取材記事

2024.07.16

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【TOKYO XR・メタバース&コンテンツビジネスワールド】 ビジネスステージ&ビジネスピッチイベントレポート

ビジネスステージでは3日間の会期中様々なイベントが行われ注目を集めていた

XR・メタバースの最新情報が披露された展示会「TOKYO XR・メタバース&コンテンツ ビジネスワールド」。
この記事では、同展示会におけるビジネスステージでの発表を集約し、分かりやすくまとめてレポートする。
また、全国からトップランナーたちが集結しビジネスアイデアやその出来映えを競ったコンテスト「ビジネスピッチイベント【XR・メタバース部門】」の内容についても見ていこう。

1.【XR・メタバースとは?2023年迄の業界動向と今後の展望】XR・メタバースのさらなる進化とは


近未来のロードマップをバックに議論は白熱した

2021年ごろからビジネスシーンなどでよく聞くようになったメタバース、XR。社会問題の解決や効率化による生産性向上に役立つため、市場の成長が著しい分野だ。
ここからは、ビジネスステージで行われたセッション「XR・メタバースとは?2023年迄の業界動向と今後の展望」についてお伝えする。

1-1.ロードマップで予測するメタバースの未来とは

初日に行われたビジネスステージでのセッション「XR・メタバースとは?2023年迄の業界動向と今後の展望」の冒頭で、一般社団法人Metaverse Japan共同代表理事の馬淵氏は「メタバースはオワコンと言われたこともあった」という話からスタートさせた。

「しかし、今後より密接に産業と結び付いていくのがメタバースだ」と、馬淵氏は今後の発展を確信しているようだ。馬淵氏は10年ほどかけて登る山に例え「メタバースロードマップ」を作成し、メタバースの未来を予測している。

そのロードマップは2021年から24年を「フェーズ1」、24年から27年を「フェーズ2」、27~30年を「フェーズ3」としており、

【Web3】NFT、DAO
【インダストリアルメタバース】産業用マルチバース整備、VR共創デザインツール
【オフィス公共コミュニケーションバースの普及】オフィスのバーチャル化、XRミーティング
【メタバース生活圏】経済圏の確立、常時接続、5G→6G

という4つのワードで構成された“山”を登っていくようなものになっている。

ならば2024年現在の“登山者”が立つ地点はどこなのか。

馬淵氏は「2023年にApple社がアップルビジョンプロをリリースし、一般ユーザーもが高性能なVRデバイスを手に取れる時代になったことで、今はまさに転換期といえる。
ちょうど24年からはフェーズ1から2となる節目だ」と分析する。

バーチャル空間をリアル空間にコピーしていく技術の普及で、インダストリアルメタバースの世界観も、進化を見せる時期としてロードマップに表現されている。

さらに、現在は自治体が積極的にメタバースを取り入れるケースも全国的に広まりつつある。
これはロードマップ上の「オフィス、公共コミュニケーションバースの普及」に相当。
子供たちがすでにVRゲームを体験しており「メタバース生活圏」の浸透も視野に入っているところだ。

テクノロジーの進化が、今まで以上に我々の生活に密接にかかわるだろう。

1-2.クリエイティブコンテンツとの融合こそがメタバースビジネス利用を加速させる

「TOKYO XR・メタバース&ビジネスコンテンツワールド」の開会式でVRアートのライブパフォーマンスを行い、感性豊かな世界観を披露したせきぐちあいみさん。
「VRアートは誰かを別の世界に連れていくこと」と表現し「個人のやりたいことを広げ、ビジネスにできるのがメタバース」と見解を述べた。

せきぐちさんのパフォーマンスは仮想空間に絵を描いていき、モニターやARグラスから視聴していくというもの。
いわゆる、人間の感情や身体性、現実空間と仮想空間をミックスするアートを手掛けている。
たとえば、ARゴーグルをかけて鳥取砂丘を見るとそこにはせきぐちさんが描いた未来都市が広がっている、などだ。

VRを活用すれば、病室から出られないお年寄りを疑似的に思い出の場所に連れていくことや、大切な人と会うことも可能になる。デジタル機器を使うことが高齢者の人生の幅を広げることに直結するだろう。
デバイスの進化が著しいなか、気づいたらVRゴーグルが日常に根付いた時代がくるかもしれない。

国境、文化、宗教の異なる人たちが行う共同作業や芸術は、楽しみや喜びで人の心を動かす。そこから生まれるのは、正しいサイクルの需要だ。経済の動きがより加速する大きなきっかけになる。

せきぐちさんのクリエイターイズムが伝わるコメントで第1章を締めたい。

「これからはマジで中途半端なものはAIにはかなわない。リスクを取り、無茶な体験をしていることが大事」

まさに人間が関わっているからこそ生み出せることが今後も一番大事になっていく、とせきぐちさんは強調した。 
人の心を動かす、本物のコンテンツを作り出すことが、メタバースのビジネス利用を加速させる追い風になるだろう。

2.【自治体におけるメタバースの可能性】社会を大きく変える新しい手段とは何か


特に教育や文化の面での活用が進んでいるという自治体のメタバース利用。トップランナーによる先進的な取り組み事例が紹介された

自治体によるメタバースの活用が進んでいる。
仮想空間を活用することで人的リソースを効率的につかえるようになるなどの利点が、子供の不登校・貧困、人口減少による空き家対策といった社会問題の解決はもちろん、観光振興やノウハウの継承にも役立つためだ。

一方で、民間との連携やデータに基づいた施策の適切な評価なども求められており、自治体関係者は「次世代に何を残すか」を考えながら、常に知恵を絞りつつ取り組みを進めている。

1日目のビジネスステージで行われた「自治体におけるメタバースの可能性」セッションより、先進事例である東京都、新潟県・三条市、沖縄県・沖縄市がどのようにアプローチしているのかを紹介する。

2-1.東京都の取り組み

メタバースへの取り組みをいち早く始めた3つの自治体が、東京都、新潟・三条市、沖縄県・沖縄市だ。実装の事例や課題、あるいは今後どういった可能性があるのかといった議題で熱いディスカッションが行われた。

まずは、東京都教育庁総務部の江川徹情報企画担当課長が、東京都の取り組みを紹介。
東京都教育委員会では、「バーチャルラーニングプラットフォーム」という仮想空間を生かした教育活動を展開している。昨年9月から仮想空間が3Dに代わり、都内八つの自治体で1800アカウントを既に配布済み。
「ここで子供たちは自身のアバターを通して他者と会話したり、遊んだりしながら過ごし、学びを深めている」と同氏は語る。

取り組みの根底には、子供の不登校問題の解決などが潜在している。

仮想空間内ではオンライン支援員が見守るなか、子供同士が交流する。
児童は「学校ごっこ」などを展開しながら声を発して喋るようになってくるほか、ホワイトボード機能を活用した遊びを考案するなど独自性も発揮。

結果、コミュニケーション機会が増えつつある。
仮想空間で仲良くなった友達と現実で会うようになったというケースもあり、そうしているうちに「今度は自分から挨拶してみようかな」という子供も出てくる。

「子供を取り巻く環境は日々変化しているなか、仮想空間を通じて新しい居場所、学びの場が生まれる」と江川氏は取り組みの前向きな成果について語った。
子供の不登校で悩む保護者向けの座談会も開催しており、こういった取り組みはいずれ社会とつながっていくだろう。

一方、自治体によるメタバースの活用は教育にとどまらず、純粋なエンターテインメントにも領域を広げている。

一般社団法人渋谷未来デザイン理事・事務局長/SOCIAL INNOVATION WEEK SHIBUYAエグゼクティブプロデューサー長田新子氏が、東京都渋谷区での取り組みを披露した。

この取り組みは、昨年10月に渋谷区で開催された「AIR RACE X(エアレース エックス)」。世界初の都市型XRスポーツとして注目を集めた。

このイベントはXR技術を使い、現実世界では飛行が不可能な渋谷の街中を舞台にしたエアレースを観戦するという趣旨だ。当日、渋谷の街中ではスマホやヘッドセットを通して空を見上げる観客がずらりと街に並んだ。

「画面にはビルの合間を縫って飛行するレース機が生き生きと映し出されて、街にはいつもとは異なる熱気ある空間が生まれた。テクノロジーと地域がより一層近づく絶好の機会となった」と同氏は語った。

2-2.新潟県・三条市の取り組み

次は、アウトドアの町として知られる新潟県・三条市の取り組みをご紹介。
元経済産業省職員から転身し、現在は副市長を務める上田泰成氏が、先頭に立って進めている。
三条市では、メタバース利用拡大の機運醸成に

・ヒトの認知・参加者に刺さる工夫が必要(必要性)
・エビデンス・価値検証を通じたEBPM(有用性)
・ハードル引き下げ・ハード整備、コスト意識(経済性)

の3本の柱をもって取り組んでいる。

まずは「ヒトの認知」だが、デジタルツールを職員に活用してもらうことを狙い、人気ゲーム「ぷよぷよ」の大会を庁内で開く取り組みからキックオフしている。
上田氏は「メタバースもそうですが、こういうデジタルツールを実際に職員のみなさんに活用してもらわないと認知されない。最初はわかりやすいゲームの形で触れることでその先の可能性についても体感してもらえる。なので、こういう小さなところからのキックオフが大切のかなと思います」とその目的を話してくれた。
大会では市長と副市長の対戦もあったという。喜んだり悔しがったり、と役職者の素の部分が見えることで、大いに会場は打ち解けたという。
「デジタルツールの活用は面白い、興味深い」という共通認識を、庁内で働く人々が持てれば、いっそうメタバースの利用拡大につながるだろう。
次に目指すのは、政策を一過性のものにしないために、目的を明確にした上でデータに基づく合理的な根拠を使用する、「エビデンスに基づく政策立案(EBPM)」を徹底するという方針だ。
メタバースの利用拡大は、現在は機運醸成の段階。
予算策定時に庁内の合意を得るためには、正当なデータに基づいた必要性と優先順位を示すと同時に、客観的な政策評価も行う必要がある。

税金を使用した行政ならではの、選択と集中に資する実にシステマティックな方針で、コスト意識などと合わせて上記を屋台骨にしたメタバース利用拡大に取り組んでいる。
具体的な施策として、市内に4000軒ある空き家の問題の解決にメタバースが活躍しそうだ。
上田氏は「三条市の場合、結構日本のいろんな社会課題の縮図的なところがある。最近僕が注目しているのが空き家問題なんです」と語る。

「三条市ではデベロッパーのスタッフを招き空き家の調査を行っているが、ユーザーのニーズを捉えきれていないという課題がある。
例えば、メタバース空間の中で、空き家を作りやすいようなプラットフォームでコンテンツを運営する。そこから、全国のユーザーがどんな空き家を求めているのか、というニーズがわかると、メタバース空間ならではの付加価値がそこに生まれる。
その結果をデベロッパー側に伝え連携することで、住民ニーズの把握からメタバース空間を活用できるのでは、と思っている」

と上田氏は今後の展望について自論を展開した。

これについてはメタバースを活用し、どんな家の形状やコンテンツの導入で実施し、集まったデータを生かした取り組みにつなげることができれば、国内での先進的な事例となり、横展開が可能になるだろう。

今後も三条市の施策に注目したい。

2-3.沖縄県沖縄市の取り組み

続いて、沖縄市経済文化部観光スポーツ振興課主幹/一般社団法人沖縄STEM教育センター 代表理事/宮里大八国際交流基金代表の宮里大八氏が、沖縄での取り組みを紹介した。

沖縄県沖縄市にはモーションキャプチャースタジオがあり、映画やアニメなどを撮影している。
こういったモーションキャプチャースタジオの運営は自治体としては珍しく、宮里氏も「おそらく沖縄市だけではないか」と胸を張る。

現在取り組んでいるのは、文化芸能の「組踊(くみおどり)」をモーションキャプチャーで撮影し、文化の伝承に役立てるだけでなく、振り付けの習得を盛り込んだゲームを作成して普及に役立てるというものだ。

また、このスタジオでは市と民間企業が連携して「沖縄空手メタバース」も制作している。
空手の聖地として知られる沖縄ならではの取り組みで、空手の動きをモーション・キャプチャーで撮影し、世界中に1億3000万人は存在すると言われる空手愛好家がアクセスできるようにするものだ。
バーチャル上で稽古ができる仕組みになっている。

この取り組みについて、宮里氏は下記のように解説。
「次の世代に何を残すか、を行政は真剣に取り組むべき。何を次に残すかと考えたとき、デジタルコンテンツを使うなら、そのデータを元に次の政策をうって、予算をつけて何をするか、と継続した取り組みを考えるのが大事だ。
分析したデータを整理し、優先順位が高いものから取り組んでいる」

合わせて宮里氏は、教育分野でのメタバース活用事例を紹介。
「宮古島で講座を開いたときに、AIを使ったプログラミングスクールやドローンを使った講座を行った。やはりメタバースやデジタルを使えば、物理的な距離はなくなる。
今後、沖縄の離島の子どもたちをメタバース上およびデジタルで繋いで、様々な教育プログラムができるようになるだろう」
と、宮里氏は今後の展望についても語った。

また、沖縄市は、メタバースを観光、スポーツにとどまらず、大学と連携した英語教育などに応用する取り組みを行っている。
自治体として可能な限りの情報を集めて取捨選択をしつつ、メタバースはじめバーチャル技術の活用に注力するこれらの取り組みからは、今後も目が離せない。

3.【XR・メタバースの可能性を通じて描く新たな経済圏】各企業が語るXR・メタバースの最新事情


大がかりなスタジオ設備を用意したブースも多くの人を集めていた。資本の投資も進んでいる

1月26日にビジネスステージで行われた「XR・メタバースを通じて描く新たな経済圏」のセッションでは、メタバースのプラットフォームを構築する各企業のキーマンが壇上に上がりディスカッションを行った。
XR・メタバースが構築する新しい経済圏とはどのようなものだろうか。ここからは、その最新事情をお伝えする。

3-1.メタバースが生み出す経済的収益の最新事情

現在メタバースの中では新しい経済圏が構築されつつある。
クラスター株式会社エンタープライズ事業部マネージャーの亀谷拓史氏によれば、
「1日5時間以上滞在するユーザーもいる。リアルと同じぐらいデジタルでの生活に価値を見出している人が増えている」とのことだ。

メタバースには多数のプラットフォームがある。各社それぞれの強みや思想を生かし、市場は拡大している。
各プラットフォーマーが共通して考えているのは付加価値をいかに向上させ、ユーザーを引き付けるかということだ。

同時に一つのプラットフォームに縛られず、他社とも連携し、相乗効果を高めながら新たな世界を作っていくことの重要性も認知されてきており、そこに今後の新たな展開が見いだせる。
たとえば旅をする前段階においてメタバースで目的地を訪れ、ARのスタンプラリーを行い、クーポンをもらうなどだ。ほかにも、鉄道や百貨店との連携実績から、今後の活用と発展が予測できる。

現実世界にデジタルが一気に近づく仕組みへの模索が続いているが、メタバース経済圏はこの10年でもっと大きくなるだろう。
今、人類の時間軸上でも興味深い転換点になっていると言える。

3-2.クラスター社の提供するメタバースプラットフォーム実例

創業15年のクラスターは、国産VRメタバースプラットフォームを提供している企業。大阪・関西万博に先駆け、大阪の魅力を国内外に発信しようと制作された「バーチャル大阪」というコンテンツも制作している。

クラスターは、基本的にはCtoC(個人間取引)のメタバースのプラットフォームだ。一般の人がメタバース空間を作りアップロードし、そこで他者を交えた経済活動・商取引を行っている。
一般向けにはアバターの即売会、法人向けにはG7のような国際会議のプラットフォームを作成。自動車メーカー等も含め、年間250社との連携を果たしている。

クラスター株式会社エンタープライズ事業部マネージャー亀谷拓史氏は「メタバース空間を作るクリエイターが、国内最大級に在籍しているところが強みだ」と語る。

「昔なら1本何億円、で作られたようなコンテンツが今、街を歩いている高校生でもサクッと作れるような時代になっている。
そのため、今後は中高生など若い年代の個人が、今までのコンシューマー制作のゲームに匹敵するぐらい面白い世界や体験を作っていける可能性もある。

CGやゲームエンジンのスキルがなくても、若いクリエイターの制作を楽にするようなツール、部品を選ぶだけで作れるような機能をクラスター上に実装している。そういうクリエイターをどんどん増やしていくことが、メタバースプラットフォームとして成長する上で大きい要素となっている」と手応えを語ってくれた。

3-3.メタバースが個人やスタートアップにもたらすビジネスチャンスとは

「メタバースの発展は大きな企業のみならず、スタートアップや個人にもビジネスチャンスを生む」と語ったのが、株式会社STYLYの代表取締役 山口征浩氏だ。

「新しい経済圏や社会ができる転換期は、小さいスタートアップや個人にとってもすごいチャンスだと思っている。
社会の定義が変わるところは、体験の軸と、構造の軸との2つある。例として体験の軸でいうと、現実の相手ともSNSでやりとりするようになったことは、インターネットによって現実の体験定義が変わったと言える。
なので、メタバースの発展により今後物理現実の定義すら変わってくる可能性もある」と山口氏は続けた。

「また、何か価値のあるものへの対価として使うお金の定義も変わってくるだろう。昔はメディアや企業が何億もかけて制作したものを、今では個人が作り提供することによってお金をもらう、という仕組みが出来上がっているからだ。

このように、ここ数年で大きく社会を変える流れが加速している。その勢いに乗って、プラットフォームに取り組む事業者が、新しい価値をどんどん生み出して世の中を良くしていくことに貢献できたらいいなと思っている」と、プラットフォームの可能性を山口氏は熱く語った。

山口氏の見解を受けて、REALITY XR cloud株式会社 代表取締役社長の春山一也氏も下記のように続けた。

「今国内で作られているアバターやメタバース世界など、日本発のコンテンツはグローバルでも十分通用する。ユーザーの行動を見ていても生活の一部に溶け込みつつあり、本当にリアルとバーチャル世界の隔たりがなくなりつつあると考えている。
これからの数年は、このITの中でも革命的な時間になってくるのではないか。国内のこういったメタバースを応援できるようになれば、ビジネスで大きな勝ち筋を得る手段になるだろう」
と今後の可能性を予測した。

3-4.KDDIでの活用事例

KDDIは2010年半ばからXR事業に取り組んできた。
2020年には前述のクラスターとともに「バーチャル渋谷」を立ち上げ、メタバースに参入。
渋谷以外にも大阪府などとも連携しており、都市連動型メタバースを事業展開している。

KDDI株式会社事業創造本部Web3推進部3グループ・グループリーダーの矢島葉介氏は、「様々なプラットフォームがある中で、連携して動いていくための結びつきを、我々のようなキャリア会社で行う必要があるだろう」と語る。

「各企業とどういう価値を提供していけるか、と、サービスを繋いだ上で付加価値を高めていくことを常に検討している。
例えば、多くの企業で体験価値を提供し続けられる常設空間を構築するケースがとても増えている。1プラットフォームで実現するのではなくて、今回ブースを出展している企業とも連携し、様々な技術を使いより大きなビジネスとして広げることを常に考え、仕事をしている」と矢島氏。

「細切れではなく、一つの大きな市場として日本のメタバース市場を盛り上げていけるような、座組っていうのを作っていけたらいいと思っている」と矢島氏が話すと登壇者の面々も大きくうなずいた。
「今ここにいらっしゃる皆さんと、春先ぐらいに一度イベントでもやろうかみたいな話もしていたりするので、ぜひそういった取り組みも含めて楽しみにしていただけたらいい、と思っています」
と矢島氏は、今後も各社と協力し横の連携を深めて日本のメタバースシーンを盛り上げて行くきっかけを作りたい、との構想を語った。
 

4.【ビジネスピッチコンテスト XR・メタバース部門】コンテストで見えてくる明るい未来


XR・メタバース部門では5社5人が登場してビジネスのアイデアを競った

イベントでは、ピッチコンテストも行われた。XR・メタバース部門、音楽部門、アニメ・デザイン部門の合計4部門が行われたが、ここではXR・メタバース部門についてお知らせしたい。

4-1.業界の起爆剤になるか?5人が競ったビジネスピッチコンテスト

このピッチコンテストは、XR・メタバース世界の出展者が革新的で将来性のある製品サービスをステージで発表し、審査するというもの。
5人が登壇して4分間のプレゼンテーションを行い、審査員との質疑応答を繰り広げた。
審査の基準は下記の4つ。

【新規性・独創性】製品、技術・サービスに新規性・独創性があるか
【市場性】社会的ニーズがあるか、国内外へのビジネス発展が可能か
【ビジネスモデル】ビジネスモデルが優れているか、今後の成長が期待できるか
【発展性】都内産業の振興・発展に資するものであるか、新たな市場の創出に発展するか

5人いずれも高い完成度のプレゼンテーションを披露。審査員も様々な角度からの視点にインスピレーションを受けたようで、今後の業界の成長に期待を高め、XR・メタバースの明るい未来が見えてくるようなコンテストとなった。

4-2.優勝したnat株式会社の製品「Scanat」とは

優勝の座を射止めたのは、「Scanat(スキャナット)」をプレゼンしたnat株式会社の代表取締役社長、劉 栄駿氏。
Scanatとは、同社が開発した世界発のミリ単位計測を可能とした記録アプリだ。
現在人手不足が深刻化している建設業界の諸課題(記録する大変さ、現場にいける人がいない、正しく測れない、撮影すべき箇所がわからない、お客様へのヒアリング時間が少ない)解決を目指す。


XR・メタバース部門で優勝したnat株式会社、劉さんのプレゼン

使い方は簡単。スマホに室内を映し、スキャンボタンを押してカメラを動かし、画面内の赤い点を消していくだけだ。それだけで室内の3D画像がミリ単位で生成され、あらゆるデータを記録する。ネットワーク環境も不要だというのが驚きだ。
このアプリなら、新しい労働力の活用、生産性の向上を実現するのはそう難しくない。
現段階で、建設、土木業を中心に350社が導入しており、今後は計測から設計まで一連のチェーンにすることで市場にアプローチする考えだ。
質疑応答では、審査員から「真似されるリスク」に関する質問が飛んだ。劉氏は、「実際に真似されてはいるが、精度でScanatを上回るものはいない」旨を説明。このアドバンテージを生かしていち早く業界を席巻したい考えを示していた。


ピッチイベントの表彰式にて。彼らのようなトップランナーの取り組みがメタバースの進化を加速させていく

「我々が誰でも簡単に使える空間インフラを、日本初の世界スタンダードを作りたい」と劉さんは目標を語った。
表彰式でも「この技術を日常、毎日の業務に役立てるように技術開発したい」との抱負を述べた。

まとめ:収益を上げられるメタバースへ進化は加速しつづける

今回が初の開催ながら、メタバース・XRの「今」と、ビジネスへのヒントがたっぷりとちりばめられた展示会が「TOKYO XR・メタバース&ビジネスコンテンツワールド」だった。XR・メタバースのビジネスサイドの活用について、非常に速いスピードで発展しているのを十分に感じさせるイベントだったことは間違いない。

メタバースはデジタルを挟んだ人間同士の営みと言える。
今後はプラットフォームの連携などを通して、技術革新、ビジネス領域への利用と収益化の確立が一層進んでいくだろう。

24年はブレークスルーの1年とも言われており、業界の盛り上がりは加速していく。
来年の開催ではどんな内容が展示されるか今から楽しみでならない。

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