取材記事

2025.08.29

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インドネシア人留学生のリアル体験記:アナログとデジタルを使いこなすタスク管理術

急速に変化する現代社会において、タスク管理は、個人、チーム、そして組織の生産性を支える重要な柱です。
日々のスケジュール管理から複雑な研究データの取り扱いまで、タスク管理ツールは業務の効率化と協働の促進に欠かせない存在となっています。
これらのツールは、長い年月をかけて大きく進化してきました。
かつては手書きのノートや紙のカレンダーといった伝統的な方法が主流でしたが、現在ではデジタルプラットフォームが主流となっています。
本記事では、私自身がインドネシアと日本で使用したタスク管理ツールとそこから得た経験を基に、文化的な違いや技術の進歩、そして学術・職業の現場での実践的な活用についてご紹介します。
 

1. タスク管理ツールの進化。伝統的手法と現代的手法

タスク管理とは、物事を効率的に整理・計画・実行するプロセスを指し、
データの管理、スケジュールの調整、分析、コミュニケーションなどが含まれます。
従来のタスク管理は、ノートや紙のカレンダー、日誌などを使った手作業が中心でした。
これらの方法は電子化、インターネット接続されておらず、誰でも利用できるという利点がありました。
しかし、技術の進化に伴い、クラウドベースのデジタルツールが登場しました。
GoogleやMicrosoftなどのツールは、リアルタイムでのアクセス、自動化、拡張性があり、業務の効率化に大きく貢献しています。
一方で、これらの現代的なツールには、データセキュリティのリスクや、使いこなすためのデジタルリテラシーが求められるという課題もあります。
 

2.学生生活におけるタスク管理

2-1.インドネシア編

私がインドネシアの大学に通っていた頃、タスク管理ツールは比較的シンプルでローカルなものが主流でした。
主に使用されていたのは「SIAKAD」という大学独自のウェブサイトで、授業スケジュールや成績、大学からの通知などを確認することができました(図1)。


図1  SIAKAD上の筆者の情報ページ
 
SIAKADのデザインは非常に基本的なものでしたが、学生が必要な情報を把握し、学業を整理するには十分な機能を備えていました。
SIAKAD以外では、多くの学生が伝統的な方法とデジタルツールを組み合わせて学業を管理していました。
私自身も、紙のカレンダーやノートにスケジュールを書き込む一方で、スマートフォンと同期したGoogleカレンダーを活用していました。
このハイブリッドな方法は、実用的であるだけでなく、心理的にも安心感を与えてくれました。
手書きでメモを取ることで記憶に残りやすくなり、デジタルのバックアップがあることで重要な予定を見逃すこともありませんでした。
 

2-2.日本編

日本への留学は、私にとって大きな転機となりました。
特に、タスク管理ツールの使用においては、これまでの経験とは大きく異なるものでした。
日本の大学では、暗号化されたインターネットベースのプラットフォームが広く活用されており、詳細かつ柔軟なスケジュール管理機能が提供されています。
その中で私が出会ったツールのひとつが「BIND NOTE」というアプリケーションです(図2)。
このツールは、授業のスケジュールや学習リソースを管理するために設計されており、学生にとって非常に便利な機能が備わっています。
 

BIND NOTEの画面(大学に関する様々な情報と授業スケジュール)
 
インターフェースは見慣れないもので、機能もこれまで使っていたものより複雑でした。
しかし、使い方に慣れるにつれて、その利便性を実感できるようになりました。
授業のキャンセル情報、教室の変更、使用する教科書、さらには1学期分のシラバスまで、リアルタイムで確認できるようになり、学業管理に欠かせない存在となりました。
 
このようなシンプルなツールから高度なプラットフォームへの移行は、技術的な進歩だけでなく、教育に対する文化的な価値観の違いも反映しています。
日本では、正確性、効率性、リアルタイムでの情報共有が重視されており、タスク管理ツールもそれらの価値を支えるように設計されています。
私の見解では、日本人は、単純な作業から複雑なシステムに至るまで、あらゆることを丁寧に管理する傾向があります。
たとえば、会議のスケジュール調整といった日常的なタスクであっても、綿密に計画されますし、
大学内でのデータ共有のような高度なプロセスも、細部にまで配慮されて運用されています。
こうした傾向は、日常生活や学業において活用されている管理ツールにも色濃く表れています。
実際、私自身も、大学で使用されている「Bindnote」システムに大いに助けられています。
Moodleや大学の公式サイトと連携することで、スケジュールや提出物の管理が一元化され、重要な情報を見落とすことがなくなりました。
このような管理ツールに慣れてからは、日々の生活がより正確に、そして効率的に回るようになったと実感しています。
日本の管理文化に適応することで、私の学業生活にも良い変化がもたらされたのです。
 

3.研究活動におけるタスク管理

3-3.インドネシア編

インドネシアと日本の両国で研究活動を行う中で、私は伝統的な方法と現代的なマネジメントツールを組み合わせて活用してきました。
インドネシアでは、観察結果やデータを記録するために手書きの研究ノートを使用していました。
インドネシアにおいて、観察データをノートに記録するという行為は、単なる作業ではなく、長年にわたり培われてきた研究文化の一部です。
たとえば、大学の研究室に新たに参加する学生は、最初に手書きでの実験記録に関する課題に取り組むのが一般的であり、それは「実験ノートを書く」という習慣を自然に身につけさせるための導入でもあります。
この背景には、「記録すること=学びの基本である」という教育的価値観があります。
特に理系分野では、実験中の細かな観察や気づきを丁寧にノートへ残すことが求められます。
これは、形式的なルールというよりも、指導教員との関係性の中で自然と定着している、いわば“暗黙の了解”です。
実際、研究の進捗について指導教員と議論する際には、「どのようなデータを、どのように観察したのか」が問われ、その証拠としてノートが重要な役割を果たします。
このように、インドネシアではデジタル化が進む現代においても、手書きのノートが研究活動の中心に据えられており、それは単なる習慣ではなく、教育と研究における信頼の土台となっているのです。
同時に、データをMicrosoft Excelでデジタル化し、Google Driveに保存することで、いつでもアクセスできるようにしていました(図3)。
この二重の管理システムは非常に効果的でした。
フィールドワーク中には、手書きのノートで素早くアイデアを書き留めることができ、デジタルデータは分析や他の研究者との共有に役立ちました。
物理的な記録とオンラインのバックアップの両方を持つことで、オフライン環境でも、遠隔地での共同研究でも、柔軟に対応できるようになりました。
 

3-2.日本編

日本に来てからは、研究に使用するツールがさらに高度になりました。
Microsoft Teams、Evernote、OneDrive、そしてDECOといったアプリケーションが日常的なワークフローの一部となり、研究活動を支えています。
これらのプラットフォームは、異なる都道府県や海外の研究者とも連携できるよう設計されており、共有フォルダ、リアルタイム編集、暗号化された通信などの機能によって、安全かつ効率的なデータ管理が可能になりました(図3)。
最初は、これらのツールの複雑さに戸惑いを感じました。
しかし、使い慣れるにつれて、それらがいかに私の生産性を高めてくれるかを実感するようになりました。
これらのツールのおかげで、研究そのものに集中できるようになり、管理作業にかかる時間や労力を大幅に削減することができました。
 

図3 私が使用する管理ツール
 
(A) 2022年からノートブックでの研究スケジュール
(B) 2024年に他の研究室部門から入手した顕微鏡の使い方に関する手書きメモ
(C) 2022年から2025年までの小さな手書きメモ
(D) 2019年のGOOGLE DRIVE上の観察写真
(E) 2025年のMICROSOFT TEAMSでのオンライン漢字クイズクラス
(F) 2025年のONEDRIVEでの共有ファイル
 

4.就業時のタスク管理

 

4-1.インドネシア編(正社員)

大学卒業後、私はジャカルタにある日系の多国籍企業に就職しました。
企業で使用されるマネジメントツールは、学術分野で使われていたものとは大きく異なっていました。
業務の中で最も頻繁に使用されたのはMicrosoft Outlookで、特に日本の本社や他都市にいるチームメンバーとのコミュニケーションに活用されていました。
また、Skypeは日々のミーティングや週次の進捗報告など、物理的な距離を超えて対面でのやり取りを可能にする重要なツールでした(図4)。
さらに欠かせなかったのが、社内のイントラネットシステムです。
これは社内のすべてのコンピューターに接続され、社員が共有ファイルにアクセスしたり、ドキュメントを共同編集したり、社内のお知らせを確認したりすることを可能にするものでした。
これらのツールは、単に機能性が高いだけでなく、部門間や国境を越えたチームワークとコミュニケーションを円滑に進めるために選ばれていました。
ユーザーインターフェースも分かりやすく設計されており、誰でも使いやすいよう配慮されていました。
 

4-2.日本編(アルバイト)

日本での留学中、私はいくつかのアルバイトにも取り組みました。
そこで使用されたタスク管理ツールは、これまでの学術や企業での経験とはまた異なるものでした。
SlackやNowstaといったアプリは、チームメンバー間のリアルタイムなコミュニケーションに広く使われていました。
特にSlackは、シフト変更や業務連絡、グループディスカッションなど、迅速な情報共有に非常に効果的でした(図4)。
 

図4 仕事用のタスク管理ツール
 
オンラインミーティングにはZoomが主に使用されており、研修やチーム調整において重要な役割を果たしていました。
正式な連絡にはメールも使われていましたが、Slackのようなツールはよりスピーディーで柔軟なコミュニケーションを可能にしてくれました。
これらのツールは、アルバイトのニーズに合わせて設計されており、シンプルでモバイル対応、そしてコミュニケーションに特化している点が特徴です。
リモート勤務であっても、チームメンバー間に一体感を生み出すことができました。
 

5.伝統的な方法の価値

デジタルツールが広く普及している現代においても、私は伝統的な方法の価値を強く感じています。
私自身の経験から言えば、手書きのメモや紙のカレンダーを使うことには、デジタルツールにはない明確なメリットがあります。
特に、スケジュールを頭に残しやすくなるという点で効果を感じています。
たとえば、実験をしている最中は、スマートフォンでメッセージやスケジュールを確認する余裕がありません。
通知が来ても、すぐにはチェックできないことがほとんどです。
そんな中で、短い休憩を取ってデスクに戻ると、ふと目に入るのが、机の上に置いた小さな手書きメモや紙のカレンダーです。
その視覚的な存在が、自然と「次にやるべきこと」を思い出させてくれます。
何かを開いたり、操作したりする必要もなく、ただ目にするだけで行動のきっかけが得られるのです。
また、手書きのメモや紙のスケジュール帳は、私にとって長年の習慣でもあります。自分の手で書くことで記憶に残りやすくなり、頭の中も整理されます。
結果として、日々のタスクがよりスムーズに進むように感じています。
このように、アナログな方法だからこそ得られる「見える」「覚える」「思い出す」という感覚が、私の日常においてはとても大きな支えとなっています。
今でも、日誌に手書きでメモを取り、紙のカレンダーに重要な予定を書き込み、活動記録をノートに残すようにしています。
また、技術的なトラブルが発生した際のバックアップ手段としても非常に有効です。
スマートフォンのバッテリーが切れたり、インターネット接続が不安定な状況でも、紙の記録があれば安心して行動できます。
特にフィールドワークや移動中には、このようなアナログな方法が大きな力を発揮します。
 

6.現代インドネシアにおけるタスク管理ツールの活用

近年、インドネシアではタスク管理ツールの利用が急速に拡大しています。
学生、ビジネスパーソン、起業家など、さまざまな層において多くのプラットフォームが人気を集めています。
これらのツールは、直感的な操作性、カスタマイズ可能なワークフロー、他のアプリとの連携などの機能を備えており、プロジェクト管理やチーム協働に最適です。
有名なテック系ウェブサイトの調査によると、TrelloやAsanaは現在インドネシアで最も広く使われているタスク管理ツールのひとつです。
これらの人気は、デジタルによる整理整頓の重要性や、クラウドベースのプラットフォームの利便性に対する認識の高まりを反映しています。
一方で、デジタルツールの普及が進む中でも、多くの教育機関では依然として伝統的なプラットフォームが使用されています。
たとえば、私が通っていた大学では、現在もSIAKADが主要なタスク管理ツールとして活用されています。
このプラットフォームはシンプルながらも、授業スケジュール、成績管理、大学からの通知などを効率的に扱うことができ、最近ではユーザーインターフェースも改善され、より使いやすくなっています(図5)。
 

図5 新バージョンのSIAKAD
 
さらに興味深いのは、インドネシア全土で手書きのノートや紙ベースの記録が今なお広く行われている点です。
これは単なる習慣ではなく、文化的な価値観に根ざしたものです。
物理的な記録は、デジタルファイルよりも「確実で信頼できるもの」として認識されていることが多く、教育現場でもその重要性が保たれています。
このように、伝統と革新が共存する姿は、インドネシア文化のユニークな側面を象徴しています。
スマートフォンのアプリでリマインダーを設定しながら、詳細な手書きの手帳やメモを併用する人々は、珍しくありません。
 

7.まとめ

インドネシアと日本での経験を通じて、私はタスク管理ツールが「万能」ではないことを実感しました。ツールの選択は、文化的な価値観、技術インフラ、そして個人の好みによって大きく異なります。
インドネシアではシンプルさと使いやすさが重視される一方で、日本では効率性と高度な機能が求められます。
学校、研究、職場など、どの場面においても、適切なタスク管理ツールを使うことで、整理整頓、効果的な協働、目標達成が可能になります。
技術が進化し続ける現代においては、新しいシステムに柔軟に対応し、学び続ける姿勢が重要です。
最終的には、伝統的な方法と現代的なツールの融合が最も効果的なアプローチであると感じています。
手書きの記録の信頼性と、デジタルプラットフォームの利便性を組み合わせることで、
柔軟性とリスク対応力を兼ね備えたタスク管理環境を構築することができます。
 

ライタープロフィール
シヂク・ヅイ・パザル(Sidhiq Dwi Fajar)
 
インドネシア出身で現在は京都に在住しながら私立大学で生命科学を専攻。
植物分野での研究に3年間携わっており、他国にも留学経験あり。
3カ国の言語を流暢に話すことができ、他に2カ国の言語を会話ができるレベルで習得。
明るい性格で世界中の人々と繋がりを築くことができる。
将来の目標は、日本企業で自分のスキルを活かして働き、日本で暮らすこと。
植物、食べ物、料理、写真、他国の言語など新しいことを学ぶことに意欲的。
日本に来てから猫が好きだがアパートで飼うことができないのが悩み。
自分の長所は夢や目標に対して決して諦めない粘り強さがあること。
 

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