近年、日本には多くの外国人留学生が訪れており、その数は増加傾向にあります。
外国人留学生は、大学や専門学校で様々なことを学びながら日々新しいことに挑戦しており、その中には、卒業後も日本で働きたいと考える学生も少なくありません。
彼らはなぜ日本での就職を目指すのでしょうか?そして、それを実現するには何が必要なのでしょうか?
この記事では、私自身を含め、インドネシア、ミャンマー、ベトナム、中国、スウェーデンなど、様々な国の留学生たちの声をもとに、その思いや現実についてご紹介します。
- 1. 日本で働きたい理由 ― 筆者の想い
- 2. 多様な夢と進路のかたち
- 2.1. 1.ベトナム Chan Min Sanさん ― お客様に笑顔を届けるサービス業
- 2.2. 2.ミャンマー Hsu Yadanar Kyawさん ― 日本でのツアーガイド
- 2.3. 3.スウェーデン Sebastian Knut Kullbergさん ― 日本の“おもてなし”に惹かれて
- 2.4. 4.インドネシア Melson Fransiskus さん ― IT業界でのキャリア形成
- 2.5. 5.インドネシア Almira Hania Zaviraさん ― 食をテーマにした商品開発の夢
- 2.6. 6.中国 Gao Zhengさん(写真右側) ― 会計士への道
- 2.7. 7.インドネシア Josephine Christy Chenさん ― 農家と消費者の架け橋
- 3. なぜ日本で学び、日本で働きたいのか?
- 4. 日本で働くために
- 5. 最後に
日本で働きたい理由 ― 筆者の想い
私は、将来的に通訳者またはエージェントとして貿易会社で働きたいと思っています。
そして、ゆくゆくは日本で学んだ知識や経験を活かして、インドネシアと日本をつなぐようなビジネスに携わっていきたいと考えています。
グローバル化が進む現代において、言語力はますます重要になっていると感じています。
多くの言語を習得すればするほど、交渉やコミュニケーション時の活躍の幅が広がり、より多くの可能性を引き出すことができます。
私は上述したように言語はビジネスにおける最大の武器であると考えています。
そして、この信念のもと、語学力を活かして企業間の橋渡しをする通訳者として活躍したいと考えています。
また日本やインドネシアでビジネスパートナーを探している企業をサポートするエージェントとしても活躍したいと考えています。
文化や商習慣、法律の違いなど、企業が海外展開する際に現地で直面する課題に対して的確なアドバイスや支援を行い、スムーズなビジネス展開を実現する手助けをしたいと思っています(図1)。

図1 日本で仕事をする筆者と株式会社hupodea 代表:奥島
多様な夢と進路のかたち
ここからは筆者の友人たちにインタビューした結果をもとに、それぞれの留学生が抱く夢や目指す職種をいくつか簡単にご紹介します。
1.ベトナム Chan Min Sanさん ― お客様に笑顔を届けるサービス業
流通科学大学観光学科でホスピタリティを学ぶベトナム出身のChan Min Sanさんは、将来ホテルやレストランで働くことを目指しています。
彼は大学時代から、居酒屋でのアルバイトを通じて多くの経験を積んできました。彼は、「人と話すことが本当に好きなんです。
サービス業では、毎日違うお客様と出会い、笑顔を届けることができます。それが私のやりがいです」
と語ってくれました。

2.ミャンマー Hsu Yadanar Kyawさん ― 日本でのツアーガイド
流通科学大学で国際観光を学んでいるミャンマー出身のHsuさんの夢は日本の旅行会社でツアーガイドとして働くことです。
「私は旅が好きで、日本の文化や歴史にとても興味があります。
それを訪日観光客に自分の言葉で伝える仕事がしたいです」そう語ってくれた彼女は現在、
観光地でのセミナーに参加し、多言語での学びや接客マナーを実践で学んでいます。

3.スウェーデン Sebastian Knut Kullbergさん ― 日本の“おもてなし”に惹かれて
流通科学大学で観光学を学ぶSebastianさんは、日本のサービス文化に深い関心を持っています。
彼は、「日本の“おもてなし”は本当に特別です。
スウェーデンでは見られないような細やかな配慮や敬意があって、そこにすごく惹かれました」と日本のおもてなし文化への想いを語ってくれました。
将来、日本のホテルや観光施設で働き、外国人観光客と日本をつなぐ役割を果たしたいと考えているそうです。

4.インドネシア Melson Fransiskus さん ― IT業界でのキャリア形成
流通科学大学で経済情報技術を学んでいるMelsonさんは、将来、システムエンジニアとして日本の企業で働きたいと考えています。
彼は、「IT業界は変化の激しい業界です。日本では、細部にこだわりながらもスピード感のある変化を感じられるのでそれがとても魅力的です」と語ってくれ、
現在、ウェブ開発のセミナーを受講しながら、資格取得に向けての勉強も進めています。

5.インドネシア Almira Hania Zaviraさん ― 食をテーマにした商品開発の夢
流通科学大学で経営を学ぶAlmiraさんは、将来、日本の企業で「食」をテーマにした商品開発/企画の仕事に携わりたいと考えています。
彼女は日本の食について、「日本の食品は見た目も美しく、季節感があって素敵です。
私はインドネシアの食文化を活かしながら、日本人にも楽しんでもらえる新しい商品を開発したいです」と語ってくれました。
現在、デパ地下での販売のアルバイトや食品マーケティングの勉強を通して、消費者の好みや流行を学んでいます。

6.中国 Gao Zhengさん(写真右側) ― 会計士への道
流通科学大学で経営を学ぶGao Zhengさんは、会計職を目指しています。
彼は母国の専門学校ですでに会計の基礎を学んでいます。
彼は、「日本でもう一度、実務的な経験を積みながらスキルを高めたい」「会計の仕事はAIには代替されにくく、判断力や責任感が必要な仕事だからこそ、やりがいがあります」
と話してくれました。現在は数学だけではなく、マーケティング講義と物流講義も受講し、視野を広げようと努力しています。

7.インドネシア Josephine Christy Chenさん ― 農家と消費者の架け橋
近畿大学農学部で農業関連のことを学ぶJosephineさんは、日本のいちご農園で働きながら、農家と消費者をつなぐエージェントの仕事に興味を持つようになりました。
彼女は、「日本の農家は本当に丁寧に作物を育てています。
私はただ生産するだけでなく、お客様に“どうやって食べたら美味しいか”、“どう保存するか”などを伝える仕事がしたい」という想いを持っています。
彼女の夢は、農業と販売の“間”に立つ存在になることです。そのために、接客スキルや商品説明の研修にも積極的に取り組んでいます。

なぜ日本で学び、日本で働きたいのか?
今回インタビューに答えてくれた筆者の友人たちは、サービス業、IT、そして通訳者や商品開発、会計などの分野に興味関心を持っていました。
なぜ彼らは日本で学び、日本で働きたいと考えたのでしょうか。
サービス業に興味がある学生たちは、「人と接するのが好き」「お客様に喜んでもらうことがやりがい」と話すことが多かったです。
上述①、②、③の友人たちは、日本の接客の丁寧さと細やかな気配りに感銘を受けて、自らもそれを学びたいという思いからサービス業に関心を持ったようです。
IT分野においては、安定した仕事環境と日本の技術力に魅了され、興味を持つことが多いようです。
上述した④の友人は、日本ではシステム開発やAIなどの最先端の分野に触れる機会があり、
自分のスキルを大きく伸ばせると考えているようで、将来は、日本とインドネシアの企業を技術でつなぐような仕事がしたいそうです。
商品開発の分野においては、日本商品の品質や細部へのこだわりに魅了され、自分も何か新しいものを生み出したいという想いから関心を寄せる留学生が多いようです。
上述⑤の友人も「将来は日本で食品をテーマにした商品開発に携わりたい」と話してくれました。
多くの留学生が日本で働きたいと考える理由のひとつに、「実践的な学びができる環境」ということが挙げられます。
教科書に載っている知識だけでなく、インターンシップやアルバイトを通じて、実際の職場で経験を積むことができるのは、日本ならではの魅力だと感じています。
さらに、日本のサービス業や商品開発に見られる「丁寧さ」や「時間を守る文化」に触れることで、働くことへの価値観が大きく変わったという声も少なくありません。
また、徐々にではありますが、日本社会は外国人と共に働くことに対して前向きになってきています。
そうした変化の中で、自分の力を試したい、自分の存在を社会の中で活かしたい、そんな前向きな気持ちが、今の留学生たちを支えているのです。
日本で働くために
日本で働くためには、夢ややる気だけでは不十分です。
現実的には「日本語能力」「コミュニケーション力」「専門知識」「就労ビザの理解」など、複数の要素が求められます。特に重要なのが、日本語能力です。
多くの企業が「日本語能力試験N2以上」を採用の条件にしており、言葉だけでなく、文化的な背景やマナーへの理解も求められます。
筆者の友人たちも「お客様との会話だけでなく、職場でのチームワークのためにも日本語は絶対に必要である」と言っていますし、
上述⑥の会計を学ぶ友人は「自分の専門スキルを証明するために、日本語で会計用語や業界の知識を理解する努力が必要」と話しており、
毎日のように日本語のニュースや専門書を読んで勉強しています。
またインターンシップや就職活動の準備として、自己分析や履歴書の書き方、面接練習なども早い段階から取り組むことが重要となります。
上述④の友人は「ITのスキルはあるけれど、それをどう伝えるかが一番難しい。だからこそ、プレゼンテーション能力や日本式のエントリーシートの書き方を学んでいる」と語っていました。
日本で働くためには語学力が重要ですが、それに加えて文化的理解、実務経験が必要になります。
そして、それらを伝えるための準備も必要不可欠なものになります。
最後に
日本で働くことは、留学生にとって簡単なことではありません。
言語の壁、文化の違い、ビザの問題など、乗り越えるべき課題は多くあります。
しかし、それでも多くの学生が「日本で学んだことを活かして働きたい」という強い想いを持ち続けています。
今回インタビューした学生たちは、それぞれ違った夢や目標を持ちながらも、共通して「日本社会の一員として貢献したい」という意志を語ってくれました。
留学生にとって働くことは、単なる仕事以上に、自分の成長や国際的なつながりを築く手段なのだと感じました。
読者の皆さんにとって、働くことの意味は何でしょうか。おそらく日本でも海外でも働くことの意味や本質は同じなのではないかと思います。
その中でも外国人留学生からすると、日本の環境やサービス/プロダクトの質というのは高く評価されており、日本でのキャリア形成を望む留学生は多く存在します。
そのような留学生の現状を少しでも知ってもらえたら幸いです。
ヴァリック モリエロ(Varick Moriello)
インドネシア出身。
現在、流通科学大学商学部経営学科に在学中。
日本企業の一貫した高品質商品の継続的な提供に興味関心を持ち、その仕組みや考え方を学ぶために留学。
また、ビジネスにおける日本独自の「礼儀」や「誠実さ」といった価値観にも強い関心を持っている。
将来、母国であるインドネシアと日本を繋ぐようなビジネスを行うことを目指している。
趣味は漫画、スポーツ。学校内外で開催されるボランティア活動や各種イベントに積極的に参加している。

翻訳/編集:株式会社hupodea 事務局