海外留学は間違いなく価値ある経験であり、個人の成長機会と現地の文化に触れる数え切れないほどの機会を提供してくれます。
一方で不安なことも多く、しばしば憂鬱になることもあります。
日本は伝統文化と最先端技術が独特に融合した国で、留学生にとって多様な体験をすることができ、
さらに世界で最も安全な国の一つとして知られています。
日本での生活は、適応力とレジリエンスが試されるある種の冒険です。
それは決して楽なものではなく、文化の違い、言葉の壁など、いくつもの困難に遭遇しました。
今回はそんな日本で感じた不便さを筆者の体験をもとにご紹介します。
来日前
ちょうど桜が咲き始めた2024年の4月初旬、海を渡り、日本に来たことを鮮明に覚えています。
この留学経験がポジティブなものになるか、それともネガティブなものになるのか…私は期待と不安が入り混じった複雑な気持ちでした。
私は日本の豊かな歴史、芸術、料理、自然に魅了されており、一番行きたい国の1つでした。
日本への奨学金の確認通知書を受け取った瞬間、このような機会は二度とないかもしれないと思い、日本に行くことを決断しました。
「日本は自分たちには向いていない」と、結局母国に帰国した学生たちの話を数え切れないほど聞きましたが、
それでも私はこの挑戦は価値あるものだと信じて、母国での慣れ親しんだ生活を捨てて前に進むことを選びました。
文化の違い
日本に来る前から日本文化には慣れているつもりでしたが、それでもカルチャーショックを受けました。
私の国では普通だと考えられていることが、日本では失礼だと思われていることに気付いたのです。
例えば、日本のカフェやレストランでは基本的に食べ残しのテイクアウトができないことが多いため、
食べ物を注文する量を考え、その場で食べきる必要があります。外部から持ち込んだものを飲食することも禁止されていることが多いです。
また公共交通機関での過度な飲食もマナー違反にあたります。
日本で電車移動している際にとてもお腹が空いたことがありましたが、日本文化に従って我慢したことを覚えています。
飲食マナーにおけるカルチャーショックには驚きましたが、
日本に馴染むためにも、こういったマナーは必ず守るようにしています(図1)。
図1 日本の公共交通機関(電車)の文化に触れる筆者
言語の壁
日本語は複雑な言語です。日常の多くのやりとりは日本語で行われますが来日したばかりの頃、私の日本語スキルは基礎的なものでした。
そんな私にとって地元の人々とコミュニケーションを取ることは難しいものでしたし、
食事制限がある中での食料品の買い物や外食することは本当に大変でした。
翻訳アプリに頼ったり、ジェスチャーを使わなければならないことがよくありましたし、
道に迷って助けを求めようとしたものの、英語が通じないということが何度かありました。
しかし、言葉の壁があるにもかかわらず、日本人はとても親切なので、多くの人が私を助けてくれました。
各種手続き
外国人として、日本に到着した瞬間から日本でいくつかの官僚的な手続きをしなければなりませんでした。
役所に行って住民登録をし、健康保険に加入し、年金の免除申請をし、銀行口座を開設する必要がありました。
幸運なことに、大学にはこれらのプロセスをサポートしてくれる方がいました。
しかし、上記以外のことはすべて自分で対応しなければなりませんでした。
多くの手続きはインターネット上で申請できますが、サイト上のすべての単語を翻訳して日本語で対応する必要があったため、
マイナンバーを取得するまでに数か月かかりましたし、引っ越しをしたときも様々な日本語の情報を理解して、
更新対応を行う必要がありました。しかしながら、日本の政府の手続きは非常に迅速であるため、
ほとんどの手続きはその日のうちに完了することができました。
ホームシック
クリスマスのようなお祝いの季節は、孤独感を強く感じることがあります。
クリスマスは日本でも認知されていますが、他の多くの国のように伝統的な祝日ではありません。
新年の祝いは日本にもありますが、他の国に比べてとても静かで、落ち着いた雰囲気があります。
街路はイルミネーションで飾られているかもしれませんが、
家族との時間や家庭の温かさが無いことは辛いことであり、大切な人たちと離れているということを強く実感してしまいます。
気象パターンの変化
私の母国とは大きく異なる気候に適応するのは大変なことでした。
日本の夏は湿度が非常に高く、それによって体力が消耗し、勉強に集中したり、
日常生活の様々なタスクを行うことさえ困難になることがあります。
逆に、冬は寒く、厚着や防寒具が必要になり、これもまた肉体的な負担を高めています。
それでも日本の四季を心から楽しんでいます。(図2)
図2 日本の四季を楽しむ筆者
財政難
多くの留学生が直面する問題の1つに財政難があります。
私も日本に来た際にSIM カードの取得や宿泊に必要な必需品の購入など様々な事前費用がかかった上に、
昨今のインフレの影響であらゆるものが高価になってきています。
日本のアパートの家賃は特に高く、初期費用も高額です。
さらに、上述したように日本の冬は非常に寒いため、冬場の電気代は生活費を大幅に増加させ、
生活を圧迫する可能性があります。また為替レートの変動があるため、円の価値が変動して受取額に影響を及ぼしています。
よって資金繰りの予定が狂ったり、入出金するのに手間がかかったりしてしまいます。
学業とキャリア
日本は厳格な教育制度で知られており、留学生にとって履修科目や授業の違いが大きな負担になる場合もあります。
また文化的に、学業においては高い水準を求められるため、
優れていなければならないというプレッシャーは非常に強いです。
これらはストレスや不安につながりますが、様々なことにチャレンジして成長を続けています(図3、4)。
上記のような学業への不安に加えて、キャリアについても不安があります。
私の母国であるフィリピンでは就職におけるミスマッチが課題となっており、
フィリピン統計局(PSA)や労働雇用省(DOLE)の報告によると、労働人口の20~40%がミスマッチを経験していると言われています。
その原因は様々ですが、学生起因のものあります。
例えば、自らの進路を考える際に、純粋な興味や適性ではなく、
外部からの影響(親の圧力、社会からの期待、流行など)に基づいて選択してしまうことで、
自らの本当の希望進路に気付くのが遅れて、後に進路が変わってしまうことがあります。
私は将来のキャリアアップを目指して進学しましたが、日本人の中には、
上記と同様に個人が学んできたことと、行う仕事の間にはしばしば不一致があると言う人もいます。
さらに日本の就職市場では日本語能力が非常に重視されており、外国人である私にとってはそれが課題となっています。
来日当初、アルバイトを探すときにも面接が日本語で行われたため非常に苦労しました。
就職においては、採用プロセスの競争が非常に激しく、
就活は卒業の1年以上前から始まるため就職活動の準備は学業と両立させる必要があるので不安は大きくなるばかりです。
図3 極域法国際シンポジウムでの講演
図4 仲間とのポスター発表
まとめ
もうすぐ留学生として日本に住み始めて1年を迎えます。
これまで述べたように課題に満ちた1年間でしたが、これらの経験は私の日常を常に挑戦的にしてくれています。
私が直面した様々な課題は、私の能力を高めてくれており特に適応力、自立性、レジリエンスを高めてくれました。
言語の壁を乗り越えて文化の違いに適応することで、様々な問題解決能力を得ることもでき、人間的にも学力的にも成長させてくれました。
その過程で、活気に満ちた新しい文化に触れ、忘れられない思い出を作り、世界に対する視野を広げる人間関係を築くこともできました(図5)。
辛いこともありましたが、これらの経験は私をより強く、より適応力のある人間にしてくれているのです。
このような機会を得られたこと、成長できたことに心から感謝しています。
またこれが留学生であることの素晴らしさであると感じています。
図5 筆者が来日した時の歓迎ケーキ
言語的な問題だけでなく、多くの文化的な違いが日本に住む外国人の負担になっていることがお判りいただけたと思います。
一方で日本人の優しさに救われている外国人が多いこともまた事実です。
外国人に声をかけるのは少し勇気が必要ですが、困っている外国人を見かけたらぜひ声をかけてあげてください。
この記事が皆様の背中を押す要因の1つになれば幸いです。
フィリピン出身。神戸大学大学院に在籍中で、国際協力研究科で国際法学修士(法学修士)を取得中。既に公認会計士と弁護士の資格を取得済。
日々学業に取り組みながら成長を続けており、将来の目標は国際弁護士。
その目標に向けて知識を深め、国際的な法律問題に貢献することを目指している。
趣味は、読書、旅行、整理整頓、ショッピングなど。最近は料理にも興味を持っている。
翻訳/編集:株式会社hupodea 事務局