1.リスキリングの重要性
いま、企業のビジネス環境が急速に変化しています。
chatGPTを始めとした新しいAIテクノロジー、それに伴う市場変化や競合の出現などによって、企業は常に変化と進化を求められています。
こうした状況下では、従業員のスキルや知識をアップデートすること、つまり「リスキリング」によって、
企業の事業ドメインをデジタル・トランスフォーメーションしていくことは非常に重要な経営課題だと言ってよいでしょう。
しかしながら、多くの企業において、経営上の目標であるデジタル・トランスフォーメーションに対して、
社内の人材のスキルが合っていない、いわゆる「企業ドメインと従業員スキルのアンマッチ状態」が生じています。
そしてさらに問題なのは、これらが企業だけではなく、日本全体における現象だということです。
今、企業がデジタル人材を採用したくても国内の市場には殆どそのような人材が存在していません。
稀有なスキルを持つ人材は取り合いになりますから、当然ながら採用のコストも高くなりますし、採用できてもすぐに転職してしまう可能性も高い。
このような状況下では、自社の従業員をデジタル人材として再スキル化していくことが喫緊の経営課題なのです。
リスキリングは、英語で Re-Skilling、つまり「再-スキル習得」です。提供する会社側から見ると、
従業員が最新のデジタル技術や知識、スキルを身につけ、職場でのパフォーマンスを向上させることを目的として行う研修を指します。
一見、以前から企業の人事部がキャリア構築の一環で進めていたような職能教育や学び直し(リカレント)と混同されがちですが、
上述の状況を見れば、より企業の生き残りを掛けた経営戦略上の必然であることが分かるでしょう。
2.具体的に何をやればよいのか
リスキリングの必要性が声高に叫ばれる一方で、経営者にとっては「何から手を付けてよいかわからない状況」も生じています。
これだけ技術の進展や環境変化が早いと、今までのプラクティスは通用しません。
企業は今、誰も漕ぎ出したことのない大海原に突然放り出された状態だと言っても良いでしょう。
従業員も皆不安がっている。だからこそ船頭たる経営者は確固たるアクションを提示する必要があるでしょう。
経営者にはまずやらなければいけないことがあります。
それは、身をもって企業が向かう方向性を指し示すこと。そのために経営者自身がテクノロジ―に精通し、スキル習得を行うことです。
この場合、必ずしもプログラミング言語を学べとかITパスポート検定を取れと言ってるわけではありません。
もちろんそこからスタートするのは社内外へのアピールとしては非常に分かりやすいのですが、
本質的に必要なのは「最先端テクノロジーを学ぶこと」ではなく、「最先端テクノロジーを俯瞰して経営に活かすスキル」を習得することなのです。
実のところ、世の中に細かなスキル研修はありふれています。
YouTubeを見れば、新しい技術やツールの使い方、プログラミング言語の解説をしている動画はいくらでもあります。
ちょっと英語に精通していれば、ハーバード大学やMITのプログラミングの授業を無料で受講することも出来るのです。
費用もほとんどかかりません。
だから、リスキリングの細かいプログラム内容について経営者が悩む必要は実のところありません。
それは人事部なり研修会社に任せてよいでしょう。それよりも、最先端テクノロジー全体を俯瞰して経営戦略に落とし込む事が重要です。
ここでは筆者が見聞きした上で、「リスキリング」と「リスキリングとは言えないもの」比較表を作成してみました。
3.リスキリングにおいてMICEを上手く使う方法
旅行会社というと、パッケージ旅行の手配や航空機の発券をしてくれる個人向けの旅行会社を思い浮かべるかもしれません。
一方で、ビジネストラベルに特化した旅行会社はMICEという領域への専門部門をもっているケースが多いのです。
MICEとは、
企業等の会議(Meeting)
企業等の行う報奨・研修旅行(Incentive Travel)
国際機関・団体、学会等が行う国際会議(Convention)
展示会・見本市、イベント(Exhibition/Event)
の頭文字のことであり、多くの集客交流が見込まれるビジネスイベントなどの総称です。
出展:観光庁 https://www.mlit.go.jp/kankocho/shisaku/kokusai/mice.html
この旅行会社のMICE部隊、実は企業がリスキリングを進めるに当たって絶大な力を発揮します。
うまく活用することで、研修会社やコンサルティングファームには出来ない総合的なプランニングを行い、
より効果的なリスキリングを実現することができます。
以下にMICE部隊が機動的に動くことによって実現した例を記します。
3-1.海外視察・海外研修プログラム
経験豊かなMICE部隊は、海外の企業や研究機関との協力を通じて、従業員に海外での研修プログラムを組み立てて速やかに提供することができます。
これらをコンサルティングファームに依頼するとMICE部隊の何十倍もの費用が取られることでしょう。
海外でのプログラムは、コアな従業員に異文化体験を提供するだけでなく、
海外の最先端事例をインプットし、海外交渉に掛かる新しい視点やアイデアを得る機会を提供することができます。
さらに、現在では視察前後のミートアップや事前インプットを詳細にやることで、効果を倍増させることができることが分かっています。
筆者も、自治体と協力したベトナムのスマートシティ視察をMICE部隊に依頼して行った経験があります。
それにより自治体からの参加者の意識は激変したのです。
3-2.リアルでの会合
モノよりもコト、体験価値がより重要視される時代において、
従業員を一同に集めて同じレベルの価値体験をさせることは、非常に意味があることです。
また、リモートワーク等が浸透した現在、ビジネスチャットでは頻繁にやり取りするけど顔を合わせた事のない社員同士がいたりすることも。
そんな中、ホテルや大き目の会議室を借り切って行う社内イベントや研修は今までとは違った意味合いを持つようになりました。
例えば、最先端技術を紹介し合う場等を設ければ、従業員のリスキリングの起点として非常に価値が生じます。
さらに、これをアウトドアのアクティビティとして行うことも可能です。
アウトドア研修プログラムは、従業員にチームワークやリーダーシップスキルを身につける機会を提供し、仕事においても活かすことができます。
筆者も先日、200人を超える大きめの社内イベントの手配をMICE部隊に依頼しました。
かなり日程の詰まった中での手配依頼でしたが、研修会社やコンサルティングファームが尻込みする中、
MICE部隊はかなり有利なレートでフレキシブルな提案を提供してくれました。
これは日頃からホテルや旅行関連の付き合いをしている企業ならではの機動力です。
3-3.オフサイト研修プログラム
普段執務している都市部から離れた場所や、リゾート地やリゾートホテルを利用して、従業員に研修プログラムを提供することはMICE部隊の得意分野です。
リゾート地での研修プログラムは、従業員にリフレッシュやリラックスの場を提供するだけではなく、
ストレスを軽減し、会社に対するロイヤリティを高める効果があります。
また新技術を使ってのワークショップや新事業創造ハッカソンを行うなど、
普段とは時間の流れを意図的に変える事で組織は活性化し、全体をリスキリングしていくための契機を得ることができます。
これらをMICE部隊は非常に得意としています。旅行取扱の資格があるからこそ出来ることも多く、
また時にはコンサルティングファームよりも多くの先進的な海外事例情報等を取得して社内に知見として保有しています。
そのため、他所に頼むよりもフレキシブルに組み立てることが可能なのです。