ビジネスを円滑に進めるために、仕事の関係者を招いて行う「会食」。
みなさんは、お客様をもてなす際のマナー、招待されて出席する際のマナーを、しっかりと把握できているでしょうか。
この記事では相手に覚えておきたい会食のマナーについて解説していきます。
マナーを知っておけば取引先との会食の際に、相手に良い印象を与えられ、ビジネスが成功する可能性が高まるでしょう。
1.ビジネスにおける会食とは
この章では、そもそも「会食」とは何なのかを紐解いていきます。
ビジネスにおける「会食」の意味や目的、また内容が混同されやすい「接待」との違いについて、詳しく解説します。
1-1.会食とは「人が集まって食事をすること」
「会食」というと、ビジネスやフォーマルな場というイメージを持つ方もいるかもしれませんが、2人以上の集まりであれば、友人や家族との食事も「会食」に含まれます。
食事をすることで親睦を深め、信頼関係を築くことを目的としています。
とはいえ、ビジネスシーンで使われる「会食」は、参加者も基本的にビジネス関係者なので、仕事の一環であることは忘れずに、最低限のマナーを守ることが必須となります。
ビジネスにおける会食は、お客様に対して感謝の気持ちを表すだけでなく、これからも良好な関係を維持し、交渉や商談をスムーズに進めていくための下地作りの意味合いがあります。
ただ集まって食事をするという本来の意味での「会食」とは少し違うということを覚えておきましょう。
1-2.会食と接待の違い
会食と混同されやすい言葉に「接待」があります。
「接待」とは「お客様をもてなす」という意味合いがあり、一個人で行うのではなく、会社や組織を代表して出席するため、接待自体が組織や個人の評価に直結する場合があります。
また、接待は食事だけでなく、ゴルフや旅行などで実施されることもあるため、幅広い「食事」という意味合いの「会食」とは似て非なるものとなります。
なお、「接待」という言葉自体は、近年コンプライアンス上の問題からあまり使われなくなり、ビジネスシーンにおける「会食」が接待の意味をなしているケースが多いです。
2.ビジネスを成功に導く会食の心得
仕事の一部として行われる会食ですが、慣れていない方にとっては作法が難しく、ハードルが高いと感じるでしょう。
しかし、「取引先に喜んでもらいたい」という気持ちがあれば、会食のマナーはそう難しいものではありません。
会食でのマナーで相手に好印象を与えれば、ビジネスパーソンとしての評価も上がり、おのずと仕事の成功にもつながります。
この章では、会食時に心得ておきたい2つの心得について解説していきます。
2-1.作法よりも相手が喜ぶことは何なのかを考える
マナーや作法ばかりに気を取られて、相手の気持ちを考えられないのは本末転倒です。
気持ちのこもっていないマナーを徹底しても、相手に好印象は与えられないでしょう。
例えば、会食には「席次」というお客様への敬意を示す決まった席順がありますが、
「眺めの良い席がいい」
「隣に座りたい相手がいる」
などのようにお客様が席を希望した際は、柔軟に対応することこそがマナーと言えます。
また、会の最後に手土産を渡す場合も同じことが言えます。
人によってはそれが苦手な食べ物であったり、帰りに荷物になって困ったりするといった場合もあるので、相手の迷惑にならないよう食の好みや大きさ、重さなどを配慮することもマナーです。
相手に合わせて臨機応変に変えていき、相手が望むことを提供することが、会食におけるマナーであり礼儀です。
2-2.会食の目的を認識する
会食や接待の最終目標は、会社や自身の収益をあげることです。
ビジネスマンであれば、おもてなしをして、なんとか仕事に繋げたいと思うのではないでしょうか。
したがって、相手との信用や信頼をより一層深く築くために出来ることを考えながら、事前準備をし、会当日に臨みましょう。
3.会食の事前準備
気持ちのこもったおもてなしをするには、事前の準備が大切。
会食に招待する約束が決まったら、速やかに準備に取り掛かりましょう。
では、何を準備すればよいのでしょうか。
この章で詳しく解説します。
3-1.相手に適したお店を選ぶ
相手の食の好みやアレルギーの有無は必ずリサーチしておきましょう。
ビーガンやお酒が飲めない人がいる場合の対応なども考えておく必要があります。
また、近年はグローバル化が進み、取引先相手が外国人の場合も珍しくないため、信仰している宗教によって食べられないものがある可能性があります。
お店の雰囲気やアクセスの良さ、個室の有無などもこだわりましょう。
相手の好みなどを配慮せず、とりあえず高級な店を予約しておけば大丈夫、というものではありません。
候補をいくつかリストアップし、口コミなどをチェックしたり直接お店に問い合わせをしながら候補を絞っていくのが良いでしょう。
さらに細かいところまで配慮するのなら、
・完全禁煙かどうか(喫煙所の有無)
・車で来店した場合の駐車場有無
・店舗前に車が一時停止できる場所があるか
なども把握しておくと、その気遣いが好印象を与えられる可能性があります。
もし時間に余裕があるなら、候補のお店に実際に足を運び、お店の雰囲気や料理の味、接客レベルなどを確認しておくと安心です。
3-2.間違いがないよう予約をする
会場となるお店が決まったら予約の電話をします。
予約する際は、以下の基本情報は間違いのないよう伝えましょう。
・日時
・人数
・コース内容
・アレルギーの有無
予約時にここで「会食で利用します」と伝えておくと、お店側と事前に打ち合わせができたり、セッティングなどを細かく配慮してくれたりする場合があるので、利用目的は伝えておくとよいでしょう。
また、ネット等で調べきれなかったお店に関する情報は予約時に質問し、疑問を解消しておくことが大切です。
そして、お店の予約が取れたあとは、参加者への連絡も忘れずに行いましょう。
連絡する際には、以下など詳細を記載してメールを送ります。
・日時
・店名
・お店までの最寄り駅や先様からのアクセス
・お店のURL
・予約名
3-3.話のネタを準備する
会食で相手に良い印象を与えるには、会話の内容や質も重要です。
いま話題のニュースや経済・社会情勢などを把握してくのはもちろん、相手の会社の情報を得るための質問などトピックを準備しておきましょう。。
また、商談などで得た相手の情報を整理しておくと自然な会話につながります。
例えば、先日、相手から「ドイツに出張する。現地での仕事が終わったらサッカーの試合を見に行く」と聞いていた場合は、
・ドイツ出張はどうだったか
・サッカーは見れたか
と質問してみましょう。
その際、ドイツのサッカーリーグ・ブンデスリーガや現地の有名なサッカー選手について調べておくのも手。
話題が広がるうえ、「話を覚えておいてくれた」と好印象を与える可能性がありますよ。
3-4.場に適した服装を選ぶ
ビジネスにおける会食での服装は、基本は男女ともにダーク系のスーツで、シャツは清潔感が出るよう白を選ぶことがおすすめです。
女性の場合は、ジャケットのボタンはすべてとめて、スカートの丈はひざより下のものが好ましいです。
アクセサリーは小ぶりで控えめなものを選ぶのが無難でしょう。
ただ、業界によって好まれる服装は違いますので、「清潔感」と「上品さ」を意識したコーディネートであれば、どのような集まりにおいても好印象を与えられるでしょう
他のマナーとしては、ゲストよりも高級なものを身に着けないことや、香水や香りの強い整髪料、服の柔軟剤の香りなど、食事の邪魔になるような匂いには注意が必要です。
4.会食当日の流れとマナー
会食のマナーは、経験が少ない人にとっては分からないことが多く、不安に感じる方も多いでしょう。
その不安を少しでも解消するべく、当日の流れや入店後のマナーにおける重要なポイントをまとめました。
覚えておくと、出張先や会合の食事など様々なビジネスシーンでも役に立つので、ぜひ参考にしてみてください。
4-1.入店前
まず、遅刻は絶対にないように、時間に余裕を持ってお店に到着するようにしましょう。
お客様より先に到着し、お出迎えをするのがマナーです。
途中で合流し、一緒にお店に向かう場合もありますが、その際はお店に到着したら「お先に失礼します」と断りを入れてから準備をした担当者が最初に入店し、お店の人に社名や名前を伝えます。
そして、席に通されたら取引先、自社の上司の順で座っていただくのが基本的な流れです。
このとき、多くの場合はお店側が丁寧に案内してくれるので、お店の方に任せましょう。
4-2.席次
ビジネス上の会食において、注意すべきマナーが「席次」です。
複数の人で集まる場合、それぞれが座る位置にも序列があるのです。
基本的には、出入口から一番遠い席が上座、出入口に近いほうが下座になります。
よって上座にお客様、下座に社内の人間が座ります。
レストランや和室、円卓などすべて同様となっており、料理は上座から提供されていきます。
ちなみに席次は食事に限らず、会議室や応接室でも同じマナーなので覚えておきましょう。
4-3.注文~食事中
食事がスタートしたら、飲み物や料理など相手の箸の進み具合に気を配りましょう。
飲み物は3分の1ぐらいになったらお酌をし、必要に応じて追加で注文を頼みます。
食事の注文は接待する側の末席の人が担当します。
なかには、三手で箸の上げ下ろしをする、乾杯のときは目上の人のグラスより低い位置でグラスを持つといった、しっかりと気を配っていないと忘れてしまいそうなルールもあります。
完璧にこなそうとせず、できるところから身に着けていきましょう。
なお、会食中にスマートフォンを操作するのは印象が良くないので、カバンなどにしまっておいてくださいね。
4-4.会計~お見送り
食事が終わり、お会計のタイミングになった際、支払いは相手に見えないところで済ませるのがマナーです。
お店から伝票が届く前に席を外して支払いを済ませましょう。
また、帰りにタクシーの手配が必要な場合は、会食が終了する前に手配を済ませておけば、スムーズに案内できます。
タクシー代やタクシーチケットを相手に渡すときは、封筒に入れて準備しておくと好印象です。
そして、退室・退店の際はお客様に先に出てもらい、それに続くのがマナーです。
お見送りは、お客様が見えなくなるまでお辞儀をするのがマナーなので、最後まで気を抜かないようご注意ください。
5.会食後のお礼
会食は、相手をお見送りしたあともまだ終わっていません。
最後にお礼の連絡を入れて、お客様とより良い関係を築いていきましょう。
伝え方はメールでも電話でも構いませんが、この章ではお礼メールのマナーをご紹介します。
5-1.メールを送るタイミング
お礼のメールは、会食が終わったらすぐのタイミングで、招待をした側もされた側も送るのが基本です。
ただし、会食の翌日が休業日の場合は、次の営業時間中に送りましょう。
例えば、土日が休業日の会社が金曜日の夜に会食した場合、月曜日に送ります。
万が一、お礼のメールを送るのが数日空いてしまった際には「お礼メールが遅れたことに対するお詫び」を添えておくと印象が下がる心配はありません。
5-2.招待を受けた側のお礼メールの内容と例文
招待された側の方は、メールで一緒に食事をしてくれたことへの感謝を述べましょう。
内容は
・挨拶
・お礼
・接待時のエピソード
・感謝の気持ち
などを盛り込むのが基本です。
上記に加えて「会食時の会話の内容」や「利用したお店や料理の感想」を加えると好印象ですよ。
お礼メールの例文をご紹介します。ぜひ作成の参考にしてみてください。
昨夜はお忙しいなか食事会にお誘いいただき、誠にありがとうございました。
すっかりごちそうになってしまい、重ね重ねお礼を申し上げます。
コースの料理はどれもが飛び抜けておいしく、感動しきりでした。
仕事とはまた違った雰囲気の中、○○様をはじめ皆様と楽しい食事ができましたこと、本当に嬉しく思います。
機会がございましたら、後日お返しなどをする機会をいただけたら幸いです。
今後とも何卒、宜しくお願いいたします。
5-3.招待をした側のお礼メールの内容と例文
招待した側のお礼メールでは、相手が貴重な時間を割いて来てくれたことへの感謝を伝えることが大切です。
内容は基本的な挨拶に加え、
・ご足労のお礼
・不手際のお詫び
・今後の意気込み
などを盛り込むのが、会食のお礼メールならではのポイント。
「不手際のお詫び」は、実際に不手際がなかったとしても相手を気遣って一文入れておくのがマナーなのです。
お礼メールの例文はこちらです。
ぜひ作成の参考にしてみてください。
昨日はお忙しいなか弊社主催の食事会にご参加いただき、誠にありがとうございました。
○○様をはじめ、皆様と楽しい食事ができ、大変に有意義な時間となりました。
メールにて失礼かとは存じますが、昨日の食事会のお礼申し上げます。
今後とも変わらぬご交誼をいただきますよう、何卒宜しくお願い申し上げます。
まとめ:会食のマナーを実践して有意義な会食にしよう
会食は、事前の準備や配慮すべきマナーがたくさんあり、苦手に感じる方も多いかもしれません。
しかし、何より大切なのは「相手が何をしたら喜んでくれるか」を考えて、臨機応変に対応することです。
これを踏まえたうえで、会食における細やかなマナーを身に着け実践すれば、取引先などの相手も気持ちよく過ごせより良い関係を構築できるでしょう。
さらに、有能なビジネスパーソンとして評価されるかもしれません。
ビジネス成功への近道のために、この記事をぜひ参考にしてみてください。
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