海外のリモートワーク事情!テレワーク先進国の事例を見てみよう

海外のリモートワーク事情!テレワーク先進国の事例を見てみよう

近年、リモートワークで働く人がコロナ禍をきっかけに増えています。オフィスに通勤して働くという従来の働き方だけではなく、「どのように・どこで働くか」を選べる時代が到来しているのかもしれません。

このような時代の波にうまく乗り、自由な働き方を実践するために参考にしたいのが、早くからテレワークが普及した海外各国の状況です。この記事では、海外でのテレワーク導入事例をご紹介していますので、「働き方を変えたい」と考えている方は、参考にしてくださいね。

1.世界一のテレワーク大国アメリカの状況

各国ごとに労働環境や労働事情の違いがあっても、柔軟に対応できるのがテレワークの良いところです。場所を選ばずに働ける便利さが、世界に広く普及した理由と言えます。

ここからは、世界のリモートワーク状況を国ごとに見ていきます。まずは、テレワークが生まれたアメリカの事情からご紹介しましょう。

1-1.アメリカのリモートワークの背景

アメリカはリモートワークが生まれた場所。そのため、アメリカは世界で最もテレワークが普及している国です※1。リモートワークは元々、1973年にNASAの通信システムを構築する技術者が、作業を自宅から行なっていたことに由来します。※2

オイルショックや大気汚染などの深刻な環境問題を改善するため、エネルギー使用量の少ないテレワークに注目が集まり、政府関係者の間でテレワークが行われました。その後、2010年に「テレワーク強化法」という法律が制定され、本格的にテレワークが普及するきっかけとなりました。※3

2016年にアメリカ国内で行われた「従業員給付に関する調査」によると、テレワークを認めている企業の割合は60%にのぼるとか。アメリカでは、官民問わず自分の仕事の範囲が明確なジョブ型での雇用が中心です。そのため、テレワークが普及しやすい労働環境であることが、普及率を上げる理由の一つだったと言えるでしょう。

また、アメリカの省庁はテレワーク導入率が高めです。テレワーク強化法を元に、国をあげてテレワークを推進し始めてから、政府職員のテレワーク普及率が増加。公共インフラ、病院、警察などのエッセンシャルワーカーを除くと、リモートワーク可能な職種に従事する政府職員のテレワーク実施率は、2012年から2017年の5年間で29%から49%へ上昇したという調査結果が出ています。

参考:
※1 海外の取り組み | テレワーク総合ポータルサイト
※2 テレワーク先進国アメリカに何を学べるのか? | classwork®︎
※3 アメリカの在宅ワーク事情とは?テレワーク普及率や現状を紹介

1-2.アメリカのリモートワークの現状

コロナ後もテレワークを導入する企業が増えており、アメリカのリモートワーク普及率は現在85%と推定されています。※1

IT業界を中心に、完全在宅勤務か部分在宅勤務かを選べる企業が増えている反面、YAHOO!やIBMなど一部の企業では、テレワークを廃止しオフィスへ社員を呼び戻す風潮が起こっています。
理由は、テレワークによる社内コミュニケーション不足から、生産性の低下や社員のメンタルヘルスの悪化などを引き起こしたり、労働時間の管理がうまく行かなかったりという問題が生じたことによるものです。※2

参考:
※1 海外の取り組み | テレワーク総合ポータルサイト
※2 在宅勤務“先進国”の米国、すでにリモワ廃止&オフィス勤務義務化へ回帰という現実

2.国ごとに事情が異なるヨーロッパの状況

ヨーロッパ諸国が集まって結成されたEU。エリアによる差は大きいものの、リモートワークが盛んに行われている地域の一つです。

この章では、ヨーロッパのリモートワーク事情を見ていきましょう。

2-1.ヨーロッパのリモートワークの背景

ヨーロッパは、高い失業率を改善するためにEU全体でテレワークを推進してきました。

1990年代に欧州テレワーク議会が開催されたのを契機に、2002年には、各国の労働組合と各種団体間で「テレワークに関する枠組みの合意」が締結。この合意に署名した15カ国各国でリモートワークが法制化されたのに倣い、後からEUに参加した国もテレワークを推進するようになりました。

参考:
Daijob HRClub | 欧米のテレワークの現状

2-2.ヨーロッパのリモートワークの現状

コロナ禍になって以降、リモートワークを推進しやすくするための法律を制定する国が増えたヨーロッパ。しかし、国によってリモートワークの普及率はまちまちです。

特に、テレワークを利用して働く労働者が多いのは、イギリスや北欧など北部に位置する国々がメイン。寒さが厳しく通勤しにくい気候事情や、鉄道や地下鉄など公共交通のインフラ老朽化などが問題になり、リモートワークが普及した背景があります。

一方、ギリシャやキプロスなど農漁業が経済の主力となっている国が多い南欧は、インターネット環境の不足や不安定な電力供給など、国内インフラの整備率の低さがネックとなっています。コロナ禍でもリモートワークがなかなか浸透しませんでした。

参考:
令和3年版 情報通信白書|海外におけるテレワークの動向
Daijob HRClub | 欧米のテレワークの現状

2-3.ヨーロッパ各国のリモートワーク事例4つ

ヨーロッパでは、コロナ禍でテレワークが盛んになった国だけでなく、コロナ以前からテレワークを取り入れてきた国が多いです。各国の労働事情や文化によって状況は様々ですが、テレワークが広く普及した理由にはどのような背景があるのでしょうか。

ここからは、ヨーロッパ北部の国々の事例を中心に見ていきましょう。

2-3-1.リモートワークで生産性が上がったドイツ

ドイツでは、コロナ禍によるロックダウンの影響からリモートワークを導入する企業が急増。ドイツ人事労務協会とフラウンホーファー労働経済・組織研究所が行なった調査によると、事業に支障が出ないようテレワークを実施した企業は70%にものぼりました。※1

リモートワーク普及に伴いドイツ政府は「テレワーク政令」を施行。業務上の制約がないテレワーク可能な被雇用者に対し、企業側に在宅勤務を許可するよう義務付ける法律です。また、在宅勤務者に対し年間最大600ユーロまで税金の還付を行う制度の導入など、国をあげてテレワークを推進しています。
この流れに乗るように、コロナ後も大企業を中心とした多くのドイツ企業が、リモートワーク継続を検討しているとか。※1

《リモートワークを推進する企業例》
電機メーカー:シーメンス
・週に2〜3日間自宅勤務を行う制度「ニューノーマル・ワーキングモデル」を導入。
・テレワーク可能な部署に在籍する社員は、自分の判断で自宅勤務を行える。

参考:
※1 ドイツと日本「テレワーク格差」が拡大したワケ | ワークスタイル | 東洋経済オンライン

2-3-2.オリンピックを契機にテレワークが浸透したイギリス

ヨーロッパの中でも、テレワーク普及率が高いのはイギリスです。
普及のきっかけは、2012年のロンドンオリンピック。開催中、市内の交通量を減らす目的で政府がリモートワークを推進したことによります。

鉄道や地下鉄、バスなど公共交通機関の老朽化や、移民増加による不動産の高騰などが社会問題になっていく中で、リモートワークは理想的な働き方として受け入れられました。さらに、コロナ禍による大規模なロックダウンが施行された影響で、テレワーク化が加速。現在では、40%弱のイギリス企業がテレワークを推進していると言われています。※1

また、イギリス政府は、未就学児童及び特別な事情を抱える家庭の親に対し、テレワークを含むフレキシブルな働き方を申請できるガイドラインを2010年に発表しました。被雇用者から申請があった場合企業側で対応するよう求め、リモートワークを行いやすい環境づくりを整えるのが狙いです。

《リモートワークを推進する企業例》
電気通信企業:ブリティッシュ・テレコム
・全従業員の10%以上が完全在宅、70%が部分在宅で勤務を行なっている。
・「集中勤務制度」というフレキシブルワークを実践。1週間の総勤務時間を満たせば、どの曜日に何時間働くかを従業員自身で決められる仕組み。効率的に勤務日数を減らせ、ワークライフバランスの安定に一役買っている。

参考:
※1 テレワークの海外事情!先進諸国から見えてくる日本の現状と進むべき道とは | 神戸 Workstyle-reform.com

2-3-3.テレワークへの無関心から急速に普及が拡大したフランス

法律で労働時間を厳しく規制しているフランスでは、勤務時間や勤務実態を管理しにくいという理由で、リモートワークに対する関心が薄い状況でした。合わせて、国内の高速ブロードバンドの普及率が低く、リモートワークを実現するのに理想的な環境がなかったことも、テレワークが推進されなかった理由の一つです。※1

しかしコロナ禍により、政府は方針を転換。最低週3日のテレワークを義務化※2し、違反者及び違反企業には厳しい罰則が適用されました。このことがきっかけで、国内でテレワークが急速に普及したのです。※3

フランス都市部では、不動産価格の暴騰と異常気象によるヒートアイランド化、テロや抗議デモなどによる治安の悪化が社会問題となっていました。そこへ、時間と場所を選ばないテレワークの普及により、環境の良い田舎へ移住する人が増加。地方の過疎化対策としても注目を集めています。※4

また、「個」の権利を重要視するフランスらしく、「つながらない権利(勤務時間外にメール・電話などで対応しなくても良い権利)」を法律で保証しています。ちなみに、ベルギーやスペイン、イタリアなども、同様の法律を施行しました。

《リモートワークを推進する企業例》
自動車メーカー:ルノー
・デスクワーカーを対象に、1週間あたり最大3日まで、自宅でのテレワークを可能とする制度を導入。

参考:
※1 【国別で調査!】テレワークは実際にどれくらいの割合で導入されているのか? – moconavi NOTE
※2 現在は緩和され、推奨レベルとなっています
※3 テレワーク最低週3日を義務化したフランス──田中美紀|研究所員の鳥瞰虫瞰 Vol.4
※4 コロナ禍で「パリ離れ」が加速するフランスのなぜ | ヨーロッパ | 東洋経済オンライン

2-3-4.テレワーク普及率がEUトップのオランダ

オランダは、ワークライフバランスを重視する風潮が強いことから、在宅勤務を可能にするテレワークを早くから取り入れた国の一つです。※1

2002年に行われた欧州委員会による調査では、テレワーク可能な業種に従事しているオランダ国内の労働者の26%が、在宅勤務を経験しています。また、リモートワーク普及率の上昇を後押しするように、好きな時間・場所で働くことを保証する法律「フレキシブル・ワーク法」を2016年に施行。

そのため、コロナによるロックダウン中も、在宅勤務への移行が難しくありませんでした。
アムステルダム大学が行なったある調査によると、コロナ禍のピーク中、テレワーク率は61%に達したという結果が出ています。※2

《リモートワークを推進する企業例》
金融業:ING銀行
・早期からフレキシブルワークの推進を行い、社員自ら働く場所と時間を自由に選択する「New Approach to Working」という制度を実施。

参考:
※1 テレワークの推進のための調査研究報告書
※2 先進オランダに学ぶ「ハイブリッド労働」「The Work Life Shift」シンポ、ランスタッド主催

コラム:リモートワーカーを積極的に受け入れる国がある
外国企業に勤務するリモートワーカーを対象とし、現地滞在のためのビザを発給する国があります。テレワークしやすい環境であることを外国人にアピールし、外貨獲得と人材の獲得を狙ったものです。
外国の企業に雇用されている証明、月収証明(最低月収は国ごとに異なる)など、条件を満たせば滞在ビザがおりる仕組みとなっています。

《リモートワークビザ発給国の例》
アイスランド、エストニア、クロアチア、ジョージア、アラブ首長国連邦など

参考:夢の暮らしが現実に! リモートワーカーを歓迎している11の国・地域 | Business Insider Japan

3.リモートワーク普及が低迷しているアジアの状況

アメリカやヨーロッパとは対照的に、多くのアジアの国々はリモートワークへの関心が薄いと言われています。その一方で、経済力の高い国を中心に、都市部でテレワークの利用が急速に拡大している状況も見逃せません。
この章では、アジア全体のテレワークの現状について見ていきます。

3-1.アジアのリモートワークの背景

多くのアジアの国では、固定時間制度で働くことが浸透しています。また、他者と同じ空間を共有し、直接コミュニケーションを取りながら「チームで働く」ことを通して、仕事を進めていくやり方が主流です。そのため、労働者自身の裁量で仕事を進めにくく、テレワークが普及しにくい一因となっていると言えます。※1

参考:
※1 中国で社会的議論になった働き方「996」とは? | 地域・分析レポート – 海外ビジネス情報 – ジェトロ

3-2.アジアのリモートワークの現状

特にアジアの都市部では、長時間通勤、長時間労働が珍しくありません。時間に対するコスト意識が薄いため、リモートワークへの関心を高めにくいと言われています。※1,2

また、都市部のみインフラが整備されている国が多いのも、テレワークが普及しにくい一因です。特に地方ではテレワークのための環境を整えることが難しく、アジア全体としてリモートワークの普及が低迷している理由となっています。※3

参考:
※1 中国で社会的議論になった働き方「996」とは? | 地域・分析レポート – 海外ビジネス情報 – ジェトロ
※2 紀陽銀行「経済情報:テレワークの課題と変化の芽の可能性について」
※3 コロナ後、リモートワークは続ける?地域別にみる世界の新しい働き方トレンド | WORK MILL

3-3.アジア各国の事例

コロナ以降、一部の大都市を中心にテレワークが盛んになった国もあります。リモートワークを積極的に取り入れた国とそうでない国は今、どのような状況なのでしょうか。
最後は、アジアの国々の事例を中心に見ていきましょう。

3-3-1.成熟した一部の市場でテレワークが急拡大中の中国

中国全体のテレワーク普及率は1%ほどですが、一部の成熟した市場では20%以上にものぼり、落差が激しい状況となっています。※1

特に、ロックダウンを行なった上海など大都市圏を中心に、コロナをきっかけにして急速にテレワーク利用が拡大しました。広大な国土を移動しなくてもリモートで仕事や会議が行えるメリットの反面、通信環境の未整備により業務を続けにくいなど問題も浮上しています。※2

参考:
※1 テレワークが中国で急成長、コロナ後もなお発展の余地 | SciencePortal China
※2 石川県/―上海駐在員便り 2022年5月―

3-3-2.リモートワークが普及しなかった台湾

コロナ感染者がさほど増加しなかった台湾では、テレワークの普及率が2割程度と低い水準です。一方、コロナ感染拡大のリスクに備えるため、大企業を中心とした一部の業種では、リモートワークを推進しています。※1,2

しかし、業務効率の悪化や労務管理の困難さが問題視され、リモートワークを導入した企業の中には「テレワークを長期間継続しない」という方針を打ち出しているところもあります。※2

参考:
※1 【緊急特集】台湾企業テレワークの実態と今後の動向(前篇)テレワークの現状と問題点 – ワイズコンサルティング@台湾
※2 【緊急特集】台湾企業テレワークの実態と今後の動向(後篇)テレワークの継続意向と課題

3-3-3.テレワークへの不満が高いインド

インドでも、コロナの感染拡大が起こったあと、テレワークに移行する企業が激増しました。

IT企業が集中するバンガロールなどを始め、大都市ほど住宅価格の高騰や交通網の未整備などが問題に。そのため、郊外に住み長時間通勤を余儀なくされる労働者が多かった背景もあり、リモートワークが拡大しました。※1,2

急速に拡大したテレワーク普及率とは対照的に、労働者のリモートワークに対する評価は必ずしも高くないようです。あるアンケートによると「テレワークで疲れ切っている」と回答した労働者は、7割に達したという調査結果が出ています。

労働者のテレワークに対する不満が高い理由として、

・大家族で小さなアパートに住む労働者が多いため、在宅勤務の環境を準備するのが難しい
・家庭へのインターネット普及率が低い

などが挙げられています。※3

参考:
※1 コロナ禍後、税法・労働法改定要請でインドIT産業はどう変わるか
※2 新型コロナウイルスで進むインド企業のリモートワーク化
※3 コロナ後、リモートワークは続ける?地域別にみる世界の新しい働き方トレンド | WORK MILL

3-3-4.コロナ前からテレワークが盛んだったシンガポール

コロナ前の2019年には、90%もの企業が従業員に対してリモートワークを認めていたのがシンガポールです。政府主導でテレワークを進めていた矢先にコロナによるロックダウンが始まり、多くの企業でテレワークへの移行が急速に行われました。2020年には労働人口のうち60%がテレワークに移行したという調査結果もあるほどです。

また、リモートワークの拡大に伴い、政府は労働者をバックアップする政策を打ち出しました。リモートワーク環境の整備のためにかかった費用は、控除を認めることとしたのです。
シンガポールの大手新聞社が行なった調査では、80%の労働者がコロナ後も在宅勤務を続けたいと希望しているそうで、今後もリモートワークの拡大が予想されています。

参考:コロナ後、リモートワークは続ける?地域別にみる世界の新しい働き方トレンド | WORK MILL

まとめ:海外のリモートワーク事情を参考にして柔軟に働いてみよう!

リモートワークの良い点は、働く場所を選べるなど一人一人に合った働き方を実現できるところでしょう。そのため、各国の文化や状況、個人の事情に寄り添った働き方として認知され、広く受け入れられてきました。

仕事に自分を合わせるのではなく、自分の人生に仕事を合わせて、ワークライフバランスを保つのがこれからの働き方の主流になっていくのかもしれません。場所を選ばずに勤務ができるテレワークは、柔軟に働くための手段にぴったりと言えるでしょう。

文:山﨑 梨惠
編集:カワムラ ルイ(リベルタ)

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