妊娠がわかったとき、産休や育休だけでなく、給与待遇や福利厚生制度などをあらかじめ調べておきませんか?
産休や育休があるのはなんとなく知っている……という人も少なくないことでしょう。
妊娠、出産をするママ本人だけでなく、パパも妊娠中のママのサポートや育児にも参加できるよう、さまざまな制度や給付金などがあります。
この記事では、産休育休の違いや給与面、給付金などについて解説!
出産間近になってからあわてて情報収集するよりも、あらかじめ詳細を知って出産・子育てに臨めば、あとから焦る心配もありません。
これからママ・パパになる人はぜひ参考にしてくださいね。
1.産休と育休の違い2つ
出産と子育てに深く関わる、産休と育休。
両方がセットで話題になることが多い、と感じる人もいることでしょう。
しかし、産休と育休は似て非なるものです。
ここでは、その違いについて詳しく見ていきます。
1-1.産休を取得できるのはママのみ
産休とは、女性労働者が出産のために取得できるお休みのことです。
一方、育休は子どもが生まれたあと、養育するための期間として取得できる休暇のことです。
産休は、出産予定日の6週間前から、出産後8週間までの間に取得できる休暇です。
労働基準法に定められ、出産する女性が取得します。
取得条件に勤続年数や雇用形態は無関係で、入社1年未満の人やパート・アルバイトの人でも取得できます。
休業日数は、産前と産後の2つに分かれています。
産前:出産予定日の6週間(多胎児の場合14週間)以内の日数を取得可能。
産後:出産後8週間まで。
注意したいのは、産後休業の8週間が法律で義務づけられた期間だということ。
体調が回復したからすぐ働きたい!と思っても、原則8週間は休業が必要となります。
ただし、産後6週間を過ぎて医師が許可を出した業務に限り、就業可能です。
ちなみに、企業によっては、出産する配偶者に付き添うことができるよう、別途男性社員にも出産のための特別休暇を取得できる制度を設けていることがあります。
事前に会社へ確認してみましょう。
1-2.育休はママもパパも取得できる
ママだけが取得できる産休とは異なり、性別に関係なく申請・取得が可能なのが育休です。
育休は育児・介護休業法に定められた、1歳未満の子どもを養育するための休業。
ママは、産休の最終日以降から育休取得可能で、パパは、出産予定日から取得可能です。
子どもが1歳を迎える誕生日の前日までの間、希望する時期に取得できます。
そのため、最大2回を限度に育休の分割取得もできます。
なお、勤務先の就業規則内に育休に関する規定がない場合でも、労働者は法律に基づいて育休を申請する権利があります。
一部例外はありますが、原則として事業主側が労働者の育休の申し出を拒むことはできません。
赤ちゃんが生まれたらすぐ、子育てに突入するパパとママ。
24時間体制で子どもにつきっきりになると、少し息抜きする時間が欲しくなることもあるでしょう。
しかし、産休取得中に有休を申し出ることはできません。
なぜなら有休は、有休申請時点で就業中である社員が申請できる休暇のことを指すからです。
産休・育休に入る前やその後に有休を申請することはできるので、有休を消化しておきたいときは事前のスケジューリングを忘れずに!
1-3.育休を取得できない場合がある
1歳未満の子どもを養育するため、パパもママも取得できる育休。
しかし、無期雇用か有期雇用か、雇用期間によっては取得できない場合もあります。
【正社員やパートタイマーなど、正社員など雇用期間が無期限の従業員】
・会社の労使協定で「入社1年未満の労働者は育休の対象外」とする内容が定められている場合
当てはまるかどうか、育休申請前にあらかじめ確認しておきましょう。
【契約社員や季節労働者など雇用期間が決まっている従業員】
1)子どもが1歳6ヶ月になるまでの間に、雇用契約が満了することがあきらかな場合
2)会社の労使協定で、入社1年未満の労働者を育休の対象外とする内容が定められている
以前有期雇用者は「引き続き雇用された期間が1年以上あること」も、育休取得の条件とされていました。
令和4年4月からの育児介護休業法改正に合わせ、上記条件は撤廃。
現在は、上記の2つの条件に当てはまると育休取得できなくなります。
2.育休を取得するともらえる育児休業給付金
産休中、育休中に気になることと言えば、多くの人が給与の支払いについて思い浮かべることでしょう。
しかし、給与は労働に対する対価として支払われるのが原則のため、労働していない産休育休期間中については、支払われないことがほとんどです。
そんな場合に頼りになるのが、子育て世帯への経済支援となる育児休業給付金。
育児休業給付金とは、雇用保険の加入者が、1歳未満の子供を養育するため育児休暇をとった場合に支給されるお金のことです。
育児休業給付金の申請は、雇用形態に関わりなく行えます。パート、アルバイトであっても雇用保険加入者なら支給対象です。
また、出産した本人だけでなくその配偶者(父親)が育児休暇を取った場合も、同様に支給されます。
支給期間は、出生した子供が満1歳6ヶ月を迎える日前までが原則です。
ただし、保育施設が利用できないなどの理由で、子供が満1歳6ヶ月を迎える日以降、満2歳を迎える日前まで育休を取得する場合も支給されます。
1日あたりの支給額の算出方法は下記の通りです。
休業開始時賃金日額×支給日数×67%(180日、最初の6ヶ月まで)
休業開始時賃金日額×支給日数×50%(180日、6ヶ月以降)
【具体例】
賃金日額14,333円、子供が満1歳で職場復帰した場合
=2,610,037円
育休産休に関する傷病手当金などその他の給付金は、4章で詳しく解説します。
参考:https://keisan.casio.jp/exec/system/1528684593
3.子育て支援に力を入れている企業の事例4つ
出産と子育ては、生活に大きな変化をもたらします。
特に、赤ちゃんのお世話などにかかりきりになる期間は、お金や時間がままならなくなりがち。
よって、安心して育児を行い、産休・育休後に復帰しやすいよう子育てを支援する企業が注目されています。
ここからは、子育て中の社員を積極的に支援している企業をご案内します。
3-1.復職する社員に子供手当を支給 ポーラ・オルビスホールディングス
画像出典:https://www.po-holdings.co.jp/
産後の社員フォローがきめ細かいのが特徴の、ポーラ・オルビスホールディングス。
産後半年ほどで復職する社員には、
・子供が1歳6ヶ月になるまで毎月5万円
・3歳になるまでは1万円
…の手当を支給しています。
何かとお金がかかりそうな時期に嬉しい制度ですね。
人事部内に「育産休担当」部署を設けて個別相談を可能にしたり、保育所入所のアドバイスに応じたりと、出産や子育て中の社員を支援する制度があります。
また、子供が小学校3年生になるまでは時短勤務できる制度など、復帰を希望する社員のための支援も充実しています。
公式URL:https://www.po-holdings.co.jp/
3-2.養育補助金で子育て中の社員を応援 資生堂
画像出典:https://www.shiseido.co.jp/?srsltid=AfmBOopv1euPqYkyr8r3XeIMBSPpQrwsGxuMKRQN4YcdpKYVKN5i45y1
日経BP社が毎年行っている「共働き子育てしやすい企業ランキング」で、毎年上位にランクインするのが資生堂。
女性が働きやすい環境を作る体制づくりに、長年取り組んできた企業の一つです。
特徴的なのは、「カフェテリア制度」と呼ばれるポイント制の補助金制度です。
産休・育休後、仕事に復帰する従業員は、付与されたポイントの範囲で、子どもを保育園やベビーシッターに預けたり、教育費に利用したりと好きなサービスを選べるようになっています。
また、法定上育休を取得できる期間が最長2年となっているところを、資生堂では子供が満3歳になるまで、通算5年を上限に育休を取得できる制度を用意しています。
その他、事業所内保育所や看護休暇制度など、職場に復帰しやすい制度が充実。
働くママ・パパにとっては嬉しい環境ですね。
公式URL:https://www.shiseido.co.jp/?srsltid=AfmBOooo0i5utkwG0GJEyj5id0bRFe4dYEpYQyFsiMQUS5Af-eJnodD9
3-3.育児のための休暇を取得できる ANAホールディングス
画像出典:https://www.ana.co.jp/group/
2019年度のイクメン企業アワードで特別奨励賞を受賞したANAホールディングス。
男性社員も、共に子育てに参加しやすくするための制度を多数用意している企業です。
注目されているのは、育児日休暇。
この休暇は、小学校3年生までの子を養育するシフト勤務社員を対象にしており、月3日を上限に、育児のための休暇として申請が可能です。
また、仕事と育児をどう両立するか悩む社員のためのEラーニング支援や、仕事と育児の両立支援ツールの用意、管理職に向けた育児期社員の環境理解研修など、社員が職場復帰しやすい環境づくりにも力を入れています。
さらに、子どもを望む社員に対しても、最大1年を限度に不妊治療休職制度も取り入れています。
公式URL:https://www.ana.co.jp/group/
3-4.特別有休休暇でパパも出産に立ち会える アフラック
画像出典:https://www.aflac.co.jp/
アフラックは、男性社員の育児参画を推進する取り組みを進めています。
特徴的なのは、配偶者が出産する際、最大5営業日までの特別有給休暇を申請することができる制度「配偶者出産休暇」があることです。
この休暇は出産スケジュールに合わせて分割して取得することも可能で、育休の両方と合わせて取得できます。
2019年以降には、男性社員の育休取得率100%を達成。
さらに2019年には、次世代育成支援対策推進法に基づく子育ての特例認定企業として「プラチナくるみん認定」企業に指定されました。
公式URL:https://www.aflac.co.jp/
画像出典:厚生労働省「くるみんマーク・プラチナくるみんマーク・トライくるみんマークについて」
子育て支援を応援する企業としてのイメージアップ、優秀な従業員の採用・定着に貢献することを期待されている認定制度が、くるみん認定です。
次世代育成支援対策推進法に基づく一定の基準を満たした企業は、「子育てサポート企業」として、厚生労働大臣の認定(くるみん認定)を受けることができます。
くるみん認定は、下記の3種類があります。
1)くるみん認定
従業員101人以上の企業で義務付けられている「一般事業主行動計画」に定めた、労働者の仕事と子育ての両立を図る目標を10項目以上達成した企業が対象
2)トライくるみん認定
くるみんの認証よりやや緩和された認定条件をクリアしている企業が対象
3)プラチナくるみん認定
くるみん認定をすでに受けている企業で、より高い水準の取組を行っている企業が対象
なお、認定を受けた企業には、くるみん認定の証となる『くるみんマーク』を使用できます。
4.産休育休にまつわる主な給付金3つ
産休育休中には、前述した育児休業給付金以外にもさまざまな手当金などが支給されます。
主に給付されるのは、下記の3つです。
1.傷病手当金
2.出産手当金
3.出産育児一時金
ここからは、産休中・育休中の人が申請できる給付金について見ていきましょう。
4-1.産休前に支給される傷病手当金
傷病手当金とは、健康保険から支給される給付金です。
業務時間外に起こった事故や病気などの治療で休業しなくてはならないとき、健康保険の被保険者や家族の生活を保障するためのお金です。
妊産婦も支給対象に含まれており、産休前の妊娠中もしくは産休後、つわりや入院など療養のため欠勤をしたときに支給されます。
支給に当たって、下記の4つを満たしていることが必要です。
1)連続して3日(土日・祝日含む)以上休んでいる
2)療養のため業務遂行が不可能である
3)業務外のケガ、病気などで療養している
4)療養中無給である
支給期間は、療養のため連続して4日以上休んだ場合、4日目から計算して欠勤した日数分が対象です。この4日目から通算して最長、1年6ヶ月まで支給されます。
1日あたりの支給額の算出方法は下記の通りです。
支給開始日以前の12カ月間の各標準報酬月額を平均した額÷30日×(2/3)
【具体例】
切迫早産のおそれがあり14日間入院、標準報酬月額は43万円
=105,083円
参考:https://keisan.casio.jp/exec/system/1539655799
4-2.出産に応じて支給される出産手当金
出産のため休業した女性に支給されるのが、健康保険からおりる出産手当金です。
申請は雇用形態に関わりなく行え、健康保険加入者ならパート、アルバイトであっても支給対象となります。
支給に当たり、下記の3つを満たしていることが必要です。
1)支給対象者本人が被保険者として健康保険に加入している
2)妊娠4ヶ月以降(85日)の出産(流産、死産、人工妊娠中絶含む)
3)産休中無給である
支給額は、欠勤1日につき、1日当たり賃金の3分の2に相当する額が支給されます。
支給対象日数は、出産日(出産が予定日より後になった場合は、出産予定日)以前42日(多胎妊娠の場合は98日)から、出産日の翌日以降56日までです。
なお、申請期間には期限があります。休業していた日ごとにその翌日から2年以内に申請しないと、支給されません。
支給を希望するときは、早めに確認しておきましょう。
1日あたりの支給額の算出方法は下記の通りです。
平均標準報酬日額 × 2/3 × 産休の日数 (日額を2/3した金額は小数点1位を四捨五入)
【具体例】
出産予定日9月5日、実際の出産日9月7日、標準報酬月額は43万円
=955,300円
参考:https://keisan.casio.jp/exec/system/1539655799
4-3.生まれた子供の人数分支給される出産育児一時金
出産した女性被保険者本人もしくは、被保険者の被扶養者が妊娠・出産した場合に対し、会社の健康保険より支給されるのが出産育児一時金です。
支給される金額は、出産した子供1人あたり、50万円です。
双子など多胎児出産の場合も同様で、例えば双子なら合計1,000,000円支給されます。
また、出産費用が一時金より低い場合、申請すれば差額を受け取ることも可能です。
下記の2ついずれかに当てはまる出産の場合は、一人当たりの支給額が488,000円となります。
1)産科医療補償制度に未加入の医療機関等で出産
2)妊娠週数22週未満で出産
なお、この給付金では、出産費用に直接当てられるよう、出産育児一時金を健康保険から医療機関へ直接支払う制度があります。
出産の際に保険証を病院で提示し、書面による申し出を行うと直接支払制度を利用できます。
この制度を利用すれば退院時の金銭負担が少なくて済むのが嬉しいポイント。
ただし、病院によっては手数料がかかる場合もあるので、事前に確認しておきましょう。
【産休・育休に関わる給付金図表】
支給対象 | 給付額 | 給付期間 | |
育児休業給付金 | 全ての雇用保険加入者 | 給与日額の67%(育休が180日超の場合は181日目から50%)×育休日数 | 育児休業を取った期間 |
傷病手当金 | 健康保険に加入済みで妊娠・出産する女性労働者 | 標準報酬日額の3分の2×療養日数 | 療養のため連続して4日以上休んだ場合、4日目から計算して欠勤した日数。上限は1年6ヶ月 |
出産手当金 | 健康保険に加入済みで妊娠・出産する女性労働者 | 標準報酬日額の3分の2×産休日数 | 出産日(出産が予定日より後になった場合は、出産予定日)以前42日(多胎妊娠の場合は98日)から出産日の翌日以降56日まで |
出産育児一時金 | 健康保険に加入済み(被保険者本人及び被保険者の被扶養者)で出産する女性 | 子ども一人当たり50万円×生まれた子どもの人数 | ー |
子育てには何かとお金がかかるもの。
子育て世帯の経済的負担を減らせるよう、育休中の従業員に対しての社会保険料免除制度があります。
免除には申請が必要なので、会社に確認してみましょう。
対象となる社会保険料:健康保険、厚生年金保険 ※厚生年金基金は各基金の規定によって異なる
免除期間:育児休業開始日が含まれる月から育児休業を終了した日の翌日を含む月の前月まで(ただし、子どもが3歳になるまでが上限)
まとめ:産休と育休に関する制度をフル活用しよう
産休と育休にからむ給与の制度や、給付金などのお金の仕組みは、働くパパママにとってとても気になるポイントの一つです。
いつも支払っている生活費に加えて、妊娠中から出産にかけて出ていくお金と、育児が始まってからかかる費用とのやりくりに、不安を抱く人も多いことでしょう。
生活を圧迫せず充実した出産・育児を行えるよう、働く人を支援するのが各種の給付金制度です。
また、新しくパパママになる従業員を応援するための制度を用意している企業もあります。
利用できる制度をフル活用すれば、子育ての苦労を少しでも軽くできるというもの。
無理なく職場に復帰できるよう、この記事を参考にしてみてくださいね。
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