ビジネス基礎知識

2025.12.17

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【活用例付】ビジネスフレームワークを解説!部門別の基本知識を紹介

ビジネスフレームワークを活用したことはありますか。
ビジネスフレームワークは「思考の型」といわれ、いくつか例を知っているだけで、普段の仕事でも戦略的・構造的に物事を考えられるようになります。
予測不可能な時代だと言われているからこそ、より冷静にそして客観的にビジネスの現在地を把握して次につながるアクションのために活用したいもの。
物事を始める前に、寄り道せずに、スッキリと思考を整理するためにもぜひ活用してみましょう。
今回は、ビジネスフレームワークの初心者向けに、営業やマーケティング、新事業創業創出など部門ごとに使えるビジネスフレームワーク例を分かりやすい図解付きでご紹介します。
具体的な活用ガイドも記事の後半で取り上げますので、ぜひ参考にしてみてください。

目次

1.ビジネスフレームワークとはそもそも何か

具体的なビジネスフレームワークの例を見る前に、ビジネスフレームワークとはいったいどのようなもので、多くの人が使うのはなぜなのかを紐解いてみましょう。
ビジネスフレームワークを活用する意義をしっかりと理解すれば、形式的ではなく実践に即した形での思考や議論を深めるきっかけとなるはずです。

1-1.フレームワークは「思考の型」


画像:筆者作成

フレームワークとは、簡単に行ってしまえばビジネス上の課題やアイデアを整理し、論理的に考えるための「思考の型」です。

もう少し違う言葉を使えば、「情報やアイデアを整理するための地図」のようなものといってもいいかもしれません。
複雑な事象もフレームワークに沿って情報を整理することで、一つの事象に対する理解の進度を深められたり、状況把握を抜け漏れなく行えたりします。
さらには、一見複雑に見えるようなビジネス環境や情勢を構造的に捉える助けになります。

1-2.構造的な思考をアシストするフレームワーク

ビジネスフレームワークを活用する意義は、思考を「早く・深く・共有できる」ことだと言っても過言ではありません。
とくに変化の早いビジネスの現場では、時間や情報が限られた中で意思決定を迫られることが多いものです。
だからこそ決断やアクションをより早くするためにも、物事を構造的に考えるためにビジネスフレームワークを活用しましょう。

なお、代表的なものとしてよく知られているものは以下のとおりです。

<代表的なビジネスフレームワーク例>
「SWOT分析」
自社の「強み Strong・弱み Week・機会 Opotunity・脅威 Threat」を整理するフレームワーク

「STP分析」
マーケティングにおいて「市場の細分化 Segmentation」「狙う市場 Targeting」「競合との差別化 Positioning」を整理して、狙うべきポイントを考えるフレームワーク

これらのフレームワークについては後ほど紹介しますが、目的ごとにこうした思考の型を使うことで、社内やチーム内で状況や戦略を分析し議論する際の共通認識が整い、戦略を考えるのがよりスムーズになります。

2.フレームワークが使われる理由

ビジネスのシーンで活用できるフレームワークは著名なものから専門的なものまで数多くあります。
具体的なフレームワームの例や活用シーンをご紹介する前に、なぜフレームワークがこれほど使われるようになっているのかを簡単に振り返ってみましょう。

2-1.理由1:思考のスピードと精度を高められる

ある一定の型に沿って思考や情報を整理することで、短時間で抜け漏れのない分析ができるようになります。
これをビジネスのシーンで行うために用いられるのがビジネスフレームワークです。

ビジネスに限った話ではありませんが、物事や状況を正しく把握し理解するのは、情報が多ければ多いほど簡単なことではありません。
そのため、どのような情報にフォーカスを合わせるのか、相互関係をどう理解するのかなど、考えるべき手順すら手探りの状態からはじめるのでは時間がかかってしまいます。
その点、ビジネスフレームワークなら「何から考えればよいのか」が型として定められているので、何を考えるべきかを考える手間や時間がなくなるのです。

例えば、新製品の市場分析を行うときによく用いられる「3C(顧客・競合・自社)」分析のフレームワークは、自社製品の立ち位置や強み・弱点などの要点が自然と整理できるため広く普及しています。

2-2.理由2:チームの共通言語になる

チームメンバーや経営陣と議論する際にもフレームワークは役立てられます。
なぜなら、フレームワークは共通の思考フレームとなるからです。
例えば、会議のシーンで「現状をSWOTで整理してみよう」など、フレームワーク名だけで議論の方向性が共有できるのはとても便利です。
フレームワークの型さえチームメンバーの共通認識になっていれば、一言で議論の方向性を共有できます。

2-3.理由3:意思決定をサポートできる

ビジネスで物事を判断する上で、ときとして障害となるのが感情です。
感情に左右されずに、客観的かつ論理的な判断基準のもとで意思決定する上で役立つのがビジネスフレームワークです。

冷静に状況を把握しなければいけないシーンや構造的な分析をするシーンでは、主観や感情に流されにくい状況を作るために現実を整理する手掛かりとしてビジネスフレームワークを活用してみましょう。
また、散逸している数字や要素、状況の因果関係を可視化するなどして整理すれば、「どの打ち手が本質的な解決につながるか」を見極めやすくなります。

3.ビジネスフレームワーク活用時の注意点

ここまで見てきたように、ビジネスフレームワークは思考を整理したりチームでビジネスを構築したりする上で便利な道具です。
ただし、使い方を誤ると逆効果になることがあるのでその点は注意が必要。
具体的なフレームワークやその活用したことによる成功事例についてご紹介する前に、より有効に使いこなすためのポイントをお話ししましょう。

いずれのポイントでも共通するのは、ビジネスフレームワークは、単なる思考の“整理”ではなく“行動につなげること”が目的である点にあります。

3-1.注意点1:ゴールを明確化してからビジネスフレームワークを使う

目的が曖昧なまま、「とりあえず」と形式的にフレームワークに沿って情報を埋めるのはあまり意味がありません。
なぜなら、フレームワークは“答えを出すツール”ではなく、“考えるための補助線”でしかないからです。

「とりあえず良さそうだからこのビジネスフレームワークを使ってみる」というスタンスで型にはめて物事を分析することはやめましょう。
早速始めてみたい気持ちもわかりますが、まずは冷静になって今、自分たちは「何を知りたいのか」「どのような意思決定を支えるのか」というゴールを明確にした上でフレームワークを使うことが大切です。

3-2.注意点2:現実のデータ・現場感とのズレを意識する

なかには、ビジネスフレームワークを活用した分析は「机上の空論でしかない」と考える方もいらっしゃるかも知れません。
確かに、ときには分析が単なる作業にしかならず、現実と即していない結果を生み出してしまうことも少なくありません。

こうした机上の空論に終わってしまう大きな原因は、“事象やデータの裏側”を見ないことにあります。
例えば、いくらSWOT分析で自社製品の「強み」を挙げても、それはあくまでも売り手側の強みとしてしか考えていないなら、顧客にとって本当に価値がある強みかどうかは怪しくなってしまいます。

現場での顧客ヒアリングや実際の購買データなどもきちんと目を通し、視点が現場と乖離していないかを逐一検討することで、ビジネスフレームワークがより効果的に活用できるはずです。

4.部門別抑えておくべきビジネスフレームワーク例の一覧

ビジネスフレームワークは「目的別ツール群」として捉えておくと便利です。
具体的な例や活用方法を解説する前に、まずはご自身の仕事にどのようなフレームワークが活用できるのかを俯瞰的に把握してみましょう。

次の表は、どのようなフレームワークが部門別で使われることが多いのかをまとめたものです。
ご自身が所属する部門の課題に対応するフレームワークが一目でわかるようになっているので参考にしてみてください。


画像:筆者作成

現段階では、上の表でご紹介するビジネスフレームワークの例の中には、知らないものも多いかもしれません。
ですが焦ることはありません。
表でご紹介しているビジネスフレームワークは3章以降でも詳しく解説していきまので、まずは「このようなものがあるのか」程度に目を通してみてください。

特に意識してみていただきたいのが、それぞれの目的です。
これからビジネスフレームワークを活用するなら、部門ごとに目的や課題が異なるため、「何のために使うか」を起点に選ぶことが重要です。

5.営業部門で使える3つのビジネスフレームワーク例

主に商談の管理や顧客分析で営業活動を後押しするフレームワークとして抑えておきたいのが、次の3つです。

・BANT
・MEDDIC
・チャレンジャーセールス

営業はとかく「経験と感覚」に頼りがちな領域です。
ですが、営業マンの手腕次第で結果が大きく左右されるようでは、組織としては脆弱になってしまいます。
だからこそ、これからご紹介するビジネスフレームワークを使いながら、商談プロセスや顧客理解を再現可能な形で可視化してみましょう。

特にこうしたフレームワークが役立つのは、成約に至るまでの意思決定プロセスやクライアントの思惑・状況が複雑なBtoB営業です。
ビジネスフレームワークを使い、チーム内で判断基準や進捗共有を共通化できれば、状況を正しく・分かりやすく・構造的に理解できます。
属人的ではなく構造化された営業活動を展開する助けとなるはずです。

5-1.顧客情報整理に役立つ「BANT」

BANTとは、Budget(予算)、Authority(決裁権)、Needs(ニーズ)、Timeframe(導入時期)の4つの視点から顧客情報を整理するビジネスフレームワークです。

このビジネスフレームワークに沿って状況を把握することで見込み顧客の優先順位づけや商談フェーズの見極めに役立ちます。

また、現場の営業担当者が顧客に対するヒアリング時にも、このBANTのポイントを抑えると整理しやすくなるでしょう。


画像:筆者作成

また、具体的な活用例としては、アプローチ中の顧客をBANT評価で整理して、「今期決裁可能な顧客を重点的にフォローする」などといった部署全体の戦略策定です。
無駄な動きを減らすことで、より営業リソースを効果的に活用でき、商談成約アップなどに繋げられます。

5-2.営業フェーズを感覚ではなく可視化する「MEDDPICC」

MEDDPICC(メディピック)とは、Metrics/Economic Buyer/Decision Criteria/Decision Process/Paper Process/Identify Pain/Champion/Competitionの頭文字をとったビジネスフレームワークです。

特にステークホルダーが多い案件や大型商談などでは、営業戦略を建てる上で成約に至るまでの、道筋やスケジュール感を把握しにくいもの。
そんなとき、営業フェーズがどこにあるのか、ボトルネックは何なのかなどを可視化・共有する上でも役立つのがMEDDIPICです。


画像:筆者作成

MEDDIPICCで参考にするのは、次の8つの視点です。

・Metrics:測定指標…顧客が期待する具体的な数値目標
・Economic Buyer:経済的意思決定者…最終的な決済権限を持つ人
・Decision Criteria:意思決定基準…製品を選ぶ際の価値判断ポイント
・Decision Process:意思決定プロセス…いわゆるカスタマージャーニー
・Paper Process:契約手続きプロセス
・Identify Pain:課題の特定…顧客が抱える課題感(ニーズにもつながる)
・Champion:推進者…製品やサービスの良さを社内で伝えてくれるインフルエンサー
・Competition:競合状況…他社との差別化や優位性はどこにあるか

先ほどご紹介したビジネスフレーム「BANT」より、さらに詳細な8つの視点から情報を整理するので価格の高い案件などで活用してみるとよいでしょう。
営業をより論理的、戦略的に進める上で役立つ確認ポイントとなるはずです。

5-3.顧客に変革を訴えかける「チャレンジャー・セールスモデル」

チャレンジャー・セールスモデルは米CEB社の調査から生まれた「トップ営業の思考法」です。
このビジネスフレームは、顧客が今まで持っていなかった新たな視点を営業によって提供し、課題を再定義させるスタイルであることが特徴です。

具体的には、顧客に対して次の3つのステップでアプローチしていくこととなります。

STEP1
 教える(Teach):顧客が気づいていない課題を提示する

STEP2
 調整する(Tailor):業界・企業ごとに提案を最適化する

STEP3
 掌握する(Take Control):商談を主導し、決裁を後押しする

顧客に、顧客自身がまだ築いていない潜在課題を「痛み」であると気づかせることがチャレンジャー・セールスモデルの第一歩。
そこから解決の方向を一緒に考えることで、顧客の課題を一緒に解決する伴走者のような立場を維持しながら、自社の製品を購入してもらうよう誘導していくビジネスフレームモデルです。

6.マーケティングで使える4つのビジネスフレームワーク例

マーケティングにおける重要な思考の流れは、顧客理解と価値提案と価値提示、さらにその成果を測るというフローです。
このフローに沿ってマーケティング戦略を立て、実践し、実施後に課題を振り返っていくことで、戦略立案を再現性のある形で設計できるようになります。

様々な要因で成否が左右するマーケティングの世界でも、これからご紹介するビジネスフレームワークの例を活用することで、担当者の感覚的な施策に陥ることなくより効果的な施策を打ち出せるようになります。
さらに、論理的に「なぜその打ち手を取るのか」を説明できるようになれば、施策を実施する上でも社内稟議がおりやすくなり、顧客への説得力も増します。

次からは、マーケティングで使う代表的な5つのビジネスフレームワークの例を、戦略設計から実行・管理までの流れで解説しましょう。

6-1.誰に何をどう伝えるかを整理する「STP分析」


画像:筆者作成

STP分析は、市場をセグメント化(Segmentation)して、ターゲット(Targeting)を選定し、市場における製品やサービスのポジション(Positioning)を定義するビジネスフレームワークです。

例えば、化粧品ブランドがSNSでの反応率向上に向けて、「Z世代 × 肌悩み訴求」層をターゲットにSTP分析する際には、次のようなSTP分析ができます。

【セグメント化】
年代はZ世代(18〜26歳前後)
ニキビ・毛穴・乾燥・赤みなどの肌悩みを抱える人(性別問わず)

【ターゲティング】
透明感・清潔感を重視する美容男子や、敏感肌ケアに関心のある男女

【ポジショニング】
「肌悩みを隠さず、前向きに向き合う」をテーマに、隠すのではなく“ありのまま肌”応援ブランドとして打ち出す

ターゲットとして狙いたい顧客層をセグメントし大枠を決めたうえで、「どのような価値観やニーズを持つ顧客か」といった視点でより詳細に顧客層を選定します。
そのうえで、自社製品やブランドが市場でどのような位置付けを目指すのかを考えていくことで、マーケティングにおいて誰に何をどう伝えるかを整理できます。

6-2.顧客への価値提供を明確化する「4P/7P分析」

顧客に対して、自社の製品やサービスがどのような価値提供ができるかを整理するビジネスフレームワークとして有名なのが4P分析です。

4P分析は、Product(製品)・Price(価格)・Place(流通)・Promotion(販促)の視点から考えていくのですが、最近ではさらにサービス業などで必要な視点を取り入れた7P分析もビジネスフレームワークとして使われています。
7P分析では、People(人)/Process(サービスプロセス)/Physical Evidence(物理的証拠)の視点を加えたものとなります。


画像:筆者作成

もう少し具体的に各項目がどのようなものなのかを整理してみましょう。

・Product:提供する製品やサービスの特性・品質・機能・デザインなど
・Price:提供価値に対する価格設定・割引戦略・支払い条件
・Promotion:製品の価値を伝え、購買を促進する活動
・Place:顧客に製品をどこに届けるか(オンラインなのか?店舗なのか?)
・Physical Evidence:ブランドやサービスの信頼性を感じさせる要素
・Process:顧客が商品・サービスを受け取るまでの流れ
・People:顧客に接する人、スタッフ、ブランドの人格など

4P分析や7P分析は、いわば顧客への提供価値を具体的な戦略に落とし込むための設計図。この分析に沿って、製品ライン・販路・広告メッセージなどで統一感を持たせることで、ターゲット層により響くマーケティングに近づけます。

6-3.顧客行動を可視化する「AIDA/RACEモデル」

AIDAモデルは、Attention(注目)、Interest(関心)、Desire(欲求)、Action(行動)という消費者購買行動の心理プロセスを示したビジネスフレームワークです。


画像:筆者作成

また、SNSなどインターネット上でのマーケティングが主流となっていることから、近年ではオンライン戦略も考えた「RACEモデル(Reach/Act/Convert/Engage)が広く活用されています。

AIDAやRACEといったビジネスフレームワークを活用すると、自社製品やサービスに顧客が購買に至るまでのどの段階で離脱しているかを把握できます。

もう少し具体例を挙げると、「ホームページには来ているけれど購買に至らないなら、購入のための動線がよくないのかも…」といったように、マーケティングにおいて必要なコンテンツ設計や広告配信先などを検討したり効果を測ったりするための分析指標となります。

特にRACEは、SNSやWeb施策などデジタル接点を持つ企業において、顧客行動の地図として役立てられます。


画像:筆者作成

各フェーズに目標達成のための指標(KPI)を設定し、継続的に改善をしていくことで、コンバージョン率や顧客ロイヤリティの向上につながることから、SNS広告などを展開する際にはぜひ参考にしてみたいビジネスフレームワークです。

6-4.顧客価値を「見える化」するバリュープロポジションキャンバス

顧客が求める価値と、自社が提供できる価値の整合性を明確にするのが、バリュープロポジションキャンバスです。

右側に「顧客セグメント(顧客の利得・悩み・顧客が解決したい課題)」を書き込み、左側に「自社の価値提案(製品サービス・顧客の利得をもたらすもの・顧客の悩みを取り除くもの)」を整理するのがこのビジネスフレームワークの使い方です。

顧客の目線に立って情報を整理して可視化すると、お互いがいかにフィット”するかを可視化できます。


画像:筆者作成

例えば、バリューポジションキャンバスが使えるのが、製品を開発する際や、広告メッセージ作成などのシーンです。
どのような価値を顧客に打ち出していくかというポイントを整理しやすくなるでしょう。

もう少し具体的にお話しすると、顧客が「何に悩み、何を得たいのか」をより明確にし、それに対して自社がどのようなベネフィットを提供できるかをメッセージとして打ち出すことができるのです。
結果として、訴求軸に一貫性が生まれ、顧客の心に響く価値提案に繋げられます。

7.新規事業・経営戦略部門の4つのビジネスフレームワーク例

新規事業や経営戦略では「不確実性の高い未来」に向けて、根拠をもって判断する力が求められます。
ここからご紹介するビジネスフレームワークの4つの例は、情報を整理し、仮説を検証する戦略思考の地図とも言える考え方です。
分析・設計・実行の3段階に分けて、代表的なフレームワークをご紹介しましょう。

7-1.【分析】自社の立ち位置を客観視する「SWOT分析」

ビジネスフレームワークの中でも有名なSWOT分析で、自社の現状と市場環境を整理して戦略方向を導くための基本フレームワークです。
SWOTとは、内部環境の「強み(Strength)」と「弱み(Weakness)」、外部環境の「機会(Opportunity)」と「脅威(Threat)」をマトリクスで整理する基本の考え方です。


画像:筆者作成

上の表のようなSWOT分析の表に、自社のサービスなどの強み・弱み・機会・脅威を書き出すと、情報収集のツールではなく、意思決定の仮説を作るために役立てられます。
各要素を単に書き出すのではなく、「強み×機会」などの組み合わせから施策の仮説を導くことがポイント。
特に新規事業では「強みを活かして新市場に挑む」戦略仮説を構築する場面で有効になります。

7-2.【分析】外部環境や競争の構造を読み解く「3C分析とPEST分析」

自社の競争優位性を確認するために用いるのが、3C分析というフレームワーク。
市場における3つの主体(Customer:顧客/Competitor:競合・市場/Company:自社)を比較していくのが基本の進め方です。


画像:筆者作成

また、自社を取り巻く外部環境を分析する上で使われるのが、PEST分析です。
視点が3C分析とは異なり、ビジネスを取り巻くマクロ環境を4つの観点(政治・経済・社会・技術)で俯瞰するビジネスフレームワークです。

これは、3C分析におけるCostomer(市場・顧客)の状況をよりマクロな視点で分析する方法です。


画像:筆者作成

ビジネスを取り巻く環境が日々変化する中で、こうしたPEST分析の視点は欠かせないポイントです。

おすすめは、PESTと3C分析を合わせて使いながら、自社の立ち位置を確認する方法です。
まずはPESTで「外部の変化要因」を見つけ、3Cで「現場レベルの競争要因」を掘り下げることで、より解像度高く状況を見極められるでしょう。

2つのフレームワークで分析し、連動して考えることで、市場機会と自社の立ち位置をセットで捉える戦略思考に繋げられます。
このように、フレームワークは1つで完結するのではなく、複数を組み合わせて使うことでより良い意思決定に繋げられます。

7-3.【分析】業界構造を数値化する「ポーターの5フォース分析」

5フォース分析というビジネスフレームワークは、業界内の収益性や参入障壁を5つの力学で評価する手法です。
下の図にある通り、「新規参入者障壁」「代替品への脅威」「買い手の交渉力」「売り手の交渉力」「業界内の競争」という5つの脅威となる要素を定量・定性の両面で分析するのが5フォース分析の基本です。


画像:筆者作成

業界分析や新市場参入の検討時に、「どの力が強いか」を整理することで、将来的なリスクを可視化し、“勝ち筋のある市場”を見極める基礎データとして活用できます。

7-4.【設計・実行】戦略を実行可能な計画に落とし込むOGSM

最後にご紹介するのが、戦略を行動レベルにブレイクダウンするビジネスフレームワークです。

OGSMは、プロジェクトを「Objective(目的)」「Goal(ゴール)」「Strategy(戦略)」「評価(Measure)」という4つの視点で評価し、進捗や進め方を考える際に役立ちます。


画像:筆者作成

このビジネスフレームワークを活用すれば、戦略立案で終わらせずに、これから「やるべきこと・いつまでに・どの基準で」をそれぞれしっかりと明確化・チームで共有できるようになります。

新規事業立ち上げ時には、仮説検証サイクルやマイルストーン管理にも応用できるので、ぜひ活用してみましょう。

8.フレームワークの選び方・使い分けの原則

ここまで、様々なビジネスフレームワーク例をご紹介してきました。
最後に実際にフレームワークを活用する際に、何をどのようなタイミングで使うべきかをまとめてみましょう。

8-1.目的から逆算して選ぶ

ビジネスフレームワークは「分析したいテーマ」ではなく「達成したい目的」から逆算して選ぶことが基本です。
主な目的別のフレームワークについて、次の表を参考にしてみてください。

目的 適したフレームワーク例
外部環境を理解したい PEST、5フォース
自社・競合を比較したい SWOT、3C
顧客を理解したい STP、カスタマージャーニー
営業プロセスを整理したい BANT、MEDDPICC
目標と実行をつなげたい OGSM、OKR、KPIツリー

1つのフレームワークではなく、目的やプロジェクトのステージに合わせて複数組み合わせるのもおすすめです。

8-2.「思考→共有→実行」の流れで使う

ビジネスフレームワークをより良く活用するためには、ただ単に思考を整理するだけでなく次に繋げることを意識するのがポイントです。

思考を整理し、その内容をプロジェクトに関わるチームメンバーと共有し、共通の課題感や強みを生かすための戦略を実行していきましょう。
この流れを意識して使うと、単なる分析ツールから、成果を出すためのチームの共通言語として活用できるはずです。

ビジネスフレームワーク例を頭に置いてビジネスの武器にしよう!

本記事で例としてご紹介したビジネスフレームワークは、目標やゴールに向けて、思考をより速く深く整えるために役立てるツールです。
営業・マーケティング・新規事業などあらゆるシーンで、状況を整理し仮説を明確化することができれば、次のステップである、行動や目標達成度などを測る際にもよりスムーズになるでしょう。

単にビジネスフレームワークを使って満足してしまうことがないように、現場のデータと顧客の声に照らして更新し続ければ、迷いは指針に、施策は成果へとつながります。
また、ビジネスフレームワークで整理した自社の強みや今後の行動指針をチーム内で共有すれば一丸となって目標に向けて走り抜けることができるはず。
意思決定の質とスピードを加速させる武器として、ぜひビジネスフレームワークを活用してみましょう!

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