アジアのビジネスドレスコードは、日本よりもカジュアルであることをご存じでしょうか。
日本ではスタートアップやIT業界を除けば、重要な会議や商談、取引先訪問などの際にはビジネススーツ着用が一般的です。
しかしアジアには、ビジネスシーンであってもスーツを着ない、ネクタイを締めないという国や地域、業界が存在します。
国や企業文化によっては、取引先の担当者が商談にカジュアルな服装で現れることも珍しくありません。
そのため、現地の商談にも日本のドレスコードで参加すると、相手が堅苦しさを感じて心理的な距離が生まれてしまうかもしれません。
この記事では、アジア諸国でビジネスをする人や出張、駐在の予定がある人向けに、アジア主要10か国のビジネスにおけるドレスコードを解説します。
服選びのヒントも紹介しますので、アジアでビジネスの予定がある方はぜひ参考にしてくださいね。
なお、この記事は2部制です。
この記事の後編では、アジア各国のビジネスドレスコードにどんな背景があるのかを解説した「【後編】アジアのビジネスドレスコード|文化的な背景と注意点を解説」で紹介していますので、本記事と合わせてチェックしてみましょう。
1.アジアのビジネスドレスコードを知るべき理由2つ
アジア圏の取引先などで服装に迷ったときには「日本と同じアジアだから、スーツを着てネクタイを締めていれば大丈夫」と考える人もいるかもしれません。
しかし、実はアジアには、日本とは異なる独自のドレスコードが数多く存在します。
場違いな服装は、悪気がなくても相手に違和感や不快感を与えかねません。
この章では、アジアでビジネスを行う人がドレスコードを知っておくべき理由を2つの視点から解説します。
1-1.スーツ着用が一般的ではない国・地域があるから
アジアには、取引先と会うときであってもスーツを着用しないという国や地域が存在します。
特に、東南アジア諸国は一年を通じて高温多湿な気候であるため、ビジネスシーンであってもノーネクタイやノージャケットが一般的です。
そういった国でスーツを着て取引先を訪問してもマナー違反ではありませんが、堅苦しい印象を与えてしまったり、浮いてしまったりするリスクがあります。
1-2.日本企業の海外進出先はアジアが多いから
日本企業の海外進出先のトップはアジア諸国が占めていますから、海外でビジネスをする人や予定のある人はビジネスドレスコードを知っておいて損はありません。
海外へ進出する日本企業は年々増加しており、今や大企業だけでなく中小企業も海外進出を果たしています。
なかでも、アジア諸国へ進出する企業は多く、2025年に実施された外務省の調査によると日本企業の海外進出拠点数 上位12か国のうち9か国がアジアの国・地域です。
また、12位にランクインしなかったものの台湾が1,582拠点で13位という結果に。
これらの国・地域のビジネスドレスコードを知っておけば、突然渡航が決まったり、ビジネスをすることになったりしても慌てずに済むでしょう。
画像: 外務省海外進出日系企業拠点数調査(2025年調査)をもとに筆者作成
2.アジア主要10か国のビジネスドレスコード
この章では、前述した日本企業の進出先トップである以下の10か国のドレスコードを紹介します。
1.中国
2.インド
3.タイ
4.シンガポール
5.インドネシア
6.韓国
7.ベトナム
8.マレーシア
9.フィリピン
10.台湾
なお、業界によってビジネスにふさわしいとされる服装は異なるものです。
例えば、テック業界は世界的にドレスコードがカジュアル化しており、Tシャツにジャケットを羽織って商談に参加する人が増加しています。
一方、ビジネスシーンでノージャケットが一般的な国であっても、外資系企業や金融業界はスーツを着るケースもみられます。
よって次から紹介するのは、その国ごとの標準的なビジネスドレスコードです。
2-1.スーツ着用は避けたい中国
日本企業の海外進出先のトップである中国のビジネスドレスコードは、日本と比べてカジュアルです。
一般的には重役同士で行われる商談や会議であっても、オフィスカジュアルで参加します。
中国では商談に普段着で参加する人もいるほどで、相手に敬意を見せようとスーツを着ていくと「堅苦しい」「よそよそしい」という印象を与えてしまうリスクがあります。
ワイシャツまたは襟の付いたシャツにスラックス、女性ならスカートでも構いません。
ジャケットを着ていなくても、失礼に当たらないケースがほとんどです。
なお、金融業界や法曹関係者、外資または日系企業の社員はスーツを着用している場合が多いので、ビジネスドレスコードは日本と同様だと考えて問題ありません。
2-2.スーツ着用が望ましいインド
中国とは異なり、スーツを着て商談などに臨みたいのがインドです。
IT業界やスタートアップなど一部の企業を除けば、日本と同様に商談などではスーツ着用が一般的です。
ほかのアジア諸国と比べて、ドレスコードがフォーマルであるのは、インドに古くから根付くカースト制度や権威主義的な背景に由来します。
服装は社会的地位を示すものと考えられており、ビジネスパーソンにとってのスーツやネクタイ、ワイシャツなどは自分がホワイトカラーであることを周囲に示すアイテムとされているからです。
暑い時期にスーツやネクタイを着用することは快適ではないため、ジャケットやネクタイを身に着けていない人も見かけますが、取引先と会うときなどはスーツで正装するという人がほとんどです。
町中にはスーツ姿の人を見かけないことを理由にカジュアルな服装で取引先へ向かうと、気まずい思いをするかもしれません。
インド出張や駐在時には、スーツとネクタイを用意しておきましょう。
なお、女性は胸元が詰まったシャツにゆとりがあるパンツスーツがおすすめです。
女性が肌を露出したり身体のラインが浮き出る服を着たりするのは不道徳とされているためです。
たとえば、以下の部位を露出することがタブーとされています。
【インドで露出がタブーとされている部位】
・脚
・胸元
・お尻のライン
なお、インドの伝統衣装であるサリーはお腹が見えるデザインのものが多いですが、サリー着用時に限ってはお腹を出してもタブー視されません。
2-3.クールビズが一般的だがスーツがあると安心なタイ
タイの出張や駐在時は、男女ともにスーツを用意しておくとよいでしょう。
タイの気候は北部のチェンマイ市や山岳地帯など一部の地域を除けば、一年を通じて温暖な気候です。
そのため、標準的なビジネスドレスコードは半袖シャツやポロシャツなど日本でいうクールビズです。
しかし、取引先訪問や商談ではジャケットを着る人が多いですし、重要な商談ではスーツ着用という人もいます。
ネクタイは締めないという人がほとんどですが、スーツにネクタイを身につければ重要な局面では良い印象を与えられる可能性が高まります。
2-4.ややきっちり目のシンガポール
シンガポールのビジネスドレスコードは日本ほど厳格ではありませんが、ほかの東南アジア諸国ほどカジュアルでもない、中間に位置します。
男性は長袖のワイシャツに落ち着いた色のスラックスまたはチノパン、足元は革靴が一般的で、重要な会議や商談では、ジャケットを着てネクタイを付けるという人も多いです。
注意が必要なのは、女性の服選びです。
シンガポールは、中華系やマレー系、インド系などの人々が共生していることから、信仰されている宗教も仏教、イスラム教、ヒンドゥー教、キリスト教など多岐にわたります。
取引先の相手がムスリムである可能性を考慮し、肌の露出は控えたほうが良いでしょう。
商談時などにはジャケットを着て、パンツまたは膝が隠れるスカートがおすすめです。
また、シンガポールは風水の文化が根付いており、多くの建築物に風水を取り入れています。
風水において水色は調和や繁栄をもたらすと考えられているので、水色のシャツを着ると良い印象を与えられるかもしれません。
2-5.伝統衣装のバティックに挑戦したいインドネシア
インドネシアでは、ビジネスでの服装は信頼関係を左右するほど重要な要素と考えられています。
とはいっても、必ずしもスーツ着用が必須ではなく長袖の襟付きシャツとスラックスであれば、マナー違反とみなされません。
もし手に入るなら、バティックのシャツを着ると相手に喜ばれるかもしれません。
バティックとは、布地に熱して溶かした蝋で模様を描き、染料に浸して染めた布やその布で仕立てられた服のことで、ユネスコの世界無形文化遺産にも認定されています。
画像出典:https://batikkerisonline.co.id/shop/kemeja-reguler-fit-batik-lengan-panjang-motif-bumandhala/
長袖のバティックは最も信頼される正装であり、冠婚葬祭や企業訪問、重要な会議、商談などで着るほか、毎週金曜日や10月2日は「バティックの日」とされ、多くの人がバティックを着て出社します。
インドネシア企業との商談では、バティックを着ていくとアイスブレイクのきっかけとなり、良い関係が構築できそうです。
なお、インドネシアは総人口の約8割がイスラム教徒を占めるため、女性は長袖とパンツまたは、膝が隠れるスカートで相手に不快感を与えないことも大切です。
2-6.ドレスコードは日本と同様の韓国
韓国は日本同様に、ビジネスでのドレスコードは男女ともにスーツが基本で、男性はもちろんネクタイを締めます。
企業によっては、Tシャツやジーンズで働いている社員もいますが、会議や商談ではスーツを着るのが一般的です。
ですから、韓国でのビジネスでは、日本で取引先と会うときと同様の服装であれば失敗しません。
注意したいのは、服装よりも上下関係です。
韓国は儒教文化が根付いており、年長者や役職が上の人への敬意を重視します。
初対面のあいさつでは相手より先に頭を下げ、握手の際には相手が手を差し出すまで待つといった韓国ならではのマナーを学んでおくと、現地で役立ちます。
2-7.ビジネスコードもカジュアルなベトナム
アジアのなかでもビジネスドレスコードがカジュアルで、自由な服装で出社する人が多いのがベトナムです。
商談でもTシャツで参加するという人がいるほどです。
外周りや商談ではワイシャツを着ていても、そのシャツのサイズが大きすぎる、スカートの丈が短いというケースも目にします。
ベトナム企業との商談で、もし相手がそういった服装で現れたとしても怪訝そうな表情を出さず、文化だと受け入れる余裕も持っておきましょう。
カジュアルな装いが許されるとはいえ、相手に良い印象を与えられるよう商談時にはジャケットを着て、ある程度きちんとした服装を心がけると安心です。
2-8.男女ともに肌の露出は避けたいマレーシア
マレーシアもほかの東南アジア諸国同様に、襟のあるシャツにスラックスといったオフィスカジュアルが基本ですが、企業や相手の役職によってはスーツにネクタイが望ましいケースもあるといわれています。
よって、現地の取引先企業にはじめて訪問するなら、スーツを着ていけば間違いないでしょう。
女性のビジネスドレスコードは、男性よりも自由といわれており、中華系の女性などは膝丈のワンピースを着ている人もいます。
しかしムスリムの女性は、シンガポール同様に肌を出すことはタブーです。
マレーシアでは人口の約64%がイスラム教を信仰しているので、女性は膝が隠れるスカートやパンツを用意しておきましょう。
また、宗教色の強いマレー半島東海岸北部では、男性の肌の露出もタブー視されることも知っておきましょう。
西海岸ではモスク以外なら外国人が肌を露出していても問題視されないものの、東海岸北部は外国人であっても肌を出していると良い顔はされません。
電子部品製造工場が多いコタバルや、石油・天然ガス産業の拠点であるクアラトレンガヌ、工業団地が広がり日系製造業が進出するスンガイペタニなどは、保守的なエリアとして知られています。
これらのエリアへ出張する際は、暑くても長袖のシャツを着るなど極力肌を出さない服を選ぶことが大切です。
暑さに対応できるよう、風通しの良い麻や接触冷感素材などのシャツを選ぶこともポイントです。
2-9.伝統的な白いシャツもおすすめのフィリピン
フィリピンもオフィスカジュアルが一般的で、襟付きシャツにスラックス、革靴、女性ならスカートまたはパンツ、パンプス、男女どちらも必要に応じてジャケットを着用します。
フィリピンの伝統衣装を着ても良いでしょう。
前述したインドネシア同様に、フィリピンも伝統的な衣装が正装とされており、ビジネスシーンで着る人も多いです。
男性用の衣装は「バロンタガログ」、女性用は「バロットサヤ」と呼ばれており、どちらも白いシャツで、薄手の生地に細かな刺繍が施されています。
画像出典:https://www.etsy.com/jp/market/baro_at_saya
画像出典:https://www.etsy.com/jp/listing/855833267/modannafiripianaredsubarontagarogu
「ピーニャ」というパイナップルの葉から採れる繊維で織られた薄手の生地で作られており、通気性に優れているのでフィリピンの暑い気候にも耐えられそうです。
なお、人口の約9割がキリスト教徒を占めるフィリピンでは、ビジネスにおいて肩や膝を出すことは好まれません。
女性は膝が出るスカートを避けましょう。
2-10.いつものビジネススーツなら問題なしの台湾
台湾では日本と同じく、内勤のときはオフィスカジュアル、商談や取引先訪問時にはスーツを着る人がほとんどです。
ですから、台湾出張のときには普段着用しているスーツやネクタイ、靴などを用意すれば問題ありません。
ただし、夏の台湾は非常に暑いため、夏に台湾へ行くなら以下のような暑さ対策に特化したスーツを用意しておくのがおすすめです。
【おすすめスーツブランド「FABRIC TOKYO」】
画像出典:https://fabric-tokyo.com/
FABRIC TOKYO(ファブリックトウキョウ)は、スマホからオーダースーツを作れるブランド。
通気性に優れた生地や接触冷感という生地が肌に触れると涼しいと感じる生地などを選んで、スーツをオーダーできます。
こちらでスーツを作っておけば、暑い地域へ出張に行くときはもちろんのこと、日本の夏も快適に過ごせそうです。
FABRIC TOKYO
公式サイト:https://fabric-tokyo.com/
3.アジアでのビジネス向け服装例
こうしてみると、アジアではほとんどの国のドレスコードが日本よりもカジュアルであることがわかります。
日本では、商談ではスーツ着用が常識だと考える人が多いため、どのような服装をすればよいかイメージしにくいかもしれません。
そこで、以下の画像をもとに各国のビジネスシーンにふさわしい服装を解説します。
画像出典:筆者作成
上記は日本におけるビジネスドレスコードです。
フォーマルは、日本で商談や重要な会議の際に適したスーツスタイルで、企業や業界によってはジャケット着用、ノーネクタイのビジネスカジュアルも許容されています。
ジャケットを着ないオフィスカジュアルは、日本では内勤時のスタイルとされています。
日本の「フォーマル」「ビジネスカジュアル」「オフィスカジュアル」のどれが、各国のビジネスシーンにふさわしいか見てみましょう。
【各国のビジネスシーンに適したドレスコード】
以下はすべて、商談や取引先訪問などを想定しています。
1.中国:ビジネスカジュアルが良いが、オフィスカジュアルも許容範囲
2.インド:フォーマル
3.タイ:ビジネスカジュアルだが、シーンによってはフォーマルを選ぶ
4.シンガポール:ビジネスカジュアル
5.インドネシア:ビジネスカジュアル
6.韓国:フォーマル
7.ベトナム:ビジネスカジュアルが良いが、オフィスカジュアルも許容範囲
8.マレーシア:相手やシーンによってフォーマル、ビジネスカジュアル、オフィスカジュアルと異なるため、初対面のときはフォーマルが無難
9.フィリピン:ビジネスカジュアルが良いが、オフィスカジュアルも許容範囲
10.台湾:フォーマル
女性の場合は、スカートでも構いません。
なお、以下の国では女性が身体のラインを出すことはタブーだとされているため、ゆとりのある服を選ぶと良いでしょう。
マナー違反とみなされるリスクを防げます。
・インド
・シンガポール
・インドネシア
・マレーシア
アジア出張におすすめのスーツ
アジアでスーツを着る場合、普段着ているものを持っていけば問題ありません。
しかし、海外出張が多いなら「WWSのグローバルスーツ」を持っておくと便利です。
ジャケットの内側にはパスポートや貴重品を収納できるポケットが豊富なので、スリ対策ができます。
治安が良くない地域に行くときは特に重宝するでしょう。
また、軽くてストレッチ性のある素材が使われているため、動きやすく、移動時の身体の負担も軽減します。
汚れてしまっても手洗いでき速乾性に優れ、アイロン不要。
出張時に手放せないアイテムになりそうです。
WWS
公式サイト:https://www.workwearsuit.com/
まとめ:アジアのビジネスドレスコードは国ごとに異なることを知っておこう
アジアのビジネスドレスコードは比較的カジュアルな傾向ですが、国によって事情が異なることを頭に入れておくのがおすすめです。
韓国や台湾は日本同様にスーツやネクタイを着用する人が多い一方で、インドネシアやフィリピンのように伝統衣装が正装、という国もあるからです。
国ごとに異なるドレスコードを把握しておけば、その国のドレスコードから外れた服装で商談などに参加し、現地の人たちから奇異の目で見られることや違和感を持たれる事態を防げます。
また、出張の準備がスムーズになるでしょう。
なお、本記事の後編では、アジアのドレスコードを知るべき理由や注意点についても解説します。
アジアでビジネスの予定がある方は、ぜひ後編も併せて参考にしてくださいね。







