、本当に業務をしているのかが不透明だったりと、社員の勤怠管理が難しいのがネックです。
【対策例】
ワーケーションをするなら、電子機器に勤怠管理システムを導入しましょう。
リモートワークが広まってから、パソコンに勤怠管理のためのソフトウェアをインストールして自宅で仕事をする、という仕事のやり方も普及しているので、なじみがある人もいることでしょう。
ワーケーションを失敗させないためには、このようなツールを駆使し勤怠管理をすることが重要です。
2-2.情報漏洩のセキュリティリスク
ワーケーションは、出先で仕事をすることが前提です。
そのため、パソコンなど仕事で使う電子機器を出先で紛失する、ホテルのフリーWi-Fiからスパイウェアが侵入するなど、情報が漏洩するセキュリティリスクが高くなります。
万一、仕事の情報や個人データなどが流出してしまうと、自社だけの問題ではすまなくなることがあります。
ワーケーション中のアクシデントが元で、取引先に迷惑がかかり賠償請求されたり、会社の社会的信用が失墜したりする大事に至ることもあるでしょう。
会社側でも、ワーケーションを行う際のリスク管理は欠かせません。
【対策例】
・ワーケーション専用のパソコン、モバイルWi-Fiの貸し出し
・業務利用する全端末へのセキュリティソフトインストールの徹底
・VPN環境の整備
・仕事に使う全データのクラウド保存
など、できる対策は全て行い、リスクに備えましょう。
2-3.人事評価のしづらさ
オフィスではない場所で働く人に対して、人事評価がかなり難しそうだと感じる管理者は少なくないでしょう。
どれだけの成果をあげたかを、数字や金額など目に見える形でチェックできる業種なら、結果を見て人事評価をすることもできます。
しかし、カスタマーサービスなど、プロセスそのものが評価の対象になる仕事の場合は別です。
このような業種の場合、結果を具体的に表示できるわけではないため、評価が難しくなるのです。
【対策例】
ワーケーションを始める前にどのような評価手段を行うか、部署内もしくは会社全体であらかじめ決めておくと良いでしょう。
ワーケーションを選ぶ人に対して人事評価が低くなりがち、ということがあってはなりません。
3.ワーケーション成功事例3つ
ワーケーションは大きく分けて2つの種類があります。
1.休暇型
1週間の休暇中に半日リモートワークで業務をする、など有休や長期休暇で出かけているときに業務の時間をはさむタイプです。
業務の時間中は業務時間としてカウントし、休暇中の時間帯とは区別するスタイルで、多くの企業が福利厚生の一部として取り入れています。
2.業務型
文字通り業務がメインのワーケーションです。
普段働くオフィスから、地方や海外にあるサテライトオフィスなどへ行き業務を行い、業務外の時間は観光などに充ててリフレッシュを図ることができます。
この章では、休暇型・業務型のワーケーションを取り入れて運用している企業の例を見てみましょう。
各社とも、それぞれ特色のあるワーケーションを行っているので、興味のある人はぜひ参考にしてみてくださいね。
3-1.有休消化率向上にも貢献 JAL【休暇型】
画像出典:日本航空株式会社公式サイト
JALでは、2017年からワーケーションを導入しています。
長期休暇後に業務量が増えることへの不安から、有休取得率が低かった部署の取得率改善を狙うのが、ワーケーション導入のきっかけになりました。
JALのワーケーションは、休暇中の旅程にリモートワークの日程を入れ、福利厚生の一環として行われる「休暇型」タイプです。
ワーケーションの規定は特に設定せず、従来あったテレワーク規定の中に「旅程の半分以上を休暇に充てる」ことを条件にしています。
導入当初は利用者が11人だったものの、年を追うごとに希望者が増加。
2020年には対象部署の2割以上の社員が利用しています。
リモートワーク、ワーケーションへの企業取り組みが評価され、総務省が主催する「テレワークトップランナー2023」に選出されました。
参考:日本航空株式会社公式サイト「エンゲージメント|サステナビリティ」
3-2.ワーケーションでイノベーションを生み出す 野村総研【業務型】
画像出典:野村総合研究所公式サイト
野村総研では、裁量労働制やテレワーク制度などを整備。
働く環境の多様性を推進し、新たなイノベーションを作ることを目的に、業務を主体とする業務型ワーケーションを実施しています。
社員の働く環境を変えることで、仕事に対してのアイデアやヒントなど、新しい発想を促し人材育成することが、野村総研のワーケーション目標です。
徳島県三好市にある古民家で定期的に行われるワーケーションでは、地域の活動に参加したり、課題を解決したりすることが社員のモチベーションアップに繋がっています。
その結果新しいビジネスを作ることにも貢献しており、ワーケーションに参加した社員からは高い支持を得て、現在も継続的に行われています。
参考:野村総合研究所公式サイト「ワクワク(Work+Work)で成長を促す「三好共創ベースキャンプ」 」
3-3.生産性やエンゲージメントアップ イトーキ【業務型】
画像出典:ITOKI 公式サイト
オフィス家具や事務機器メーカーのイトーキでは、瀬戸内海の島や徳島県などで、クリエイターやデザイナーを対象にした業務型ワーケーションを実施しています。
地方の課題解決や、自分たちがデザインしたモノが実際に作り出される現場を見ることで、よりクリエイティブな発想や仕事に繋げるのがワーケーションの狙いです。
ちなみに、ワーケーション実施後の社内調査では、心理的ストレスの緩和や仕事へのモチベーション向上に、ワーケーションが貢献しているという結果が得られています。
これを受けて、2024年からは海外でのワーケーションを可能とする制度も新設されました。
まとめ:失敗しないワーケーションのためには対策をお忘れなく!
ワーケーションが失敗するのを防ぐには、準備や対策を行うことが大切です。
単なるリモートワークの延長ととらえてしまっては、ワーケーションはうまくいかないおそれがあります。
新しいビジネスへの橋渡しになったり、社員一人一人のモチベーションアップや成長に繋がったりと、より良い結果がついてきて初めて、ワーケーション成功と言えるでしょう。
これからワーケーションをしたい人はもちろん、ワーケーションに失敗してばかりでうまく実行できない、という人はぜひこの記事を参考にしてみてくださいね。
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