ビジネス基礎知識

2025.06.10

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海外企業と商談を成功させるには?マナーや習慣の違いについても解説

海外の企業と商談を成功させるためには、どのようなことに気をつけるべきでしょうか。
文化やものの考え方が違えば、ビジネスの習慣も変わるため、日本流の商談の進め方では通用しない場合も少なくありません。
この記事では、商談に対する海外企業の認識や商談の一般的な流れ、ビジネスマナーを解説。
国別に注意しておきたいポイントなどもまとめてあるので、海外企業と商談の予定がある人はぜひ参考にしてくださいね。
 

1.海外での商談に対する捉え方


 
海外企業との商談に臨むとき、日本企業と商談するのと同じスタンス、同じやり方ではうまくいかないことがあります。
商談の成功に結びつけるためにも、海外で一般的とされている商談とは何かをある程度知っておきましょう。
この章では、海外で認識されている商談のとらえ方について解説します。

1-1.海外では商談とは契約締結を意味する

日本で商談と言うと、お互いの条件やプロジェクトに関する内容のすり合わせなど、契約の内容を確認するためのミーティング要素が非常に強い傾向にあります。
打ち合わせを何回か行い、双方が合意した上で初めて契約を締結するのがビジネスの慣例であるため、意思決定までに時間がかかります。
 
一方、欧米などを始め海外で捉えられている商談では、ミーティングが契約を結ぶことに直結します。
契約内容の確認やプロジェクトの進行予定などは、電話やメール、オンラインミーティングなどで契約締結前にある程度行っておくのが一般的です。
また、商談に臨む担当者本人に、商談の決定権が与えられています。
交渉がうまくいかない場合に、いったん持ち帰り社内で上司と協議したり、先方の責任者と話したいと持ちかけたりすることはありません。
 

1-2.お互い対等の立場で商談を行う

海外では、売り手も買い手も対等の立場です。
「お客様は神様」という考え方は海外には存在せず、日本の商習慣で見られるような買い手の方が有利ということはありません。
商談の場で購入量を増やす代わりに値段を下げるよう持ちかけたり、想定価格以下にならないよう法外な値引きは拒否したりなど、お互いに利益が確保できるよう交渉するのが一般的です。
 
また、契約内容に記載されていないことについては、対応を断られます。
したがって契約内容の見直しが必要になる場合は、いったん破棄した上でやり直すことが一般的です。
そのため、商談の際には齟齬がないよう入念にすり合わせを行うことが重要です。
 

コラム:海外企業との商談が失敗した実例
日本でのビジネス慣習をそのまま海外企業との商談で使ったり、すり合わせ不足のまま契約書にサインしてしまうと、あとからトラブルが起こったときに取り返しがつかなくなることもあります。
ここでは、失敗した例を見てみましょう。

【失敗例1度を超えた要求に対し契約解除】
海外企業A社が開発・販売する製品を国内で販売する契約を締結した日本企業B社。
B社はA社に対し、商品発送の進捗を逐一報告するよう求めたり、日本市場独自の製品に無償で作り替えるよう働きかけたりと、契約書以外の対応にも応じることを要求。
当初は、大口顧客であるB社の要求に応えていたA社だったが、人件費が膨れ上がり赤字に。
これ以上の契約外の要求には応えられないことを数ヶ月に渡りA社が警告したにもかかわらず、B社の態度は改まらなかった。
A社は、契約違反を理由にB社との契約を解除。

【失敗例2・製品納入後の不払い】
アジアの企業C社に製品を納入した日本企業D社。
契約書に記載された仕様通りに作った製品にもかかわらず、ニーズを満たしていないと支払いを拒否された。
トラブルが起きて不払いになった場合どのように対処するか、を契約書では取り交わしていなかったため、D社が泣き寝入りする形に。

 

2.海外での商談の流れ


 
海外と日本では、ビジネスの慣習が異なるため商談のやり方も変わります。
したがって、海外企業と商談をする前には商談の流れについても理解を深めておくと、役に立ちます。
ここからは、欧米など海外で商談を行うときの一般的な流れについて解説します。
 

2-1.商談前の準備

海外では、商談前の準備を下記のように進行することが多いです。

1)契約内容の確認
メールや電話などで、契約内容やスタート時期など契約内容を確認します。
近年ではオンライン会議で、商談前に先方と打ち合わせたりすることも増えています。

2)商談に必要な書類を揃える
先方と実際に会って商談をする前に、契約書作成やプロジェクト進行表など契約成立に必要な書類を揃えます。
場合によっては弁護士などを交えて作成することもあるため、準備に時間をかける企業が少なくありません。

3)アポイントを取る
契約やプロジェクトなど、契約の内容がある程度固まったら商談のアポイントをとります。日本でかつて行われていた飛び込み営業、と言うビジネス習慣もありますが、アポなしで直接商談をすることは大きなマナー違反です。

4)アポの日時を確認する
アポの日時がかなり先になる場合は、できるだけマメに日時の変更やキャンセルがないかの確認をしておくことが必須です。
 

2-2.実際の商談時

担当者や社風などによっても異なりますが、商談が始まる前に緊張感をほぐしスムーズなコミュニケーションを促す意味で、自己紹介をかねたスモールトークやアイスブレイクをする習慣があります。
いきなり商談に入る可能性もゼロとは言えませんが、すぐビジネストークに入るのはマナー違反と見られることが多いです。
 
商談では、契約内容やプロジェクトの進捗など詳細を確認し、お互いの認識に違いがないかをチェックします。
双方、合意できたところで契約書にサインし、取引が成立。
日本のように、契約成立前に課題がある場合契約成立をいったん止め、社内で検討してから再度商談に臨む、ということはありません。
海外では、商談に出席する担当者に裁量権があるからです。
そのため、契約成立時に課題が生じたときは、担当者が成立の可否をその場で判断することがほとんどです。
 

2-3.商談後のつきあい

契約成立後に懇親会やビジネスディナーなどに招かれる場合もあります。
後ほど解説しますが、会食がビジネス上重要な場とされることもあり、招かれた際はにはできるだけ参加することが多いです。
 

3.海外企業との商談に臨むときのマナー5つ


 
海外で商談を行うときは、あらかじめ知っておきたいマナーがいくつかあります。
ここからは、商談を成功させるために頭に入れておくべきマナーをご紹介。
初めて海外と取引するという人はぜひ参考にしてくださいね。
 

3-1.商談前に文化を知っておく

取引先の商習慣だけでなく、文化や習慣の違いが商談の成立に影響することも。
それだけに、事前に相手国の文化をある程度知っておくことが重要です。
 
例えば、日本だと商談のスーツ着用が一般的です。
しかし東南アジアだと、スーツ着用に違和感を持たれ「融通が効かなさそうな
会社とは仕事がやりにくい」などと取引相手に不信を与えることが起こり得ます。
 
また、日本のビジネス習慣では、アポイントの時間を守ることが当たり前です。
しかし、インドだと時間がずれ込むことは特に重要視されません。
インド企業との取引で商談の時間がずれ込んでも、先方から謝罪や状況の説明などのフォローがなく、相手に対して信頼感を失ったりすることがあります。
 
日本のビジネスマナーで守るべき常識が、相手にとっても常識だとは限りません。
小さな違和感も、放置すれば積もり積もって取り返しのつかない問題に発展することもあり得ます。
ストレスをためずに商談に臨む意味でも、現地の文化を頭に入れておくのがおすすめです。
 

3-2.名刺よりコミュニケーションを重視する

 
名刺を交換する文化は日本ならではのものです。
一方海外では、名刺を渡すことはあまり重要視されていません。
相手の肩書や会社を覚えておくためのツール程度にとらえられているため、メモ帳がわりに使われたりすぐしまわれたりすることもあります。
もしそうなっても、気分を害することのないよう振る舞うのが無難です。
 
先方の担当者が興味を持つのは、名刺そのものではありません。
わざわざ日本からやってきた担当者がどんな人物なのか、何をしにきたのか、に最も興味があるのです。
契約成立には、良好なコミュニケーションこそがカギになることを念頭においておきましょう。
 

3-3.腕を組みたくなったら手を組む

 
日本なら、腕組みは熟考している仕草に捉えられることが多いものです。
しかし海外との商談で、腕組みをしてしまうと相手の心象を悪くすることがあります。
腕組みは拒否や威嚇のサインと受け取られる場合があり、先方の担当者の気分をそこねる原因になりかねません。
特に、欧米圏へ商談へ行く時には気をつけましょう。
 
手のひらを組むのは問題ありませんので、腕組みしたくなったときは代わりに手のひらを組むように心掛けると良いでしょう。
 

3-4.イエスノーをはっきり返事する

 
海外との商談では、婉曲に返事をすることが歓迎されません。
例えば、意見の食い違いを調整する意味で、商談の締結をいったん持ち帰って後から改めて商談をしたい、という提案は、日本ではビジネスマナー内とされています。
しかし、海外だと「決定権がない人を商談に送り込んできた」と思われてしまい、大きなマナー違反と見なされることが多いのです。
 
海外では商談が契約締結を意味する、スタンスで臨むことがほとんどです。
意見の食い違いがその場で埋められず商談が成立しないなら、はっきりノーと答えることがマナーです。
それだけに「面白いアイデアですが、実現は難しいですね」など、含みを持たせるような回答の仕方も良くありません。
グレーな回答は、お互いの認識にズレが生じる原因になるからです。
あとからトラブルの種にならないよう、明確に回答することを意識しましょう。
 
商談でこのようなすれ違いが起こらないよう、できるだけ商談前にすり合わせを終わらせることを心得ておきましょう。
 

3-5.ディスカッションでは必ず発言する

 
語学力にあまり自信がなかったり、上司のサポート役として海外商談に赴いたりする場合でも、自分の意見を言う機会があれば発言するのがベストです。
黙っていてもその場にいれば参加者であると捉えられている日本とは違い、海外だと黙っているのは無関心と見なされることが多いからです。
 
上司に合わせてうなずくばかりが、良い振る舞いとは限りません。
意見の違いを明確にアピールし、お互いのギャップを埋める用意があるという姿勢を見せてこそ、相手に評価されやすくなります。
語学に疎くても、先方のネイティブスピーチについていけなくて話の内容がわからないということを伝え、理解できない部分を質問するだけでも良いのです。
何も言わない人がなぜ商談に参加しているのかと相手に不信感を与えないことが肝心です。
 

4.【国別】商談を成功させるためのポイント


 
「所変われば品変わる」という言葉の通り、取引をする国や文化によって商談を成功させるためのポイントは少しずつ違います。
ここからは、相手国別におさえておきたい商談のポイントをまとめました。
 

4-1.契約書の内容に厳しいアメリカ

アメリカの企業とビジネスをするときに注意したいのは、契約書です。
商談が成立したあと契約書通りにビジネスが進まない場合、アメリカ企業は厳しい態度を示すことがほとんどだからです。
大企業間の取引では、失敗した場合巨額の賠償を請求するケースも少なくありません。
 
クレームや契約破棄になったり、裁判になったりとトラブルを引き起こさないためにも、契約書の内容を作成するときは漏れがないよう、細心の注意を払いましょう。
 

4-2.メンツを重んじる中国

 
中国の企業と取引したり、商談をしたりする場合は相手のメンツを常に立てるようにしましょう。
例えば、商談の席で相手に呼びかけるとき「張主任」など、苗字に相手の職位をつけて呼ぶのが礼儀です。
中国は「目上の人を立てる」という儒教に起因した、メンツを重んじる文化です。
職位をつけずに呼ぶことは、相手に対して尊敬の念を持っていないと思われることにつながり、相手のメンツを潰したと見なされることがあるのです。
 
また、中国ではビジネス会食が商談の場になるケースがほとんどです。
そのため、中国企業の担当者から会食に誘われたときは、極力応じることがマナー。
万一断ってしまうと「メンツを潰された」と受け取られてしまい、取引の機会も失いかねません。
 
万一相手方を怒らせてしまった場合、二度と同じ会社と取引することはできないと心得ておきましょう。
 

4-3.独自の時間の感覚に合わせる必要があるインド

 
インドの生活習慣では「インド時間」という言葉があるほど、時間の感覚が独特です。
インド企業と商談をするときは、この「インド時間」を考慮に入れて進行することを心がけましょう。
 
例えば、インドの企業と商談するときに、約束の時間から数十分遅れることは許容範囲とされています。
時間の正確さを重要視する日本のビジネス習慣とは相入れないので、この違いを知っておかないと商談がうまくいかない可能性もあります。
一方で、ビジネス進展のスピード感を重視するインド企業が少なくありません。
日本企業の対応が遅いと感じたときは、催促の連絡がすぐ来ることもあります。
 
状況によって変動する時間の使い方や感覚に合わせつつ、商談で合意した契約の内容が遂行されるようマメな連絡や確認を怠らないことが、インド企業と商談を進める秘訣と言えそうです。
 

4-4.粘り強さが商談のカギになるタイ

 
タイの企業と取引をするときは、相手にイエスと言わせるまで粘り強く交渉するのが重要です。
タイでは他人とコミュニケーションをとるときに、お互いに居心地が良いよう振る舞う「サバイサバイ」という価値観があります。
この価値観が根底にあるため、相手の気を悪くしないようイエスノーをはっきり言わなかったり、商談や会議の雰囲気を壊さないように当たり障りなく振る舞ったりすることを、ビジネスシーンでも求められることが多いのです。
 
タイの会社は本音が見えにくく商談がなかなか進まないと感じる前に、焦らずじっくりと交渉を続ける必要があります。
長期戦になることをいとわない心構えが、商談成功のカギになることを知っておきましょう。
 

4-5.時間に厳しいドイツ

 
ドイツ企業と商談やプロジェクトを進めるときは、時間の管理に気を配りましょう。
ドイツの文化では、時間を守ることが当たり前。
ビジネス上も、時間厳守が一般的な習慣として浸透しています。
 
しかしこの習慣が、問題が発生したとき大きな壁になる場合もあります。
状況に応じて進行や契約の見直しを図ることよりも、スケジュールの厳守が優先され柔軟さに欠けることが多いのです。
日本企業が相手のように、相手企業に事情を説明して納期を待ってもらうなどの交渉はすぐ、拒否されてしまいます。
「契約書通りに納期を厳守してください」と言われて終わる可能性が高いです。
 
何か問題がおきても約束の期日を守れるよう、余裕を持ったスケジュールで商談を進めることが、ドイツ企業とビジネスをする上で欠かせません。
 

まとめ:海外との商談はポイントやマナーをおさえて臨もう

 
海外と商談を行うときは、おさえるべきポイントやマナーを事前に頭に入れて臨みましょう。
文化や言葉の違いを越えて相手とどう渡り合うのか、をよく知っておけば、難しい商談だった場合でも成功する確率がグッと上がります。
海外企業との取引を成功できれば、ビジネススキルも自ずと高くなることでしょう。
さらに、お互いにリスペクトできるビジネスパートナーとして相手から認められれば、もっと大きな商談のチャンスも得られるかもしれません。
 
この記事でご紹介したポイントやマナーを、次の商談で活用してみてくださいね!

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