ビジネス基礎知識

2019.11.22

Lock Icon 会員限定

【現地在住ライターが解説】イタリアの治安と海外出張時の注意点

世界有数の観光大国、イタリアは常に多くの旅行客であふれています。観光客を狙ったスリやぼったくりなどの犯罪の体験談の多さからも分かる通り、観光立国だからこその犯罪が多いのも現状です。そのため、観光だけでなく、ビジネス出張やブレジャーで「イタリアへ行く」ことになったなら、心配なのは「治安は大丈夫だろうか?」という疑問かもしれません。
イタリア滞在を楽しむためにも、また自分身を守るためにも事前知識を頭に入れ不測の事態に備えておけば、何かの時に安心できるというもの。今回はイタリア渡航を予定している方のために「イタリアの治安と出張の注意点」をご紹介します。

1.イタリア治安事情の基礎

イタリアの犯罪発生率は日本の数倍にも上りますが、治安当局による取り締まりの強化により、年々減少の傾向にあります。イタリアの治安事情が、現在どのようなものなのか、まずは概要を見ていきましょう。

参考:
e-stat 政府統計の総合窓口「犯罪統計資料 平成29年確定版」より
ISTAT 「司法機関への犯罪被害届提出件数に関する資料」2017年欄より

1-1.近年テロはあまり起こっていない

ISISがテロの標的として、かつてローマ(ヴァティカン)を挙げたことはありますが、現時点ではローマを含めたイタリアの主要都市でテロが発生したことはありません。
しかし、かつてイタリアもテロの恐怖に怯える時代がありました。1960年代から80年代頃にかけ、極左テロ組織「赤い旅団」などのテロ組織およびマフィア勢力が、イタリア全土を巻き込んで活動していたからです。
その経験を踏まえ、現在は軍警察や地方警察、検察などの司法当局がテロに対する監視を強化しています。EU圏の他国と比べ、非常に厳しい対テロ取り締まり体制が敷かれていることが、一定の成果を上げていると言えるでしょう。

参考:
外務省海外安全ホームページ「危険・スポット・広域情報 イタリア」
ニューズウィーク日本版「なぜイタリアはテロと無縁なのか」

1-2.本物のマフィアが一般市民や観光客を脅かすことはない

映画の影響からか「イタリア=マフィア」とイメージする方は多いかもしれません。しかし、本物のマフィアが観光客を巻き込んで犯罪を起こすということはまずありません。
もちろん、すべてのケースで当てはまるわけではありませんが、一般人や観光客を巻き込む軽犯罪(スリ、かっぱらい等)はほぼ、外国からイタリアへ出稼ぎに来る外国人犯罪者が起こすものだ、と一般的には言われています。

2.イタリアでよくある犯罪と対策

イタリアに関するインターネットサイトやガイドブックなどで、犯罪への注意を促す記事を読んだことがあるという方もいることでしょう。被害に遭った話の多さに、行く前から「犯罪に巻き込まれたくない」「イタリアは怖い場所だ……」とネガティブな気持ちになってしまうことも。
不安を少しでも軽減し、快適なイタリア出張に出発するために、知っておきたい知識や対策とは一体どのようなものがあるのでしょうか。ここでは、イタリアで旅行客が巻き込まれやすい犯罪とその対策についてご紹介します。

2-1.スリ・置き引き

人混みが絶えない場所は、スリや置き引きが頻発するスポットです。代表的なのは、電車・バスの車内、駅および空港構内、観光名所など。一瞬の隙をついて荷物を持っていかれるため、周りに気をとられすぎないよう注意しましょう。

《対策》
・身体に死角を作らず、常に目の届く場所で荷物をキープする
目の届かない場所に置いた荷物ほど、置き引きの被害に遭いやすいです。また、背負うリュックは身体の死角に入りがちです。必ず身体の前で持つよう気を配りましょう。

・ファスナーで口を閉められるバッグを使う
イタリアには、悪質なスリがいます。筆者がローマの地下鉄を利用した時、バッグの持ち主の前で堂々と手を突っ込んで財布を物色するスリを目撃したことがあるほどです。バッグの中身にすぐ手を入れられるタイプは避け、ファスナーで閉められるものを使いましょう。

・貴重品ケースを使う
絶対盗られたくないものをどうしても持ち歩かなくてはならない場合に、役立つのが貴重品ケースです。身体に直接密着させ、衣服で隠せるタイプならまずスリのターゲットになることはありません。
首から下げるものやショルダーバッグのようなタイプなど、様々なデザインの貴重品ケースがありますが、オススメなのは、つけていることが周りからわからないもの。服の下に隠せるタイプが最も狙われにくいです。

例えばウエストポーチタイプの貴重品ケースは、服の下に手軽につけられるので重宝します。以下は薄手にできており、腰にまくタイプとなっており、おすすめです。

画像出典:amazon.co.jpより 
「AKAMARU 旅行ウエストポーチ」
定価:1,899円(税込)

2-2.ひったくり

ひったくりの多くは、路上やバス、電車などで起こります。路上では、車やバイクで後ろから近づき一瞬のうちにひったくり、そのまま逃走する手口が横行しています。公共交通機関内なら、駅やバス停についてドアが閉まる直前などにひったくり、すぐ降車してまんまと逃げる手口が多いです。

《対策》
・移動中は車内で眠らない
日本とは違い、公共交通機関内で寝ている人はあまり見かけません。座っていてもひったくりやスリの被害にあうことがあるからです。特に地下鉄では注意しましょう。

・なるべくドアの近くに立たない・座らない
一瞬でバッグをひったくられ、犯人を追いかける暇もなくドアが閉まり電車が発車……というケースはわりと多いです。バス・電車内では、できるだけドアから遠いポジションを選びましょう。

2-3.ぼったくり

ぼったくりの多くは、タクシーやレストラン利用時で起こります。タクシーで多いのは空港から主要駅への移動、もしくは夜中の利用でぼったくるケースです。レストランなら、頼んでいない皿や飲み物を勘定に追加したり、法外なテーブルチャージを含めたりして、高額の請求をするケースが多くなっています。

《対策》
・タクシーではメーターを必ずチェックする
白タクを使わないことはもちろんですが、正規のタクシーにも悪質な運転手はいます。タクシーに乗ったら必ず、メーターが動いているか確認しましょう。

・飲食店ではレシートを見てから会計する
イタリアではテーブル会計の飲食店が多いです。お勘定の際は合計金額と明細が載っているレシートがテーブルに運ばれ、それを見てから支払うのが一般的な流れ。頼んだもの以外の品が入っていないかどうか、チェックを忘れずに会計しましょう。万一金額がおかしい場合は支払わず、その場で抗議を。らちがあかない場合は警察に通報するといいでしょう。

2-4.ニセ警官


本物の警官は、写真のように制服を着用している。夏制服なら銃のホルスター付き白いベルト、冬制服なら赤いサイドライン入りのスラックスが目印になる(筆者撮影)

旅行客に用事がある本物の警察官は、制服を着用しています。私服なのに警官を名乗り、身分証・バッジ(偽物)を見せてくる人物は、十中八九、ニセ警官です。目的は、パスポートや財布、クレジットカードを出させてだまし取ることです。

《対策》
・貴重品を出さない
身分証やバッジを見せられて納得しないようにしましょう。食い下がられても貴重品は絶対に出さず、「話があるなら警察署でする」と断るのが詐欺を諦めさせるコツです。

2-5.踏み絵詐欺

売り物と称した絵をわざと狭い路上に並べ、うっかり踏んだ人に「絵が汚れて売り物にならない。買い取れ」と、言いがかりをつけてインチキ絵を高額で売りつけるのが手口です。

《対策》
・相手にしない
人の罪悪感を利用して断りづらくするのが彼らのやり方ですが、相手にしないのが一番です。「警察を呼ぶ」と言えばあっという間に逃げていきます。しつこく追ってくることはまずありません。

3.都市別・危ないゾーン

「向こう三軒両隣」という言葉がいまだに現役なのが、イタリアの田舎です。土地の人間でない者が地元をうろつくのは非常に目立つので、総じて犯罪率は低めです。
一方、旅行客が集中する都市部ほど犯罪率が高くなります。イタリア出張ともなれば、ミラノやローマなどの大都市に赴くことが多くなりますが、そういった街では「要注意エリア」が存在します。うかつに踏み入って被害に合わないよう、頭に入れておきましょう。

3-1.ミラノ

・ミラノ中央駅

陸路でのミラノ玄関口とも言える、巨大な駅です。改装を経て、内部にはレストランエリアやショッピングセンターが入り、常に人が多いスポット。しかし、夜21時を過ぎる頃から早朝にかけて、駅ホーム周辺やチケット売り場近辺は人気がかなり少なくなります。スリやかっぱらい、強盗などの犯罪が多いので、1人でうろつくのは避けておいた方がいいでしょう。

・ドゥオモ広場

スフォルツェスコ城と並ぶミラノのシンボルとして有名な、ミラノのドゥオモ。多くの旅行客が訪れる有名スポットです。それだけに、広場には時間を問わず多くのスリが徘徊しています。鮮やかな手口であっという間に貴重品を持ち去って行くので、盗られたことにしばらく気づかない人もいるほどです。景色に気を取られすぎないよう注意しましょう。

3-2.フィレンツェ

・ドゥオモ広場周辺


スリ被害が多いのはやはり、観光客でごった返すドゥオモ広場周辺。特に大聖堂入り口前は要注意だ(編集部撮影)

サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂(ドゥオモ)の周辺は、いつも人でいっぱいです。そのため、常に警官が辺りを警戒しているにも関わらず、スリの被害が集中するスポットの一つです。大聖堂のあまりの美しさについ写真を撮りたくなりますが、その隙にスマホや財布を盗まれることが多いのでご注意を。

・カッシーネ公園


カッシーネ公園内の遊歩道。暗くなる時間帯は人気がなくなるので注意(筆者撮影)

フィレンツェの玄関口サンタ・マリア・ノヴェッラ駅の北西に位置するカッシーネ公園は、週末は市場が開かれたり、のんびり散歩したりする人々で賑わう憩いの場所です。しかし、平日夕暮れから早朝にかけての時間帯は、極端に人気がなくなります。強盗や薬物犯罪などが多発している場所なので、うかつに足を踏み入れないよう注意しましょう。

3-3.ローマ

・サン・ロレンツォ地区
テルミニ駅の東に位置するサン・ロレンツォ地区は、再開発後に飲食店やディスコ、ショップが立ち並ぶおしゃれスポット。観光客も気軽に訪れる場所となっています。しかし以前は、薬物犯罪が横行する危険なエリアとして認知されていました。今でも、23時を過ぎるとその面影が色濃くなるスポットが点在しているので、行くなら複数人で訪れることを心がけたほうが無難です。

・ピニェート地区

テルミニ駅から南西方向へ行くと、もう1つのローマの下町ピニェート地区が広がります。基本的に住宅街ですが、中心にはおしゃれなレストランや流行りのバーが集中していて、若い人を中心に人が集まる場所でもあります。しかし、ここも治安がいいほうではありません。21時を過ぎると中心部でもかなり薄暗くなるので、地元民でも辺りに警戒して歩くほどです。用がなければ、足を踏み入れるのはやめておいたほうがいいでしょう。

3-4.ナポリ

・スペイン地区

狭い路地に洗濯物がひしめき合う、まるで昔のイタリア映画のような光景を目の当たりにできるのがこのスペイン地区です。メインストリートのトレド通り界隈の空気感とは異なり、昼間でもなお薄暗いこのエリアは明らかに「治安が悪そうな雰囲気」に満ちており、観光客にも伝わってくるほど。
かっぱらいや置き引きが日常茶飯事で起こるため、被害にあっても警察はまともに取り合わない、という話もよく聞かれます。

・ガリバルディ駅周辺

ナポリ中央駅から地下鉄ガリバルディ駅にかけての周辺エリアは、強盗被害が多発している場所です。銃を突きつけられ、貴重品を根こそぎ持っていかれる事件が後を絶ちません。住民でさえ、明るい時間に家に戻れなければ知人や友人の家に泊まり、人気のある時間帯まで帰宅を待つほどです。この辺りのホテルに宿泊するのは避け、極力近寄らないようにしましょう。

4.行動のコツ

出張の予定を、出発前にある程度決めておく人は多いことでしょう。しかし、一度アクシデントが起きると、立てたスケジュールが台無しになることもあり得ます。不測の事態に陥らないようにするため、現地ではどのようなポイントに気をつけて行動すればいいのでしょうか。

4-1.外出する時間帯に注意する

日暮れ後から犯罪の発生率は上がります。田舎・大都市を問わず、日が暮れてから2時間以内にホテルの部屋へ戻るよう心がけましょう。夜中の外出は控えるのがベストですが、23時を過ぎて外に出る必要がある場合は、現地の知り合い等その土地を知っている人に同伴してもらうのが無難です。

4-2.帰国前日の予定は少なめに

出張の疲れが出てくるのが、帰国2〜3日前くらいからと考えておきましょう。心身のコンディションが良くなさそうな人ほど、犯罪被害にあうリスクが上がります。万一アクシデントに巻き込まれた場合、日本とは違い各種手続きなどに倍以上の時間がかかるのがイタリアという国です。緊急事態にも対応できるよう、帰国前日はできるだけゆったりとした日程を組むように心がけましょう。

4-3.近づいてくる他人を警戒する

イタリア人はコミュニケーション能力が高く、知らない人同士でも気軽に世間話をするのが一般的です。とは言え、何の面識もない他人、外国人にいきなり「友達になりたい」と馴れ馴れしく話しかけたりすることはめったにありません。そんな人から声をかけられたら、十分に警戒しましょう。詐欺のターゲットにされていることがあります。

治安に気をつけて、安全なイタリア出張を!

美しい景色、美味しい食事、現地の人との暖かい触れ合い…イタリアには美しくて楽しいことが山ほどある反面、大勢の旅行客が犯罪に遭遇してしまう現実もあります。せっかくの海外出張やブレジャーをイヤな思い出で上書きしてしまわないように、予備知識を頭に入れて行動しましょう!

関連記事
イタリア・ローマでブレジャー! プランの立て方のコツとおすすめスポット
イタリアに出張する愛煙家のための喫煙マナー
イタリアへの海外出張。現地で買うべきオススメ&要注意おみやげ

Lock Icon

この記事は会員限定です

会員登録すると続きをお読みいただけます。