中東や東南アジアなど、イスラム圏への海外出張は欧米とは違う緊張感を覚えるものです。
テロなど命にかかわる危険の話はひとまず横に置くとしても、宗教観の違いから、取引相手へのおみやげ選びにも細心の注意を払う必要があります。
ここではそんな悩みの解決法を紹介します。
海外出張の基礎知識! ハラルの基本を知っておこう
【ハラルとノンハラル】
一般的な日本人とイスラム教徒(ムスリム)の大きな違いが「ハラル(Halal)」です。
イスラムの教えに合致しているもののことを「ハラル」と呼び、清潔で健康的であることが求められます。
逆に、合っていない、禁じられているもののことを「ハラム」、もしくは「ノンハラル」とも呼びます。
宗教上清潔でない、不健康なものは食べてはいけない、というよりも、食べるわけにいかないという習慣が、生活レベルにまで浸透しているのがイスラム社会だと理解しましょう。
【ノンハラルを押さえよう】
では、間違った海外出張先へのおみやげを選ばないために、まずはどんなものがノンハラルなのかを押さえておきましょう。
ノンハラルなものの代表的食品といえば、アルコールと豚肉。
この2つは聞いたことがある方も多いでしょう。
しかし、牛や鶏など食肉全般に関してもイスラム法に則った方法で畜産、加工処理されているものでなければ彼らは口にすることができません。
それらの確認に自信がない場合、一般的には肉類を選択するのは避けるのが無難でしょう。
アルコールについては、個人レベルでかつてに比べると厳しくなくなったとも言われますが、渡す相手のことがよくわからない時点では避けたほうがいいでしょう。
またそれだけでなく、表面上お酒類が使われてないように見える加工食品でも、製造過程でアルコールが醸造されるしょうゆや味噌が使われているものについては注意が必要です。
肉についても、エキスとして肉が使われているものはNGです。
そのほか、「ゼラチン」「ラード」「ショートニング」「乳化剤」「マーガリン」「みりん」、これらも“隠れノンハラル”の素材です。
中には大豆由来の乳化剤などもありますが、明記が曖昧なことも多いので、念のために避けましょう。
海外出張にはハラル認証商品を決め打ち
ここまで読まれて「何がハラルなのか判断できる自信がなくて、素人では選べない!」と思われるかも知れません。
無理もない事です。
一般的に、ハラルの食品としては野菜、果物、魚、卵、牛乳が挙げられます。
ノンハラル素材に注意しつつ、これらを原料としている食べ物ならまずは安全ということになります。
しかし、それでは選択肢が狭くなってしまうのでは? 空港の売店で選べるのでしょうか?
そんな疑問を解決するのがハラル認証を取得したおみやげ類です。
近年はイスラム圏から日本への観光客も増えてきたため、彼らのおみやげ用のハラル認証を取得した商品が、空港のショップにも多く並んでいます。
最近では空港内のコンビニエンスストアでも、ハラル認証商品を積極的に扱う傾向のようです。
ハラル認証商品であれば、海外出張への持参用にも最適でしょう。
おすすめの商品をいくつか紹介しましょう。
まず、王様堂本店の「東京あられ」。
国産米菓で初めてハラル認証を取得した、一口サイズのあられ。現地のムスリムに好まれている甘みのある醤油味が特徴です。
次に、かとう製菓のハラル認証せんべい「いかの北海揚げ」は、マレーシアやドバイなど現地でも商品展開する人気ぶり。
シンガポールでは日本での価格の2倍で売り出したにもかかわらず飛ぶように売れたとか。
そして、日本でもよく知られる葉巻型の洋菓子「ヨックモック」は、アラブ首長国連邦の富裕層が大人買いする定番商品。
羽田空港第2旅客ターミナルには専門店を構えています。
食品以外の選択肢でも注意を
食品類は難しいので、それ以外のものを海外出張へのおみやげに考える方もいるでしょう。
その場合でも宗教上の配慮は重要です。
例えば仏像や神社で手に入るお守り。
イスラム教は一神教であるため、唯一神アッラー以外に信仰の対象を持つことは許されないためです。
それ以外でも、人形類や浮世絵など、顔が描かれていたりかたどっていたりする民芸品は避けるべきです。
これはイスラム教が禁じている偶像崇拝を思わせる可能性があるからです。
日本文化を伝えたい気持ちからアニメのフィギュアのようなものを渡すのも、避けた方が良いでしょう。
一般的に中東方面で喜ばれる日本の民芸品としては、貝の光沢のある部分を切り出し、漆地にはめ込んだ螺鈿(らでん)製品や、器に漆で模様を描きその上から金粉を蒔いて装飾する蒔絵製品が挙げられます。
きらびやかな装飾で海外に数多くの愛好家がいます。
ただしこれらは比較的高額。
より手頃なところでは、女性向けの油取り紙や手ぬぐいなどが、お財布にも優しく、空港の免税店で手軽に手に入ります。
暑い地域へのおみやげには最適と言えるでしょう。
相手の文化を敬う気持ちで
宗教観は個人レベルの文化であり、相手を敬う気持ちで接するのが大原則。
相手側から見れば、私たち日本人も“異教の人”であることを認識しておくことが大事です。
それは海外出張先の相手との商談においても同じことが言えるのではないでしょうか。
その意味で、異文化圏へのおみやげ選びは、ビジネスを成功させる第一歩かも知れません。