取材記事

2025.06.20

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世界の“あたりまえ”を日本へ—外国人留学生が見つけた暮らしのヒントー

私はフィリピン出身の外国人留学生として、日本で生活しながら農学の研究に取り組んでいます。
日常の中で「これは日本でも取り入れられるかもしれない」と感じる、
海外のユニークなアイデアやサービスに出会ってきました。
本記事では、旅先での体験を通じて見えた、日本にはまだ広まっていないけれど、
確かな価値を持つ3つのアイデアをご紹介します。
 

1.「食×空間」で都市に賑わいを:バンコクとハワイのフードトラックパーク

 
タイ・バンコク:人と街がつながる“移動式レストラン”
バンコクで訪れたフードトラックパークは、ただの屋外飲食スペースではありませんでした。
料理、デザイン、照明、音楽、そしてそこに集う人々の笑顔——
それらが一体となって、都市に新しい「社交の場」を作っていました。
友人同士、家族、見知らぬ人々が自然に隣り合って座り、食を楽しみながら交流する光景。
商売という枠を超えて、都市のコミュニティを育てる仕掛けが随所に散りばめられていたのです。
 
ハワイ:心地よい緩さが人を惹きつける
一方ハワイでは、青空の下でのんびりとした時間が流れていました。
ヤシの木の下でポケボウルを味わう学生たち、観光客、地元のファミリー。
小さな屋台村が常設されており、どの店も個性豊か。
公園全体が統一感を持っており、毎日開催される小さなお祭りのようでした。
フードトラックの運営者は多くが個人事業主であり、地元経済を支える一翼も担っています。
 

フードトラックパークでの食事
 
日本で活かすなら?
日本でもフードイベントや、お祭りや地域イベントに登場する屋台も多くの人々に親しまれています。
しかし、「日常の一部」としてのフードトラック文化はまだ途上です。
都市の空き地や川沿い、駅前広場といった未活用スペースに、常設型の食と交流の場を設けることで、
地域のにぎわいや、常設店舗を持てない若手起業家の支援につながるはずです。
 

フードトラックパークを楽しむ筆者
 

2.誰でも入れる“ルーフトップ空間”が街を変える?

 
バンコクの高層ホテルで見た光景
夜景を一望できるホテルの屋上。ジャズが流れ、静かな風が吹くルーフトップバー。
バンコクでは多くのホテルに一般開放されたルーフトップバーがあり、人々が気軽に集う場所として定着しています。
そこにいたのはドレスアップした観光客だけでなく、地元の若者、一人旅の旅行者、仕事帰りの会社員たちでした。
ドレスコードも堅苦しさもなく、ただその場所の魅力を共有するために人が集っていたのです。
 

ルーフトップバーを満喫する筆者
 
日本の屋上も、もっと開かれていい
日本でもルーフトップバーは存在しますが、敷居の高さを感じる場面が多い印象です。
花火大会や夏祭り、年末年始のライトアップなどに合わせて、
一般開放された屋上スペースを設けることで、都市の新しい楽しみ方が広がるのではないでしょうか。
 

3.渋滞都市の新常識:バイクタクシー「Angkas」に学ぶ柔軟な交通設計

 
フィリピン・マニラ発のスマートな移動手段
マニラの交通渋滞は有名です。
そんな中で登場したのが、スマホで呼べるバイクタクシー「Angkas(アンカス)」。
アプリの操作性やヘルメット+使い捨てネットの衛生対策、安全な走行ルールの徹底に感心しました。
バイクタクシーは、交通渋滞を避けるための現実的な手段として、多くの市民に支持されています。
移動時間を大幅に短縮できるだけでなく、運転手にとっても安定した収入源となり、トレーニングや安全基準も整備されています。
単なる移動手段にとどまらず、日常生活における課題解決の一つとして、地域に根差していると感じました。
 
日本でも“ちょっと乗りたい”はある
もちろん、日本の交通制度や安全基準を踏まえた上での慎重な導入が必要ですが、
駅から目的地までのラストワンマイルや、過疎地での移動手段として、
バイクタクシーのような柔軟なモビリティは慎重に制度を整えれば検討の余地があるのではないでしょうか。
 

4.おわりに:暮らしの中にある“イノベーションの種”を見つける

 
テクノロジーだけが革新ではありません。
人々がどう集い、どう移動し、どう過ごすか。その設計に目を向けることで、生活の質は大きく変わると感じています。
異なる文化を知ることは、視点の引き出しを増やすこと。
日常の“あたりまえ”を見直すヒントになるかもしれません。
本記事を通じて、読者の皆様が日常の中にあるサービスの価値を再認識し、小さな工夫からより豊かでつながりのある社会づくりへのヒントを見出していただければ幸いです。
 

ライタープロフィール
ティアラ スアレス(Thiara Suarez)
フィリピン出身。
岐阜大学にて農学の博士課程に在籍中。
バラのウイルス病について研究しており、日本各地のバラ栽培において、植物病が与える影響について調査を行っている。
この研究を通じて、より健康で耐病性の高い作物の開発に貢献することを目指している。
科学研究および教育に強い情熱を持ち、科学の複雑な内容を分かりやすく伝えることが得意であり、これは科学と社会との架け橋になると考えている。
また細部にまで注意を払う性格であり、プロジェクトを効率的に進めることが得意。
将来的には、大学で研究と教育の両方に携わりながら、持続可能な農業の推進や地域農家の生活向上に貢献することが目標。
学業以外では、旅行や買い物が好きで、日常生活におけるバランスとインスピレーションを得る大切な時間となっている。

 
翻訳/編集:株式会社hupodea 事務局

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