ビジネス基礎知識

2025.09.17

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ユニコーン企業とは?日本の企業と知っておきたい知識や現状を紹介

近年「ユニコーン企業」という言葉を目にしたことがあるという人は、多いのではないでしょうか。
経済やビジネス、なかでもスタートアップに関する記事などでよく取り上げられています。
日本ではユニコーン企業はまだ少数ですが、世界では多くのユニコーン企業があり、注目を集めています。。
この記事では、ユニコーン企業とはなにか、また話題となっている背景や日本で少ない理由を取り上げます。
日本のユニコーン企業も紹介しますので、この記事を読めば「ユニコーン企業とは何か」が明確になるでしょう。
革新的な技術サービスを生み出しているユニコーン企業を見てみることで、ビジネスのヒントが見つかるかもしれません。
 

1.ユニコーン企業とは


 
ユニコーン企業とは、革新的なビジネスを立ち上げ、急成長を目指す起業であるスタートアップのなかでも、次の条件を備えている企業のことを指します。
 
1.設立から10年以内である
2.企業評価額10億ドル以上である
3.未上場である
4.テクノロジー関連の事業を展開している
 
上記の1〜3は、ユニコーン企業の必須条件ですが、「テクノロジーを扱う」ことは必須条件ではありません。
 
しかし現在、急成長している企業の多くがテクノロジー関連の事業を行っているため、ユニコーン企業はテクノロジーを扱っている場合がほとんどです。
 
上記の条件を満たす企業を「ユニコーン企業」と名付けたのは、シリコンバレーにあるベンチャーキャピタルのカウボーイ・ベンチャーズ創業者のアイリーン・リー氏です。
名付けられた2013年当時は、ユニコーン企業の条件を満たす企業は非常に稀だったため、伝説上の生き物であるユニコーンに喩えられました。
 

1-1.世界のユニコーン企業ランキングと多い理由

 
ユニコーン企業はどこにあるのでしょうか。
ここではユニコーン企業はどの国に多いか、解説します。
 
世界の経済や社会に関するデータを公開しているWorld Population Reviewによると、世界のユニコーン企業数は次のとおりです。
 
【ユニコーン企業数ランキング(2024年)】
1位 アメリカ 656社
2位 中国 168社
3位 インド 71社
4位 イギリス 53社
5位 ドイツ 30社
 
12位 日本 9社
 
日本は12位で、ユニコーン企業はまだ9社しかありません。
日本にユニコーン企業が少ない理由や、具体的な企業は後述しますので、ここでは1位から3位それぞれの国にユニコーン企業が多い理由を解説します。
 
まず、世界で最もユニコーン企業が多いのは、アメリカ。
特にシリコンバレーを中心に、ユニコーン企業が誕生しています。
その理由は、起業から事業の成長までを後押しする強固なスタートアップエコシステムが整っていたり、優秀な人材が集まっていたりすることから、スタートアップが飛躍的に進歩しやすい土壌であるためです。
 
中国も多くのユニコーン企業が誕生し、アメリカに次いで世界2位にランクインしています。
2015年に中国政府が発表した経済成長政策「大衆創業、万衆創新(大衆の創業、万人のイノベーション)」が、ユニコーン企業の誕生を後押ししているといえるでしょう。
この政策は起業しやすい環境づくりや起業支援などを講じるもので、スタートアップの成長を促しました。
 
3位のインドは、IT大国として知られているように、高い技術や豊富な知識を持つ優秀なIT人材を有しています。
起業したいと考える人は多く、さらにシリコンバレーなど海外でビジネスをしていた経験を持つ人が少なくありません。
海外でのビジネスで構築したグローバルなネットワークで、海外の投資家や起業家の協力を得やすいことも、ユニコーン企業が増えた理由の一つでしょう。
 

1-2.より高い評価額のデカコーン企業・ヘクトコーン企業

 
ユニコーン企業のなかでも、より高い評価額を得ている企業は次のように呼ばれています。
 
デカコーン企業:企業評価額が100億ドル以上
ヘクトコーン企業:評価額が1,000億ドル以上
 
これらの企業の数は非常に少なく、2025年7月の時点では、デカコーン企業はStripe、Canva、Klarna50社ほどしか存在しません。
ヘクトコーンに至ってはSpaceXとByteDance(中国)の2社のみです。
 

1-3.ゼブラ企業との違い

 
実在する生物の「ゼブラ(シマウマ)」に喩えられる「ゼブラ企業」も、近年よく話題にあがるスタートアップです。
しかし、ユニコーン企業とは対照的な存在です。
 
定義は明確化されていませんが、一般的に以下の条件を満たす企業がゼブラ企業と位置づけられます。
 
1.環境保全や地域活性化、貧困の解消など社会貢献を行う
2.株主や経営層だけで利益を独占するのではなく、幅広いステークホルダー(取引先、従業員、地域など)にも還元する
3.長期的な成長を目指す
4.新しい価値・仕組みを提供する
5.事業結果や資金の用途を幅広いステークホルダーに公開する
 
ユニコーン企業が急成長と評価額の高さを追求するのに対し、ゼブラ企業は長期的な成長や社会課題の解決を重視します。
企業の利益拡大と社会貢献の2つを目指す姿を、白と黒2つの色の縞模様を持つシマウマになぞらえて、2017年に4人の女性起業家によって「ゼブラ企業」と名付けられました。
 
日本の主なゼブラ企業:
株式会社ボーダレス・ジャパンウニノミクス株式会社株式会社陽と人
  
2.世界でユニコーン企業が増えた理由3つ
 

 
日本では、ユニコーン企業はまだ数が少なく認知度もさほど高くありませんが、世界的に見るとユニコーン企業は増えつつあります。
ユニコーン企業という言葉が生まれた2013年当時は、ユニコーン企業に該当する企業は、Facebook社、Google社、Airbnb社など39社ほどしかありませんでした。
 
その後、数年で急速に増加し2025年1月の時点で、世界には1,200社以上のユニコーン企業が存在します。
 
次からはユニコーン企業が増えた理由を解説します。
 

2-1.容易に資金調達ができる

 
まず、ユニコーン企業が増えたのは資金調達が以前よりも容易になったためです。
ユニコーン企業はアメリカ、中国、欧州に多く、これらの国はベンチャーキャピタルが増えたと同時に、投資額が増加しました。
よって、資金調達がしやすくなったことからユニコーン企業が増えたのです。
 
また、クラウドファンディングや非上場株セカンダリー取引など、資金調達方法が多様化したこともユニコーン企業誕生を促しています。
 

2-2.少ないコストで起業できる

 
近年はIT技術の進化によって、起業時のコストをカットできるようになりました。
たとえば、業務に必要なシステムにクラウドを導入すれば、自社サーバーを用意する必要がないため初期費用を削減できます。
さらに、サーバー管理に必要なコストもカットできます。
 

2-3.高い評価額を得やすい

 
テクノロジーの分野は急成長を遂げる可能性が高く、将来性や収益性を感じられ、市場からの評価額が高くなることから、ユニコーン企業が増加しています。
日々新たな技術やサービスが登場しており、特にAIやクラウドサービスの需要は非常に高いです。
よって、テクノロジー分野の市場規模は拡大の一途をたどっています。
 
そのため、テクノロジー分野のビジネスを行うスタートアップは評価額が高くなり、その結果ユニコーン企業へと成長するのです。
 

3.日本にユニコーン企業が少ない理由

 

 
世界でユニコーン企業が増えている一方で、日本ではさほど増加していません。
日本にユニコーン企業が少ないのはなぜなのでしょうか。
 

3-1.起業を目指す人が少ない

そもそも日本では、男女ともに起業をしたいと考える人が少ないといわれています。
ほかの先進国と開業率を比較した以下のグラフを見ると、イギリスやフランス、アメリカ、ドイツよりも開業率が低いことがわかるでしょう。
 

画像出典:経済産業省 事務局説明資料 (スタートアップについて)「低い開業率」
 
起業して失敗することを恐れている、身近に起業家がいないことから、起業するイメージが湧かないといった理由で、日本では起業家が少ないと言われています。
 
また、日本人は安定した雇用を求める人が多く、他国と比べると起業するよりも会社員として働くことを望む傾向にあります。
以下のグラフを見ると、欧米や中国では大半の人が「起業が望ましい選択職業だ」と考えていますが、日本人でそう考える人はわずか23%です。
 

画像出典:経済産業省事務局説明資料(スタートアップについて)「起業に対する社会の評価」
 
そもそも起業をしたいと考える人が少ないので、ユニコーン企業が誕生しにくいのです。
 

3-2.資金調達が難しい

 
日本はベンチャー投資額が少なく、他国と比べると大きく遅れをとっています。


画像出典:内閣府 スタートアップ・エコシステムの現状と課題「我が国スタートアップ・エコシステムの課題①」
 
日本の投資家はリスクを回避するため、上場していない起業への投資を避けがちです。
そのため、スタートアップは投資家からの資金調達が、他国より難しいといわれています。
 
また、次のグラフによると海外では、成長終盤期であるレーターステージにある企業への投資が半数以上を締めているのに対し、日本ではレーターステージへの投資額がわずか7%です。
レーターステージにある企業が資金不足に陥ると、事業の成長が困難になるだけでなく、既存事業の維持も難しくなり、最悪の場合は倒産に陥ることも。
 
なお、以下のグラフにある「シード」「アーリー」「レーター」とは、スタートアップの成長ステージのことで、それぞれ次の段階を表します。
 
・シード:創業直後、事業開始の段階
・アーリー:事業を本格的に展開する段階
・レーター:事業の規模拡大を目指す段階
 

画像出典:内閣府 スタートアップ・エコシステムの現状と課題「我が国スタートアップ・エコシステムの課題①」
 
このように、日本では創業期に資金調達ができても、それ以降の調達が難しく、事業を続けることが困難なのです。
こうした事情を知って、起業を諦める人も少なくありません。
 

3-3.上場を選択する企業が多い

 
日本では、スタートアップが成長すると、上場を選択するというケースが多く見られます。
上場すると、株式による資金調達が可能となるばかりか、知名度や信頼性が向上し、それにより人材確保がしやすいといった多くのメリットがあるため、上場を選ぶケースが多いのです。
 
例えば、フリマアプリのメルカリは2013年に設立してから、急成長を遂げ、2016年には黒字化に成功し、ユニコーン企業となりました。
しかし、2018年に東証マザーズ(現在は東証プライム)に上場したため、現在はユニコーン企業ではありません。
 
一方、ユニコーン企業が多いアメリカは、日本と比べて上場へのハードルが非常に高いため、未上場の企業が多いことからユニコーン企業が増加しています。
 

3-4.人材確保が難しい

 
ユニコーン企業の条件に「設立してから10年以内」「企業評価額10億円以上」があります。
急成長し高い評価額を得るには、高度な技術や高い専門知識を持つ人材が不可欠ですが、このような人材確保は困難です。
 
日本では少子高齢化が進み、どの業界でも労働力不足が深刻化しています。
特にIT人材は確保が難しく、優秀なIT優秀な人材には高待遇で採用しようとする大手企業が増えてきていることも要因です。
 

ユニコーン企業で働く意義と注意点
ユニコーン企業は成長スピードが早く、高い評価を得られるような革新的な技術やサービスを展開しています。
そのため、ユニコーン企業で働けば、さまざまな刺激的な経験ができるでしょう。
また次のようなことも期待できます。

・社員個人のスキルや知識などの向上も求められる環境にあるので、自己成長ができる
・従業員数が少ない傾向にあり、大きなプロジェクトに関われる機会がある
・経営者との距離が近いので、起業の知識を学ぶチャンスがある
・将来、世界的に知られる企業になる可能性がある
・企業が成長すれば収入アップが期待できる

自分自身を成長させたい、起業したいといった人にはうってつけの環境ですが、従業員が少ない分、任される仕事が多いことを覚えておきましょう。
また、指示を待つのではなく、自発的に考え動くことを要求されることがほとんどです。

 

4.日本のユニコーン企業ランキング

日本には2025年の時点で9つのユニコーン企業が存在します。
最後に、日本にあるユニコーン企業を企業評価額順に見ていきましょう。
 

4-1.【1位】株式会社Prefered Networks


画像出典:https://www.preferred.jp/ja/
 
1位の株式会社Preferred Networksは、大量のデータから特徴を学習する「ディープラーニング(深層学習)」といった最先端のAIを活用し、さまざまな社会課題の解決を目指す企業です。
 
製造業やバイオヘルスケア、教育など活躍する分野は幅広く、2024年には、ENEOS川崎製油所の原油処理をAIシステムで行うシステムを開発し運転を開始。
原油処理には専門的な知識や経験が必要ですが、AIで自動化したことにより、効率化に成功しました。
 
公式サイト:https://www.preferred.jp/ja/
 

4-2.【2位】スマートニュース株式会社


画像出典:https://www.smartnews.com/ja
 
ニュースアプリ「SmartNews(スマートニュース)」を運営しているのが、スマートニュース株式会社で、評価額は2位です。
 
スマートニュースとは、3000のメディアのニュースを読めるアプリ。
一般的にニュースアプリの提携メディアは数100から1,000程度ですが、スマートニュースはその3倍です。
多くのメディアからのニュースを閲覧できるので、さまざまな視点の情報を得られます。
さらに、AIでユーザー一人ひとりに適した情報を届けてくれます。
 
スマートニュースは、多くの媒体からのニュースを閲覧できるため、偏った情報ではなく異なる視点の情報を得られることから、アメリカでも高く評価され、日本のニュースアプリでありながら、アメリカの複数の企業から投資を受けるまでになりました。
 
公式サイト:https://www.smartnews.com/ja
 

4-3.【3位】SmartHR株式会社


画像出典:https://smarthr.co.jp/
 
労働に関する社会課題をテクノロジーで解決しようとしているのが、SmartHR株式会社です。
2015年には、人事労務クラウドサービス「SmartHR」を公開。
勤怠管理や給与計算、入社手続き、採用管理、人事評価と言った業務を効率よく行えます。
さまざまな業務を効率化することで、生産性を向上し働く意欲を高めるといった効果を狙っています。
 
SmartHRは多くの企業に導入され、シェアナンバー1となりましたが、市場拡大が期待できることや、売上の成長スピードが早いことが評価され、2024年には約214億円もの資金調達を達成しました。
 
公式サイト:https://smarthr.co.jp/
 

4-4.【4位】Spiber株式会社


画像出典:https://spiber.inc/ja
 
4位にランクインしたのは、環境課題を解決するためのソリューションを手掛けるSpiber株式会社。
同社が研究・開発したバイオ由来のプロテイン素材は、石油や動物などの資源を使用せず、生分解性に優れた環境に配慮した素材です。
さらに、製造過程の温室効果ガスの排出量の削減にも成功。
 
この技術が将来性があると評価され、累計1000億円の資金調達に成功しました。
 
公式サイト:https://spiber.inc/ja
 

4-5.【5位】プレイコー株式会社


画像出典:https://www.play.co/jp
 
5位には世界初のインスタントゲーム企業がランクイン。
インスタントゲームは、スマホなどのデバイスにダウンロードせず、世界中のプレイヤーとメッセンジャーアプリ上で遊べるゲームのことです。
 
同社は4人の共同創業者がおり、それぞれ高い技術を持ち、ゲーム業界で多くの実績を積んでいることや、市場が世界数10億人と巨大であることから、2020年に投資家より約100億円もの資金を調達しました。
 
公式サイト:https://www.play.co/jp
 

4-6.【5位】Opn株式会社


画像出典:https://www.opn.ooo/jp-ja/about-us/
 
同じく5位のOpn株式会社は、アジアを中心としたグローバルな決済ソリューションを提供しています。
世界の市場にシェアを拡大できることが評価され、2022年に1億2,000万ドルの資金調達を果たし、ユニコーン企業となりました。
 
公式サイト:https://www.opn.ooo/jp-ja/about-us/
 

4-7.【5位】Go株式会社


画像出典:https://goinc.jp/
 
タクシー配車アプリ「Go」を運営しているGo株式会社もユニコーン企業のひとつです。
多くの投資額を調達できユニコーン企業となった要因は、AIを活用した配車の最適化などが革新的であることが高く評価されたこと。
また、タクシードライバー不足の解消を目指す求人サイト「Go JOB」の立ち上げが社会課題の解決に有効だと評価されたことや、電気自動車の導入支援、再生可能エネルギーの活用といった環境問題解決にも貢献していることも、評価額が高まった理由です。
 
公式サイト:https://goinc.jp/
 

4-8.【5位】SakanaAI


画像出典:https://sakana.ai/blog/
 
5位のSakanaAIとは、設立からたった1年で評価額11億ドルを超えたユニコーン企業です。
複数のAIを組み合わせてより高度なAIを開発する手法で、膨大な量のデータに頼らず、より用意に精度の高いAI開発に成功しました。
 
従来の開発方法とは異なる革新的な開発アプローチで注目を浴びたことが、短期間で資金調達ができた理由だといわれています。
 
公式サイト:https://sakana.ai/blog/
 

まとめ:ユニコーン企業の動向を知りビジネスチャンスを広げよう

ユニコーン企業は革新的なイノベーションから、世界経済を牽引する存在とも言われています。
そのため、特に起業家や投資家の間で、ユニコーン企業は注視すべき存在です。
 
しかし、起業や投資の予定がなくても、ユニコーン企業を知っておくメリットは多いにあります。
たとえば、ユニコーン企業のビジネスモデルやテクノロジーから、仕事のヒントや新たな視点を得られるかもしれません。
 
仕事で自分の能力をもっと発揮したい、個人的に成長したいという方は、ユニコーン企業への転職を目指すのも手です。
もしかしたら、ユニコーン企業をチェックしたのがきっかけで起業してみたくなった、という方も現れるかもしれません。
 
何らかの発見や成長を得る意味でも、ユニコーン企業の動向を追ってみてはいかがでしょうか。

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