取材記事

2025.12.08

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働く親のリアル・トーク座談会Vol.1 ―なぜ、私たちは働くことを選んだのかー

子どもを育てながら働くこと。
それは、当たり前のようでいて、誰にとっても簡単な選択ではありません。
家庭や職場、社会との関わりの中で、時に立ち止まり、悩みながら、それでも“働く”ことを選んでいる親たちがいます。

BTHacksではそんな“働く親”たちのリアルな声を届ける新企画「働く親のリアル・トーク」をスタートします。
双子の子育て真っ最中のにこちゃん編集長が、毎回ゲストを迎え、「子育て×キャリア」をテーマに、
現場のリアルや本音を語り合う座談会形式でお届けします。

第1回のテーマは――「なぜ、私たちは働くことを選んだのか?」
“働かなければならない”というルールがない中で、あえて働くことを選んだ親たちの思いとは。
「子どものために」「自分のために」「社会とのつながりのために」――
それぞれの立場で見つめ直す“働く理由”を通して、仕事と子育てをどう両立していくのか、そのヒントを探っていきます。
また、今回は参加者全員が双子ママということで、多胎育児の親の子育てと仕事の視点も語っていきます。

【座談会メンバーの紹介】

にこちゃん編集長

TOPPANトラベルサービス株式会社が運営するメディア、BTHacksの編集長
2024年に双子を出産した2児の母。

牛島智絵(うしじまちえ)さん

株式会社pono代表取締役/一般社団法人tatamama代表理事

2021年に双子を出産。多胎育児の過酷さと孤独を経験したことから、多胎家庭専用アプリ「moms」を開発。【情報・つながり・居場所】を国内外に届ける循環型プラットフォームを構築し、自治体・企業・大学と連携しながら多胎家庭のウェルビーイング向上に取り組んでいる。

古島夏美(ふるしまなつみ)さん

株式会社pono取締役

株式会社ベネッセコーポレーションで教材開発に従事し、2020年に双子を出産。
自身の経験を活かし、Instagram発信やオンラインコミュニティ運営を通して、多胎育児の情報発信・サポート活動を行う。2025年に株式会社pono取締役に就任し、アプリ「moms」の運営を担う。

1.なぜ、私たちは働くことを選んだのか

にこちゃん編集長
この企画を始めたのは、「働く親のリアルをもっと発信したい」と思ったのがきっかけです。
ワーママの活躍やハウツー記事はたくさんあるけれど、もっと等身大で、「私もこう思ってる」「こういう気持ちわかる」と共感できるものは少ないなと感じていました。
誰かの言葉に“腑に落ちる瞬間”があるように、この座談会が、読んでくださる方にとって
「明日も少し頑張ってみよう」と思えるきっかけになったらいいなと思っています。

早速ですが、子育てしながらなぜ働いているのでしょうか?

古島さん
「なんで働くことを選んだのか」……、“働かない”という選択肢が、私にはなかったんです(笑)
私は、“ありたい自分でいるため”に働いています。
たとえば、誰かの役に立てたり、いい影響を与えられたり、仕事を通して自分の存在が誰かに届く――、そういう感覚が、私にとって生きている実感なんです。
自分が生きてきた証を残したい、それが「働く」ということと、自然につながっている気がします。

にこちゃん編集長
なるほど……“ありたい自分”でいるために働く。
すごく素敵な言葉ですね。

古島さん
もちろん、現実的には“経済的に自立したい”という面もあります。
でも、それ以上に、“自分の心が心地よい状態でいるために働き続けたい”という気持ちのほうが大きいです。
「どうやったら働けるか」「どうしたら無理せず続けられるか」
そういう視点で、ずっと自分の働き方を見つめてきました。

にこちゃん編集長
すごく共感します。
「なぜ働くんだろう」と考えた時に、大きく分けて「経済的なこと」、「教育的なこと」、そして「自分のため」の3つがありまして。
経済的には、“ゆとりを持っていたい”という気持ちがあります。
子どもの将来の選択肢を広げたいし、家族で外食したり、旅行にいったり、日々の暮らしの中に“楽しい経験”を増やしていきたい。
それができるのは、経済的な余裕があるからこそだと思うんです。
それから、教育的な面では「自分がいきいき働いている姿を見せたい」という気持ちがあります。
背中で語るように、働くことの大切さや楽しさを子どもたちに感じ取ってもらえたら嬉しいです。

古島さん
私も、子どもを産む前と後で、働く意味がまったく変わりました。
それまでは「仕事=自分の成長」だったけど、今は「家族とどう生きていくか」という視点が強くなった気がします。
子育て、夫婦、自分の時間。
全部のバランスをとろうとして、何度も悩みました。
でもある時、“重ねる”という発想に変えたんです。
育児を仕事に活かす、仕事の時間が家族の時間にもなる――、そんなふうに、要素を分けるんじゃなくて重ねる方法はないかと考えるようになりました。
そうしたら、ちょっと生きやすくなったんです。

にこちゃん編集長
重ねる、ってすごくいいですね。
まさに「融合させる」っていう感覚。

古島さん
自分の育児を発信することで仕事につながったり、育児の中から仕事のヒントを得たり、全部を切り分けるのではなく、重なり合う部分を見つけていく。
それが、今の私の“働き方”の軸になっています。

牛島さん
そもそも、私は“働くこと”が本当に大好きなんです。
35歳を過ぎるまで、ずっと仕事一本で走り続けてきて。
気づけば「もうそんな年齢なんだ」と思った時、“子どもを産む人生”と“産まない人生”をどう選ぶかを考えざるを得ない時期に来ていました。
もともと、子どもを「産む」というより、「育ててみたい」という気持ちが強かったんです。
子どもと一緒に暮らしてみたい、たとえ自分が産まなくても、親を必要としている子を育てるという生き方も素敵だなと。
そうやって、ずっと“育てる人生”に興味がありました。
でも同時に、私は仕事が心から好きで。
自分の力で価値を生み出している実感や、仲間とチームで目標を追い、成果を出す瞬間がたまらなく好きでした。
社会の中で役に立てているという手応え、自分が成長していく感覚――、それが生きる原動力でした。
だからこそ、“仕事を手放す”という発想は、私の中にはまったくなかったんです。
仕事は、私の人生を豊かにしてくれる大切な要素そのもの。生きる上での軸のようなものでした。

にこちゃん編集長
なるほど、ずっと仕事が自分の一部みたいな感じですよね。

牛島さん
そうなんです。
でも、35歳を過ぎて、「産むか産まないか」「子どもを持つか持たないか」という選択を
現実的に突きつけられた時に、ようやく真正面から向き合いました。
「こういう話、もっと学生のうちに誰か教えておいてほしかった!」って思いました(笑)。
それでも私は、“やってみたい”という気持ちの方が勝ちました。
それもまた、自分の人生を豊かにする経験になると思ったんです。
正直、出産しても仕事は続けられる、気合と根性でなんとかなる、そう思っていました。
ところが、実際に出産してみたら双子で、想像していた世界とはまったく違っていて。
これまで「当たり前」だと思っていた働き方が、もう元には戻れないという現実に直面しました。

2.産後の働き方と育児

にこちゃん編集長
子どもを産む前と今とでは、働き方ってどう変わりましたか?

牛島さん
私は2008年に個人で独立して、オンライン集客やマーケティング支援をしていました。
そこから少しずつ仕事が広がって、2018年に仲間と会社を立ち上げて、副業支援のマッチング事業を始めまして。
会社はもう自分の分身みたいな存在で、「私がやらなきゃ」「止まれない」と思って、ずっと走り続けていました。

にこちゃん編集長
その流れでの出産、環境の変化は相当大きかったですよね。

牛島さん
はい、2021年の7月に双子を出産して、もう8月のお盆明けには復職していました。
8月に入った頃から、仕事の連絡がどんどん来て、最初の3週間は母が手伝いに来てくれていたので、なんとか対応できていたんです。
でも、母が帰ってからはもう回らなくなりました。

寝不足で頭がぼんやりして、それでも“やるしかない”って自分を奮い立たせていたんです。
でも、10月に突然下血して、「これは普通じゃない」と思って病院に行ったら、そのまま即入院でした。
病院のベッドで、「もう無理かもしれない」「何やってるんだろう」って何度も思いました。
家では夫が初めて本格的なワンオペ双子育児をすることになって、「もう限界かもしれない」っていう連絡が何度も来る。
病室でそのメッセージを見ながらも、まだ出血は止まらなくて…、心も身体も完全に動けなくなってしまっていました。

にこちゃん編集長
……それは、本当に極限の状態ですね。

牛島さん
でも、あの入院の時間があったからこそ、ようやく立ち止まれたんです。
それまで「考える時間」なんてなかった。
入院中、初めて「私はどうしたかったんだろう」「なんで子どもを産みたいと思ったんだっけ」って、自分に問いかけました。
それまでは、子どもも仕事も、全部“やる”と決めていたけれど、心の奥では、“やり切ること”しか考えていなかったんですよね。
でも、入院して初めて、「これからどう生きたいのか」「何を大切にしたいのか」をじっくり考えることができた。
その時に、「大切なものを当たり前に大切にできる生き方をしたい」と思いました。
辞めることで失うものもあったけど、何より“生き直すための選択”だったんだと思います。

にこちゃん編集長
その決断をされた時、どんな気持ちでしたか?

牛島さん
正直、怖かったです。
自分の居場所がなくなるような気がして。
でも同時に、「これでようやく休める」とも思いました。
あの時は、仕事を手放すことが“負け”じゃなくて、“再生”だった。
今振り返ると、あの入院があったからこそ、私はもう一度“働く意味”を考えることができたんだと思います。

にこちゃん編集長
古島さんは、復帰の時はどうでしたか?

古島さん
私は1年半の育休を経て、フルタイムで復職しました。
最初は本当に嬉しくて、「やっと社会に戻れた」「自分の時間がある」って、仕事に戻ること自体が喜びでした。
でも、現実は想像以上に大変でした。
朝は6時に起きて子どもの準備、保育園に送ってから出社して、18時にお迎え、寝かしつけまで怒涛の時間が続いて、ようやく一息つけるのは夜10時。
そこからメールを返したり、資料を作ったり、夜の2〜3時間が“自分の仕事時間”みたいになっていました。
最初の半年は「これでいい」って思ってたんですが、だんだん心も体も限界に近づいてきて。
「私、いつ休むんだろう」って、ふと我に返る瞬間が増えていきましたね。

にこちゃん編集長
働ける喜びと、現実のギャップですよね。

古島さん
そうですね。
育休前の自分と同じパフォーマンスを出したい気持ちが、自分を追い詰めていたんだと思います。
「前みたいに戻る」じゃなくて、「新しい働き方をつくる」っていう発想に切り替えられたのは、かなり後になってからでした。

牛島さん
わかる……。
私も、前の働き方に戻ろうとすればするほど、心と体が追いつかなくて苦しくなってた。
あの時は、ただ“止まる勇気”が持てなかったんですよね。

にこちゃん編集長
産後の働き方って、まさに“更新のプロセス”なんですね。
前に戻るんじゃなくて、新しく編み直す、その難しさと、そこにある希望を今の言葉から感じました。

3.仕事と家庭のバランス、夫婦のリアル

古島さん
「パパにもお願いをして、こんなに働かせてもらってる」って、謎のプレッシャーがありました。
誰にも言われてないのに、“働かせてもらってるから、つらいって言っちゃいけない”みたいな。

理想の母像にも苦しめられて、「子どもとこの時期は一緒にいた方がいいのかも」とか。
会議の合間に涙が止まらなくなって、「家事も育児も満足に回せてないのに、会社でマネジメントしてる自分って何?」と思ったこともありました。
そこからようやく、“全部抱え込むのをやめよう”と思えて、役職を降りて異動願いを出しました。

にこちゃん編集長
役職を降りるのって、大きな決断ですよね。

古島さん
はい、でも、その時はもう限界で。
「やればできる」って思い込みが一番しんどかったです。

にこちゃん編集長
いや、本当そうですよね。
私は、つわりの時が本当にどん底で、それが一つの“諦めるフェーズ”だったんです。
「死ぬかも・・・」って、人生で初めて思って、これはやばいぞって。一日中トイレで寝てたこともありました。
会議の音だけ聞きながら過ごしたりして、本当にどん底を味わいました。
そこで全部を諦めたというか、「気合いだけじゃどうにもならないことって、世の中にはあるんだ」って、初めて気づいた瞬間でした。
その時、夫は私の要望にすべて答えてくれたし、全力でサポートしてくれたのですごく夫婦のチーム力を感じました。

古島さん
めっちゃわかる。

牛島さん
私にとって、パパとの関係で1番苦しかったことは、寄り添ってもらえてない分かってもらえてないということでした。
完全に理解してもらえるとは思ってないけど、産後の私が頼りたい形で寄り添ってほしいなって。

4.夫婦の育児分担と“わかり合えない現実”

にこちゃん編集長
育児家事の分担はどうしていますか?
なんか自動的に家事や育児って自分の方に降ってくる。
パパは普通にフルで働いているし、その中で日常の分担ってみなさんどうしてるのかなと思います。

古島さん
うちは、最初は本当に半々でした。
同じ会社で同期だったから、どっちもフルで働いていて、考え方も「お金も家事も半々」が基本です。
パパは朝が強いので朝はパパで、夜は私。
朝ごはんと朝の支度、保育園への送りはパパ、夜ごはんと洗濯と明日の準備、迎えや寝かしつけは私。
双子なので、それぞれ「こっちはパパ担当」みたいな分け方もしていました。

にこちゃん編集長
今も同じ感じですか?

古島さん
今はちょっと変わりましたね。
私の働き方が変わったので、育児は基本、私がまわして、パパはより仕事中心になりました。

にこちゃん編集長
会社を辞めた後から変わったんですね。

古島さん
会社員の時は完全に半々でしたが、働き方が違うと、分担のバランスも変わりますね。
パパの仕事が夜勤とか朝早い勤務だったら、ママが全部やるしかない。
だから家庭によって全然違うなと思います。

にこちゃん編集長
確かに、パートナーの働き方によって、こっちが無理して調整するしかない時もある。
仕事を減らさざるを得ない人も多いと思います。

牛島さん
今年の夏から“朝の送り”をお願いするようにしたら、めちゃくちゃ楽になりました!
送りだけでもやってもらえると、朝の時間が40分くらい余裕ができて、本当に助かっています。

古島さん
それだけで全然違うよね。

にこちゃん編集長
確かに、夫婦の働き方って大きいかも。
私が今「大変じゃない」と思えているのは、“何かあったらパパがやってくれる”環境があるからかなと思います。それが精神的な安定剤になってますね。私じゃなきゃダメって状況はあまりないので。
「パパが在宅勤務で家にいる」ってだけで、安心します。

古島さん
誰かがいてくれるって、本当に大きい。
自分が動かないと何も進まない状況って、本当にしんどいですから。

牛島さん
でも、うちの場合は、パパが3〜4日出張でいない方が子ども達とのペースで過ごせてます。

古島さん
あー、それちょっとわかります(笑)。

牛島さん
こっちのペースで動けるし、子どもたちのリズムにも集中できます。
でもね、落ち着いた頃にパパが帰ってきて、「大丈夫そうだね」って言われると、さっきまでは違ったんだよーってなります(笑)。

古島さん
何も知らない人に言われると、「いやいや、今までの戦場を見てないでしょ!」って。

牛島さん
しかも、いるときほど調整が大変ですね。
お迎え要請があったら、どうやって分担するかを考えないといけない。パパができないってなったら自分がなんとかするしかない。
今はスケジュールを共有するようにして、だいぶ楽になりましたけど、見えるようになるまで本当に大変でした。

にこちゃん編集長
スケジュール問題、あるあるですよね。

古島さん
うちは「早いもん勝ち」。
タイムツリーに先に予定を入れた方が勝ちです(笑)。

牛島さん
私の実家が遠いので、シッターさんか、パパのお母さんに来てもらうしかなくて。
でも、それをお願いするのも結局、私の役割。
パパは予定を入れるだけで家を出れるけど、家を開けるまでの段取りが大変だなって思います。

古島さん
わかる(笑)。
でもね、この3人って「働きたい」と思ってるし、パパたちもそれを応援してくれてる方だと思うんです。
それでもイライラすることはたくさんあるけど、応援してくれてるだけ、まだ救いがありますよね。

牛島さん
応援してくれなかったら、もっとつらいと思います。

古島さん
「働かなくていいよ」「家にいて」って言われたら、それはそれで苦しい。
だから、「ありがとう」は、一応言ってます(笑)。

5.比べない子育て〜双子育児で変化したこと〜

牛島さん
出産してから本当に思うのが、「もうよそと比べるのはやめよう」ってことでした。
比べたって、羨ましくなるばっかりだし、自分の家ができていないことばかり目についちゃう、だから、もう他を見ない。
“うちはうち”って自分たちの家庭の形を意識しているところはありますね。

にこちゃん編集長
わかります、私も「比べない」って決めました。それは、双子っていうのが大きかったかもしれません。
妊娠した時点で、“比べる対象がない”と思ったんです。双子の妊娠はもう、まったく別世界。
“違って当然”って思えたのが、むしろ救いでした。

古島さん
みんなと違うことがしんどい時期もあったけど、「そもそも違うから」って思えたことで、逆に楽になったところもあります。
双子ってそれだけで、すでにちょっと“突き抜けてる”から(笑)。

にこちゃん編集長
そうそう。
周りに何か言われても、「だってうち双子だもん!」って思っていました。
「検索して出てくる子育ての感じじゃないから!」って(笑)。

古島さん
ここまで生きてきて、急に“自分のアイデンティティ”が増えることってないですよね。
“双子の親です”っていうのが突然加わる。
30歳を過ぎてから、そんな経験ができるって、すごいことだと思います。
今の自分の軸になっていて、この後の人生を変えている感じがあります。

にこちゃん編集長
働くことにも影響してますね。
双子だからっていうのもあるけど、「守らなきゃいけないもの」が一気に増えた。
しかも、それが“×2”ですから。妊娠した時に「大学の入学、同時じゃん!」って思って(笑)、お金のことが一気に現実的になりました。
働くモチベーションにもなりましたね。子どもたちの未来を考えると、“自分のために働く”だけじゃなくなる。
長期的な視点を持てるようになったのは、すごく大きかったです。

牛島さん
うちは少し特殊でして。
生まれた時から教育や進路のことをすごく調べていましたが、子ども達の発達特性があって、そこから考え方がガラッと変わりました。
「受験」とか「進学」とか、そういうことよりも、私たちがいなくなった後、この子たちの周りにどんな環境を残してあげられるか――、そっちに意識が向いたんです。
1歳半くらいから違和感があって、2歳過ぎにははっきりしてきて。
長男の発達が遅れているとわかった時、今まで見ていた世界が一気に崩れました。
でも、私はわりと切り替えられた方かもしれません。

牛島さん
いろいろ調べて、「こういう支援もあるよ」って伝えようとするけど、パパの中ではまだ“現実じゃない”みたいで、「間違いなんじゃない?」「成長したら変わるでしょ?」って。
お互いに、受け止め方が違うなって感じていますね。

にこちゃん編集長
確かに、それは経験してみないとわからないですよね。
妊娠中にわかることじゃないし、生まれてからじゃないと見えない現実も多い。
でも、そうやって「長期的に見るようになった」というのは、子どもがいるからこそ得られる視点なのかもしれませんね。

牛島さん
子どもたちはいずれ自分で生きていくと思っていたけど、その前提がなくなりました。
だから、「この子たちの人生を支える仕組み」をどう作るかを考えています。
信頼できる人、資金、環境、全部時間をかけて整えていかないといけない。
最近は、同じ立場の先輩たちの本を読んだり、勉強を始めました。
資産の残し方も含めて、いろいろ学んでいます。

古島さん
今までは私自身の人生を生きてきたけど、急に子どもの人生、ましてやそれが双子だったり、自分にはどうしようもない要素がこうやって入ってくるんだな、ってことをすごい感じています。
自分で選んで進んでいく人生だったけど、子どもが生まれて、「どうしようもないこと」が入ってきて、価値観が変わった。
だからこそ、今は「自分がやりたいことをやる」って思えるようになったんです。
周りの目とか、“これをやった方がいい”みたいな基準は、もうどうでもよくなった。
それより、「今、自分がやりたいことをやる」。
その姿を見せることが、きっと子どもたちにとっての道しるべになるかもしれないと思ったのが、私の中では大きな変化かもしれないです。

にこちゃん編集長
誰のせいでもないことが、こんなにたくさん起こるんだって思いました。
それを経験できるのは、親として生きてみたからこそですよね。

古島さん
その中で、みんな頑張って生きてる。
楽しもうとしてる人たちを見ると、「ああ、自分もやりたいことをやって楽しく生きよう」って思うんです。

6.子どもが生まれて変わった“働く意味”

にこちゃん編集長
子どもが生まれてからは、“〇〇ちゃんママ”とか“〇〇くんママ”って呼ばれるようになるじゃないですか。
私は仕事では旧姓を使っていて、仕事に復帰したときに旧姓で呼ばれた瞬間、なんか感動したんですよね。
社会に戻ると旧姓の自分に戻れる、なんかこう、違う軸で楽しめる感覚というか。
それぞれの世界で“自分”として生きるのって、どうですか?

古島さん
めっちゃいいですよね。
私も会社員のときから旧姓で呼ばれていて、それが嬉しかったのを覚えてます。
やっぱり“自分に戻れる”感じが仕事にはあります。
それがあるから働きたいのかもしれない。

にこちゃん編集長
ですよね。
子どもが大きくなったら、また働くことへの考え方も変わるのかもしれないですね。
この3人は今、みんな未就学児のママですが、小学校に上がった後の働き方って、どうイメージしてますか?

古島さん
もっと働けるようになるのが楽しみですね。

にこちゃん編集長
いいですね。すごく前向き。
牛島さんはどうですか?

牛島さん
うちは今、保育園から児童発達支援事業所に通う日が月10日あって、その時はお迎えが17時なんです。
だから、その日は16時半までしか働けない。
保育園は、延長で19時半まで預ってもらえるけど、今はそうはいかなくて。
最初はその“制限”がすごく苦しかったです。
「私はこのスケジュールの中でしか働けないのか」「子どもに合わせるしかないのか」って。
でも、それでもいいのかもしれないなって思うようになりました。
4時半まで働くというのが、私が“子どもを大切にしたい”という形のひとつなんだと思います。
小学校に上がれば生活リズムも変わるし、また働き方も変わるでしょうし。
その時々で形を変えながら、“あの子たちが安心して生活できるように”という軸で、働くことができているということが大事なのかなと思います。

にこちゃん編集長
確かにそうですよね。
守るものがあるからこそ大変でもあるし、でも、そこが原動力にもなっているんですよね。

牛島さん
制限の中でも、できることってたくさんある。
私の場合、“双子支援”の活動が仕事にもつながっているので、自分の経験を誰かのために生かせるのは嬉しいです。
子育てと仕事の時間が少しずつ重なっていくような、そんな働き方を目指してます。

7.子育てしながらのキャリアと生き方に“正解”はない

古島さん
子どもを育てながら働く人にとって、キャリアを考えるのは本当に難しい。
キャリアって見通しを立てていくものだと思ってたけど、最近は“今できることをやる”のが大事なんだなって思うようになりました。
昔は「こうなりたい」と思って頑張ってたけど、今は「これがやりたい」「これができる」ってことを積み重ねていく感じ。
13、4年ずっとロールモデルを探してたけど、見つからなかったのは、たぶんそういうことじゃないからなんですよね。
今やりたいことをやっていくことで続いていくのかなって思います。

牛島さん
キャリアって連続するものじゃないですよね。
子どもが生まれたら、キャリアが“途切れる”とか“分断される”とか言われるけど、そうじゃなくて。
20代、30代、そして今――、全部がつながってるんだなって最近思うようになりました。
その時その時の経験を、今の自分に生かせる。
そう思えたときに、「キャリア」って単なる仕事の積み上げじゃなくて、自分の“人生そのもの”なんだなって感じたんです。

古島さん
私も、会社を辞めて独立したとき、「大丈夫?」っていろんな人に言われたけど、やると決めたからには、それを正解にしていくしかないなって思いました。
だから、正解なんて最初からない。
育児も同じで、どの選択も自分が納得していればそれでいいんだと思います。

にこちゃん編集長
本当にそうですね。育児も正解がないって言われるけど、キャリアも同じですよね。

古島さん
会社に入って役職がついたから幸せ、ってわけじゃない。
自分がやりたいことをやって、切り開いていくこと、それが大事なんだと思います。

にこちゃん編集長
TOPPANトラベルサービスでは働くママもまだ少ないし、ロールモデルもいなくて。
だからこそ、自分がそうなれたらいいなって思っています。
大変なことは多いですけど、ポジティブに考えられるようになったのは、子どもがいるからかもしれないです。
もう毎日忙しいじゃないですか、落ち込んでる時間がないです(笑)。

古島さん
そうそう、落ち込んでる時って、だいたい暇なときなんですよね(笑)。
忙しいと落ち込んでる時間がない。

にこちゃん編集長
子どもが生まれてから、後悔を考える余裕がない。帰り道は晩ごはんのことしか考えてないですね(笑)。
ネガティブな思考が入り込む隙がないのは、働いてるおかげかもしれません。
仕事と子育ての両方があるからこそ、私はやっていけている気がします。
子どもとだけ向き合う生活は私には難しかったと思います。

古島さん
それができないから働いてるっていうのもありますね(笑)。

牛島さん
ほんと、しんどいですよね。

古島さん
小さいうちは言葉も通じないし、子育てって終わりがないですしね。

牛島さん
この前、交流会でママたちを見ていて思ったんですけど、託児で少し離れて戻ってきた時の顔が全然違うんですよ。
離れる時間って、愛情を育むんだなって思いました。
“ママやパパが自分に戻れる時間”って絶対に必要。その時間を支える仕組みが、もっと広がってほしいです。

古島さん
ちょっとだけ働くとか、いろんな形があっていい。
働くって、難しいことじゃなくて、“自分でいられる時間”なんですよね。一人の人として、社会と関わる時間。

にこちゃん編集長
かっこいいキャリアとか稼ぐことだけが全てじゃない。
私たちはたまたま正社員や起業って形で働いてるけど、どんな形でもいい。
親が“親じゃない時間”を持てること、それが子育てにも自分の心にもすごく大事なんですよね。

古島さん
働きやすい環境の人もいれば、そうじゃない人もいるけど、それぞれの場所で、自分のペースでいいと思います。

にこちゃん編集長
「キャリアってかっこいいものじゃない」っていう話、本当に腑に落ちました。
キャリアって、キラキラしたものでもお金や肩書きだけのものでもない。
自分が積み重ねてきたものを、自分で肯定できるかどうか、それがいちばん大事ですね。

対談を終えてーにこちゃん編集長コメントー

今回の対談を通じて、改めて「正解のない毎日」を生きる親たちの強さを実感し、
迷いながらも前に進む姿に勇気をもらいました。
子育てと仕事の両立は、思い通りにならないことや、想像を超える大変さがあるものです。
でも、その「大変さ」も、子どもと一緒に過ごす毎日だからこそ味わえる特別なもの。

「キャリア」も「子育て」も、誰かと比べるものではなく、自分と家族の“今”を大切にすることが一番。
どんな選択も、きっと誰かの背中をそっと押す力になるはずです。
これからも、働く親たちのリアルな声を届けていきます。
この記事が、「明日も少し頑張ってみよう」と思えるきっかけになれば嬉しいです。

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BTHacks編集部では、シートなどの機内プロダクトの開発担当している
ANA CX推進室 商品企画部 機内商品企画チームの牧克亘さんと
客室乗務員 天本 恵梨香さんに取材
シートの魅力はもちろん、気になる開発の舞台裏についても詳しくお聞きしました。