栃木県内の高校生・大学生が起業アイデアを競うコンテストで最優秀賞に輝き、自らの手で「株式会社Challink」を起業した現役女子高生・久野美恋彩(くの・みれあ)氏。
そして、WEB3テクノロジーを社会インフラとして再設計し続ける、地方WEB3連携協会の代表理事・上田敏孝氏。
【前編】では、お二人の出会いからChallinkが直面している「地方における資金調達・経営のリアルな壁」について共有しました。続く後編では、二人の熱い議論は地方創生の本質――「人口減少を悲観するだけの地方創生に対する強烈な違和感」へと進みます。
※この記事は久野美恋彩×上田敏孝対談記事の【後編】となります。前編はこちらから。
「偶然」から始まった共鳴。女子高生起業家と地方WEB3連携協会・上田敏孝が語る、挑戦を諦めない組織のリアル(前編)
画面越しでしか顔を合わせていない二人が初めて対面し、初対面とは思えないほどスムーズに打ち解けていく様子
【地方創生の本質】人口減少をただ嘆くのは終わった。私たちが描く、地域の「アイデンティティ」と「教育」の未来
「人口を増やすことがゴールではない」――久野美恋彩が現場で気づいた“魅力的な地域教育”というアンサー
久野氏の地元である栃木県日光市。多くの地方自治体と同様に「消滅可能性都市」というレッテルを貼られた地域でもあります。活動を始めた当初、彼女も「いかに人口を増やし、地元に人を呼び戻すか」が活性化の答えだと信じて疑いませんでした。しかし、自らカンボジアや福島などの最前線を駆け回り、地域の人々と対話を重ねる中で、その前提自体が変化したと言います。
久野美恋彩氏(以下、久野):「日光市が消滅可能性都市に選ばれたと知った時は、どうにかして人口を保って人を戻さなきゃって考えていました。でも、福島やカンボジアなど色んな現場に行ったり、実際に活動して気づいたんです。国全体の人口が減っている中で、日光市だけが若者を増やし続けるなんて構造上不可能ですし、そもそも『人口の数字を増やす、移住・Uターンを増やす』ことだけを追い求めるのって限界があるなって」
久野:「では、地域が活性化するって本当はどういうことなんだろう?と考えたときに、たどり着いたのが『教育』でした。どんな子供でも、地域の中に自分のやりたいことに挑戦できる場所があること。そうした魅力的な環境が地域に保たれていれば、子供が育ち、家族が残り、人がつながる。人口の数字を奪い合うのではなくて、教育を通じて地域が存続していくことこそが、私にとっての地域活性化なんです」
高校生マルシェへの参加を通じ、地域とのつながりを深める久野氏
地方創生は「雨を止めようとする行為」に似ている?上田敏孝が語る「変わろうとする人を孤立させない」横のつながり
久野氏の「人口の数合わせではない」という気づきに対し、上田氏は我が意を得たりと深く頷きます。上田氏にとって、現在の日本政府や自治体が開示している従来の地方創生の多くは、「不自然な抵抗」に映っていると言います。
上田敏孝氏(以下、上田):「本当にその通りですね!人口減少は自然の摂理なんです。今まで歴史の中で人口が増え、戦争というきっかけで爆発的に増えたものは、循環理論として緩やかに落ち着いて減少していく。それなのに『何とかして昔の人口に戻そう』とするのは、雨が降るのに対して、なんとか雨を空に押し戻そうとする不自然な行為に似ている。僕らの役割は、雨を止めることじゃない。雨が降ってもみんなが風邪をひかずに、温かい家の中で楽しく暮らし続けられる仕組みを作ることなんです。つまり、人が減ったとしても、その土地で生きてきた人々の『アイデンティティ』をどう未来に継承するか」
上田:「いま地方の教育や行政現場で起きている一番深刻な課題は、変わりたい、新しいことに挑戦したいと思っている地域おこし協力隊や高校生などの当事者が、既存の行政システムや大人の『前例がない』『管理・統制』という古い構造によって、孤立して終わってしまうことなんです。だからこそ、地方WEB3連携協会は、自治体の縦割りの枠を超えて、挑戦者を横でつなぐコミュニティインフラをWEB3やDAO技術、あるいは『REGIONLINK』というプロジェクトを通じて構築しているんです」
上田氏は、久野氏が高校1年生の時に直面したある「苦い経験」についても触れます。日光市の地域おこし協力隊に、「学生が一からビジネスを作り上げるための場所が欲しい」とプレゼンした際、大人たちから「高校生1人じゃ何もできない」とこっぴどく否定され、半泣きで帰ったというエピソードです。
久野:「本当に悔しかったです!高校1年の9月頃にプレゼンをしに行ったんですけど、一言で残りの1時間を木っ端微塵にされて、半泣き状態になりました。『だから日光市はダメなんだよ!』って当時は本気で思いましたし、市がダメなら自分でとにかくやってやる!と思って活動を続けました。でも、それが今のChallinkの原動力になった。だから今は感謝していますけど(笑)」
上田:「素晴らしい。多くの大人たちは、前例踏襲や自らの保身を『君を守るため』という優しい言葉にすり替えて、若い芽を摘んでしまう。僕らはそうした挑戦の障壁を取り除き、彼らの盾となって社会とフラットに共創できるフィールドを提供したい。それが社団法人のミッションです」
初対面の緊張を感じさせる間もなく、すぐに打ち解けて会話が弾むおふたりの様子
【次世代への投資】「一歩を踏み出す勇気」を。大人が盾になり、若者が太陽のように輝く世界へ
「若さは最強のゲームチェンジャー」――地方WEB3連携協会がChallinkと共創する、次なる社会実装の実験
対談の終盤、二人は今後の「一般社団法人地方WEB3連携協会」と「株式会社Challink」の共創関係について、具体的な構想を語り始めました。上田氏は、久野氏を単なる「支援対象の高校生」として扱うのではなく、一人の対等な「起業家・共同経営者」として伴走する意志を明確に示しています。
上田:「僕は、久野さんに学ぶ場所を提供しようとは思っていません。Challinkという、10代の圧倒的な熱量と行動力が詰まったピュアなエンジンを、僕たちの持っている全国30拠点の教育モデル校や産学官連携重点拠点のネットワークと組み合わせることで、どんな新しいイノベーションが起きるのか。これは僕たちにとっても非常にエキサイティングな探究活動であり、共同での『実証実験』なんです。我々の団体の羽を使ってもらうことで、久野さんの人格と実行力がより広く発揮されると思うし、僕らも10代の生の意見や感性からたくさん吸収させてもらいたいですね」
対談の終わり際まで、地域の未来や今後の挑戦について言葉を交わし続けるおふたりの姿
上田氏が推進するWEB3およびDAO型の社会モデルでは、特定の「中心」や「上司・部下」といった昭和型の統制関係を一切持ちません。これにより、地域や個人が自立しながらフラットに横で繋がり合い、相互に連携して課題を自律解決できる環境が生まれます。
実際にWEB3の地方創生プロジェクトで注目されているふるさと納税NFTや、Challinkのような高校生主導のプロジェクトへの「応援ポイント(ゼニくる等)」の可視化は、単なる投機やお金のやり取りではなく、個人の「スキルや志」への逆オファーによる純粋な共感を直接現場に届ける仕組みです。この構造を教育課程や地域社会に組み込むことによって、若者の「やってみたい」を応援する大人たちが全国に自然と増えていく共創エコシステムが構築されていくのです。
厳しい大人の意見を乗り越えて。「なんなら25歳で上田さんを越したい」
起業してからこの1年、周囲の大人の世代から「学生の遊びだ」「社長に向いていない」「勉強に集中しろ、今すぐ会社をやめたほうがいい」といった心無い批判を何度も浴び、やめたくなった時期もあったと久野氏は静かに吐露します。
久野:「本当に、心が折れそうになることが何度もあって……。高校生起業家として活動する中で、厳しいご意見を受けて辛くなり、社長に向いてないから辞めたいって落ち込んだ時期もありました。でも今日、上田さんとこうしてリアルにお話しできて、私が目指している方向性や、ビジネスを通じて教育を良くしたいという想いが、間違いじゃないんだと確信できました。自分のビジョンを本気で信じて、伴走してくれる大人がここにいるんだということが、何よりも心強いです」
上田:「誰に何を言われても関係ない。僕は久野美恋彩の生き様を一人の経営者として、そして熱狂的な一人のファンとして全力で推し、応援し続けます。ここから栃木、日光、全国を巻き込む大きなうねりを一緒に作りましょう」
久野:「ありがとうございます!こうなったら、上田さんのアセットやネットワークも全部ハックして、学びを限界まで吸収して……なんなら私が25歳になる頃には、上田さんを余裕で越すような起業家になってみせます!」
上田:「ハハハ、その意気です(笑)。僕を早く越して、次の50年、100年の世界を君たちの手で作っていってください。僕が30歳の時は1つの会社に縛られていましたけど、君はすでにそのはるか先を自由に走っている。いつでも追い抜かれる準備はできていますよ」
対談後のオフショット。終始和やかな雰囲気で行われたショート動画撮影の様子
「若者を呼び戻す」という従来の数合わせの地方創生から、「地域の教育を魅力化し、当事者のアイデンティティを守る」自律分散型の地方活性へ。
18歳の久野氏が実戦の中でつかみ取った気づきと、WEB3テクノロジーを社会に実装し続ける上田氏の思想は、見事なまでにシンクロしていました。
対談の最後に上田さんが『星の杜高校は、みんな自分の意見をディスカッションでスパッと言う、自然体で強い自分軸を持っているね』と仰っていたように、前例を盾にして若者の芽を摘む大人ではなく、若者の挑戦を守る「盾」となり、対等に伴走する大人の存在こそ、今もっとも社会に求められているのではないでしょうか。
「Challink」と「地方WEB3連携協会」が共に進める社会実装の次なる実証実験から、今後も目が離せません。
前編はこちら:「偶然」から始まった共鳴。女子高生起業家と地方WEB3連携協会・上田敏孝が語る、挑戦を諦めない組織のリアル(前編)
対談者プロフィール
星の杜高校3年生。高校1年時から栃木県日光市にて「地方創生と教育」をテーマに探究活動をスタート。高校1年時にカンボジアでの企業インターン(サムライカレープロジェクト)や日光での移動販売マルシェの経営を経験し、実践的なビジネス知識を体得。「第13回とちぎアントレプレナー・コンテスト」最優秀賞受賞をきっかけに、高校生のチャレンジを地域とつなぐ「株式会社Challink」を起業。現在は受験期・卒業を控えつつも、代表取締役として地域の発展に挑む。
一般社団法人地方WEB3連携協会 代表理事。株式会社DAO 代表取締役CEO。1987年生まれ、栃木県出身。大手企業での新規事業開発や戦略人事を経て2019年に独立。日本初のDAO型株式会社「株式会社DAO」を設立し、リーダーのいない自律分散型の仕組みで実業を回すライスワークを実践。一方で地方WEB3連携協会の代表理事として、全国の自治体・企業・学校と連携した地域共創リーグ「REGIONLINK」を展開するなど、若者の「挑戦を諦めない世界」の構築に猪突猛進する。







