カーボンオフセットに企業はどう取り組む? 国内外の事例を紹介!

カーボンオフセットに企業はどう取り組む? 国内外の事例を紹介!

数年前から耳にする機会が増えてきた「カーボンオフセット」という言葉。
なんとなく、環境に配慮した取り組みであることはイメージできているけれど「正直、なんだかよくわからない」という方もいるのではないでしょうか?
SDGsや持続可能なビジネスのあり方を探る企業やビジネスが少しずつ増えつつある今。改めて、カーボンオフセットとは一体どんな目的や取り組みなのか、ビジネスパーソンとして、どう仕事やビジネスに取り入れていくべきかを考えてみませんか?
本記事では、カーボンオフセットの基本と、ビジネス戦略や企業姿勢として、どんな点を意識して考えれば良いのかを解説。国内外の企業の取り組み事例についてもご紹介します。

1.カーボンオフセットとは?

カーボンオフセットという言葉に加えて、近年ではカーボンニュートラル、なんて言葉も耳にするようになりました。
まずは、カーボンオフセットという言葉の意味や、似ている用語との違いを理解しましょう。

1-1.カーボンオフセットとは

カーボンオフセットとは、直訳すると「カーボン(炭素)をオフセット(埋め合わせる)」ことを指します。私たちは日々生活や経済活動をする中で、CO2などの温室効果ガスを排出しています。この排出した分の温室効果ガスを、他のなんらかの活動で減らし、トータルの排出量を少なくするための取り組みが、カーボンオフセットです。

ここまで読み進めると、「なぜ、直接的にCO2などの温室効果ガスの排出そのものを削減しないのか」と疑問に思う方もいらっしゃるかもしれません。

これには、温室効果ガスの削減を目指しても、企業活動においては、どうしても温室効果ガスの排出を避けられないことがあるためです。

「削減の努力はもちろん大切だが、排出する温室効果ガスがあるのは仕方がない。でも、排出した分は違う場所や取り組みでの温室効果ガスの削減をして“埋め合わせていこう”」というのがカーボンオフセットの基本的な考えとなります。

画像:筆者作成

1-2.カーボンオフセットとカーボンニュートラルの違い

ちなみに、カーボンオフセットと良く似た言葉に「カーボンニュートラル」という言葉があります。

カーボンニュートラルとは、カーボンオフセットの考え方や行動をさらに進め、事業活動などから排出された温室効果ガス排出量の“全て”を、他の場所での排出削減で相殺しようという考えです。

画像:筆者作成

また、このカーボンニュートラルが達成された社会を「脱炭素社会」と呼びます。

いずれにせよ、カーボンニュートラルやカーボンオフセットの活動を進める上では、まず企業で温室効果ガスの削減努力が第一ステップとなります。
排出量を減らすための検討・アクションを行い、他の活動(NGOやNPOの環境活動に資金提供するなど)で、削減しきれない温室効果ガスの排出量をオフセットしていく。これがカーボンニュートラルを目指すビジネスモデルを考える上で、検討していく基本の流れとなります。

カーボンオフセットにまつわる用語あれこれ
意外と意味がわからない関連用語も多いカーボンオフセット。改めて、カーボンオフセットにまつわる言葉としてよく使われる言葉の意味をおさらいしておきましょう。

【クレジット】
カーボンオフセットにおけるクレジットとは、CO2排出量を自社やビジネスで削減できない場合に、他で削減した分を購入するために数値化したものです。
もう少し詳しく言えば、計算の元となるのは、再生可能エネルギーの導入によるCO2削減や植林・間伐等による森林管理でのCO2吸収への取り組みなどで実現できた、温室効果ガス削減・吸収量。これを、定量化(数値化)し、1t-CO2を1単位として取引可能な形態にしています。
企業はクレジット購入により、カーボンオフセットしていくこととなります。

【カーボンプライシング】
カーボンオフセットのクレジットの取引のために、気候変動問題の原因となる炭素に価格付けする仕組み。温室効果ガスの排出量に応じた「炭素税」や、脱炭素に取り組む団体に交付される補助金などもカーボンプライシングの一つです。

※参考【脱炭素かんたん用語集】要点まとめ!脱炭素とカーボンニュートラル、低炭素の違いなど

2.カーボンオフセットはビジネスチャンスに!

カーボンニュートラルやカーボンオフセットについて、知れば知るほど「なんだかこれを実現するのはコストも労力もかかりそうで大変だ」と身構えてしまった方もいるでしょう。
しかし、SDGsに取り組む企業が増え、投資家からも企業の環境・社会・ガバナンスへの取り組みが一つの投資基準となっていることからもわかる通り、カーボンオフセットやカーボンニュートラルへの取り組みは、企業姿勢として「当たり前」になっていくことが予想されます。

また、カーボンオフセットに企業が取り組むことは、今後のビジネス展開においてもチャンスになり得ます。ここからは、カーボンオフセットやカーボンニュートラルへの取り組みを進めることが、なぜビジネスチャンスにつながるのかを見ていきましょう。

2-1.経産省が打ち出す「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」

カーボンオフセットの取り組みは、環境に配慮した取り組みです。
そのため、「ビジネスで利益を阻害するのではないか」「環境負荷の軽減を優先する取り組みは、消費者からの理解がどのくらい得られるのか」などと心配する人もいるでしょう。
けれど、カーボンオフセットやカーボンニュートラル実現後の世界を見据えたビジネスの仕組みづくりやテクノロジーは、企業にとって大きなビジネスチャンスです。

というのも、カーボンニュートラルやカーボンオフセットを実現するための仕組み・技術を整備するための事業は、まさにこれからの時代のニーズに呼応する事業だから。
例えば、石油などの化石燃料による発電ではなくバイオマス発電や自然エネルギーで発電する技術に取り組む企業は、今後ますますビジネスフィールドが広がっていくでしょう。

画像出典:経産省HP

経産省をはじめとし、政府としても新しい時代に向けたビジネス創造やビジネス構造転換に向けた取り組みを、さまざまな補助制度などでサポートしていくことを打ち出しています。
「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」はその戦略の一つです。

2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略の一例

●CO2と酸素からガスを作る「メタネーション」
脱炭素社会に向けて、エネルギー施策の分野で注目されているのがメタネーションです。
メタネーションとは、酸素と温室効果ガスであるCO2を原料として、都市ガスの減量となる天然ガス(メタン)を作ること。
メタネーションは「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」において、「次世代熱エネルギー産業」として重点項目に設定。日立造船とINPEXによる基盤技術開発が進められ、大阪ガスでも研究が進められています。

※参考:メタネーション推進官民協議会(経済産業省サイトより)

2-2.ビジネスにもたらす3つのメリット

カーボンオフセットの取り組みを企業として推し進めることで考えられるビジネスチャンスは次のようなものがあります。

2-2-1.新たなテクノロジーやビジネスモデルの開発・普及

カーボンオフセットを実現するためには、さまざまな新しいテクノロジーが必要になります。
先行投資としてこの分野に取り組む企業は、次世代のリーディングカンパニーとなり得る可能性があります。初期投資としての側面もありますが、先行者メリットを得られるチャンスは大きいですよね。

現に、ジェット機を飛ばすために必要な燃料を、SAF(持続可能な航空燃料または再生可能代替航空燃料)に置き換えようと、国内外の航空会社が取り組みを進めています。これに伴い、2022年1月に米・マイクロソフト社がアメリカの新興企業『ランザジェット社』へ5,000万ドルを投資することを発表しました。ます。

国内では、2022年7月にコスモ石油と三井物産が、日本国内での持続可能な航空燃料を製造するための検討を始めることとなったことも報道されています。

※参考
あらゆる企業にビジネスチャンス!脱炭素社会に向けた取り組みを解説
米MS、バイオ航空燃料に投資 新興企業の生産設備に5000万ドル
Alcohol to Jet (ATJ) 技術を活用した国産SAF製造事業の共同検討を開始 

2-2-2.企業イメージの向上

消費者からの企業イメージの向上にも、カーボンオフセットの取り組みはプラスに働きます。
とはいえ、数年前のレジ袋有料化の際にも現場から「消費者からの支持をすぐに得られるのか」という懸念が上がったように、カーボンオフセットを進めるための変化には不安を感じてしまうのももちろん仕方のないことです。

しかしながら、一昔前は「面倒だ、という理由から普及しないのでは」と考える人もいたマイボトルも、20代の若者の間ではあたり前の光景になっています。むしろ、おしゃれなマイボトルはファッションアイテムとしても認知されつつあり、ポジティブに環境に優しい取り組みを受け止める素地はできてきています。
また、新たにマイボトルの購入という消費が喚起され、新たなビジネスチャンスにもつながっているでしょう。

現に、大手住宅会社のアキュラホームでは、木を使った家づくりに取り組む企業として、脱プラスチックに向けて木のストローを開発。持続可能な社会を実現するための挑戦は、メディアでも大きく取り上げられました。また、同社の取り組みは民間TV局でもドラマ化され、企業イメージの向上にも貢献しています。

このように、すこしずつ、消費者の反応や時代の流れを見ながら取り組むことで、時代に取り残されない企業として成長できるのが、カーボンオフセットの魅力です。

※参考
木のストロー
フジテレビジョン制作ドラマ「木のストロー」2月21日(月)制作発表会開催/BSフジでの再放送も決定 フジテレビ

2-2-3.投資家からの支持

企業活動を行う上で、投資家からの支持を得ることは、とても重要な視点です。
最近では、ESG投資(財務情報だけでなく、環境:Environment・社会:Social・ガバナンス:Governanceを投資の判断基準とする投資)にも注目が集まり、投資家の判断基準に環境への配慮やSDGsへの取り組みが加わりつつあります。

今後もこの動きは加速していくと考えられ、企業が投資家から資金を調達する上でもカーボンオフセットへの取り組みをしているかどうかは、大切な判断基準となり得るでしょう。

※関連記事
【モビリティ×SDGsシリーズ Vol 2】SDGs・ESGの「ソーシャル」「ガバナンス」を徹底解説!開催レポート

3.企業におけるカーボンオフセットの取り組み事例

ここまで見てきた通り、カーボンオフセットにいち早く取り組むことは、企業としての価値を高めることにもつながります。けれど、具体的にカーボンオフセットに取り組むとしたら、一体どんなことができるのか、イメージするのはなかなか難しいものですよね。

カーボンオフセットの原則は「知る、減らす、オフセットする」の順番で進めることです。
まずは自社がどのくらい温室効果ガスを排出しているかを知り、休憩時間のオフィス消灯などできる取り組みで減らす。そして、減らしきれない分は、カーボンオフセットのクレジット購入なども検討するという流れを原則として考えてみると良いでしょう。
ここからは、カーボンオフセットにいち早く取り組んでいる企業の活動を、国内外の事例から集めてみました。

3-1.【日本】染色加工で脱炭素経営に取り組む『艶金』

カーボンオフセットの取り組みと聞くと、大企業でないと実現できないと思う方も多いかもしれません。けれど、国内ではカーボンオフセットに積極的に取り組み、経営面でもポジティブな結果を出している中小企業も少なくありません。岐阜県で生地の染色加工に取り組む老舗企業『艶金』もその企業の一つです。

カーボンオフセットの基本は、
(1)排出する温室効果ガスの量を把握する
(2)排出量を減らす努力をする
(3)減らしきれない分をクレジットなどでオフセット(相殺)する
という流れです。

しかしながら『艶金』では、自社の温室効果ガスの量を把握する前から、バイオマスボイラーと省エネ型の染色機を導入。これにより、2019年ごろ測定した、染色の工程で発生する年間のCO2発生量が、従来型のガスボイラーを使った生産よりも約4分の1となる1万2,000tも少ないことがわかったそうです。

もともとバイオマスボイラーの導入は、従来使っていたガスボイラーの燃料となる重油の価格が乱高下することが、経営リスクと考えたことが原点。それが思った以上に温室効果ガスの削減につながっていたわけです。

同社はこれをきっかけに、脱炭素化への取り組みは企業価値向上につながると再認識。取り組みを進めるなかで、取引先であるアパレル業界からの評価も高まっています。

※参考
情報誌「戦略経営者」掲載 | 株式会社艶金
ひろがるカーボンニュートラル|環境省

3-2.【日本】航空機が排出したCO2を乗客がオフセット!『JAL』

航空業界においても、カーボンオフセットの取り組みは国内外で進んでいます。
というのも、飛行機を飛ばすためにはCO2排出が伴います。海外では地球温暖化に関与してしまう飛行機に乗る行為を「Flight Shame(飛ぶことは恥)」と呼ぶ動きも、2018年ごろから広がっています。

このように、環境への負荷という観点からネガティブイメージを抱かれることも増えてきた航空業界。企業の姿勢として、カーボンオフセットへの取り組みを推し進めることが、消費者からの支持を得るためには欠かせないものとなってきています。

国内でも、2009年と早い段階から、日本航空(JAL)では搭乗した航空便が排出したCO2を乗客自ら埋め合わせできる「JALカーボンオフセット」という取り組みをスタートしています。
「JALカーボンオフセット」では、飛行機に乗る乗客自らが、登場した区間や座席クラスに応じたCO2排出量をwebサイトから計算できます。この排出量に応じて、搭乗客はクレジットカードによる支払いで「JALカーボンオフセット」が支援しているCO2削減・吸収プロジェクトへの寄付ができるという仕組み。

企業だけでなく、個人もカーボンオフセットに取り組める仕組みを整えているのです。

※参考
排出量取引への対応

こちらの記事も参考に
【モビリティ×SDGsシリーズ Vol.3】「出張、搭乗を減らすだけじゃない!モビリティ×SDGs・ESGの新常識」開催レポート

3-3.【海外】人気ドラマの制作でもカーボンオフセット!ドラマ『24』

カーボンオフセットへの取り組みは、製造業などの産業界や運輸・航空業界だけの課題ではありません。
国際会議やコンテンツ制作の現場でも、カーボンオフセットへの取り組みは広がっています。

アメリカの人気連続ドラマ『24』では、CO2排出量削減のために、制作現場での手紙や宅配便の利用を控え、積極的に電子メールによる通信手段に変更。現場でも、ハイブリッド車を導入するなど現場レベルでCO2排出量削減に取り組んだそう。
さらに、ドラマ制作で使った発電機や自動車の燃料をカーボンオフセットの対象に。2009年には、インドの風力発電所からカーボンオフのためのクレジット購入をする予定だと、制作担当者がガーディアン誌に語っています。

テロリストから世界を救うストーリーの『24』は、いち早く環境破壊から地球を救おうと取り組んでいたTVドラマだったのです。

※参考
海外におけるカーボン・オフセットの取組事例の紹介
Jack Bauer saves the world again: 24 goes carbon neutral

まとめ:カーボンオフセットがこれからのビジネス展開のヒントに

なんとなく、敷居が高くてわかりにくいと思う方も多かったカーボンオフセットやカーボンニュートラルという考え方。
基本的な姿勢や取り組みさえ理解できれば、自身のビジネスや企業活動に取り入れられるアクションはきっとたくさんあるはずです。ご紹介してきた企業の取り組み事例なども参考にしながら、「自分達ならどんなことができるだろうか」と考えてみてはいかがでしょうか?
カーボンオフセットへの取り組みは、企業のファンを増やし、これからの時代に合ったビジネスへと転換するチャンスとなることでしょう。

文:松本 有為子
編集:山﨑 梨惠(リベルタ)

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