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2024.05.24

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生成AIとはなに?ChatGPTとの違いやビジネス活用事例を紹介

生成AIを使ったサービスが次々と登場し、私たちにとって身近なテクノロジーとなりつつあるAI技術。
最近では、企業だけでなく自治体がAIを導入しているケースも増えています。
そこで今回は、生成AIとは一体どんなテクノロジーなのかを詳しく解説。ビジネスで活用事例や活用時のポイントもご紹介します。

1.生成AIとは何か?

AI(Artificial Intelligence/人工知能)の中でも、生成AIとはテキストや画像、音声、映像などを自律的に作り出せる技術です。
まずは生成AIの特徴や、これまでのAI技術との違いについて解説します。

1-1.生成AIは「自ら学習」するのが大きな特徴

生成AIとは、大量の学習データをもとにオリジナルデータを生成するテクノロジー。
身近な例としてChatGPTや画像生成を行うDALL-Eなどがあります。
生成AIではディープラーニング(深層学習)という技術が使われているのが特徴です。
ディープラーニングとは、私たち人間の脳の働きを参考に作られた人工知能。
人間の脳にある神経細胞・ニューロンの働きを模倣して作られた計算モデル「ニューラルネットワーク」を用いてデータからパターンや法則を自発的に学習し、どんな解が最適かを導き出してくれる技術です。

生成AIを理解する上で、ポイントとなるのが自発的に学習を行うという点です。
人間のように、与えられた学習データをもとに思考し、オリジナルな答えへと辿り着けるのが生成AIとこれまでのAIとの大きな違いです。

1-2.生成AIにできること

今や生成AIは、画像生成や文章生成だけでなく、さまざまなことができるようになっています。
例えば、画像の生成、テキストから自然な音声の生成、ゲーム開発やシステム開発、チャットbotの構成、3Dモデルデータの生成などもその一つ。

最近では、Googleの「PaLM」やOpenAIの「ChatGPT」のように、人間の作る文章と同じくらい流暢で論理的な文章を生み出せる生成AI技術も登場しています。

1-3.これまでのAI技術との違い

生成AIと従来のAIの大きな違いは、学習データをもとに、適切な答えを予測するだけに止まるのか、新しいオリジナルのコンテンツを作り出せるかどうかという点にあります。
完全オリジナルなコンテンツは従来型AIでは作れませんが、生成AIならオリジナルなデータが作れるのが魅力です。

とは言え、具体的なイメージが沸きにくいかもしれませんので、実際に登場しているAI技術の例を見ながら比べてみましょう。

<従来のAI技術と生成AIの例>

・従来型AI
お掃除ロボット、顔認証システム、車の自動音声アナウンス、チャットボット、文字認識

・生成AI
画像生成やテキスト生成(テキストによる指示でオリジナルを作成)
*詳細な生成AI技術の例は2章にてご紹介します。

従来型AIでは、与えられたデータに対して正確かそうでないかを判断する識別系AIというものが大半でした。
顔認証や文字認証などがわかりやすい例かもしれません。

一方で生成AIでは人間のようにオリジナルなものを作り出せる技術であることがわかります。

2.動画や音声まで広がる生成AI技術の例6つ

すでに私たちの生活でも身近になりつつある生成AI技術。
具体的にどんな技術があるのか、ここからは詳しく見ていきましょう。
実際にビジネスシーンでも活用されているものもありますので、ぜひご自身の仕事でどう生かせるかもイメージしながらチェックしてみてください。

2-1.議事録やキャッチコピー案もつくれるテキスト生成AI「ChatGPT」や「Gemini」

生成AI技術と聞いてイメージする人が多いのがChatGPTかもしれません。
ChatGPTと同様に、テキスト生成をする生成AIには、他にもGoogleが開発したGeminiというものがあります。
ChatGPTやGeminiは、いずれもプロンプトと呼ばれる文章をもとに、自動的にテキストが生成される生成AI技術です。

例えば、ChatGPTで電車で学習する方法はどんなものがあるかをプロンプトで入力すると、「オーディオブックやポッドキャストでの学習」「電子書籍などを使った学習」「メモやフラッシュカードの作成」「オンライン学習資料の持参」などが紹介されます。また、会議の議事録作成や文書の要約などもできます。

Geminiでは、キャッチコピーの案を考えてもらったり、新しいブランドコンセプトにあったwebサイトのイメージを示すテキストを、表にまとめたりすることもできます。
また、GenimiはGoogleの最新情報を解析するため、最新の情報もアップデートされやすい点が魅力です。

ChatGPT https://chat.openai.com/
Gemini https://gemini.google.com/

<Geminiで「通勤中の勉強方法」について質問すると?>

画像出典:https://gemini.google.com/app の使用画面キャプチャ

2-2.無料で使える画像生成AI「Stable Diffusion」

無料で使えるStable Diffusionは、イギリスのスタートアップ企業が開発。商用利用可能な画像もつくりだしてくれる生成AIサービスです。
「机の上を走る猫」「笑顔で会話する女性2人」など作成したいイメージをテキストで入力すると、オリジナルの画像を生成してくれます。

Stable Diffusionをパソコン上で使うなら、「mage.space」や「Dreamstudio」などのサイトを活用するのがおすすめです。
たとえば、「mage.space」で、”cat runnning on table(机の上を走る猫)”とプロンプトを打ち込んで生成された画像は次の通り。


画像出典:Stable Diffusionにて生成

プロンプトは、日本語拡張機能もついているので気軽に利用できるでしょう。
同様の画像生成AIには、ほかにも「Midjourney」、「DALL·E 」などがあります。

「Stable Diffusion」 https://ja.stability.ai/stable-diffusion
「mage.space」  https://www.mage.space/
「Dreamstudio」 https://beta.dreamstudio.ai/generate

2-3.テキストや画像を元に動画がつくれる生成AI 「Gen-2」

今や、生成AIでは画像だけでなく動画も作れる時代になっています。
なかでもGen-2は、テキストや画像をもとに動画を生成してくれる生成AIとして注目されています。

一つ前のモデルとなるGen-1では、動画から新しい動画を生成することしかできませんでしたが、Gen-2ではテキストや画像から作れるようになっているのが大きな特徴です。

「Gen-2」 https://runwayml.com/ai-tools/gen-2/

2-4.動画のナレーション作成も簡単な音声生成AI 「Voicebox」

最近では、ニュース動画を読み上げる声もAIで生成されたものを耳にするようになっています。
このようにテキストや動画に加えて、音声も生成AIで作り出すことができます。
なかでも「Voicebox」は、クレジット表記をすれば商用でも使える無料の音声生成AIサービスです。

商用利用も可能で、どんな声にするかはキャラクターを選択して音声を作れます。

「Voice box」 https://voicevox.hiroshiba.jp/

2-5.社内資料の作成にも使える画像生成AI「Canva」

オンライン上でグラフィックデザインができるCanvaは、SNS投稿用の画像制作などで多くの方が使っているサービスです。
このCanvaでもイラストや動画を作る際に生成AI技術を活用できるようになりました。
また、作成したグラフィックデザインに入れたテキストを「カジュアルに」「ビジネスタッチに」などモードを変えてリライトまでできる充実ぶり。

社内資料の制作などで活かしてみるのもいいかもしれません。

Canva https://www.canva.com/ja_jp/ai-image-generator/

3.企業や自治体の生成AIビジネス活用事例3つ

さまざまな生成AIが登場している今、私たちビジネスパーソンも生成AIを上手に活用することでビジネスの効率化や生産性アップを目指せるようになりました。
ここからは、実際に生成AIを取り入れた企業や自治体の取り組みをご紹介します。

3-1.ChatGPTで独自のChatを開発〜ベネッセホールディングス〜


画像出典:PRTIMES「「進研ゼミ」が生成AI活用の新サービス「チャレンジ AI学習コーチ」を3月下旬から提供開始。教科の疑問を、いつでも納得いくまで質問可能に」

ChatGPTで作った自社専用のChatGPT環境(Benesse Chat)を導入しているベネッセホールディングス。
Benesse Chatでは、議事録の要約やアイデアのブレストなどに活用しています。

同社がBenesse Chatを導入した狙いには、従業員がChatGPT技術を使うことで理解を深め、検証や活用できる環境を整備する点にあるそうです。
安全性を確保するために、入力情報の二次利用をしないことや、外部への情報漏洩を防ぐ仕様とするなどの対策を講じています。

また、自社のサービスでも、生成AIを活用した「チャレンジ AI学習コーチ」サービスの提供が2024年3月下旬から始まっています。

※参考:進研ゼミ特設サイト
https://sho.benesse.co.jp/cp/newdimension/
ベネッセホールディングス プレスリリース「社内AIチャット「Benesse GPT」をグループ社員1.5万人に向けに提供開始」(2023年4月14日)
https://blog.benesse.ne.jp/bh/ja/news/management/2023/04/14_5969.html

3-2.広告制作に生成AIを活用〜コカ・コーラ〜

コカ・コーラでは「Create Real Magic」という画像生成プラットフォームを立ち上げ、キャンペーン活動を展開しています。。
こちらは、ChatGPTの開発を手掛けたオープンAI社とベイン・アンド・カンパニー社とともに作ったものです。

アメリカなどで「Create Real Magic」を使ったコンテスト型の生成画像キャンペーンを展開して自社の広報戦略に活用。
2023年12月からは、「Create Real Magic」を一般公開。無料で使えるツールとして提供しました。

このツールを使って作られた画像の一部は、同社の広告などで紹介される予定となっていて、単なる生成AIを使ったクリエイティブ制作にとどまらず、消費者も制作に参加させる取り組みが新鮮です。

また、日本コカ・コーラ社では、コーヒーブランド「ジョージア」キャンペーンの一環として、2024年2月に生成AIを使った「AIソングメーカー」をローンチ。1枚の写真からオリジナルの歌を作れる生成AI体験を通じてジョージアの世界観を消費者に伝えています。

※参考:コカコーラ社
https://createrealmagic.com/
https://mydrabu.georgia.jp/song/aimaker/

3-3.ChatGPTの導入で文書処理業務を効率化〜神奈川県横須賀市〜

生成AIの活用は、民間企業だけでなく自治体にも広がっています。
全国に先駆けて、生成AIを導入している自治体が神奈川県横須賀市。
ChatGPTを全職員に導入して、文書案の作成・分析・アンケート設問案の作成などに活用しています。

職員向けに「ChatGPT通信」を発行し、業務効率化に向けた使い方などを周知する取り組みを実施した結果、文章作成事務にかかる時間が、年間2万7,200時間削減できたという報告もあります。

横須賀市のアプローチは、これから生成AIを活用しようと検討している管理者や経営者にも参考になるところが多く、注目したいところです。

※参考 自治体AI活用マガジン(運営・横須賀市)より
https://govgov.ai/n/ne881d5423a64

4.生成AIをビジネス活用する際のリスクと注意点

業務効率化などで活用メリットの大きい生成AI。
ただし、活用にはさまざまなリスクもあり、企業として導入する際にはどんなリスクがあるかを知っておきたいところです。

例えば、生成AIに対して指摘されている主なリスクとしては、

・誤情報の利用(ハルシネーション問題)
・情報漏洩
・権利侵害
・生成AIの質チェックやファクトチェックの負担

などがあります。
最後に、一つ一つのリスクについて理解を深めてみましょう。

4-1.ビジネス損失にも繋がりかねない「誤情報の利用」

生成AIによって作られる情報やデータは、必ずしも正確で安全なものとは限りません。
元となるデータが誤情報だったり、信憑性の低いソースを参考にして作られた文章や映像・画像であるリスクはゼロではありません。

生成AIの作り出した情報は、信頼性という点で注意が必要だという点は忘れてはいけない事実です。

誤情報を鵜呑みにしてしまい、そのまま業務に活用すると大きなビジネス損失に繋がりかねません。
利用者側としては、生成AIの導き出す答えは正しいとは限らないという認識で、ファクトチェックなどもする必要があるでしょう。

4-2.企業の信頼を保つためには絶対に避けたい「情報漏洩」

また、ビジネスで活用するにあたり、情報漏洩や権利侵害のリスクも考慮する必要があります。
たとえば生成AIに打ち込んだ情報が機密情報だった場合、その情報がAI学習に利用されてしまい、他ユーザーが利用した際に生成・表示されてしまう可能性も。
利用時には、機密情報やコードなどの入力は避けるのをお忘れなく!
生成AIを活用するリテラシーとして、念頭に置いておきましょう。

4-3.意図せずしてしまっている可能性もある「権利侵害」

生成AIが文章や画像などの情報をディープラーニングすることが、著作権侵害や無断利用にあたるケースもあります。
また、商標権に関しても生成AIで出力されたものが、すでにある商標に似ている場合、権利侵害とされてしまうケースもゼロではありません。

対策としては、生成AIで作られたものが著作権の権利侵害となった場合、法的責任を負うと発表しているAI会社の作ったサービスを利用するのも一つの手。

生成AI著作権リスク補償があるサービスには、Google Cloud、Google Workspace、Copilo、Fireflyなどがあります。

4-4.生成AI活用リスク「質チェックやファクトチェックの負担」

ここまで見てきたように、生成AIには権利侵害や誤情報の利用などのリスクがあり、こうしたリスクを回避するための質チェックやファクトチェックが新たな業務として生じてしまいます。

生成AIで作り出した文章や映像、画像の品質や誤情報が含まれていないか、などをチェックするのはとても大変な作業です。
結果的に、「生成AIで業務を効率化しようとしたのに、かえって業務負担が増加した」というケースもあるのが現状なのです。

もちろん、生成AIはアイデア出しや思考の壁打ちなどをする上でとても役立つ相棒となり得ます。
ビジネスで活用する際には、こうしたリスクも踏まえながらどう使いこなせばいいかを検討することが大切です。

生成AIの登場による社会問題「誤情報やプロパガンダの拡散」

簡単に画像や動画、テキストなどが生成AIで作れる時代になっている今。
生成AIがあるが故の社会問題も広がっています。

例えば、生成AIの登場でディープフェイク映像を作ることが簡単になり、性犯罪や詐欺、プロパガンダなどに利用されてしまう例も多くあります。
また、生成AIによりフェイクニュースが量産され選挙活動や民主主義に悪影響を及ぼしてしまう例も、残念ながら増えています。

今後、ビジネスのリスク管理をする上で、生成AIの登場による新たな問題にも注意していく必要があるでしょう。
情報の受け手としても、冷静に判断し、フェイクニュースや誤情報を見抜くリテラシーが問われる時代になっています。

生成AIはビジネスを加速させる便利なツール!!まずは使ってみよう

生成AIは、一昔前までは考えられなかったことまでできるようになっている新しい技術です。
クリエイティブな仕事をより効率的にこなし、思考の幅を広げたりと活用の幅はどんどん広がっています。

ビジネスで活用するためには、どんなことができるのかを理解するのももちろんですが、リスクもしっかり踏まえた上で、まずは「使い慣れてみる」のがおすすめです。
無料で使えるサービスもありますので、まずはどんなことができるのか実際にご自身で手を動かして生成AIとは何かを体感してみてください。
きっと、その先に新しい仕事の進め方が見つかるはずです。

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