私は留学先をどこにするか考えていた時、アメリカやヨーロッパの国々のような教育システムが優れている国々を検討していましたが、最終的には日本を選びました。それは日本が豊かな歴史と文化を持っていたということもありますが、私がメディアを通じて描かれる日本の姿に魅了されていたからです。
イラクで育った私は、主にテレビ番組やドキュメンタリー、アニメを通じて日本のことを知りました。中でもアラビア語の番組『خواطر(カワテル)』は、第5シーズンと第6シーズンが日本で撮影されたもので、日本に対する理解を深めてくれました。この番組では日本が秩序や清潔さ、技術の進歩、そして深い文化的価値を持つ場所として紹介されており、これらが私の心に強く響いたのです。
その後、私は期待と不安を胸に日本に留学しました。日本での生活ではいくつか課題もありましたが、想像以上にポジティブな刺激をもらいながら日々を過ごしています。
今回は日本を留学先に選んだ理由を、私が感じた日本の素晴らしさと共に紹介します。
イラク出身。九州大学で歯学の博士課程に在籍中。歯周病がもたらす身体への影響、特に口腔の健康状態が糖尿病などの慢性疾患にどのような影響を及ぼすかを研究。
コミュニケーション能力とプレゼンテーション能力に自信があり、将来はメディカル サイエンス リエゾン (MSL) またはプロダクトスペシャリストとして企業あるいは大学の研究職へ就職することが目標。科学的な専門知識とコミュニケーション能力およびプレゼンテーション能力を用いて人々への支援や教育を行い、科学と人々を結び付けることによるウェルネスの促進を目指して日々研究に勤しんでいる。日本のアニメが大好き。

翻訳/編集:株式会社hupodea 事務局
魅力的な日本の歴史と文化
私が日本を留学先に選んだ理由の一つとして、日本が歴史、文化、伝統を大切にしていることが挙げられます。日本では、書道のような古典的な芸術、柔道や剣道といった武道の精神、さらに茶道の優雅さなど、古くから伝承されたものが今も受け継がれており、現代化された国々では失われつつある「遠い昔から紡がれる文化の糸」を感じさせてくれます。また日本での生活でふとした時に見つけた神社は東京の高層ビル群の中に堂々と立っており、この景色は日本において歴史や伝統が日常生活にも根付いていると教えてくれました。このように近代化が進む中で日本は古いものと新しいものを上手く融合させており、遠い昔から現代に至るまで伝承された文化遺産を守り続けています。
日本の歴史や伝統に対する価値観はイラク出身である私にとって非常に共感できるものでした。イラクも古代の歴史と文明を誇る国であり、人々は自国の文化的ルーツを大切にしながら現代の革新と共に歩んでいくことが重要であると感じています。
筆者が訪れた伝統的な寺社仏閣
メディアから得た日本のイメージ
私が日本に留学するのを決断する上でメディアの影響は計り知れないものでした。特に日本のアニメやテレビ番組は、世界中の若者に大きな影響を与えています。アニメは単なる娯楽ではなく、日本の社会と価値観を知るための入り口となっており、「ナルト」や「ワンピース」、「進撃の巨人」などの作品は、努力、友情、忠誠、そして伝統への敬意といった、日本文化と結びついた内容が含まれています。私はこれらの作品を見て育ち、次第に日本に興味を抱くようになりました。
アニメ以外にも、冒頭で紹介したアラビア語の長寿番組『خواطر(カワテル)』が私に大きな影響を与えました。この番組では、日本における教育制度、公共の清潔さ、規律と秩序を重視する姿勢といった日本の様々な面が取り上げられ、放送されていました。特に学校の子供たちが自分たちの教室や学校周辺を掃除するシーンを見た際は、幼い頃から責任感を養う日本独自の教育手法だと感銘を受けました。さらに日本に関する情報がオンライン・プラットフォームを通じて入手しやすくなったことで、私は日本で成長できると確信しました。そして実際に留学してみて、日本の秩序や清潔さ、そしてコミュニティに対する責任感といった特性を実際に体験し、自国に持ち帰りたいと考えるようになりました。
筆者の暮らす福岡にあるガンダム像
日本の先進的な教育システム
私が日本を留学先に選んだ最も大きな理由の一つは、先進的な教育システムの存在です。日本の大学では、特にテクノロジー、エンジニアリング、医学といった分野において最先端の研究が行われています。日本の教育は研究や実践的な応用を重視し、かつ厳格さと規律が求められます。研究や実践的な応用は私がやりたかったことですし、厳格さと規律は私の成長を促してくれました。結果的に日本の教育は私に合っていると感じました。また日本の教育システムで特に感銘を受けたのは、チームワークや他者への敬意を教える点です。日本の学生たちは幼少期からグループワークや教室の掃除などを通じて協力することを学んでおり、これによって共同意識と責任感が育まれます。イラクの学校においても、共同意識と責任感を育む文化が取り入れられれば非常に有益だと思います。
筆者が通う九州大学
安全性と自然の美しさ
日本が世界で最も安全な国の一つとされている点も、私の決断に大きく影響しました。イラクでは安全性が常に懸念されています。そのため犯罪率が低く、安心して生活できる環境は非常に魅力的でした。日本では、夜に一人で歩いていても安全であると感じることができ、そのおかげで勉強に集中して日常生活を楽しむことができています。
さらに日本は自然が美しく、春の桜から秋の紅葉、そして冬の雪景色まで、四季折々の魅力があります。日本人の自然を大切にする心は、綺麗な公園や庭園、公共のスペースに現れています。都市開発と自然の調和は私が非常に感銘を受けた点であり、日本での生活を豊かにしてくれました。日本の自然に対する経緯は日本文化の1つであり、これは、イラクやアラブ世界の他の地域でも広く採用されるべきものだと感じています。
美しき日本の自然
ギャップと成長
これまで述べてきたように、私は日本に来る前に様々なメディアから得た情報で日本に対してポジティブなイメージを持っていました。そして実際に日本で生活してみて、その素晴らしさを体感しています。しかしながら全てが期待通りだったというわけではなく、いくつか問題もありました。
例えば日本は非常に礼儀正しく、歓迎してくれる国ではありますが言語の違いが壁となることがあり、特に主要都市部以外では英語が通じないことが多いためコミュニケーションを取るのが難しいことがありました。また日本の規律と労働倫理は称賛に値しますが、それは時に学生や労働者に対してプレッシャーの高い環境にもなりかねないと感じました。実際のところ、私もそのような環境にいると感じたことがありました。
上記したような言語的、環境的な課題はありましたが、言語的な課題は私にとって日本語を学び、日本の文化を学ぶことのモチベーションになりましたし、環境的な課題は整備されたサポート体制と周囲の人々の優しさのおかげで今のところ何とか乗り越えることができています。日本での生活から得た経験と学びは非常に多く、先進的な教育、文化的な経験、ここで築いた友情は私の留学を価値あるものにしてくれています。
書道で日本文化を体験する筆者
まとめ
私が日本に留学することを決めたのは、日本の豊かな歴史と文化、先進的な教育システム、安全性、美しい自然環境など、様々な要因があったからです。メディアの描写、特にアニメや『خواطر(カワテル)』のような番組も私に大きな影響を与え、日本は規律や秩序、優しさが重んじられる国だというイメージを持ちました。日本での生活には困難もありますが、それを上回る良い経験をすることができています。日本で学ぶ機会を得て、日本の価値観や伝統を肌で感じることができているのは幸運なことだと思います。私の目標は日本での学びと経験を通して、ここで学んだことを持ち帰ってイラクの明るい未来づくりに貢献することです。
この記事を読んで下さっているのは日本人の方が多いと思いますが、日本の持つ素晴らしい特徴が世界で活かされることを想像すると嬉しく思いませんか?我々の言動が外国人および外国人留学生に影響を与え、それが世界に還元されることがあるかもしれません。この記事が外国人や外国人留学生との関わり方を考えるきっかけになれば幸いです。