ビジネス基礎知識

2024.08.19

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「おひたし」をビジネスで使おう!部下からの報連相への対応のコツ

「おひたし」は、マネジメントを任されるようになったビジネスパーソンなら知っておきたいビジネススキルを表す言葉です。
部下やチームメンバーからの報告・連絡・相談(ほうれんそう)に対応する基本姿勢となるおひたしは、チームビルディングや部下育成・教育にも役立ちます。
「おひたし」とは何なのか、コミュニケーションのポイントや使えるシーンをご紹介します。

1.ビジネスにおける「おひたし」とは?


ビジネスシーンで使われる「おひたし」とは一体何なのか、言葉の意味をまずは解説します。
「おひたし」には、マネジメントや部下の育成、チームビルディングのヒントが詰まっています。
管理職なら日頃から意識しておきたいポイントを、チェックしてみましょう。

1-1.「おひたし」は報連相への対処の基本姿勢4つ


画像:筆者作成

ビジネスにおける「おひたし」は、チーム内や部下と上司間で欠かせない報連相(ほうれんそう)に対応する基本姿勢を表す言葉です。

「お」怒らない
「ひ」否定しない
「た」助ける
「し」指示する

の4つの姿勢の頭文字をとり、おひたしとまとめています。

例えば、悪い報告があったときに、まずは怒らずに話を聞く姿勢があれば、報告する側も心理的ストレスが少なくなり、報告しやすいチーム環境が作れます。
まずは「おひたし」の姿勢で部下と接することができていたか振り返ってみましょう。
それぞれの具体的な事例やシーンは後半にご紹介しますので、ぜひチェックしてくださいね!

1-2.「おひたし」を意識すれば報連相がうまくいく!?

管理職になると、ついつい日々の忙しさから部下やチームメイトからの報連相に対してぞんざいに対応してしまうこともあるかもしれません。
その気はなくても「あの対応はよくなかった」と後から反省した経験がある方もいるのではないでしょうか?

部下からの報告の受け止め方を間違えれば、チームの雰囲気を悪くして、報連相がうまく回らない組織になってしまいかねません。

マネジメントする際には「おひたし」の姿勢を意識してみることが大切です。

1-3.部下育成に悩む人も「おひたし」が解決のきっかけに

部下の育成や教育でもマネジメントする側が「おひたし」を意識することで成長を促せます。

たとえば、怒らないことでモチベーションの高い組織環境を作りやすくなり、否定しないことでチームメンバーが自由に意見や考えを発信できる生産的な組織になります。
また、部下が必要とするタイミングを見計らって助けることができれば、部下の成長を後押しできます。
何か業務を指示する際にも、チームの方向性が定まっていれば指示の内容にも納得感が生まれることでしょう。
指示の仕方を工夫することで、部下が自ら思考する素地を作れるかもしれません。

部下の成長が加速すれば、チームのパフォーマンスも上がり、より一層マネジメントしやすい組織が生まれます。

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2.シーン別「おひたし」の活用事例

「おひたし」の基本的な考え方はわかったけれど、どんなシーンで活用するべきなのかイメージがわかない人もいるかもしれません。
ここからは、「おひたし」がどんなシーンで必要になるのか、具体例も交えながら活用の仕方を一つひとつ見ていきましょう。

2-1.「お(怒らない)」が求められるシーンとコツ

部下の報告や相談に「怒る」と部下が萎縮して意見を言えなくなってしまいます。
それだけでなく、報告や連絡・相談が滞ったり、チームの空気が悪くなったりして組織の雰囲気が悪くなります。
また、上司自身も部下からの信頼が醸成できなくなり、負のスパイラルに陥ってしまいます。

こうした状態にならないようにするコツは、マネジメントをする際にチームで「怒らない」ことを意識してみましょう。
怒る、という表現はとても感情的な表現方法です。
怒らないように意識すれば、結果的に感情的な判断ではなく根拠ある判断で意見を言っていることが伝わり、部下の中でも納得感が醸成できます。

上司が「何を報告しても怒られない」「まずは受け止めてくれる」ということが分かれば、部下からのほうれんそうが上がりやすくなります。

<怒らないコツ>

怒らないようにするコツは、

・感情的、反射的に部下からの言葉や報告に反応しないこと

対面であれば、6秒待ってから言葉を発することで冷静になれると言われています。
自分が怒りやすいと認識している方は、6秒ルールを意識して、まずは、部下の話を最後まで聞くことを意識してみましょう。
言葉を遮らないことは、部下にも圧迫感を感じさせないことにもつながります。

【たとえばこんなシーン】
発注していた資材の納期を確認するのを忘れてしまい、明日必要な現場に資材が届かないかもしれない!

<怒ったら>
「部長はきっと怒るはず……自腹で間に合わなかった資材を購入して誤魔化そう」と部下が考えてしまうかも。
結果的に、怒ることで部下の不正やミスの隠蔽がはびこる組織になってしまうリスクが生じます。

<怒らなかったら>
部下の気持ちは、怒られる恐怖感がなく「まずは部長に相談してみよう!早く相談すればきっといい対処法が見つかるはずだ」と報告がスムーズに。
トラブルへの早期対処が可能になります。

2-2.「ひ(否定しない)」が求められるシーンとコツ


部下やチームメイトの意見を否定する組織では、次のようなことが起こりえます。

・自由な発想での意見が言い合えず、挑戦できない組織になる
・否定されることが続けば、部下やチームメイトのモチベーションが低下する
・「どうせ認めてもらえない」と組織へのロイヤリティが低下し離職率が上がる

だからこそ、部下やチームメンバーからの意見は、まず「否定しない」を意識することで、組織が大きく変わります。
「まずは自分の意見をぶつけてみよう!」というやる気のある人材のモチベーションを高められますし、たとえ間違っていても、自分の意見をまずは聞いてくれたという気持ちが残ります。
結果的に、部下と上司間の信頼関係が醸成できるでしょう。

<否定しないためのコツ>
間違っていても「そうだね、だけど〜」というように一度受け止めてから、正しい方向に修正できるように話をしてみましょう。
相手は「否定された」という印象がなくなります。

【たとえばこんなシーン】
新しい営業戦略を考える会議で部下が、予算が大きく必要になりそうな広告とノベルティをセットにした販促プランを提案してきた。

<否定したら>
「上司は自分たちのいうことを聞いてくれない」「だから売り上げが伸びないんだ」と不満が渦巻く温床に。
営業成績がふるわなかったりすると、「あのとき自分たちのアイデアを採用しなかったからだ」と組織や会社のあり方に疑問を抱くようになってしまうかもしれません。

<否定しなかったら>
まずは、それは実際にやってみたいプランだと伝えつつ「今回の営業戦略で使える予算は、〇〇円」と具体的に伝える。その上で、実現するためには予算を大幅に上回る額が必要になること、もっと費用対効果が良い戦略を考えないか?と方針を提案してみましょう。

組織の状況や、費用対効果が戦略には必要であることが部下にしっかりと伝えられます。

2-3.「た(助ける)」が求められるシーンとコツ

マネジメントをするにあたって、特に難しいのが「助ける」ことです。
なぜなら、適切なタイミングで手を差し伸べることは、日々部下の状況をきちんと把握していないとできないことでもあるからです。

日頃から部下の言動や様子に気を配り、もしも何かに悩んでいそうなら、声をかけてみましょう。
悩みを伝えてくれれば、適切なタイミングでサポートできるかもしれません。

また、直接何に悩んでいるのかを聞く以外にも、助けが必要な部下の状況を察知する手段はあります。

たとえば、

・営業成績が伸び悩んでいる
・資料の作成にいつも以上に時間がかかっている
・残業が多い
・遅刻や欠勤が増えている

などは、部下が助けを必要としているサインかもしれません。
年次が部下と近い先輩社員やメンター役の社員に様子を聞いてみるのも効果的な把握方法です。

誰しも仕事がうまくいかないとき、打開策を自分で見つけるのは難しいもの。
できないから仕事を取り上げるのではなく、「助ける」ことで自分でできるようになる方法や道筋を学び、成功体験に繋げてあげましょう。

<最適なタイミングで助けるためのコツ>

部下の様子がおかしいと感じたり、「悩んでいるな、行き詰まっているのでは?」と感じたらまずは声をかけてみましょう。
また、状況報告や把握に時間がかからないよう、チーム間のやりとりで使うチャットやメールには必ず入れてもらい、日頃から共有できる体制にしておくのもおすすめです。

【たとえばこんなシーン】
部下に頼んでいたプレゼン資料の作成がなかなか進んでいない様子。進捗の報告もなく、どうなっているのかわからない。

<そのまま放置したら>
部下が悩んで残業時間が増えてしまったり、締め切りを過ぎてもプレゼン資料が完成しないかもしれない。

<助けたら>
「資料の作成は順調?」「途中でもいいから、それを元に一緒に次のプレゼンの打ち合わせをしよう」などさりげなく声をかけてみましょう。
真面目な部下ほど「困っていない?」と聞いても「大丈夫です」と誰かに頼らずに自分でなんとかしようとしているかもしれません。

相談してもらおう、ではなく一緒に考えるという視点で寄り添うのも良いでしょう。

2-4.「し(指示する)」が求められるシーンとコツ

「おひたし」のなかでも、指示することは「助ける」ことと同様に難しいと感じるマネジメント層は多いもの。

指示の仕方が一方的になってしまえば、上司から強制されていると感じる部下も出てくるかもしれません。
また、指示内容があいまいだと誤解が生じるリスクも。あとから「そうじゃなくて……」と伝えても、相手は「指示された通りにやったのに」と不満を抱いてしまうリスクがあります。

部下からの報連相を受けて、何か指示をする際には次のようなポイントを意識してみるといいでしょう。

<部下に適切に指示するためのコツ>

部下に指示をする際には、まず指示内容の方向性にブレがないかを常に意識することが大前提です。

また、部下の経験や能力に合わせて指示の仕方も変えてみましょう。
仮に技量や経験が足りない部下に対して何かを指示するなら、より具体的かつ明確に伝えましょう。
ただ指示を伝えるだけでなく、目標や目的も共有するのが理想です。
今なぜ必要なのかも根拠を持って説明できるようにしておくと良いでしょう。

【たとえばこんなシーン】
進行が遅れているプロジェクト。予定通り進めるために、スピードアップしなければならない。他の業務より優先してプロジェクトに力を入れて欲しい。

<頭ごなしに指示したら>
「なんで遅れているんだ」「予定通りに追いつけ!」と叱咤激励したつもりでも、進行が遅れているのには理由があるかもしれません。
部下の不満が蓄積し、チームの雰囲気が最悪になってしまう可能性大。

<適切に指示をするなら>
まず、進行が遅れる前に対処することが何よりも大切です。
「予定より遅れそうになっていますが、何がうまくいっていないのか、困っていることがあれば報告してください」とボールを投げてみましょう。
その上で、進行が遅れている理由が明らかになったら「それではまず、これを優先して取り組んでみてください。完了の目標はいついつです」と具体的に指示を出してみましょう。

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3.部下育成にも役立つ「おひたし」以外のビジネススキル

「おひたし」に加えて、管理職ポジションにいるなら、知っておきたいマネジメントスキルは他にもあります。
ここでは部下のマネジメントやチーム作りに役立つ「こまつな」と「ちんげんさい」という2つのビジネススキルをご紹介します。
「おひたし」と合わせてチェックして、明日からの仕事に活かしてみましょう。

3-1.部下のモチベが下がっているサイン「ちんげんさい」


画像:筆者作成

部下のモチベーションや士気が下がっているサインとして、

・沈(ちん)黙する
・限(げん)界まで報告や相談をしない
・最(さい)後まで我慢してしまう

という3つの兆候があります。

「ちんげんさい」な状態が続けば、仕事へのモチベーションが高まらないだけでなく、仕事を辞めてしまうかもしれません。

部下が育たないと悩んでいる人は、部下がこんな状態になっていないか今一度振り返ってみましょう。
部下が育たないのではなく、部下が育つことのできない環境を自分が作ってしまっているのかもしれません。

心当たりがある人は、あらためて「おひたし」を意識して部下とのコミュニケーションを構築し直してみることが、マネジメントの第一歩となります。

3-2.部下の成長をアシストする「こまつな」


画像:筆者作成

真面目な部下や、頑張り屋さんな部下ほど陥りがちなのが「うまくいっていないけれど、何とか自分の力で乗り切ろう」としてしまうこと。
相談する・頼ることもビジネススキルの一つですが、真面目な人ほどこうしたアクションを取れないケースが多いものです。

部下が上司や周囲に相談する前に1人で悩み続け、パフォーマンスや成果につながっていない場合は、

・困(こま)っているときは
・使(つか)える人に
・投(な)げる

という「こまつな」のアプローチで部下の仕事をアシストしてあげましょう。

上司から部下に「困っているなら〇〇さんに相談してみよう」「〇〇さんにもチームに入ってもらい、やり方を学んでみて」とさりげなく背中を押すのもいい方法です。

また、部下が自ら「困ったときに頼ることはいいことである」という「こまつな」的アプローチができるようになれば、成長スピードもぐんと上がるはずです。

おひたしを意識してチームマネジメントとビジネスを成功に導こう!

「おひたし」は、ビジネスをする上でいつもの自分の行動を振り返るきっかけにもなるキーワードです。
部下と上司の間に挟まれ、組織をマネジメントするようになると、「どうすればチームがうまく回るのか」を日々模索している方も少なくないことでしょう。
そんな方は、ぜひ明日から「怒らない」「否定しない」「助ける」「指示する」の4つのキーワードを意識して1ヶ月行動してみましょう。
きっとチームにも少しずついい変化が出てくるはずです。
ビジネス成功の大きなポイントは、チームがうまく回っていくことです。
プロジェクトを一歩前に進め、ビジネスが大きく飛躍するために「おひたし」を活用してみてくださいね!

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