お土産・グルメ

2025.12.24

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イタリア人の食事事情とは?現地の食文化やおすすめスポットも紹介

イタリア旅行や出張中に、食事のときにどんなお店に行けばいいか悩んだり、何を食べるか迷ったりしたことはありませんか。
美食の国と言われるだけあり、美味しい食事や日本では滅多に味わえないグルメを期待している人は多いでしょう。
この記事では、イタリア在住の筆者が旅行や仕事でイタリアを訪れ食事をするとき、知っていると役立つ情報を解説します。
現地で味わえる美味しい食事だけでなく、イタリア人が普段食べている食事やおすすめのメニューも紹介しているので、次のイタリア滞在の際に活用してみて下さいね。

目次

1.イタリア人の日常の食事

食文化が豊かなことで知られるイタリアで、イタリアの人々は毎日、何を食べているのでしょうか。
まずは、イタリア人の普段の食生活を見ていきましょう。

1-1.朝食はコーヒーと甘いものだけで簡単に済ませる

「朝は甘いものを食べると目が覚めやすい」という説がイタリアでは一般常識化しています。
朝食の時間帯である6〜8時ごろ、ビスケット数枚と少量で濃いエスプレッソコーヒーにりんご1つなど、甘いものを食べて一日をスタートする人がほとんどです。

ちなみに、子供にはコーヒーではなく温めたミルクを飲ませるのが一般的。
ビスケットをより美味しく食べられるよう、イタリアの家庭には必ずnutella(ヌテッラ)というチョコレートクリームが必ず1瓶置いてあります。
ビスケットやCornetto(コルネット、クロワッサンのこと)、Fette Biscottate(フェッテ・ビスコッターテ)とよばれる固焼きした食パンなどにたっぷりと塗ってコーヒーと一緒に食べるのが、定番の朝食です。

家では朝食をとらず、身支度して出かけたらなじみのCaffèやBar(発音はバール)に直行し、バリスタとおしゃべりしながらコルネットやペストリーなど甘いものと一緒にCappuccino (カプッチーノ)を飲むのも、イタリア人の習慣の一つです。

朝方、特ににぎわうのがPasticceria(パスティッチェリア、菓子店)。
店内でパン類を作っているお店では、出来立てのクロワッサンを食べられます。
人気店は、朝の7時からお客さんでいっぱいになることもあります。

コラム:より美味しいPasticceriaを見分ける方法

朝食用に美味しいパンやお菓子を購入したいなら、店内にパン工房があり、店内で職人が1つずつパンを焼き上げているPasticceriaを探すのがおすすめです。

美味しいお店を見分ける方法はいくつかありますが、筆者が基準にしているのは下記のポイントです。

1.店の外にも甘い香りが漂っている
2.値段が1.3ユーロ以上する

Pasticceriaと看板が掲げられていても、チェーン店の場合は工場から送られているものが多く、お店の周りで甘い匂いがするということはまずありません。
また、お店で作られた自家製のパンやお菓子なら持ち帰って次の日に食べても、ふんわりした食感が残っています。職人が手作りするものをイタリア語でProdotto artigianale(プロドット・アルティジャナーレ)といい、手作りのものにイタリア人は高い価値を見出します。

それはパンに対しても同じことが言え、Pasticceriaの手作りCornettoであれば値段もそれなりの金額です。
人気店なら1つ1.3ユーロ以上、都市部なら2ユーロ近い値段がついていることも珍しくありませんが、とても美味しいです。

1-2.昼はパスタとメインディッシュでしっかり食べる

朝食のボリュームが少なめな分、昼食をしっかりと食べるイタリア人は多いです。
業種にもよりますが、12〜14時までの間がお昼休み。
アパレルショップや書店など、店舗などは昼休みが長いという場合があり、オフィスから家に戻って大盛りのパスタを作り自宅で食べ、また職場に戻る、というイタリア人も少なくありません。

一方、交代制勤務や事務職など、日本同様に1時間程度の昼休みと言う人は、外食を選ぶことが多いです。
昼食向けにパスタもしくはメインディッシュ、簡単なデザートとコーヒーを組み合わせたランチメニューを出しているレストランが街に必ず1軒はあり、お昼時はとても賑わいます。

近年は日本食ブームからもたらされたIl bentō(イル・ベントー)、いわゆるお弁当がじわじわ浸透。
物価高に伴い、外食費用も高騰しているのが人気の理由の一つと考えられます。

イタリアの人が自宅で作り、出先に持っていくイル・ベントーは、生ハムとチーズをはさんだサンドイッチにりんご1個、など汁気が少ない主食とデザート代わりのフルーツ程度と、品数が少なめです。
夏を除けば、昼に食べる食事は出来立てのパスタなど温かいものを食べたい人が多い事情もあり、数年前までお弁当はイタリアではあまり一般的ではなかったことに由来しているのかもしれません。

1-3.仕事帰りはアペリティーヴォで小腹を満たす

日本でいう「ちょい飲み」に相当するのが、イタリアのAperitivo(アペリティーヴォ)という習慣です。
16〜17時ごろから、カフェやバールでグラスワインと2品程度のおつまみセットを楽しんだあと、帰宅して家族と食事をする人が多いです。

アペリティーヴォの値段相場は5〜8ユーロ程度。
手軽にお酒を楽しめるお店がひしめく中、15ユーロで食べ放題1ドリンクつき、という豪華なメニューを出しているお店もあり、行列していることも珍しくないほど人気です。

お店に入るときはぜひ、Vino locale(ヴィーノ・ロカーレ、ご当地ワイン)を頼んでみましょう。
ローマなら近郊で生産されるFrascati(フラスカーティ)、フィレンツェならChanti Classico(キャンティ・クラッシコ)など土地ごとの名産ワインを出してもらえます。
あちこちのお店をハシゴして、飲み比べるのも旅行の醍醐味の一つになりますよ。

1-4.晩は昼に食べなかったものを食べる

日本のように、ごはん・野菜・肉もしくは魚、を1食ごとにバランスよく食べるという食べ方は、イタリアではあまり見かけません。
一日全体の食事で何を食べるか、で栄養バランスを考えるのがイタリアでは一般的です。

例えば「昼食にパスタを食べたなら、夕食は豚肉のステーキや鶏もも肉のトマト煮込みにする」という献立の立て方をします。
昼食にパスタと肉料理など、ボリュームたっぷりの食事にしたなら夕食はパンとスープだけ、もしくはハーブティーだけ飲んで就寝するという人もいるほどです。

ただし、Pizza(ピッツァ)は別格扱い。
発祥の地だけに、イタリアでのピッツァ人気は非常に高いです。
昼にパスタを食べて夕食はPizzaにする、2食連続で炭水化物系メニューを食べることは問題なしとされているほどです。
ピッツァにはトマトソース、ピッツァ生地、モッツァレラが使われていることが多く、野菜・炭水化物・タンパク質が含まれ栄養バランスのとれたメニュー、と認識されているのが理由かもしれません。

コラム:日曜は家族全員でごはんを食べる日
イタリアには、日曜のお昼どきに家族全員がマンマ(Mamma、お母さん)の元に集まって盛大にランチを食べる、という習慣があります。
イタリアの人たちは、家族で一緒に食事をすることを重要視しているからです。
とはいえ、単に一緒に食事をすれば良いということではありません。
食事を理由にしてコミュニケーションをとる手段と受け止められていることに意味があります。

したがって、もしイタリアの取引先の担当者や知り合いなどから日曜日の自宅ランチに招待される機会があれば、ワインやケーキなどの手土産を持ってできるだけ参加しましょう。
招かれるということは「招く相手と公私共に良い付き合いをしたい」という気持ちの表れでもあるのです。

2.覚えておくと困らない!外食にまつわる豆知識4つ

旅行や仕事でイタリアを訪れ食事をするとき、レストランなど外食中心だという人は多いことでしょう。
ここでは、外食するときに役に立つ、レストラン選びに困らないための情報を解説します。

2-1.イタリアのピッツァは3種類ある

イタリア料理で最も知られているメニューといえば、ピッツァでしょう。
イタリアには生地ごとに3種類のピッツァがあり、それぞれ特徴が異なります。

1.Pizza Napoletana(ピッツァ・ナポレターナ)
日本でも人気があるタイプのピッツァは、Pizza Napoletana(ピッツァ・ナポレターナ)と呼ばれるナポリが発祥のピザです。
ピッツァ生地を手で薄く伸ばしたもので、もちもちした食感が特徴です。

2.Pizza Romana(ピッツァ・ロマーナ)
もう1つはPizza Romana(ピッツァ・ロマーナ)で、こちらは手で成型しません。
浅く発酵させた生地を薄く麺棒で伸ばして作り、さっくりとクリスピーな食感です。

3.Pizza Tagliata(ピッツァ・タリアータ)
最後の1つがPizza Tagliata(ピッツァ・タリアータ)というピッツァで、高さが1.5cmほどもあるふっくらした生地を使っています。

筆者が特におすすめするのは、ピッツァ・タリアータ。
イタリア庶民の味とも言うべきB級グルメの一つで、厚みがあって食べ応え満点です。
また、イタリアのピッツァは1枚単位で販売されている一方、ピッツァ・タリアータは切り売りで販売されています。
そのため食べられるだけ注文できたり、食べ歩きながら楽しんだりできるのも見逃せません。
どこの街でも、ピッツァ・タリアータのお店は昼前から夜9時ごろまで営業していて、リーズナブルな値段で味わえますよ。

2-2.Ristorante(リストランテ)が必ずしも最上位ではない

ガイドブックなどで、食事をする店の格付けについて以下の順に格付けしている場合があります。

・Ristorante(リストランテ)
・Trattoria(トラットリア)
・Osteria(オステリア)
・Bettora(ベットラ)

Ristoranteが最も高級だと解説するガイドブックは多いですが、Ristoranteが最も格式高い食事店という風潮は、2025年時点でかなり薄れています。
また、店名にOsteriaと書かれていても、有名シェフがプロデュースしたお店だったりBIO食材にこだわったお店だったりすると、それなりの値段で高級な雰囲気が漂います。

近年イタリアでも寿司がブームになっているように、多種多様な食文化が世界中からイタリアに入っています。
そのため、高級かそうでないかの物差しが曖昧になっているのかもしれません。

一方、ピッツェリアはデニムで気軽に入店できるフランクな雰囲気のお店がほとんどです。
しかし、一部のピッツェリアには高級店が存在しノージャケットだとやんわりと入店を断ることも。
良さそうなお店を見つけたら、事前にユーザー評価や口コミサイトなどでお店の雰囲気をチェックしておくのが無難です。

2-3.ペペロンチーノはメニューに無い

日本でも広く知られているパスタメニューに、Aglio olio e peperoncino(アーリオ・オーリオ・エ・ペペロンチーノ、にんにくと唐辛子のオリーブオイルパスタ)があります。
シンプルな材料だけを使った味わい深いパスタで、イタリアでも広く愛されている料理の一つです。

しかし、この料理は外食で味わえる料理とは異なります。
材料がどこでも手に入り安価で、料理法も単純なため基本的に家庭で食べる料理であり、お金を出して食べるものではない、とイタリアでは考えられているからなのです。
そのため、ほぼどこのお店でもメニューに載っていません。

どうしてもペペロンチーノをイタリアで食べたいという場合は、自炊できる宿泊先を選んで自分で作るか、イタリア人と知り合いになり作ってもらうよう頼むか、のどちらかを選ぶことになります。

2-4.料理は1品でも良いがコーヒーは注文必須

イタリアのレストランでは、メニューを種類別に分けています。

1)Antipasto(アンティパスト、前菜)
2)Primo piatto(プリモ・ピアット、パスタや米の料理もしくはスープ類)
3)Secondo piatto(セコンド・ピアット、メインディッシュ)
4)Contorno(コントルノ、メインディッシュの副菜)
5)Dolce(ドルチェ、デザート)

この他にワインとドリンクのメニューが別になっていることがほとんどです。

高そうなお店に入ったとしても、この5皿をすべて頼まなくてはならないわけではありません。
イタリアに出張へ来たり、観光で歩き回ったりしてお腹が空いている日は5皿全部頼んだり、昼に食べすぎたから夕食はパスタだけで簡単に済ませる、ということでも良いのです。

ただし一般的に、食事のあとのコーヒーは必ず注文します。
パスタ1品しか頼まない場合でも、食後のコーヒーはイタリア人にとって習慣化されているからです。
したがって、コーヒーも頼むのが暗黙のマナーです。

ディナーのあとはよく眠りたいからコーヒーは頼みたくない、という人はDecaffeinato(デカフィナート、カフェインレスコーヒー)を頼みましょう。
カフェインがほとんど含まれていないので、睡眠に影響を与えにくいです。

コラム:イタリアにもカフェアートはある?
日本で人気のカフェアートですが、筆者がイタリアで見かけたのは一軒だけで、他のお店で見たことはありません。

その理由として、カフェアートをほどこすコーヒーの種類がcappuccino(カプッチーノ)であることに由来していることが考えられます。
イタリアでは、カプッチーノは朝食に飲む飲み物として認知されていて、昼を過ぎてから飲むものではないのです。
したがって看板メニューにしにくく、1日で最もカフェが混み合う時間帯の朝食どきに時間がかかるカフェアートつきのカプッチーノを提供するのも難しい、という事情があるからかもしれません。

観光客が多いローマやミラノ、フィレンツェなどの大都市にあるカフェでは、サービスの一つとしてカフェアートを行うお店があるようですが、日本のお店のようにメニューに記載していつでも飲めるようにしている、というお店はとても少ないです。

2-5.野菜は生かくたくたに茹でて食べる

イタリアのレストランで提供される野菜料理に、驚いた人がいるかもしれませんね。
緑色がなくなるまで茹でたほうれん草や、フォークですくうと崩れるほど炒められたズッキーニなどがその代表です。
日本のように、歯ごたえや色鮮やかさを残したおひたしや炒め物などの料理がほぼ無いのには理由があります。

イタリアには、クセがなく生もしくは半分火を通した状態で食べられる野菜の種類が少ないのです。
ほうれん草を例に挙げると、日本のほうれん草は1〜2分さっとゆでた程度でも食べられます。
品種によってはサラダで食べられるほど、柔らかく甘いことが多いです。

一方イタリアのほうれん草は、生では全く食べられないほどアクが強いものが一般的で、よく茹でないとえぐみが残り、筋っぽい食感です。
この理由から、生食できない野菜はよく火を通して料理を作ることが一般的なのです。

外食続きで野菜不足を感じるが茹で野菜以外の美味しいものを食べたいという人は、たっぷりの野菜と豆、小さなパスタや米などをよく煮込んだスープ料理Minestra(ミネストラ)かMinestrone(ミネストローネ)を探すと良いでしょう。

コラム:イタリア料理には父がいる

日本をはじめ、イタリア料理は世界中で人気があります。
しかし、イタリア料理の父と呼ばれるPellegrino Artusi(ペレグリーノ・アルトゥージ)がいなければ、イタリア料理が広く認知されることはなかっただろうと言われています。

19世紀後半、実業家としても活動していたペレグリーノは、仕事柄イタリア全土を巡り各地の料理を口にしていました。
彼は、味わった料理のレシピや食にまつわる経験を、普及しはじめたばかりの標準イタリア語で記述。
『La scienza in cucina e l’arte di mangiar bene(原題:料理の科学と美食の芸術、邦題:イタリア料理大全)』という本にまとめあげ1891年に自費出版しました。
この本が、イタリアの家庭に必ず1冊はあると言われるほど大ヒットしたのです。

1861年のイタリア王国成立まで小国家や都市国家が乱立していた影響で、イタリアの人々には、言語や文化など統一された概念やアイデンティティがありませんでした。
したがって、土地ごとに言語が違い同じ地域出身でなければ意思の疎通が難しかったのです。
地方の言語で記された料理のレシピや製法などは、ご当地の言葉を話せない限り知ることはできませんでした。
それを標準イタリア語にまとめて誰でも読むことができるようにしたのが、ペレグリーノです。
その功績がたたえられイタリア料理の父と呼ばれるほど、ペレグリーノは世に知られるようになりました。

彼の本は、現代にいたるまで改訂を重ね出版され続けています。
イタリア料理の基礎を学べる本として、各国語にも翻訳されているほどです。

3.知っておくと慌てずに済む!イタリアのテーブルマナー4つ

日本とイタリアでは、食卓でのマナーが異なる場合があります。
ここでは、イタリアのテーブルマナーの一部をご紹介。
イタリア出張中、現地法人のスタッフや取引先と食事をするとき、マナーを覚えておくと相手に良い印象を与えられるでしょう。

3-1.残すことは無作法ではない

嫌いでどうしても食べられない食材が使われている料理を、知らずに頼んでしまったり招かれた席で出されたりすることがあるかもしれません。
そんな場合でも、残すことは失礼に当たらないためご安心ください。

日本では残さず食べることがマナー、と家庭で教えられる人は多いでしょう。
しかし、イタリアのマナーはもう少し緩いです。
嫌いなものを無理に食べることはないという認識が一般的なので、「苦手で食べられない」と食べない理由を伝えれば問題はありません。

3-2.パンでお皿を拭うのは行儀が悪い

「パスタのソースが美味しくて残すのはもったいない!」と思うときがあるでしょう。
イタリアでは食卓にかならずパンを添えてあるので、パンでソースを拭って食べたくなるところです。

イタリア語でこの仕草をScarpetta(スカルペッタ)と言いますが、実はあまり褒められた行儀作法ではありません。
家族しかいない家庭の食卓でやったり子供がやったりする場合は大目にみられますが、人前でやることではないとされています。
レストランでどうしてもやりたいという人は、一口大にちぎったパンで2回ほどが限度、と心得ておきましょう。

3-3.できるだけ音を立てないで食べる

イタリアのテーブルマナーの一つに、食卓で極力音を立てないというルールがあります。
音が出るほどナイフやフォークを乱暴に使ったり、熱いスープをすすって飲んだりということはNG。
イタリアのどこの家庭でも、小さい頃から子供に音を立てないよう覚えさせるのが一般的です。

特に気をつけるべきなのは、スパゲッティなどの長いパスタを食べるときでしょう。
長いパスタは、2、3本の麺をフォークで巻き取って一口で口の中に入れるのがマナー。
また、麺が長すぎて口に入り切らず、噛み切った残りを皿に落とすのも行儀が悪いです。
麺類をすすって食べる日本の習慣からつい、音を立てることのないようにご注意を!

ちなみに、スプーンを使いフォークでパスタをくるくる丸める食べ方は、アメリカ由来の食べ方と言われていてあまり歓迎されない食べ方です。
イタリア人と同様に、フォークだけ使って食べましょう。

3-4.パンの上下を間違えない

パンは、イタリアの食卓にかかせません。
パスタやリゾットだけの食事でも必ず、パンが置かれます。
パンを切って提供するのはお店で、自宅では原則丸ごとのパンがテーブルに置いてあります。
自分で手にとって、食べたい分だけナイフで切り取るのが習慣です。

このときに注意したいのが、パンの上下です。
パンは上下逆さまに置くと縁起が悪い、と言われているからなのです。
イタリアで広く信仰されているカトリックで、パンはキリストの体を象徴しています。
ミサなどカトリックの儀式でも「ホスチア」という古式の発酵させないパンを食べるほどで、このことからパンを粗末に扱わないことが暗黙のルールです。

断面を見るとすぐわかりますが、平になっている面が下で丸い面が上です。
パンをテーブルの誰かに渡したり、テーブルの中央に戻したりするときは気をつけましょう。

コラム:イタリア式コーヒーは2種類ある
イタリアのコーヒーといえば、エスプレッソを連想する人がほとんどでしょう。
しかし実は、イタリア式コーヒーは2種類あります。

イタリア人が家庭で飲むカフェは、Machinetta(マキネッタ)やCaffetiera(カフェティエラ)と呼ばれる直火式のコーヒーメーカーを使ったものが多く、Moka(モカ)と呼ばれます。
エスプレッソよりもはるかに濃い味わいで、こちらのほうが好みだと言う人も少なくありません。

一方、日本でも知られていて、カフェやレストランなどのお店で飲めるコーヒーは、横長で大きなエスプレッソマシンから作られるEspresso(エスプレッソ)です。
高圧の蒸気を使い短時間で一気に抽出し、表面にCrema(クレーマ)と呼ばれる泡が立ちます。
香り高くなめらかな味わいが特徴です。

なお、現地のスーパーなどで買えるイタリアのコーヒーは、EspressoとMoka用の2種類があります。
お土産として買うならパッケージをよく見て、使う道具に合った種類を選びましょう。

4.季節に欠かせないメニュー8つ

春のいちごや冬のカニなど、旬の食材を使った料理は日本で人気があるように、イタリアにも旬の食材があります。
ここからは、時期別に分けたおすすめ食材を解説。
イタリアを訪れる時期に合わせて、味わってみましょう。

4-1.春の訪れを告げるそら豆とアスパラガス


ペコリーノ・ロマーノと食べるそら豆は絶品

3月下旬ごろからスーパーや八百屋でそら豆やアスパラガスを見かけると、イタリアに本格的な春が到来したのを実感します。
あざやかな緑のそら豆とアスパラガスは、イタリア人の春の食卓を彩る食材として欠かせません。
南はシチリア州から北のトレンティーノ州まで、イタリア全土で広く食べられている春の味です。

イタリアのそら豆はとても柔らかく、生食できます。
前菜や付け合わせとして莢のまま食卓に出し、生の豆をとりだしたらしょっぱい硬質チーズのPecorino(ペコリーノ)と一緒に食べるのがイタリア流。
そら豆の甘味にチーズの塩気がよく合い、ついついワインをおかわりしたくなってしまうほどです。

一方アスパラガスは、くたくたになる手前まで茹でます。
茹でたてのアスパラに、ゆで卵をつぶしてマヨネーズであえたソースで食べるのが一般的です。
アスパラの甘さを、こってりしたソースが引き立ててとても美味しい一品です。
地元の人に人気があるレストランやバールでは、春限定のメニューやおつまみとして提供していることもありますよ。
旅行中に見かけたらぜひ試してみましょう。

4-2.夏の生ハムメロンとイワシのオイル漬け

夏の味としてイタリア人が欠かさないメニューは、生ハムのメロン添えとイワシのオイル漬けです。
特に生ハムのメロン添えは、イタリア料理の人気メニューとしてほぼどこのレストランでも目にします。
しかし本来は夏のメニューで、季節が変わると輸入のメロンを使っていることが多いです。
オリジナルメニューで楽しみたいなら、夏にイタリアを訪れるときに味わいましょう。

イワシのオイル漬けは、新鮮なイワシを酢で締めてから、スライスした玉ねぎと一緒にオリーブオイルにつけ込んだシンプルな料理です。
通年出しているお店もありますがこちらも夏の料理で、アンティパストとして提供されることが多いです。
旨みが凝縮されたイワシは絶品で、辛口の白ワインと相性ぴったり。

4-3.秋の味覚ならポルチーニと栗


小売店で見かけるポルチーニはほぼ輸入もの

9月下旬には、スーパーや八百屋などでポルチーニと栗が出回ります。
10月に入るとポルチーニや栗を探して山や森へ行くイタリア人が多く、誰からも愛されている秋の味覚です。

国民食の一つと言えるほどのポルチーニですが、人工栽培が非常に難しいきのこです。
そのため天然のものを探す必要がありますが、収穫量は気象条件に左右されます。
マッシュルームやエリンギなど栽培種のきのこのように、高い需要に対する安定かつ大量の国内供給が困難な事情があるため、ルーマニアやポーランドなど海外の産地から輸入されたものが店頭に並びます。

乾燥したポルチーニを一年中スーパーで買えますが、生のポルチーニの味わいは旬だからこそ楽しめるもの。
とろりとした食感と食欲をそそる香りは、パスタやリゾットで味わうとその美味しさがよくわかります。
レストランやピッツェリアでFunghi(フンギ)もしくはPorcini(ポルチーニ)と書かれているメニューがあったら、試してみましょう。

もう一つの秋の味覚は、小粒のイタリア栗です。


焼き栗には赤ワインが欠かせない

炭火や暖炉の薪で焼くだけのMondine(モンディーネ、焼き栗)を食べることが多いですが、乾燥させた栗を粉にしてお菓子やパスタに活用するのも、この時期ならでは。


イタリア全土で広く食べられているCastagnaccio。香ばしさが後をひく

特に人気があるお菓子は、栗の粉とナッツ類、レーズンをまぜて焼き上げたケーキの1種Castagnaccio(カスタニャッチョ)です。
甘い栗の香りとナッツ類の香ばしさが後を引いて、とても美味しいですよ。

コラム:Sovranità Alimentare(食料主権)を推進するイタリア
農業・畜産・漁業の伝統的な生産方法を守りイタリアの食文化を維持するため、近年のイタリア政府はSovranità Alimentare(食料主権)という政策を積極的に実施しています。
食料主権とは、一部の大企業による食料供給のグローバル化を防いで自国の農業を保護し、生産者や消費者を主体にした方法で食料を供給する権利を重視するものです。

イタリア政府が打ち出した政策の中でも一際注目を集めたのが、2023年に施行されたLegge sulla tutela del patrimonio agroalimentare italiano(農業及び農産物加工文化遺産保護法)という法律です。
この法律は、合成された肉や牛乳などの生産や流通、販売および使用を全面的に禁止しており、EU加盟国の中ではイタリアが初めて制定。
法律の是非を巡り、国内外で食料の供給に関する論議を高めるきっかけになりました。

自国の食文化を守り食品の品質を維持することは、イタリア国民の健康を促進することだけが目的ではありません。
イタリアで生産される食品に高い付加価値をつけ、国内および国際市場での競争力を強めて経済効果をもたらす狙いも根底にある、と言えるでしょう。

4-4.冬に欠かせない豆類とキャベツ

風が冷たくなりはじめる11月上旬から、イタリアの食卓では豆類やキャベツを使った料理がたくさん出ます。
食料がとぼしくなる冬でも簡単に手に入り、栄養豊富な食材として古来から食べられてきました。
イタリア人なら誰でも食べる豆が、Lenticche(レンティッケ、レンズ豆)です。


クリスマスといえばレンズ豆。

Cotechino(コテキーノ)という豚肉のソーセージと一緒にいただくのが定番だ。
写真はソーセージをほうれん草とパイ生地で巻き、Involtini(インボルティーニ、具材を巻いたり包んだりした料理)風にアレンジした一品

Lenticcheの形が古代の貨幣とよく似ているため、イタリアではクリスマスに食べると新年に金運や幸運を招く、と言われています。
特に、クリスマスから元日にかけてのメニューとして欠かせない食材です。
塩水でゆでてオリーブオイルをかけるだけのシンプルな食べ方の他に、トマトソースとラードで煮込んで風味をつけたものもあります。

冬に旬を迎えるもう一つの食材が、キャベツ類です。
日本でもお馴染みの丸いキャベツだけでなく、Cavolo Verza(カーボロ・ヴェルツァ)と呼ばれるちりめん状のキャベツ、ほうれん草の葉のような細長いキャベツCavolo Nero(カーボロ・ネロ)など、とてもたくさん種類があります。
どのキャベツも日本のように生食できるほど柔らかくないので、煮込み料理やスープなどじっくりと火を通す料理でよく使われます。

家庭料理として愛されているのが、Cavolo Verzaを使ったInvoltini(インボルティーニ、ロールキャベツ)です。
中身はひき肉で、澄んだスープで煮込むものとトマトソースで煮込むものの2種類があり、キャベツの甘さが引き立ってとても美味しい一皿です。
あまりレストランでは見かけない料理ですが、機会があれば注文してみて下さい。

5.イタリアの日常グルメを味わえるスポット4選

ここからは、イタリアの人たちが普段食べる食事を提供しているスポットを見てみましょう。
シンプルながら味わい深いものがたくさんあるので、レストランで楽しめる一流のグルメとはまた違った楽しみ方ができますよ。

5-1.スーパーの惣菜コーナー


焼きなすや玉ねぎの酢漬けなど定番のおかずが並ぶガストロノミア

日本同様に、イタリアのスーパーにも惣菜を扱うコーナーがあります。
惣菜専用の有人カウンターで、イタリア語でGastoromia(ガストロノミア)と言います。

ほうれん草のソテーやスタッフドオリーブなどの日常的なお惣菜から、ローストビーフやベイクドポテトを始めとする豪華なお惣菜など、品揃えは幅広いです。
イタリアの人たちが普段どんな食事をしているのかがよくわかるラインナップなので、興味がある人はスーパーに立ち寄ったときに覗いてくださいね。
イタリア語が話せなくてもジェスチャーで欲しいものを伝えれば、きちんと包んでくれます。

狙い目なのは、チーズやハムです。
値段は少々お高めですが、イタリアでしか味わえないので試す価値大!
あらかじめパッケージに入って陳列されているものとは異なり、メーカーから直送されたフレッシュなものが取り揃えられていて、美味しいです。

5-2.ピッツェリア(ピザ専門店)

どの街にも必ず一軒はあると言われているお店の一つが、Pizzeria(ピッツェリア)です。
本格的なピッツェリアに行くなら、夜に訪れましょう。
ピッツァ用の窯は、大量の薪を入れて高温にする必要があるため準備に時間がかかります。
そのため、大都市や人気店を除くとディナータイムだけ営業する店が多いと言われているほどです。

テーブルの予約をしていなくても、テイクアウト可能な店がほとんどです。
そのため、ホテルに持ち帰って部屋でゆっくり食べるのもおすすめ。

ちなみに、ピッツァのお供はワインではなく、ビールという人が大半です。
ワインの産地のイメージが強いイタリアですが、ビールの生産量も多く近年では急激に消費量が増えています。
Moretti(モレッティ)、Nastro Azzuro(ナストロ・アッズーロ)、Peroni(ペローニ)など、大きなメーカーのビールが日本にも輸入されているので、見たことがある人もいるでしょう。

地方のピッツェリアへ行く機会があるなら、Birra Artigianale(ビッラ・アルティナジャーレ、クラフトビール)を頼むのもおすすめです。
イタリアにはクラフトビールの醸造所がたくさんあり、オーソドックスなラガーやピルスナーの他に、栗味やレモン味などご当地ならではの農産物を使って作られたビールがあるからです。
日本ではなかなか見かけないいろいろな味のビールがあるので、ぜひピッツァと一緒に楽しんでみましょう。

5-3.ベーカリー

街に必ず1軒あるのが、Panetteria(パネッテリア、ベーカリー)です。
早いと朝6時から開店するお店もあります。
人気店は午前中にすべてパンが売り切れることもあるほど、イタリア人の生活には欠かせないお店の一つです。

食事のときにテーブルに添える大きくて硬いハードタイプのパンを中心に、小さなピッツァや生ハムをはさんだフォカッチャなど、小腹を満たせる軽食タイプのパンも売られています。
ゴマが入っているものや複雑な模様が編まれたものなど、土地によって作られているパンが異なり、食べ比べるのも旅の楽しい思い出になるでしょう。

ちなみに、甘いパンは置いていないことが多いです。
イタリアのスーパーの中にあるパネッテリアでは、甘いパンと食事系のパン両方を販売していますが、街にある個人経営のパン店では、甘いパンはほとんど取り扱われていません。
甘いパンはPasticceria(パスティッチェリア)という菓子店で作られているので、お間違えなく。

5-4.カフェ

朝昼晩とカフェに入ってコーヒーを飲み干さないと、「1日がうまくまわらない」というイタリア人は実に多いです。
筆者の家族もその一人で、日本へ旅行すると必ず街でエスプレッソを飲める店を探して歩き回るほど、コーヒーを飲む習慣が一般的です。

日本と同様に、イタリアのカフェでもランチタイムに軽食を出しているところがあります。
10ユーロ以内でドリンク・パスタもしくはサンドイッチ・一口デザートなどのセットを提供しているお店がたくさんあります。
セットメニューを目当てに、近辺で働く人たちがお店に集まり、お昼時はとても賑わいます。
ほとんどの場合店の外にメニューが出されているので、街歩き中に見かけたら寄ってみましょう。

コラム:現地の味に近い!日本で楽しめるおすすめのイタリアンレストラン3軒
イタリアンレストランは日本の多くの街で見かけ、パスタやピッツァを始めとするイタリア料理を手軽に楽しめるスポットです。
数あるレストランの中で、筆者が実際に味わって本場イタリアの味に近い、と感じたレストラン3軒をご紹介します。

・Elio Locanda Italiana
東京メトロ半蔵門線・半蔵門駅に近いレストランです。
イタリアから直輸入した食材を惜しみなく使った本格イタリア料理を楽しめます。
イタリア大使館の関係者も足を運ぶそうで、味は申し分ありません。
手頃な値段のランチメニューがおすすめです。

公式HP:https://elio.co.jp/locanda/

・La Bisboccia
JR山手線・恵比寿駅から徒歩数分の場所にあるレストランです。
イタリアの伝統料理だけでなく、日本の食材を使った斬新なイタリア料理を味わえる名店です。
季節の食材をふんだんに使った品々は絶品ぞろい。
温かみを感じる店内の雰囲気も、とても素敵です。

公式HP:https://labisboccia.tokyo/

・La buganville hiroo
東京メトロ日比谷線・広尾駅からすぐのピッツェリアです。
もちもちした食感の本格ナポリピッツァを味わえ、筆者が知る中では最もイタリアの味に近いです。
サイドメニューやデザートも充実しています。

公式SNS:https://www.instagram.com/buganville_hiroo/

まとめ:イタリアの人々の食事を知って旅行や出張をより充実させよう

イタリア人の普段の食事からは生活のスタイルや習慣などを知ることができ、彼らの日常生活が垣間見えてきます。
ご当地グルメを楽しむだけでなく現地に住む人たちの普段の食事を知ることは、イタリアの文化やイタリア人の価値観をより深く理解することにも繋がります。
イタリアで知ることができる食文化を、日本に帰国してから日常の食事に取り入れたりビジネスのヒントにしたりすることが、より一層生活を豊かにしてくれることでしょう。
また、日本の食文化と比較することは、ひいては日本の食についても学び直す機会になります。
双方を知ることで得るものは、決して小さくありません。

次のイタリア出張や旅行では、この記事で解説した情報を役立てて下さいね。

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