グレート・ファイアウォールは中国政府のネット規制!回避方法は?

グレート・ファイアウォールは中国政府のネット規制!回避方法は?

中国とのビジネスや出張で頭を悩ませる問題の一つに、中国政府によるネット規制「グレート・ファイアウォール(防火長城)」があります。これは、一部のサイトやSNSが中国からは閲覧できないようになっているシステムです。

仕事でSNSを活用したり、クラウド上でファイル共有したりすることが当り前となっている今、Googleなどのサービスが利用できなくなるグレート・ファイアウォールの存在は厄介です。

そこで、どのようなサイトが閲覧できないのか、また閲覧規制対象のサイトの代わりとなるサービス、そして規制の回避方法などを整理しました。

1.グレート・ファイアウォールは中国国家戦略のひとつ

初めてその存在を知る方にとっては、謎に包まれた存在のように思えるグレート・ファイアウォール。中国で自由にインターネットを閲覧するためには、グレート・ファイアウォールがどのようなものか、知ることが大切です。

グレート・ファイアウォールがどのようにインターネット規制をしているのか、また、規制がされている理由や中国で閲覧できないサイトを見ていきましょう。

1-1.グレート・ファイアウォールとは

中国政府は1993年に、政府や金融など12の分野の業務を電子化・情報化する国家プロジェクトを打ち立てました。その一環として、中国政府は情報管理システム構築を目指す「金盾計画(きんじゅんけいかく)」を開始。グレート・ファイアウォールはこの金盾計画の一部で、中国国内におけるインターネット通信を監視し、接続先によっては遮断し閲覧できないようにするシステムです。

1-2.グレート・ファイアウォールによる通信遮断となるケース4つ

グレート・ファイアウォールは、中国国内からインターネットを経由したアクセスをすべて監視しています。その際、以下に当てはまると通信が遮断され閲覧できません。

<通信が遮断されて閲覧できない理由2つ>
(1)サイトそのものが規制対象の場合
(2)規制対象となっているIPアドレスの場合

また、監視システムは閲覧しようとしているサイトの内容をスキャンしています。スキャンした結果、以下の2つのうちどちらかに当てはまると、そのサイトにアクセスできないようブロックします。

<サイト自体がブロックされる理由2つ>
(1)サイトに政府批判に繋がる言葉など、遮断基準となるキーワードが含まれている場合
(2)内容が閲覧するにふさわしくないと判断された場合

出典:https://www.itreview.jp/blog/archives/3803

ちなみに、サイトの閲覧が規制されているとはいえ、アクセスすることは違法ではありません。単にサイトを見られないだけで、グレート・ファイアウォールをかいくぐってサイト閲覧をしても、罰せられることはありません。

筆者体験談: 中国で「チベット」と検索したらダライ・ラマ批判記事がトップに表示
2014年、上海在住時にチベット旅行のためにネットでチベットについて検索しました。すると、検索結果の上位はチベット仏教最高指導者のダライ・ラマを批判する記事ばかりという結果に。

VPNを利用せずにネットを使用していたことに気づき、VPNに接続。その後改めて検索しなおすと、チベットに関する旅行情報やニュースがトップに表示されました。

※1948年から1951年にかけて、中国はチベットを併合しました。チベット人はこの併合を「侵略」とみているため、チベット人による暴動や抗議が度々発生しています。このような反政府活動を抑制する目的で、ダライ・ラマ批判記事がトップに表示されると言われています。

1-3.規制目的は政府批判抑制と自国IT企業の成長

中国政府は規制目的を公式に発表していません。そのため推測ではありますが、目的は二つあると考えられています。

一つは「国民を有害な思想から守る」ため。
有害な思想とは、ポルノや中国では「邪教」とされる宗教、中国政府批判などが挙げられます。

もう一つが、中国IT企業の成長を後押しするためだと言われています。
GoogleやLINEなどの他国のIT企業が市場のシェアを独占してしまうと、国内のIT企業は成長しにくくなります。そこで、グレート・ファイアウォールで他国のサイトを閲覧できなくすることで、国内のIT企業のサービスを利用せざるを得ない環境を作り出しました。

実際に、「百度(Baidu)」「微博(WeiBo)」「微信(WeChat)」といった中国企業のサイトやSNS利用者が増えたことにより、中国のIT企業は急成長を遂げました。中でも「百度」の成長は目覚ましく、Googleに次いで世界2位のIT企業となっています。

1-4.グレート・ファイアウォールで規制されている主な16サイト

中国国内で中国政府が規制しているサイトにアクセスしてみても、「規制されている」といったメッセージは表示されません。画面には「表示できません」といったエラーメッセージが表れるのみ。

そのため、単なるエラーなのか閲覧したいサイトが規制されているのか、判断できません。事前にどんなサイトが見られないのか、中国で使えないサイトを把握しておきましょう。

2021年11月現在、グレート・ファイアウォールの規制により閲覧できない主なサイトは以下の通りです。

※表は筆者作成

上記以外でも、アメブロやFC2などのブログも閲覧できません。また、規制対象となるサイトは年々増加傾向にあり、上記に挙げたサイト以外も予告なしに規制対象となることもあり得ます。

直接グレート・ファイアウォールによってアクセスできなくなるという理由ではありませんが、GoogleのようにIT企業が中国から撤退することでアクセスできなくなるというケースも発生しています。
例えば、2021年10月15日LinkedInが、11月2日にはYahooが中国を撤退し、アクセスできない状態になりました。撤退理由は、中国政府からの法的な要求やビジネス環境が厳しくなっているため。これは、2021年11月に施行された中国の「個人情報保護法」も影響していると言われています。

※個人情報保護法:企業による個人情報データの中国国外への持ち出しを制限する法律
≪参考≫
ITMedia News
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2111/02/news061.html

ZDNet Japan
https://japan.zdnet.com/article/35178895/

中国で規制されているサイトを調べる方法
「comparitech.com」を利用することで、規制しているサイトを調べられます。

≪チェック方法≫
1.調べたいサイトのURLをコピーしドメインチェックの欄にURLをペースト、「Check」をクリックします。
2.閲覧できないサイトは「Not Working in China」と表示されます。

https://www.comparitech.com/privacy-security-tools/blockedinchina/

2.グレート・ファイアウォールの回避方法はVPN利用

中国で規制されているサイトを閲覧するには、VPNサービスを利用します。企業だけでなく、中国人、特に若い世代はVPNを契約して、InstagramやYouTubeなどを楽しんでいます。

VPNとはどんなものなのか、また使用する際の注意点やおすすめのVPNを紹介します。

2-1.通信内容を暗号化するVPNで回避

VPNとは「Virtual Private Network」の略で、インターネット回線上に仮想のプライベートなネットワークを作る仕組みです。

インターネット上の通信を暗号化するため、VPN通信中は、その内容が外部からは見えなくなります。そのため、グレートファイアウォール対策だけでなく、情報漏洩防止目的で、世界中の企業で利用されています。

グレート・ファイアウォールの監視システムであっても、VPNを利用した通信の内容を見ることができません。そのため、検閲に引っかかることなくサイトにアクセス可能になるという仕組みです。

2-2.VPNサービス選びの注意点

さまざまなIT企業が通信のセキュリティ強化のためにVPNサービスを提供していますが、どれでも良いかと言えば、そうではありません。グレート・ファイアウォール対策をしているVPNサービスを選ぶことが大切です。

理由は、VPNサービスを利用すればネット規制をかいくぐれるとはいえ、中国政府がVPN接続そのものを遮断する場合があるからです。
通常は、VPNに接続しようとすると、PCやスマートフォンの画面上に「VPNマーク」が表示されたり、「VPNConnected」と表示されたりします。ところが、2017年頃より徐々に
VPNに接続しようとしてもVPNマークが表示されず繋がらないため、規制サイトにアクセスできないというケースが増えました。

≪例:WindowsでVPNに接続した場合≫

画像出典:Windows 「Connect VPN への接続」の画像を筆者にて加工

≪例2: iPhoneでVPNに接続した場合≫

画像出典:IPHONE辞典

これは2017年1月に中国政府が、中国国内企業が提供しているVPNサービスを一部規制すると発表したことが影響しています。

現在は、無料で使えたVPNサービスはほぼ使えなくなり、一部の有料VPNサービスも接続できず利用できなくなったと言う声が上がっています。

完全に利用できなくなったVPNサービスもあれば、一時的に使えなくなったVPNサービスもあります。また、特定の地域で完全、または一時的にVPNサービスが使えないと言うケースもあります。接続できなくなる時期や地域は予測できないため、事前に特定することはできません。

毎年3月に開催される中国の国会・全国人民代表大会(全人代)や、1月後半から2月中旬ごろの旧正月の時期は、特に繋がらなくなることが多いと言われています。

2-3.中国で使いやすいVPNサービス2選

≪隠しサーバー機能でVPNブロックを回避・ExpressVPN≫
通信速度が速くセキュリティ機能が高いことから、最も多くの中国在住者が利用していると言われているサービスです。「隠しサーバー」という仕組みを備えており、通信を暗号化するだけでなく、VPNを使っていることも隠してくれるので、中国政府によるVPNブロックも防げます。

料金:1か月12.95USD(約1,470円)/6か月9.99USD(約1,135円)/12か月6.67USD(約760円)
※30日間返金保証あり、1USD=113.66円で計算
公式サイト:https://www.expressvpn.com/jp

≪キルスイッチで突然のVPN接続遮断にも対応・Astrill VPN≫
Astrill VPNは、中国国内での利用に特化して設計されました。中国政府のネット検閲を回避するために「ステルスVPN」という独自のプロトコル(通信技術)を使用しています。

また、何らかの理由でVPN接続が途切れた瞬間に、インターネット接続を遮断する「キルスイッチ」も備わっています。これは、VPNブロックを防げるだけでなく、情報漏洩防止にも有効です。通信が不安定な中国では、心強い機能です。

料金:1か月20USD(約3,400円)/6か月15USD(約1,700円)/1年10USD(約1137円)
※1USD=113.66円で計算
公式サイト:https://www.astrill.com/ja/ 

VPNを使わずにグレート・ファイアウォールを回避する裏技
香港のSIMをスマホに挿入し、中国でスマホをWi-Fiルータ代わりに利用する方法でもインターネット規制を回避可能です。これは、香港は中国とは異なる法制度のため可能となっています。

しかし、香港SIMを利用した方法は、今後、注意が必要となるかもしれません。2021年に香港で初めてインターネット規制がなされたためです。民主化運動を支援するサイト「香港編年史」が2021年1月に香港のインターネット接続業者により遮断されました。これは、2020年に激化した香港民主化デモの影響によるものと言われています。

参考サイト:SankeiBiz
https://www.sankeibiz.jp/macro/news/210115/mcb2101152237026-n1.htm

≪番外編≫VPNを介さず中国で利用できる「中国どこでもWiFiモバイルプラン」

中国と日本間の国際通信事業を行っているJOYTEL JAPANが提供するモバイルWiFiサービスです。VPNを介さずにグレート・ファイアウォールによって規制されているサイトにアクセスができます。

JOYTELグループに所属する上海の通信会社「上海畅晓信息科技有限公司」が、中国
の正式な通信事業経営ライセンスを取得したことにより提供可能となったサービスです。

VPNを介さずにグレート・ファイアウォールを回避できる仕組みについては明らかにされていませんが、VPNの取り締まりが強化されている今、心強いサービスと言えるでしょう。

料金:月額380元(約6,800円)
公式サイト:https://www.joytel.jp/dokodemo-wifi-home/plan/  
参考サイト:https://www.nikkan.co.jp/releases/view/130997  

3.中国企業や中国オフィスの取引先と仕事をするときの対策4つ

中国とのビジネスは、グレート・ファイアウォール対策をする必要があります。例えばVPNを介して規制されているサ―ビスを利用すると、万が一VPNをブロックされたときにビジネスもストップしてしまいます。そのため、グレート・ファイアウォール対策として、VPNと併用して現地で利用できるサービスを知っておくと心強いでしょう。

3-1.データ共有は現地でも使えるサービスを使う

データ共有にクラウドストレージを利用することが増えてきました。ところが、中国ではDropboxやBOXが規制されています。
中国で利用可能なのは、MicroSoftのSharePointです。世界中で利用されているため、最も使いやすいでしょう。

また、次に紹介するデータ共有サービスも中国で利用可能です。

≪Sync≫
セキュリティ面では、世界最高レベルと言われており、ビジネス利用におすすめのサービスです。5GBまでは無料で利用できますが、紹介でユーザーを獲得するごとに、紹介者と新規ユーザー双方に1GB付与。最大36GBまで使えるようになるというユニークな料金体系です。

公式サイト:https://www.sync.com/

中国のクラウドストレージサービスを使ってみるのも良いでしょう。中国系のサービスには次のようなものがあります。

≪魏雲(Weiyun )≫
中国の最大手IT企業である騰訊(Tencent)が運営するクラウドストレージサービスです。
月額30元(約535円)で容量6TB(6,000GB)が利用可能ですので、動画などサイズの大きいファイルなどを共有することが多い方におすすめです。

公式サイト:https://www.weiyun.com/ 

≪坚果云(Nutstore)≫
使い方が簡単で、容量の大きいファイルのアップロードが高速でできると評判の高いサービスです。中国国内の大手企業や大学でも利用されています。

公式サイト:https://www.jianguoyun.com/

中国語が読み書きできる方なら、百度が提供する「百度网盘」もおすすめです。

≪百度网盘(Baidu Wangpan)≫
中国で最も多くの人が使っているオンラインストレージサービス。無料で2TB(2,000GB)モノストレージが使えます。

公式サイト:https://pan.baidu.com/

3-2.動画共有はYouTubeに代わる動画プラットホームを使う

動画共有の際にYouTubeに動画をアップし、限定公開にして関係者と共有している人は多いでしょう。しかし、中国ではYouTubeは規制対象です。中国では、YouTubeに似たような 動画プラットフォームが使われています。

≪优酷(Youku)≫
青森県がインバウンド対策のプロモーション動画をアップするなど、行政も注目している中国の動画プラットフォームです。限定公開ができる点も魅力的ですね。

参考:青森県プロモーション動画「小梦Tube」
https://i.youku.com/xmtube

公式サイト:https://www.youku.com/

3-3.オンラインミーティングはZoomやTeamsでも大丈夫

最近ではすっかり定着したオンラインミーティング。ZoomもTeamsも中国で利用可能ですので、現在のところ心配不要です。

Skypeも利用可能と言われていますが、原因不明の使えないケースが報告されているため、中国ビジネスでのやりとりにはおすすめできません。

3-4.中国進出するならアプリ「微信(WeChat)」も使ってみよう

中国では、InstagramやFacebookなどのSNSが使えません。また、LINEも利用不可。代わりに、「微信」という中国版LINEのようなアプリを利用しています。

メッセージ送信機能のほか、音声通話やビデオ通話が可能です。また、「モーメンツ」という機能があり、写真やテキストを投稿しSNSとしても利用しています。

また、「WeChat Pay」というバーコード決済機能が非常に便利。中国のほとんどのお店で使え、ユーザー同士の送金も可能です。ただし、中国の銀行口座を開く必要があるため、WeChat Payの利用は長期滞在者向けです。

中国人と仲良くなると「微信アカウント持っている?」と尋ねられることが多いので、中国へ行くなら用意しておきたいアプリです。

まとめ:グレート・ファイアウォールは工夫して乗り越えられる

中国のグレート・ファイアウォールによるインターネット規制は、規制理由や時期を公表せずに突然実施されることがほとんどです。そのため、昨日まで利用できていたサイトが今日は使えないということも発生しています。

だからといって、中国とのネットを介したやり取りをあきらめる必要はありません。中国政府によるネット規制は厳しくなってきていますが、規制をかいくぐるVPNサービスや中国で使えるサイトも生み出されてきています。

規制を突破するツールを利用して、時には中国のサイトを使うことが中国ビジネス成功のカギと言えるでしょう。

文:カワムラルイ(リベルタ)
編集:松本有為子(リベルタ)

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